2019/02/05 のログ
ご案内:「常世公園」にさんが現れました。
>  授業が終わり、図書館で少し勉強をしてからの帰り道。
 時間は夕方の五時になる前の夕暮れ時。日が落ちるのが少しは遅くなったと言えど、辺りは大分暗くなってきた。
 
 公園にあるブランコを立って漕ぐ少女が一人。
 勢いはそんなにつけず、少し動かす程度でブランコを漕いでいた。暫く無言でいたが、突然大きなため息を吐く。
 
「試験……筆記試験はどうにかなるにしても、実技試験、どうしましょう」
 憂鬱な表情で呟く。普段から彼女を知る人間なら、あからさまにどんよりとした空気が流れていることに驚いたかもしれない。
 
「実技は苦手です……」
 一番の不安要素である実技試験。前期の結果は散々だった。ペナルティはないとは言え、最低ランクを貰ってしまったのだ。
 思い出すだけでも、気分が落ち込んでしまう。二回目のため息の後、顔を上げて夕焼けをぼーっと眺める。

>  筆記試験は勉強すれば、それなりにどうにかなる。
 教科書や資料を読んで、難しいものは辞書を引いて意味を読み解く。計算は苦手だけど、数式を覚えれば『分からない』から『何となくなら分かったかも』までいける。
 
 しかし異能の実技に至ってはそうもいかない。
 
 頭では理解していても、身体が思うように動かないし、上手く制御出来ないことがほとんどだ。
 
 
 つまりこの少女はノーコントロール……悲しいことに『ノーコン』というものであった。

> 「異能が上手くコントロール出来ないって致命的ですよね……というか激ダサですよ。縹、異能なんて大嫌いです」
 キイ、と錆びた音を鳴らして再びブランコを漕ぐ。
 勢いよく漕がない……否、漕げないのはこの少女、ブランコを漕ぐのも下手だからである。
 
「うう、ブランコを上手く漕げれば……異能だって少しは上手くコントロール出来ると思ったのですが、どうやらダメみたいですっ」
 悔しげに呟く。

>  ブランコが漕げることと異能のコントロールがどう結び付くかはさておき、少女は本気であった。
 
 ブランコが上手くなれば、きっと異能もコントロール出来るようになるに違いないと。
 しかしこれ以上勢いをつけて漕ぐのは恐いし、ましてや飛び降りるのも無理なので結局棒立ちのまま――ブランコが止まるまで待っていた。
 
 漸く止まったところでブランコからゆっくり降りる。
 地面に着地して、またもやため息をついた。
 
「うーん、やっぱりボール投げとかドリブルとか、そういう方がいいのでしょうか……」

>  遊具がある場所から少し離れてグラウンドを見ると、サッカーをしている少年や、キャッチボールをしている少年たちがいた。
 
 ……ボールを思ったところに投げられるようになればいいのかも。
 
「……よし。明日は休み時間にボールを借りて壁当てをしてみましょう」
 取り敢えず何でもやってみよう。
 少女はずれた眼鏡を直して、鞄を拾う。
 
 夕焼けこやけのチャイムを聞きながら、公園を後にしたのだった。

ご案内:「常世公園」からさんが去りました。