2021/11/26 のログ
フィーナ > 「………ありがと。参考になる」
もう一度梯子を登る――――否、浮いて高い所に魔導書を仕舞い、今度は自分の懐からまっさらな本と羽ペンを取り出す。

そして、サラサラと。ピアスに刻まれた術式、その情報を書き込んでいく。

魔力を感知する雪景ならわかるだろう。相当な量の魔力が本に、文字に込められていることに。

「もう解ったから、返す」

魔導書と化しつつある本に書き込みながら、片手でピアスを渡そうとする。

フィーナはその魔術を見ただけで術式を感知、解析してしまう。

実物があるのなら、簡単に見抜いてしまう。

雪景勇成 > 「…おぅ………いや、待て早すぎじゃねぇか?」

彼女が再び梯子を昇り、魔導書を仕舞い込む。
代わりに懐からホント羽根ペンを取り出したかと思えば。
何やらサラサラと書き込んで行く。
しかも、ただ書き込んでいるだけではなく、そこに込められた魔力が尋常ではない。

(…俺みてぇなのが凡人以下に思える魔力量だな…)

と、そんな事を思いながら片手で差し出されたピアスを受け取る。
ものの数秒でまた手元に戻ってきてしまった。仕方なく左耳にまたピアスを付けて。

「――成程、術式解析か。それも桁違いの速度と精度の。
…んで、実体がある奴ほど解析は容易い…とかそんな感じか?」

最早、ただのまっさらな本から一冊の魔導書と貸しつつあるそれ。
書き込みを続けている彼女に、呆れたようにそう述べる。

異才、とかそういうレベルではない。こういう化物クラスの人材がゴロゴロしている島だ。

フィーナ > 「実戦に於いても術式解析は使う。干渉するのに使ったり、逆に利用したり。対魔術戦に於いては有効」

先程のピアスは恐らく石に込められた魔力を用いて干渉する術式だ。
複数の術式を扱えない魔術師の補助道具。

「付加魔術は良し悪し。強力ではあるけど扱いが難しい」

一般の魔術師は複数の魔術を行使することは難しい。
複数の魔術を一つの魔術に纏める事もできるが…フィーナが書いている術式は付与単独である。

素人はおろか魔術を『扱える』という程度の人間には使いこなせない魔導書が、完成する。

「目の前にあるなら解析は出来る。離れてたら難しいけど」

故に魔術師の間で杖が人気なのである。
杖に術式を込めるのは一瞬で――――その一瞬では普通は術式は読み解かれないから。

フィーナはそれも関係なく、見破ってしまうのだが。

雪景勇成 > 「…俺は流石に術式解析は出来んからな…有効なのは分かっちゃいるが。」

魔力感知は出来ても、その中身を把握して解析して自分のモノに出来る技量は無い。
別に己は魔術の才能があるという訳でもないのだから当然だが。

「…強力ではあるが扱いが難しい、ねぇ。特化型の魔術使いには耳が痛いお言葉だ。」

自分みたいな。肩を緩く竦めるが魔術に精通した者が言う言葉は重みがある。
そして、あっという間に完成した魔導書。
短時間で一冊ソレを作り出す奴なんて少なくとも周りには居ないので驚きだ。

「つーと、フィーナに術式見破られないようにするにゃ、それこそ距離を一定以上空けるしか対策なさそうだな…。」

別に彼女と戦う気も理由も全く無いが。しかしまぁ、こうも反則級だと逆に笑いたくなる。

「まぁ、怪異への対抗手段が一つ出来たって事で。話は戻すが結局、フィーナは今後どうしたいんだ。」

問題は結局そこだ。彼女自身まだ決めあぐねているのだろうけれど。

フィーナ > 「特化型も悪いことじゃない。自分の異能と掛け合わせるなら強力。覚えることも少なくて済むから修練が早い。術式発現までの時間も早くなる」

特化型のメリットを上げていって。自分は複合魔術をよく使うが…術式の発現に時間がかかるものも多い。

特化するならそれだけを頭に叩き込んでいればいいので、それだけ早く発現出来るということだ。

「とりあえず、関わらなきゃいけない人が居るから、その間は居候しようと思ってる。その後は…必要であれば森に行こうかな、っていうぐらい」

自分のせいで身体能力を失った者がいる。その責任だけは取らないといけない。

雪景勇成 > 「…あぁ、まぁそうだな…。」

自身の異能と魔術の組み合わせ。手札を伏せる傾向が強い男はまだ人前でやった事は無いが。
それに、特化型の悲しい宿命としてどうしても汎用性で劣るというものがある。
つまり、使える状況が限られたり使用条件が厳しかったりとかそんな感じだ。

自身の場合、特化型なのは間違いないがそもそも人前で使う事はしないので訓練もあまりしていない。

「――成程、まぁ大まかにでも方針が決まってるんならいいんじゃねーか?
居候先の奴とは、まぁお互い相談は必要だろうが。そこは俺が口出すことじゃないしな。」

彼女の決めた事だ。外野がどうこう言う事も無い。
取り敢えず、フィーナという人物がある程度理解出来ただけ、この突発の顔合わせも悪くは無い。

「…あ、ついでに一つ。ここの本棚に補助系の術式が収まってる内容の奴はあるか?」

思い出したように尋ねる。外に持ち出せなくても軽く可能なら目は通しておきたい。

フィーナ > 「参考になった」
自分の身を切ってまで相手を思うこの男は、少なくとも悪い男ではないだろう。
いい男かどうかは、わからないが。

「含意が広い。補助系でも100は優に超える。簡単に使えるのなら表を探したほうが良い」

ここは所狭しに並べられた、禁書を含む魔導書庫だ。
そもそも魔導に関して素人が立ち入る場所ではない。

此処にあるのは素人が扱いに困るモノばかりなのだ。
強力だが売れない、倫理に問題がある、消費魔力がとんでもないなど、曰く付きのものばかり。

雪景勇成 > 「…あんまし参考になってる気はせんが、まぁアンタがそう思ってるならそれで。」

一先ず、自分に出来る事はこのくらいだろうか。
取り敢えず彼女がとんでもない魔術師なのは理解した。

「んー…ここにあるもんは売り物ではなさそうだしな。
…今ざっと見た限りだと、幾つか面白そうなのはあったんだが。」

本棚を見渡して。ちなみに、男は本をじっくり見ていた訳ではない。
魔力関知でもない。単純明快に”勘”で幾つかこの本棚から面白そうなものを探し当てていたようだ。

(個人的には”表で買えない”類の魔導書が望ましいんだが…さて。)

彼女と交渉しても譲り受けたり購入は難しそうだし、そこは素直に諦めるしかないか。
そもそも、先ほどから矢鱈と平然としているのがおかしいのだが。
何せ曰くつきの書物ばかりに囲まれていて”何も無い”のである。
フィーナと違って、この男は特段、魔力量や魔術適性に優れているとは言い難い。

「まぁ、取り敢えず分かった。俺の話はそんな所だがアンタから何かあるか?」

フィーナ > 「絞ってくれれば探しますよ。補助系だけでは含意が広すぎるので。」

探せば見つけられるが、含意が広すぎるせいでここにあるものだけでも100冊は超える。
その中から有用な物を探す…となれば、相当な労力になってしまう。

「んー……そうですね。確か、風紀委員でしたよね?

スライムについての情報、ありませんか?」

雪景勇成 > 「あー…飛行術式とか加速術式とか。移動系だな。
あとは防御系。どっちかっつぅと物理防御系の術式とか、。」

何せ特化型なので、そういう術式は使えないのだ。
それに、簡単な術式より多少リスクあっても強力なものが欲しい訳で。

「スライム…あぁ、まぁぼちぼちあるにはあるが。
先にあった落第街襲撃の余波で姿は潜めていたようだが…。
まぁ、それが落ち着いてから目撃例も幾つかあってな。

――変化があるとすりゃ、前は無差別に襲ってた感じだが、最近はそうでもないって事だ。」

より魔力や能力のありそうな者を”選別して”狙っている。
自分の手元にある情報ではそんな所だ。、それ以上は現時点では分からない。

フィーナ > 「んー…でしたら…」
ひょいひょい、と。棚から幾つかの魔導書を手に取る。

飛行術式と、加速術式。そして、障壁術式。

「恐らくこの辺りが参考になるかと」

なお飛行術式は推進に姿勢制御、揚力発生に高度感知、対気速度感知、方位感知術式、高高度用酸素生成術式、加圧術式等。
並列起動する術式があまりにも多数であり魔術の天才でなければ扱えない代物となっている。

加速術式に関しては力のベクトルを強化し、動きの速度を上げる術式が書かれている………が。夥しい血の跡がその持ち主の末路を物語っている。

障壁術式に関しては非常に簡単で、魔力を凝固し障壁と成す…というものだが。

果たして防御に使えるほどの障壁にするにはどれだけの魔力量が必要なのだろうか。

「……成程。私を狙ったのはやはりそういう習性があるからですよね。

気をつけてください。彼らの内の一個体が魔力、魔術を吸収する習性を持っています。」

雪景勇成 > 「…どれどれ。…………あーー…。」

受け取った3冊の書物にザッと目を通すが。
まず、飛行術式は確実に無理と判断したので却下…賢明である。
次いで加速術式。これは何か血痕がベッタリ付いているが…成程、何となく内容は分かる。
最後の障壁術式。これは簡潔だが単純に魔力量が問題となってしまう。

総合すると、己の魔力量でも出来て、加減を調整するセンスが必要になるが加速術式が矢張りいいだろうか。

「んじゃ、この加速術式の奴を。あー…借りるとか無理だよな?
なら、今ここで目を通して覚えていきたいんだが…。」

解析が使えないので、内容に目を通さないとどうしようもないのである。
取り敢えず、飛行術式と障壁術式は今回は断念。最悪表側で探すしか無いだろう。

「…魔力や魔術を吸収?…魔術師喰いみてぇな性質だな。……まぁ、分かった。情報感謝する。」

そこは風紀委員の端くれか、素直に情報提供に感謝と礼を。

フィーナ > 「駄目。何のための厳重体制かわからなくなる」

自分のものではないが…此処を閉ざしておく理由はわかる。
過ぎたるは猶及ばざるが如し。飛行術式も使いようによっては落下死を誘発し。
加速術式は身体を引きちぎり。

障壁術式は、下手に魔力を消費し、逆に危機へと陥らせてしまうだろう。

使われるべきではない。持ち出されるべきではない。

そういった代物達が、此処に集まるのだ。

「私はそいつに捕まりました。狩るときは強力しますよ」

にやり、と笑って見せて。

その笑みは、とても獰猛で。それこそ歴戦の者の殺意が籠もっていた。

雪景勇成 > 「…だよなぁ。じゃあ、ここで覚えておくわ。」

溜息と共に、加速術式の魔導書を読み始める――が、早い。
殆ど流し見しているくらいの速度でページをパラパラ捲る。
結局、読み終わるまで5分も掛かっていないだろう。

「……あぁ、くそ…一気に詰め込むと頭痛がしてくんな…フィーナ、これも返す。」

と、加速術式の魔導書を彼女に返そうと手渡しつつ。
速読なのか、今の5分間で内容を頭に叩き込んでしまったらしい。

「……恨みと殺意がたっぷりの笑顔をどーも…。
まぁ、風紀の俺と一緒に行動しちゃマズいからバックアップというか影からこっそりでな。」

別にこちらとしては、彼女に殲滅して貰っても構わない。
その場合は、こちらがさりげなく彼女のフォローをする形になりそうだが。

「…さて。そろそろ引き上げるか。…わざわざ足を運ばせて悪かったなフィーナ。
…まぁ、何かあればまたフィール経由で連絡は何時でもくれていいぜ。」

と、いってもフィーナからこちらに連絡する用件なんて殆ど無さそうだが。

フィーナ > 「ん」
受け取って、元の場所へと返す。
その手際は、もうこの場所を知り尽くしているかのようだ。

「そのときはよろしく。必要なら隠蔽魔術も使う」

彼にも彼の立場がある。それを脅かさないようこちらも手は尽くすべきだろう。

「いえ。こちらこそ、有意義な時間でした。そちらもまた何かあれば何時でも。」

そう言って、フィーナもふわりと浮き上がる。

そして、出口へと向かうだろう。

雪景勇成 > 「そうして貰えると助かるわ。俺も立場上、仕事の時はそっち優先だからな…。」

風紀の立場のみから見た場合、素性の知れない相手と協力体制、という訳には行かない。
まぁ、自分ひとりだけがその場に居合わせたなら幾らでも共闘するが。

「…んー、有意義だったかは分からんが、まぁどーも…んじゃ、またいずれ。」

ふわりと浮き上がって出口へと向かうフィーナに続き、こちらも少し遅れて外へ。
おそらく、待機していたであろうフィールにも軽く礼を述べてから解散してその場を後にするだろう。

ご案内:「古書店街「瀛洲」」からフィーナさんが去りました。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」から雪景勇成さんが去りました。