2021/11/25 のログ
ご案内:「古書店街「瀛洲」」にフィーナさんが現れました。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」に雪景勇成さんが現れました。
フィール > 「迷ってないと良いんですけど…」
古書店街の入り口で人を待つフィール。

携帯端末を弄りながら、壁にもたれかかっている。

雪景勇成 > 本日は待ち合わせである。
とはいえ、まだ一度しか訪れたことの無いこの古書店街だ。
こういう形で二度目に訪れるとは思わなかったが…。

まぁ、本屋巡りはまた別の日に。今日の目的はそれではない。
予めメールで教えられた場所へと、あくまでマイペースな足取りで移動する。

「…確か、ここら辺――…っと、居たか。おい、フィール。」

相変わらず無愛想無表情のまま、姿が見えた彼女に軽く呼び掛けながら歩み寄ろうか。
待ち合わせ時間的には大丈夫だったと思うが…。

フィール > 「あぁ、良かった。迷ってないみたいで」
安堵の息を吐きながら、近づいて。

「こっちです」
姿を確認した後、目的の場所へと向かう。

その場所は、古書店街の奥まった場所。小さな魔導書店だ。無愛想な老婆が店番をしている。
恐ろしいのは、此処にある魔導書がほぼ全て魔力を放っていることだ。

「ここ、小さいけど良い魔導書売ってるのよ。今度買ってみようと思うんだ」
そんな世間話をしながら、棚を見ながら歩く。
そして、一冊の本を手に取り…迷うことなくレジカウンターへと向かう。

魔力に敏い者なら、その本が魔力の放たない偽物の魔導書であることがわかるだろう。

なにか老婆にどやされながらレジを済ませて、カードを受け取りながら戻ってくる。

「こっち」

そう言って、更に奥まった場所へと移動する。
そこには似つかわしくない重厚な扉があり…フィールはそこにある端末にカードを差し込む。
ピピ、という音とともに。ガコン、と扉が開く。

濃密な魔力が流れ出てくる。

「この中に、フィーナがいるから」

雪景勇成 > 「正直、一度しか足を運んだ事がねぇから場所の案内が無かったら確実に迷ってただろうけどな…。」

肩を竦めて一言。何せ土地勘が全然無いから、何処の道を行けば何処に出るのかも把握していない。
ともあれ、彼女に続いて足を運ぶのは古書店街の奥まった一角だ。
当然、そこまで足を運んだ事はまだ無い――…が。

(…こりゃまた、慣れてない奴は吐き気でも催しそうなくらいだな)

辿り着いたのは小さな魔道書店。無愛想な老婆に軽く無言で会釈だけはしておく。
問題は、この店にある書物の全てから魔力が漏れ出しているという事だが。
――つまり、どれもが本物。流石にピンからキリまで中身はあろうが偽物は一冊も無いのだろう。

「…確かに、魔術の知識がある程度偏ってる俺でも分かる程度には存在感があるな…。」

と、彼女の世間話に相槌を打ちながら、ある一冊の本を手に取りレジカウンターへと向かうフィールに続く。
当然、魔力感知は出来るので彼女が持ち出した本が偽物だという事にも気付いている。

(――どれもこれも本物っぽいのに、アレだけ偽物っつー事は…)

ともあれ、何故か老婆にどやされつつも会計を済ませてカードを受け取り戻ってくる彼女を迎えて。
そのまま、彼女の案内で店の更に奥まった場所――店に似つかわしくない重厚な扉の前に案内をされる。

「……まさか、この中か?中々に厳重だな…。」

扉がカード認証で開かれれば、濃密な魔力が漏れ出てくる…ともあれ、フィールの言葉に頷いて。

「んじゃ、行ってくるわ。頼み聞いてくれてありがとよ。」

と、彼なりの礼を述べてから迷わずその奥へと歩を進めて。

フィーナ > 中は異常に狭い配列で並べられた棚に、満載されている魔導書達。

表で見たものよりも魔力が濃く、ともすれば危険なモノ…それこそ禁書までが蔵書されている。

その中で。梯子に座って本を読む影が一つ。

黒いドレスを身に纏い、服装が、髪型が同じであればフィールと間違えてしまいそうな、小さなエルフ。

しかし、見た目で間違えることは、無いだろう。

その、全身に渡る刺青を見てしまえば。

「………貴方が、雪景さん?」

目を閉じたまま、魔導書のページを捲る。ふわりと、魔導書の文字が浮かんでいく。

まるで、ファンタジーの世界に入り込んだかのような光景だろう。

雪景勇成 > 普通なら、この空間に満ちる魔力と…そしてこの異常な狭さで配列された棚にぎっしりの魔導書の群れ。
それだけで気圧されるか、もしくは膨大な魔力に宛てられて心身不調にもなりそうだ。
何せ、禁書の類が混じっているのだから、普通の感覚じゃ数分もその空間には居られないだろう。

…で、男はといえば流石にやや面食らった様子ながらも何時もと変わった調子も無く。
ともあれ、奥の梯子に座った姿勢で本を読む影が目に留まる。
髪型は違うが、小柄な体格やエルフらしい特徴からして間違いないだろう。
何より、その全身に渡る刺青らしきものは一度見たらまず忘れそうにも無い。

「……ああ、フィールから一応話は聞いてると思うが。
…雪景勇成で間違いねーよ。アンタがフィーナでいいんだよな?」

目は閉じたまま――盲目か、別の理由かは初見では分かりはしないけれども。
本のページを捲っている辺り、読めてはいるのだろう…浮かぶ魔導書の文字を一瞥して。

「…しかし、またすげぇ空間だな――学園の『禁書庫』を思い出すが。」

フィーナ > 「えぇ、私がフィーナ。フィーナ・マギ・ルミナス。よろしく」

顔も向けないまま、魔導書をまた捲る。

「ここも、ある意味禁書庫みたいなもの。店のおばあさまが買い集め、補完している場所。閲覧するのは構わない。けど、持ち出し禁止。封をしているものは閲覧も駄目」

そう言いながら、また一枚ページを捲る。

「…フィールの後見人になったって聞いた。」

ぶわり、と。空気が変わる。
魔導書から放たれる魔力が押しのけられていく。

雪景の周りの魔力が変容する。

「…何が、目的?」

まるで、見えないなにかに狙われているような感覚が、雪景を襲うだろう。

雪景勇成 > 「…そもそも、俺程度のヤツが持ち出せる訳がねーだろうがよ…。」

顔も向けないまま、ページを捲る彼女に特に気を害した訳でもなく、棚の一角に背中を預けるようにして。
つい一服したくなるが、流石にここで喫煙は色々とマズそうなので我慢しておく。

「――あぁ、まぁその辺りはアンタに取り次ぎ頼んだ時に話すだろうな、とは思ってたが――…。」

――周囲の空気が露骨に変わった。魔導書から放たれる魔力が吹き飛ばされる。
同時に、自身の周囲の魔力がまるで今にも喉下に刃を当てているような気配を孕む。

「――別に。いちいち目的とか裏とか考えても疲れんだろ、んなもん。
単に、フィールと偶然会って話をして、お互いの素性暴露して変化も無かった。
んで、個人的にそういう奴は嫌いじゃないんで、俺に出来る範囲で引き受けただけだ。」

裏だとか目的だとかくだらない、とばかりに鼻を鳴らす。
生憎と、そんな権謀術数に興味は無いし得意でもない。
下心も無ければ同情心でも無い。

よって、今すぐに首を落とされそうな魔力の威圧にも全く動じる事は無い。

フィーナ > 「…正直言えば、風紀委員というだけで警戒に値する。落第街の件もある」
そう言いながら、魔力を引かせていく。
先と同様の重苦しい魔導書の魔力に包まれた環境に戻っていく。

「怪異に心を許すなど、風紀にあるまじき行為。何か目的があってと思ったけど―――脅しに怯まない辺り、戦闘に長けてる。緊張もない。白」

また一つ、ページを捲る。

「用があるって聞いたけど。」

簡潔に問いかける。フィーナは呼ばれた側だ。
理由はフィールから聞いてはいるが、本人の口から聞きたい。

雪景勇成 > 「そりゃそうだろ…むしろ、それで警戒とかしねぇのは逆に大物か単なる馬鹿だろ。」

落第街の住人からすれば、風紀の印象なんて色々あれど良くない場合が多いだろう。
勿論、風紀だって良い奴やまともな奴、真面目に頑張ってる奴も数多い。
――単に、自分も含めた馬鹿がそれなりに多いだけだ。

「いや、それ以前に別に俺にとっちゃ怪異なんて敵だろうが味方だろうが大して変わらねーよ。
そういう種族なんだと纏めて見てるし、会話して話がある程度通じるならそれで十分だ。」

男の持論、というか怪異へのスタンスを淡々と語る。
そもそも、怪異に対する恐れや嫌悪感というものが全く無い。
かといって、警戒心が無いのとは違う。実際に話が通じない怪異には相応の態度を取るだろう。

「いや、そこまで大袈裟なモンじゃねーんだけどな…。
単に、フィールから話を聞いて『親』がどんな人物か気になったっつーだけだ。」

わざわざ場を用意して出向いて貰って言うのもアレだが。
理由なんてそんな大したモンでもない。
かといって、それだと味気ない上にここで話が終わってしまう。
さて、どうしたもんか――…と、思って周囲を見渡しつつ。

「…そういや、アンタも正規学生じゃねーって話だが、居候先の奴含めて今は平気なのか?」

と、世間話のように。勿論、聞いたからどうこうは無い。単なる問い掛けだ。

フィーナ > 「会話出来るからと言って害意が無いとは限らない」

実際、風紀委員が落第街を攻める前…『厄災』と呼ばれた、自分に似た怪異が暴れていたという話を聞いた。

無垢な言葉を話しながら、人々を殺して回った――――正確には、死なせていった。

フィールにしたってそうだ。彼女は大切なものの為なら何をも厭わない性質だ。私を助ける際にも数人死なせた。

「…好きで親になったわけじゃない。子としても見てない。しがらみがなかったら、殺してる」

普通の人なら恨み言のような言葉を、淡々と述べる。
フィーナも感情で動く程馬鹿ではない――――が、此処まで感情を隠すとなると、恐ろしいものがある。

「前は二級学生だったけど。今は学生証が無いし、不法入島者になる。居候先の人は困ってる様子はない。匿ってもらってる」

別に隠すほどでもない。元々話は通っている筈だし…バレたからといって困ることもない。
流石に名前は伏せたが。

雪景勇成 > 「だったら、そん時はそん時だろ――殺し合いとかそういうのになるだけだ。」

話し合いも殺し合いも大して変わらない。
お互いの意志、考え、感情のぶつけあいだ。
『厄災』の事は聞いているが、だからどうしたという程度だ。
フィールについても、会話をした中で大切な者が最優先、というのは理解している。
そもそも、アイツは大切な者の為に人間社会に溶け込もうと思っている。
――裏を返せば、大切な者が失われたら、厄介な怪異に逆戻りだろう。

「あー…まぁ、経緯は端的に聞いたが、まぁそりゃそうなるわな…。」

淡々と述べる口調に感情は乗っていない。
それでも、その言葉の内容が本気なのも何となくは伝わる。

「…偽造学生証くらいは持っておいてもいいんじゃねーか?
まぁ、アンタの居候先が寛大そうなら別に俺がどうこう言う事でもねーんだろうが…。」

それこそ余計なお世話だろう。外野でしかない自分が口を挟んでもしょうがない、が。

「匿うにもいずれ限度が来るだろ、どんなに良い奴でも理解がある奴でも。
だったら、『自活』出来るように自分でも情報収集やあれこれはしておくべきだと思うがな。」

(親子でもここまでスタンスが違うもんなんだな…って、まぁ当然か)

二人のしがらみに関しては詳細までは知らないが。
色々と拗れた感情もありそうだし、そこに気安く触れるほど考え知らずでもない。

フィーナ > 「もっとも」
短い言葉で、同意する。
分かり合えなければ、殺し合いになるだけだ。

どちらかの要求が呑まれない限り、闘いに終わりはない。

「偽造学生証は身体の刺青を調べられないために作ってた。でも、それが原因で捕まった。だったら要らない」

制約があったせいであんな目にあった、と暗に告げる。
そして、偽造学生証を作るつもりも。

身体を調べられるのなら学生証も要らないと。

「調べてはいる。でも、絶望的。フィールが私の姿で好き勝手しすぎた」
つまり、フィールの経歴がそのままフィーナの経歴となってしまっている。
ヤクを売りさばいた事実や、殺人も。そのままフィーナがやったことになってしまっているのだ。

まぁ、それだけが理由ではないのだが。

雪景勇成 > (もっとも、何事も白黒きっちりだけじゃなくて”落とし所”も必要なんだけどな…)

口には出さずに。何事も白か黒かで回るほど、世の中単純でも甘くも無い。
基本的な考えはフィーナと同意見ではあるが、そういう所はおそらく異なるだろう。
それでいい、十人十色、考え方などが違って当たり前だ。

「つー事は、その刺青がアンタにとって欠かせないモノっつー事か。」

かなり目立つ上にどう見ても全身に施されている…ただの刺青ではないのは前提として。
彼女の根幹に関わる、ものかどうかは分からないが重要なものであるのは間違い無さそうだ。

「…あぁ、アンタの姿で色々やらかしたっぽいしなぁ、アイツ…。」

その厄介な奴の後見人を申し出た俺も俺だが、と一息零す…煙草が吸いたい。

「自前の安全な隠れ家は?…もしくは、異邦人街――あっちなら身を隠し易いと思うが。」

何せ異邦人が暮らす街だ。エルフだって珍しくは無いだろうし――どのみち物件探しなどが問題だが。

フィーナ > 「なかったら死ぬ」
簡潔に述べる。
事実フィーナの刺青は生命を維持し、身体を動かし、移動の際に浮くための術式もある。

それ以上に、フィーナの根幹たる部分に、禁術が施されている。

調べられれば、場合によっては禁書庫に閉じ込められる事も有り得るのだ。

「前使ってた所は砲撃で壊れた。異邦人街は自治であるが故に噂も早い。見つかったら面倒」

異邦人街は学園の法治の範囲外で、明確な法がない。故に自衛の必要があり、危険性のある噂は共有が早い。

雪景勇成 > 「生命維持装置みてぇなモンか…素人の俺でも、かなり複雑多様な術式っつーのは分かるが。」

この男にも魔力はあるし、『特化型』だが魔術は何種類か扱える。
魔力感知もまぁ出来るので、刺青のそれが自分程度の知識では及びも付かない複雑なものなのも分かる。

(…生命維持だけじゃなくて、他にも兼ねてんだろうが…まぁ、根掘り葉掘り聞くのも野暮か)

ある程度は見抜きはしつつも、それ以上は深くは聞かない。
少なくとも、知った所で自分がどうこうする話でもない。

「――あー……成程。」

砲撃、という単語に心当たりが有り過ぎて一瞬、なんとも言えない表情を浮かべる。
が、直ぐに緩い無表情へと戻りつつ。

「そうなると、魔術でここみたいな特異空間作って引き篭もるくらいしかねー気もするが。」

彼女の場合、学生証のハードルが高過ぎるし、かといって異邦人街だと噂で居辛くなる可能性もある、となれば。

(自前でそういう空間作るか、もしくは――…)

「それこそ、転移荒野とかのある未開拓地域辺りに出向くしかねーかもな…。
あそこは、そういう噂が昇り難い立地と環境ではあるし。」

人里離れた場所で、仙人のように過ごすのが一番いいのでは、とついつい思ってしまう。
…が、それはそれで駄目だろうとも思う。よく分からんがそれはただの逃避だ。

(つっても、フィールよりも条件が諸々厳しそうだしな…)

考えて傍と気付く。これこそお節介思考では無いかと。
自分のそういう所に、疲れたような溜息を漏らして。

フィーナ > 「うーん……」
人里離れた所を提案されて、一考する。

別にフィーナは構わないのだ。学ぶ環境さえあれば良いのだから。

「森があれば最良なんですけどね」

此処に来る前は森に住んでいた。別に森の生活に戻るのも苦ではないし…此処がある限り魔術を学ぶことは幾らでもできる。

「青垣山とか、住んでも大丈夫なんですかね?」

青垣山には一度だけ行ったことがある。そこで禁術を行ったのだが…これは言わないでおこう。

雪景勇成 > 「…ああ、エルフだからやっぱり森の環境が落ち着くのか?」

矢張りエルフ=森の住人というイメージはあるので、彼女の言葉にそう相槌を。
さて、彼女が出した青垣山だが――…

「…身を隠すにはアリかもしれんが、あそこも民家は無い訳じゃねーし怪異とか不可思議な現象も多いからな。
アンタ程の魔術の使い手なら、そこらの対処は出来るとは思うが…。」

少し考えつつ、自分にある魔術知識などを動員して考えてみる…ふむ。

「…だったら、青垣山の一角に魔術で『森の空間』を結界併用で展開してそこに住み着く、とかは?」

結界術式、幻影術式、環境術式など幾つかの魔術の掛け合わせが必要だが。

「魔力補充については、あの青垣山も特殊だからフィルターを掛けて魔力を補填すれば枯渇とかもねぇと思うが。」

フィーナ > 「悪くはない」

住居としてなら問題はない。魔術に関しても問題はない。

「魔力補充は、自分でできる。けど、怪異が問題。魔術が効かない相手だと、手も足も出ない」

事実、フィーナはそれと対峙したことがあり…敗北を喫している。

一度怪異に囚われた身としては、慎重にならざるを得ない。

「青垣山だと、助けも求められない」

雪景勇成 > 「魔力補充が自力で出来るなら、環境を整えるのは自前で出来そうだな……で、問題が怪異と。」

さて、怪異――…怪異か。明確な対抗手段が無い訳ではないが…。

「……”面倒臭い”がしょうがねぇ。か。」

これも楽しむ事の一環と割り切ろう。徐に、左耳に付けていたシンプルな黒いピアスを外して。
黒い石の嵌まったそれを、フィーナへと無造作に投げ渡そうとする。
彼女なら、普通に魔術なり何なりでキャッチ出来るだろうと踏んで。

「効果は限定されるが、一応持っとけ。別に身に付けなくても懐に忍ばせておくだけでいい。
…対怪異用の道具みてぇなもんだ。」

普段は魔石のピアスとして周囲に適当に答えているが。
その中身は、魔力を怪異に”通す”為の補助術式が編みこまれた魔道具の一種だ。

「…アンタなら、その中身の解析もいずれ出来るだろうよ。
だから、それまではそれを使っていけばいい。
効果はシンプル――魔術を怪異に”通す”もんだ。」

魔術が効かない怪異に魔術を通す――シンプルだが地味に強力な効果だ。
ただし、一度に通せる魔力…魔術は上限がある。その加減は彼女自身で掴んで貰うしかないが。

フィーナ > 「わ、と」
投げ渡されて、予期していなかったことと…そもそも彼女は身体操作を魔術に頼っており、細かい操作は出来ない。

故にわたわたと受け取り損ね、落としてしまう。

「…いきなり投げないで」

戦っても良いのなら反応は出来ただろうが、此処は暴れていい場所じゃない。

梯子から降りて、ピアスを拾う。

「……ふぅん、成程?」

見て、瞬時に術式を解析する。これは、魔術に依る現象を自然現象へと置換する為の術式だ。
恐らく物理現象を発現する魔術と相性が良いのだろう。

ただ、術式が込められた媒体がそこまで頑丈ではないため、使える量は限られているだろう。

「貴方は持ってなくて大丈夫なの?」

雪景勇成 > 「…何だ、そこは魔術でクールにキャッチとか出来るもんかと。」

と、意外だったのか僅かに瞬きをしてそちらを眺めるも、一応はスマンと一言謝っておく。

「別に。愛着があるブツって訳じゃねーしな。
二級学生時代に、偶々成り行きで手に入れたモンだし。
――それに、怪異に対抗する『手札』は別にあるからな。」

勿論、そのピアスを渡すと手札そのものは一つ減るので、そういう意味では惜しいが。
まぁ、フィーナなら、それが壊れるまでに自力で怪異に術を通す方法は編み出すだろう、と。

「つー訳で、俺の方は別に気にしなくてもいいぜ。
と、いうかアンタは自分の事をまずどうにかしなきゃいかんだろ。
人の心配をするより、まずは自分自身の身の置き方を考えるべきだって訳だ。」

淡々と答えながら肩を竦めてみせる。どのみち、貴重だがいずれ壊れる物だ。
フィーナが有効活用できそうなら、そっちに渡した方が道具の役割は果たせよう。