2020/06/17 のログ
■飛鷹与一 > 「…よし、そろそろ帰ろうかな…あ、もうあの人は帰ってるかな?」
結構いい時間だけどどうだろう?猫のツキカにもご飯をまたあげないいけない。
ともあれ、ペットボトルのお茶の残りを飲み干せば、ゆっくりと立ち上がり自販機横のゴミ箱にシュート。
軽く伸びをしつつ、さて帰ろうかぁ、と呟いて公園をゆっくりと歩き去ろう。
ご案内:「常世公園」から飛鷹与一さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にアイノさんが現れました。
■アイノ > 「………治療っつってもな。」
金色のツインテールを垂らした少女が一人、つまらなさそうに足を揺らして公園のベンチ。
もうすっかり暑い、とは言え、それでも目立つ白い素肌を惜しげもなく晒した赤いチューブトップにジーンズのショートパンツ。露骨にその素肌を晒しながら、アイスを一口齧りながら。
沈鬱な顔でぼそりとつぶやく。
■アイノ > 彼女は北欧からの転入生。
バス事故をその能力で止めたことを皮切りに、地元では良いも悪いも含めての、ちょっとした有名人。
バス事故を起こした原因ではないか、などと言い立てられ、追いかけられ、私生活まで撮影され。
すっかり人間不信を極め、災厄の悪魔を名乗って他人を嫌い、他人を傷つけ、他人を遠ざけて。
最終的に、この島で一人ぽつんと家族と離されて。
「………今更、治療のために戻ってこいとか、しらねーし。」
ちぇ、っと舌打ち。島での騒動が耳に入ったのか、そういった提案がいくつか彼女の元へ届く。
見ないようにはしていたけど、やっぱり少し、心にトゲが刺さったような気分。
■アイノ > 「私はもう帰らないって決めてんだから。」
振り切るように吐き出す言葉。でも、その言葉はちょっと弱い。
意図せずして親元を離れた少女にとっては、耳にこびりつく誘いだ。
家に戻りたい。
戻りたくない。
戻りたい。戻りたくない。
カメラのフラッシュが、マイクが脳裏にチラついて。
少し吐き気がして、立ち上がりかけてよろめいた。
「畜生。」
唸る。唇をぎゅっと噛みしめる少女。
ご案内:「常世公園」に日ノ岡 あかねさんが現れました。
■日ノ岡 あかね > 「なら、帰らなくていいんじゃない?」
音もなく、その女は現れた。
常世学園の指定制服に身を包んだ、ウェーブがかったセミロングの女。
黒いチョーカーに黒い瞳。
微かに傾き始めた西日をその背に受けて、女は静かに笑う。
「帰りたくない場所に無理に帰る必要はないわ……そうでしょ?」
くすくすと、楽しそうに女は笑った。
■アイノ > 野良猫。
そんなイメージを抱くだろうか。
声をかけた瞬間にベンチを叩くような音と共に身体を反転させ、現れた姿から距離を取った上で姿勢を低くする少女風貌。金のツインテールを地面に寝そべらせるくらいに。
「聞いてたのかよ。」
笑い声を聴きながら、その場ですぐに敵意をくみ取れないなら、姿勢を元に戻す。
「美少女の独り言を盗み聞きはマナー違反じゃない? センパイ。」
相手の言葉に対してまっすぐには返さず、ふん、と鼻を鳴らしてやる自称美少女。
先ほどの消え入りそうな声を出していた姿ではなく、学園でも成績優秀、何でもできる、を自称する自信満々、傲慢不遜なその姿。
■日ノ岡 あかね > 「あら、そうかしら? 本当に聞かれたくないことは、口にしないものでしょう?」
ニコニコと笑いながら、当然のように女はベンチに腰掛ける。
金髪の少女が放つ、若干剣呑な空気も全く読まない。
女はじっと、金髪の少女の顔をみながら……薄く微笑んだ。
「私はあかね。日ノ岡あかね。アナタは?」
■アイノ > 「………気が抜けてたんだよ。」
あー、もう、と頭を掻く。 ニコニコと笑うその女、不意に声をかけられたからびっくりしたが、まあ、それに気が付かないほど私が弱っていたのかもしれない。
そう考えれば、これ以上鋭い視線を向けるのも失礼で。
ちょこん、と隣に座りなおす少女。
華奢な足は、ベンチに座っていても踵まで足につかない。
「まあ、美少女の顔は見たくなるもんだからいいけどさ。
アイノ。……アイノ・ヴィ―マ。1年。
日ノ岡センパイ、でいいのかな。」
こちらはチラ、と相手の顔を見て、視線を逸らす。
ニコニコと笑顔でずっと見つめられるのは、割と慣れない。
■日ノ岡 あかね > 「ええ、もちろん。気安くあかね、でもいいわよ? よろしくね、アイノちゃん」
嬉しそうに、あかねはアイノと目を合わせて笑う。
アイノから視線を逸らされても、あかねねは視線を逸らさない。
微かな西風に拭かれて、水辺の葦が緩やかに揺れた。
時間帯のせいもあってか、公園にはあまり人気がない。
「何か嫌な事でもあったの? 私で良かったら、話を聞かせてもらってもいいかしら?」
柔らかな口調で、そうあかねは呟いた。
■アイノ > 「……あかねセンパイ。」
目を合わせて笑顔を向けられれば、柄にもなく焦って、頬を少し赤くする。
素肌のほとんどを露出する小悪魔的な格好をしている割に、視線がまっすぐに、それでいて穏やかに向けられるのは慣れていない。
「………この島ならよくある話。
能力のせいで故郷を追われてここに来た人は、多いでしょ。」
柔らかいその言葉に、別に何にもない、という言葉は逆に失礼に感じられて。
なんだかんだ、見た目よりは常識のある彼女。心配してくれているらしい先輩への態度に、少しだけ言葉が零れ落ち。
「私もそのクチなんだけど。」
簡単に説明をする。その瞬間だけ、やっぱり少女は悲しそうな顔を僅かに見せて。
正しいことをしたつもりなのに悪魔だと罵られ、追い出された記憶が皮膚の下で虫が這いずるかのように、嫌な記憶となってこびりつく。
「………今更、異能を治療する話がニュースになったからって、治療してから戻ってきたらどうかって手紙がさ、来るから。」
フン、と強がるように鼻を鳴らし、足を揺らす。
■日ノ岡 あかね > ゆっくりと、黙ってあかねは話を聞く。
目を見たまま、相槌代わりに小さく何度も頷いて……最後まで話を聞く。
そうして、アイノの話が一区切りついたところで、小さく吐息を漏らすように。
「そう」
一言だけ呟いて。
「辛かったわね」
一切の躊躇う事もなく、右手を伸ばし。
そっと、静かに頭を撫でた。
西日はいつしか強かな夕日となって、二人の少女を紅く照らす。
茜色の真っ赤な夕日に横顔を照らされながら……あかねは静かに笑った。
「アイノちゃんは……帰りたい気持ちも少しあるの?」
目を見ながら、あかねは尋ねる。
アイノの顔から、あかねは目を逸らさない。
■アイノ > 「………別に。」
頭を撫でられれば、ピクリと身体が震えて視線を横に逸らす。
辛くないわけもない。地獄を何度も見たと思った。
全員を殺してやるとまで思った。
だから、逆にその撫でる手が辛くて。色々決壊しそうになるのを、ぎゅ、っと歯を食いしばって。
そんな心情は、身体の硬さからきっと伝わってしまう。
「………。」
相手の問いに、しばらくは押し黙る。
「あるよ。」
そう呟いた。思ったより自然に声が出て、逆に自分が驚きながらも、言葉をそのままの流れで続ける。
「でも、今じゃない。………治療が終わったってこっちがどれだけ言っても、何かが起これば私のせいになるんだ。
災厄の悪魔を名乗ってんだ。 一人で十分っしょ。」
ケケケ、と悪そうに笑ってやる少女。
■日ノ岡 あかね > 「本当は帰りたいのね」
あかねは、アイノから目を逸らさない。
じっとアイノを見ている。
その表情の変化から目を逸らさず、体を強張らせるアイノから手も離さない。
ゆっくりと、頭を撫で続け。
「だけど……帰ってまた、傷つくのが怖いのね」
ゆっくりと、言葉も紡ぎ続ける。
夕日に染め上げられ、血のように真っ赤に染まった世界。
そこで不敵に笑うアイノをみて、あかねはただ緩やかに笑った。
「無理もないわ。帰ればきっと……アナタの想像通りになるでしょうから」
人は、力あるものを畏れる。
力そのものには……姿がない。
異能となれば、なおの事。
姿の見えない力。
それがどれだけ恐ろしいことか……想像すれば、簡単にわかる事。
ならば、人がそれを畏れ、遠ざけることは……無理もない。
例え……狼が牙を抜き、爪を削ぎ、口輪を嵌めて、首輪に札を垂らしたところで。
狼は……羊と同じ檻には、いられない。
「アナタは自分だけでなく……アナタに関わる人たちも、これ以上傷つけたくない……違うかしら?」
あかねは小さく、首を傾げた。
■アイノ > 「………さぁてね。
撫でればすぐ怪我するようなのがわいわいとうるさいのが嫌いなんだよ。
手加減苦手だしね、私は。」
相手の言葉はすべて当たる。まるで自分を昔から知っていたかのよう。
そんな相手に飲まれないよう、少女は何度も虚勢を張って、自分を強く、大きく見せようと。
大人のことをよく知っていて、悪知恵が回る、小賢しい悪い少女を演じようとして。
"想像通りになる"という言葉に、表情が曇り、言葉が詰まる。
「………私はいいんだよ。どうせどこまで行っても悪魔だ。
触っても死なない連中と付き合ってくしかねーだろ。」
相手の言葉に対して、私"は"という言葉で返し、半ば認める。
ちぇ、っと舌打ちをしながら、視線を地面に向けた。
なんでこう見透かされるのか。 ちょっとばかり悔しくて、ちょっとばかり恥ずかしくて。
ちょっとだけうれしくもある。
■日ノ岡 あかね > 「此処も同じよ」
あかねは、薄く笑った。
日の光が強くなる。
真っ赤な夕日は不気味な程に鮮やかで……ただただ、世界を染め上げる。
血染めの赤に包まれて、あかねは……ただただ、静かに笑った。
「外と何も変わりなんてない。傷つく人と傷つける人。どちらも此処には混ざっている。慣れてる人が少し多いだけ。この島にだって……死と傷は、等しく溢れて血を流しているわ」
異能者と無能者。
地球人と異邦人。
最早、魔術は学び紐解くモノとなり、神秘は侵され踏み躙られた。
「此処は……聖域なんかじゃないわ」
嬉しそうに……あかねは笑う。
恋する乙女のように、微かに頬を朱に染めながら。
「大丈夫よ、アイノちゃん。此処で何とかなったなら、外でも何とかきっとできるわ。あとはアイノちゃんが決めるだけ」
そっと、アイノの頭を撫で続ける。
「怖いなら泣いていいの。不安なら叫んでいいの。それはそれこそ……外でも此処でも、同じことよ?」
アイノの悪態を気にすることもなく。
アイノの虚勢を慮ることもなく。
ただただ……日ノ岡あかねは。
「だってアナタは、女の子なんだから」
穏やかに……笑った。
■アイノ > 「……知ってるよ。」
頭を優しくなでられながら。それを拒絶せず。
赤い光に照らされながら、穏やかに笑っている目の前の先輩へ身体を寄せそうになって、思いとどまる。
嬉しい、恥ずかしい、あったかい、怖い。
そんな僅かな感情の揺らぎを押し隠しながら、フン、と鼻を鳴らす少女。
「そんなに崇高な場所じゃないってことくらい。
………それでも。
いいんだ。
怖いんなら怖い原因を。 不安なら不安な原因を。
誰よりも早く、強く、打ちのめしてやるだけだし。
この島であっても、傷ができる前に止めればいいんだ。」
虚勢を張り続ける。いや、これはもう虚勢ではなくて、彼女の本音なのかもしれない。
悪魔と名乗る少女は、夕日とは対照的な、青い、青臭い言葉を口にして。
「だって私は、天才なんだもの。」
フン、っと、穏やかに笑う相手に笑って見せた。
偉そうに笑ってから、あは、と今度は砕けて笑う。優しく頭を撫でて、話を聞いてくれる先輩に甘えるように。
■日ノ岡 あかね > 「あはははは!」
アイノの言葉に、嬉しそうにあかねも笑う。
いつしか、日は沈み始め……真っ赤な光も徐々になりを潜めた。
街頭が赤光に逆らうように白光を吐き出し、公園を照らす。
じきに、夜が来る。
「アイノちゃんは……聡明な子ね。おせっかいをし過ぎてごめんなさい。アナタはもう……ちゃんと『選んでいる』のね」
そっと、惜しむように手を離す。
選んだ上で苦しい事もある。
選んだ上で痛む事もある。
だが、既に『選んでいる』のなら……迷う事はない。
「アイノちゃんみたいな子……私は好きよ」
そう微笑んで、あかねは立ち上がる。
緩やかに沈む夕日に向かって、歩き出す。
軽く、後ろに手を組んで。
「今日はここまで。また会いましょう、アイノちゃん」
ただただ、柔らかく微笑んで。
ただただ、穏やかに微笑んで。
「お互い……ちゃあんと、帰らなきゃいけないからね?」
日ノ岡あかねは……夕日の向こうへ、消えていった。
ご案内:「常世公園」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
■アイノ > 「天才って言っただろ。」
にひ、と笑う。どこまでが虚勢で、どこまでが本当か自分で揉もうよくわからないくらいに。
「………先輩、何言ってんのさ。」
好きよ、なんて言われれば、目をひっきりなしに彷徨わせて、うろつかせて。
ストレートに見つめられて、ストレートに頭を撫でられて、褒められて。
照れくさくて、なんかくすぐったくて。
むずむずする。
「…ん、あかねセンパイ、も気を付けて。
私は、大丈夫だからさ。」
去っていくその姿を見送りながら。
相手のことを名前しか聞けていないことに気が付くも、それはそれ。
ここまで、という言葉を信じるしかない。
「………がんばろ。」
ぽそり、呟く。
人に話したことで、少しだけ靄が晴れたような気がした。
ご案内:「常世公園」からアイノさんが去りました。
ご案内:「常世公園」にアージェント・ルーフさんが現れました。
■アージェント・ルーフ > ―人だかり、マジシャンを趣味の一環で行っている者からしたら見慣れた光景である。そんな集団の目線の先、満員御礼の象徴でもある影の中、カードを操るボクが一人。
「こちらのカードに注目!指を鳴らすと…」
手慣れた動作で指を鳴らしながら、もう片手で既に目の前の集団が選んだはずであるカードを隠し持つ。見えているはずだが、机の上に用意されたダミーのカードに視線を奪われ見えない。所謂ミスディレクションと言う奴だ。
■アージェント・ルーフ > 刹那、観客の視線の丁度裏側、陰の部分にて隠し持っていたカードを机の上のカードを入れ替え、あたかも最初から其処に存在していたかの様に選ばれたカードが鎮座する。
「こちらのカード…見覚えありませんかぁ?」
観客の感情を煽り、沸かせる。この瞬間の気持ちよさと言ったら堪らない事この上ない!どうやらマジックは成功した様子。拍手の波が公園の一角を包み込む。ボクのこの手で積み上げたほんの数分の劇が評価される瞬間であり、無意識に頬が緩み、薄桜色に染まる。
「有難うございました~」
ここまで自分のちょっとした趣味に五感を傾け、時間等を譲ってくれた人々への感謝をする。と同時に、より一層大きい拍手がボクを包み込む。