2020/06/10 のログ
ご案内:「常世公園」にルナアイズ・ラーゲンフォルエルさんが現れました。
ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > 「ふう、思ったより手間取ってしまったわね」

そういいながら、ベンチに腰を落とす一人の女性。
青みがかったストレートロングの銀髪に、所作からあふれる気品。
どれもが上品さを醸し出しており、事実彼女は『王女』と呼ばれる立場の人間であった。

「異世界からの留学も受け付けているなんて、実際に目の当たりにすると懐が深いのか、ざっくばらんなのかわからないわね」

そんなことを言いつつ、空を見上げている。

ご案内:「常世公園」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
紫陽花 剱菊 > (常世公園地区。ふらり、公園に訪れる男が一人。くびれたコートに黒い長髪。静かな歩みのまま、ベンチに腰を下ろす女性へと近づいていく。)

「……其処な艶やかな人。失礼だが、隣良いだろうか?」

(気品あふれる女性だと思ったが、物怖じすることなく男は尋ねる。その両手には────なんかやたら長いアイスクリームがカップに入っている。ト〇コアイスめいた何かだ……。)

ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > 「あら、私のことかしら。ええ、構わないわ。どうぞ」

そういって、そっと一人分のスペースを隣に確保する。

「それは……アイスクリームというものかしら。文献でしか見たことがないから、はっきりとはわからないのだけど」

そして、首を傾げながら問いかけた。

紫陽花 剱菊 > 「左様。失礼乍ら、何処か上流の方だろうか?」

(許可を頂ければ静かに隣へと腰を下ろし、問いかけた。何となく、雰囲気でそう思った。)

「"あいす"……そう言うのか。面映ゆい話ではあるが、私は初めて見るものだった故、興味本位で買ってみただけなんだ。何故かは知らないが、気前よくもう一つ頂いた。」

(異邦人故、そう言ったものに対する知識は疎い。成る程、あいすか。両手のカップを交互に見つめ、片側を相手へと差し出す。)

「……良ければお一つ、如何かな?隣で二つ食べるのも、座りが悪い。隣の礼……と言う訳ではないが……。」

(どうかな?、と。)

ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > 「ええ。私は、この世界から見れば異世界……『グラン・ディーニス』という大陸の王国、『ラグリシア王国』の王女。ルナアイズ・ラーゲンフォルエル、と言うわ」

どうぞよろしく、と優雅に頭を下げる。

「あら、そうなのね。私も、言った通り文献でしか知らないのだけど……いただけるの?なら、ご厚意に甘えてもいいかしら?」

笑顔で首を傾げる。

紫陽花 剱菊 > 「ぐらん・でぃーにす。らぐりしあ。……成る程、そう言った世界もあるのか……。異邦人と言えば、其方もまた……いや、自発的に此処に……?」

(異邦人と言えど、自発的に別世界に出てくるような場所ではない。自分も事故で此処にいるようなものだ。かといって、彼女は同じ境遇には見えない。おずおずと聞いてみた。)

「……私は紫陽花 剱菊(あじばな こんぎく)。如くは無い、つまらない男だ。」

(自己紹介には此方も自己紹介で返した。)

「嗚呼……元々一人分買ったつもり、此れは店主のご厚意。そして、今其方の厚意を承った。然るべきだとは思うが……得も知れぬ男が持ってきたもの受け取ると言うのに抵抗があるのは、理解している。」

(淡々とした様子で頷いた。)

ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > 「ここには留学目的で来たの。近衛魔道兵団長がこの世界を見つけて、留学に適しているという話になったのよ」

本当は姉が来たがっていたのだが、落ち着きのある自分が選ばれた……という内部的な話は省略して。

「コンギク、ね。お節介だけれども、つまらないなどと己を卑下するのは良くないわ。本当につまらない貴方になってしまうもの。己の認識こそが、己を一番貶めるのよ」

言いつつも、アイスを受け取って。

「少なくとも貴方は、異性であることの抵抗感などを踏まえた上で、私に厚意でこのアイスクリームを渡してくれたわ。そこまで気の回る人なんて実は多くないもの。その気づきの良さは誇っていいものよ」

紫陽花 剱菊 > 「何と……得てして、此の島は其れほど迄に交流の深い島とな……?……ふむ……。」

(今更ながら一つの島に此れだけの施設と人が集まり、己のような異邦人、異能者が集められるような場所だ。思えば、そう言ったものがあったとしても何らおかしくはない。自らの認識の狭さ以前に、もしやとんでもない場所に飛ばれたのではないだろうか、と内心訝しんだ。)

「…………。」

(不愛想な仏頂面。眉一つ動かさず、手元のカップを見下ろしている。)

「……礼節は弁えるように教わった。其れは、両親の教育の賜物。私自身は、然したる能は無く、然るべき自己評価に落ち着いた迄の事。……不快に思われたのであれば、申し訳ない。」

(即ち、空虚な人間である。男はそれに自覚があるからこそ、卑下ではなく正当な自己評価と言う。スプーンを手に取り、アイスを掬……ビヨーン。)

「…………。」

(伸びる。白色の甘味が伸びている。スプーンに合わせて、さながら餅のように伸びている。それを軽く上下に繰り返す。余りの物珍しさに、アイスを凝視している。真顔で。)

ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > 「この島の試みは革新的であるのは間違いないわ。学ぶべきところは、きっと多くある」

文化は全然違うものの、やはり異文化……しかも発展的なものを学ぶことは収穫が多い。
そのためにわざわざ来たのである。

「違うわ、コンギク。寂しいと、そう思うの。貴方が自分を認められずにいる、そのことが」

悲しそうな表情になりつつも、ビヨーンと伸びるアイスをじーっと見る。

「……伸びるわね」

紫陽花 剱菊 > 「……まるで、貿易事のようだ。……所感ではあるが、其方は聡明な女性と見る。ルナアイズ、興味本位での質問ではあるが、其方自身は、この世界に興味があって自ら留学を?」

(個人で思うには余りに膨大で、大きな渦中が渦巻いているようだ。圧巻された。己には大きすぎる世界に飛ばされてしまったらしい。故に、彼女はこの渦中で何を学びに来たのか、それは興味があった。世界の激流に逆らう事もない、枯れた男ではあるが、それを作り出す人並み、個人個人には興味があったからだ。)

「…………。」

(成る程、それは言えている。)

「……私の心が寂しさを覚えているのであれば、其れは私自身が認める事に非ず。門一つに投げ打たれた、脆弱な己の運命だ……。」

(度々冷めた物言いをする一方で、これだけは辟易した様子で吐き捨てた。得も知れず、何も知らない世界に投げ出され、必然的に日陰者として生きるしかなかった男の恨み言だ。)

「……嗚呼……。」

(それはそれとして、さっきから凄い上下している。手持無沙汰を紛らわす子供のようにハマっている。良い子は食べ物で遊ばないようにしようね!)

ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > 「そうね、貿易のようかもしれない。そうね、聡明かはわからないけれど……私は興味があってきたわ。グラン・ディーニスのどこにもない文化は、王族として学ぶ意義があるもの」

王族として生まれた以上、国というものに関心がないはずがないと断言する。

「――ここは、確かに正規の手段で来た者以外には厳しいところがあるみたいね。そうでなくとも、手続きは正直面倒ではあったわ。でも、この世界で、どう生きるか……それを考えてみても、いいのではないかしら?」

真剣な声音で問いかける。
民草を導く王族として、そして一人の少女として、誠実に向き合おうとしているのだろう。

「――それが美味しいのかしら?」

それはそれとして、よく伸びる。おいしいのだろうか。そわそわ。

紫陽花 剱菊 > 「……確かに。此処ならば持ってこいではあるだろう……王族……今更乍ら、其の若さで人の上に立つ姿勢には感服する。其れほどの責任を、背負う覚悟……とも言うべきか。些か大げさではあるか?」

(思えば人種のみならず、其の国の重鎮までもが来るのか。内心驚愕しているものの、物怖じすることなく、偏見を持つわけもなく、男は目の前の彼女を"一個人"として接している。)

「───────……。」

(その言葉には、何も答えなかった。"答えが無かった"。生きる意味を知らず、流れるままに生きる男には、"答えれる物"ではなかった。故に、沈黙した。誤魔化しでも何でもない。"ないものは、出せない"。動くことない表情は、何一つ得てして答えない。)

(そして、それらを誤魔化すように躊躇なくアイスを口に運ぶ。……ひんやりとした舌ざわり、蕩ける甘味に濃厚なミルクの香り。あの伸びるさまからして、やや歯にくっつくような感触だが、成る程。これは……。)

「……うむ、美味い。」

ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > 「どうかしら。私は、王族としていかにあるべきか、ということを学びながら育ってきたから。国を、民を背負うということが、ただ自然体というだけよ」

国というものを背負うことを生まれながらに義務付けられ、そしてそれを己の責務として受け入れている。
そのような姿勢が伝わるだろう。

「――答えを無理には求めないわ。でも、きっと何かが、あるはずよ」

そうとだけ言い、アイスを口に運ぶ。
ひんやりとした感覚に、広がる甘味。これは……。

「美味しい……初めての感覚だわ」

紫陽花 剱菊 > 「……此れは、ただ個人の戯言に相違ない。其方が何を学び、此の先何を砌(みぎり)に成長するか、挫折するかは分からない……。然れど、国と言う群体は民草個人で成り立つものであり、其方自身も個人である事を忘れてはいけない。……挫折、とは言ったが、自ら孤高の王道行かぬなら、隣に目を向け、輩に声を掛ければ早々に折れる事はないだろう。人は成り立ち、然るに隣人同士の支え合いなれば、だ。」

(お節介、余計なお世話かもしれない。自分が思うより、相手がしっかりしているならそれでもいい。だが、近いものほど見落としづらいもの。如何に王族と言えど、将来の不安をぬぐい切れぬであろう若人の支えになれたらいい、そんなお節介だ。)

「…………。」

(其の答えがわかる時は、察している。故に、口には出さなかった。それらを喉へと押し流すように、ゆっくり、ゆったり、甘味を口へと運んでいく。)

「うむ……私の世界ではない味だ……。この島の食文化は、常々大したものだと思う……。」

ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > わずかに目を見開いて、そして頷く。

「そうね。お母様……当代ラグリシア王国女王も、同じようなことを仰っていたわ。『王道とは、民と共に生き、民と共に悩み、民と共に笑い、民と共に歩むことなのですよ』と……ええ、確かに忘れてはいけないことね」

改めてかみしめるように、その言葉を脳裏で反芻してから。

「こんなの美味しいものがあるなんて、素晴らしいわね……食文化もまた、学ぶところがありそうだわ」

紫陽花 剱菊 > 「……立派なご両親をお持ちの様だ。其の教え、努々忘れる事無かれ。なれば、然るべき王道が其方を待っている。」

(きっと彼女は立派な王族になれるだろう。ふ、と薄く笑みを浮かべた。)

「……故に、勉学を怠らぬようにな。友垣を育むのは大事だが、本業を忘れぬように。」

(と、付け加えた。物静かな男だが、本質はお節介な人好きである事が垣間見える。)

「嗚呼……私の国にもまた幾ばくか甘味はあるが、このような物は初めてだ。見ろ、ルナアイズ。」

(びょいーん。)

「よく伸びるぞ。」

(精一杯手を伸ばして、スプーンで滅茶苦茶口元まで伸ばしている。真顔で。)

ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > 「――ええ、大変ためになる教えだったわ。皮肉ではないわよ?」

くす、と微笑みつつ、ぐにょーんとアイスを伸ばす。

「本当に……よく伸びるわね……」

ぐにょんぐにょーーん。
行儀を忘れ、上へ下へとトルコアイスで遊んでしまっている。

紫陽花 剱菊 > 「得てして、人生とは苦労の連続だ。何も、悪い事ばかりではない事は知っているはず。」

(山あり、谷あり。そんなものだ、というのはご無体かもしれない。)

「うむ。…………。」

(しかし、ともすればどこまで伸びるのか。好奇心を抑えきれない男は、徐にスプーンを持ったまま……)

(ふわぁ……。)

(────跳んだ。座ったままの姿勢であれだけの跳躍ッ!!因みにアイスはそれに追従するように伸びている。恐ろしい絵面だ……。)

ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > 「そうね。生きるということは、酸いも甘いも嚙み分けるということ。人生、前向きに生きていきたいわね」

頷き、自分もアイスを捏ね捏ねしていたが……。

「え、う、浮いた……!?」

浮いた姿に流石に唖然としている!!

紫陽花 剱菊 > (すた。何事もなかったかのように着地し、伸び切ったアイスをピン、と引っ張ってカップを手元へと持ってきた。)

「……見ろ、ルナアイズ。よく伸びたぞ。」

(表情は変わらないが、凄く満足気で何だかキラキラしている。妙に無邪気な男だ。検証した後のアイスはまたより一層美味い。)

ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > 「え、ええ、伸びたけれど……それが貴方の異能なのかしら?」

流石に、常人に可能なことではあるまい。
それを使ってやることが、トルコアイスを伸ばすことなのがまた。

紫陽花 剱菊 > 「……否、一切の能力は使っていない。望まぬ事ではあったが、生きる為に致し方なく己を鍛えた結果とも言える。」

(やんわりと首を振って否定した。この程度の動作であれば、異能を使うまでもない。ゆったりとベンチまで戻って、腰を下ろした。)

「……そも、私の異能はひけらかす程に大層な物ではない。増してや、其方のような天道を歩くようなものに、血生臭い話は不要であろう。」

(そう言う事しか能のない男だと、語る。一貫してその自己評価は低空飛行どころか、地面にめり込むレベルで低い。もくもくとアイスを食している。)

ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > 「――それを努力で身に着けることが、立派でないはずがないわ。そう、己を卑下しないで」

悲しそうに、悲しそうに口にする。
本気で、貴方の卑下を憂えているようだ。

「私は天道を歩いているわけではないわ。人の歩む道はそれぞれ、その中で人はそれぞれ、使命や責任を帯びて歩んでいく。私は、それが少し特殊なだけ」

紫陽花 剱菊 > 「──────……。」

(男は微笑んだ。酷く寂しそうで、憂いを帯びた微笑み。少女の悲しみをやんわりと拒否するように、首を横に振った。)

「……己の世界の話ではあるが、私は生きる為に人を斬った。妖を斬った。其処にある命を幾万と斬った。私の能力は全て、"命を奪う"為に研ぎ澄まされた。……未来の王女よ。命を尊み、民の上に立つ君主。────其れを散らさんとする努力は然るに、"立派"と言い切れるか?」

(今でも鮮明に覚えている。時として誰かを護る為に剣を振るった。だが、何時も其れは結果的に多くの命を散らした。──"抜けば散る"。言葉通り、多くの命を散らす羽目になった。人に自慢できるようなものは、何一つない。なればこそ、この自己評価に落ち着くのは必然だった。)

「……些か、相応しくない問いだった。忘れてくれ。其方が覚える必要のない事だ。」

(男はゆっくりと、ベンチから立ち上がる。)

ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > 「ええ。言い切るわ」

毅然と、堂々と、頷いた。

「今のラグリシアは平和だけれど、お母様の頃は戦乱が多く、一定の世界平和を得るためのたくさんの血が流れたと聞いているわ。
生きるための殺める。それは、必ずしも正しくはないのかもしれない。だけど、それで手にするものもある。そうしないと手にできなかったものもある。そんなもののために、お母様達は武器を取り、必死に戦って、今の平和を手に入れた。
殺めることは必ずしも正しくはないけれど、生きるための戦い、生きるための技術を見下すなんて出来はしないわ。
そうしてしまったならば、私は、与えられた平和の意味もわからず胡坐をかく愚鈍な女になってしまうもの」

紫陽花 剱菊 > (男はまた、やんわりと首を振った。)

「違うのだ、王女。私の剣に、其処な大儀は存在せず。刃の理は、然るべき命を散らす他成らず。私の理は"其れ"だ。……犠牲の先と救いも大儀も、無いんだ……。其れしか生きる方法を、知らなんだ。」

(そうしなければ生きられない世でもあった。状況がそれを許さなかった。其れだけに過ぎない。其の様な立派な志があれば、多少なりとも救われただろうか。────其の男の空虚の理由。人斬り以外能がなく、己が身分を弁えた故の結果。剣は、収まる鞘に収まらずに、この世界に流されてしまった結果でもあった。)

「……されど、其方は立派だ。愚鈍など、其れこそ自分を卑下してくださるな。私の言った事は、其方が覚えるべき事ではない。……一時の平穏を乱した事を、深く詫びよう。すまない……。」

(それだけ言って、静かに歩き始めた。────寂れた背中を見せながら、振り返ることなく、男は立ち去っていく。)

ご案内:「常世公園」から紫陽花 剱菊さんが去りました。
ルナアイズ・ラーゲンフォルエル > 「――生きるための足掻きこそ、尊ぶべきもの。貴方のそれも、含まれるのよ」

その呟きは届くかどうか。
静かにかぶりを振り、寂れた背中に思いを馳せながらその場を後にした。

ご案内:「常世公園」からルナアイズ・ラーゲンフォルエルさんが去りました。