2020/06/30 のログ
日ノ岡 あかね > 「私は私よ」

目が、細まる。
陽の元。蒼穹の下。
日の光をその身に浴びて、穏やかな微風をその身に受けて。
あの時のような宵闇の中ではない。
日の光の中。真昼の星のその真下。
煤を払拭した黒艶の瞳を見てなお。
あかねの瞳は……変わらない。
ただただ深い……夜の黒。

「私はあかね……日ノ岡あかね」

あの日と何も……変わらない。

「昔から私はずっと同じ、私はずっとこう。だからそこは安心してね」

最後のサンドイッチを食べ終える。
瑞々しい野菜を咀嚼し、塩気のある加工肉を噛み千切り。
ゆっくりと、嚥下する。
 
「変わったことがあるとすれば……友達の数くらいかしら? あの日に大勢『死んじゃった』し」

あの日。
トゥルーサイトが壊滅した日。
何もかもが終わった日。
数十人からなるトゥルーサイト構成員は全員死んだ。
……たった一人、『日ノ岡あかね』だけを残して。

「私がやろうとしてることはずっと同じ。昔から変わらない。何も変わらない。何も変わってない。私がやろうとしている事はたった一つ」

最後の生き残り。
たった一人の残党。
日ノ岡あかねは……目を細めて。

「真実に挑む。真理に踏み込む。それだけ」

その結果として。
トゥルーサイトは壊滅した。
余十人の死者をだし、最後の一人も幽閉された。
そして……一年の時を経て。
最後の一人は解き放たれた。
呪いの首輪と引き換えに。

「ねぇ、コンギクさん。アナタ公安よね……なら、手伝ってくれる? 私のやること。私のしたいこと。私の成し遂げたいこと。アナタの刃……私のために振るってくれる?」

宵闇の魔性と剱菊が称したその瞳。その笑顔。
それは何も変わらない。
コーヒーを一緒に飲んだあの日から。
風紀委員になってから再会したあの日から。
あかねは何も変わらない。
何一つだって変わらない。
ずっとずっと――変わらない。
あの日と同じ、ずっと同じ瞳で。

「私を信じて……傍にいてくれる?」

日ノ岡あかねは……そっと、身を寄せた。

「『日ノ岡あかねの居場所』に……来てくれる?」

紫陽花 剱菊 > 「──────……。」

ほんの一回り、自身よりも年下の年相応の少女。
天道、日照りの暖かさを一身に浴びて輝く姿は可憐也。
然れど、其の輝きは夜空の瞬き。
日の光を埋め尽くし、自ら輝き妖光の月明り。
明かり無き夜に無作法で踏み込めば、迷い子となって明かりを求める。
即ち、其れは灯に集まる遊蛾なれば、一歩誤れば燃え尽きる。

「……日ノ岡 あかね。ならば、其方は……。」

「────ずっと、宵闇に居たとでも?」

何も変わらない。
少女は何も、変わっていないと説く。
成らば、其の夜の黒も、昔の儘と。
夜を踏み込んだ黒が帯びた憂いの眼差しは、一重に彼女の身を案じたが故に。
友と語るが、其の実、『宵闇の孤独に一人』ではないか、と。

「…………。」

少女の体が、寄せられた。
これ程までに可憐な年ごろの姿に
まるで花魁の艶姿。────如何にして、何人が誑かされたか。
そうされてもしょうがないほどに、彼女の魅力は凄まじい。
……いっそ、此の夜に迷子になってしまうか。
男はゆっくりと手を上げて、首元へと振れようとした。
冷たい、鉄のような体温をした手だ。

「……釣瓶の如く、奈落へ落ちる、か……。」

「私は民草を護る刃だ。元より、其方も其の一人成れば、断るつもりは無い。」

「其方の行く末を見定め、此の剣を好きに振るうが良い。」

「『日ノ岡 あかねが居場所』に、馳せ参じよう。」

「──────が。」

……首元に触れる事を許していたのなら、その冷たさ
一瞬だけ、"刃を突きつけられた冷酷さ"を感じるかもしれない。

「……進む先は、六道か。如何なる地の獄、根の国へと先駆けよう。しかし、しかしだ。」

「────行きつく先が、其方が求め、欲し、成し遂げようとする事が太平の世を乱す兆しと成れば……。」

黒の瞳孔が、獣のように細くなる。
宵闇を睨み上げ、獲物を見定める狩人の目。

「今生の別れ。首と胴は泣き別れだ。」

何時もの穏やかな声音とは違い、冷ややかな声音だった。
自ら飛び込んだ暗闇でも、"刃"は"刃"のままである。
迷うことなく、愚直な迄の一本の刃。
其の役割を重々承知で在るというならば……。

「……其の覚悟が有れば、懐に携えるが良い。」

日ノ岡 あかね > 「……」

一本の刀。透徹とした、鉄の芸術。
人を殺すことだけに特化した……一振りの刃。
夜を切り裂くような刃だった。
吸いつく血すら振り払うような刃だった。
あかねの首筋に感じられたのは……鉄の感触。
冷たい、冷たい……心地よい、刃の感触。
死の一触れ。
刃の言葉を飲み込んで。
刀の言葉を受け入れて。
日ノ岡あかねは……暫し、じっと、その瞳を見返して。

「あははははははははははは!!」

笑った。
咲き誇る華のように。
真っ赤に燃える夕日のように。
満面の笑みで。
嬉しそうに。

「それ、世間だと『振った』っていうのよ?」

……笑った。
どこか、可笑しそうに。

「あーあ、結局、コンギクさんも男の子ねぇ……『何があっても最後まで一緒』とはいってくれないんだから」

立ち上がる。
後ろ手を組んで、気軽そうに。
髪と、スカートが揺れる。
あかねは片手でまた横髪を抑えながら……背を向けたまま。

「また振られちゃった」

可笑しそうに、呟いた。
とても、明るい声色で。
そのまま、背を向けたまま。

「ありがとね、コンギクさん。私も守ってくれるのはとっても嬉しいんだけど」

日ノ岡あかねは。
いつもと全く同じ調子で。
いつもと全く同じ声色で。

「女の子って、『その他大勢の一人』じゃ満足できないものよ」

そう、呟いた。

「またね、コンギクさん。太平の世って私よくわかんないけど……私は相変わらず、私をするから……また、遊んでね?」

そのまま、立ち去っていく。
いつかのように音もなく。
いつかのように振り返りもせず。
野良猫のように、去っていく。
真昼の日の下、ただ一人。
宵闇の中にいても、陽光の中にいても。

日ノ岡あかねは、そのままだった。
 

ご案内:「常世公園」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
紫陽花 剱菊 > 「…………。」

「……済まなんだ。」

男は真面目だった。
故に、今一つ、変な所で人の心の機敏に疎かった。
……思えば其れは、孤独を埋める為の言葉だったのか?
『日ノ岡 あかねの居場所』それは、やはり一人だったのか?
少女は────……。

「……あかね。」

立ち去る背中を追いはしなかった。
少女は最後まで、己らしく振舞っていた。
可憐な笑顔で妖艶に、陽光の中でただ一人の月下として。

「……夜長の立夏、か……。」

何とも矛盾した言葉だった。
夜明け早きこの季節に、ただ、ただ
『日ノ岡 あかね』は夜にいる。
そこにいるのは……。

「…………。」

「……其れでも私は、其方が民草で在れば、何時でも馳せ参じる。」

つくづく、不器用な男だった。
誰もいない、もう届くはずのない言葉を夏の涼風に乗せて呟いた。

「…………もし。」

「もし、其方の『夜』が一人なら、其の時は…………。」

いつかまた、手を差し伸べよう。
其の時は、個か、多か──────。
いや、良そう。自らの邪念となれば、首を振り、払った。
男は静かに、立ち上がる。
名残惜しそうに、去っていく夜を一瞥し
天道の下へと、歩いて行った。

ご案内:「常世公園」から紫陽花 剱菊さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にケンプキン・G・ノノノフさんが現れました。
ケンプキン・G・ノノノフ > いくらノノノフが天才であるとはいえ。
新陳代謝を必要としないゴーレムの身の上であるとはいえ。
湿度溢れる気候で屋外に1週間近くいれば服も汚れて浮浪者の装いに近い。

「…私は天才であるがゆえにこの世界の事はおおむね理解した。」

①この世界が平和である事。②元居た王都より技術も魔術も大幅に進んでいる場所である事。
以上だ。

流石の天才である。

ケンプキン・G・ノノノフ > 「さて、それでは本日は拠点を作っていきたいと思う。」

やはり天才といえども…いや天才であるからこそ拠点となる場所は必要…
今回はこの広大な空き地を利用することにしよう。

「…クリエイト・ゴーレム」

自らの髪の毛を一本ちぎり砂場に埋め込めば背丈1.5メートルほどの砂のゴーレムが出来上がり…。

「掘れ!ゴーレム!」

公園の地面を掘り返し始める。
それと共に周囲からざわつくような声があがる。『なんだあれ…』『風紀委員に連絡したほうが良いんじゃない?』
天才の偉業は一般人には理解は難しいのかもしれない。

ケンプキン・G・ノノノフ > そうしていると腕章をつけた生徒が公園に走りこんできた。

『ちょっとちょっと、君何してるの?駄目だよ公園掘り返したりしたら。』

「…?私に話しかけたのか?凡人が??」

まさか凡人に話しかけられるとは…天才と凡人の溝は川よりも深く丘よりも高い。
それなのに…

『そうだよ、君異邦人の人?もしかして登録してない??』

「イホウジン…トウロク…??止めろ!天才である私にも分からない言語で話すな!
 大方この地方の方言なのだろう!!!」

風紀委員は困ったような表情をしている。
真に困っているのは天才であるこのノノノフであるというのに…

ケンプキン・G・ノノノフ > 『えっと、落ち着いて聞いてほしいんだけど…君は門に飛ばされてもといたところとは違う世界に来てしまったんだ。
 何か覚えてない?…いや、もしかしたら寝てるときに飛ばされたのかな。』

「えっ待て!待て!!待て!!天才脳みそが付いて行っていない…
 つまり、あれか?私は寝てる間に門っていうのに飛ばされてもといたところとは違う世界に来てしまったということか?
 そういうことなのか??」

まあ、まて落ち着くのだノノノフ…貴様は天才だろう??
いくらでも落ち着きようはある。こう手のひらに鎮静のルーンを書くとか…。
よし…落ち着いてきた。

「なるほど、理解した。不躾ではあるが天才である私の力を欲したこの世界の何者かが
 その門という術式を用いて私をここに呼び出した。そして…その呼び出したものの願いを『いや…』

『いや、その…門っていうのは術式っていうより現象だから。あの…言いにくいんだけど…帰れた例はほとんどないよ。』

ご案内:「常世公園」に因幡幸子さんが現れました。
因幡幸子 > 学校帰りに公園に寄って、園内のアイスクリーム屋さんにでも行こうかな~って思ったんです。
そうしたらなんかいや~な感じがして、「あ、これは何かあるなあ~って」
いやだなあ、こわいなあ。なんて思いながら、好奇心に勝てずに其方の方に向かうと
ゾンビ系に見える人が穴を掘っていたんです。うわあ恐ろしいなあ、自主的埋葬って奴でしょうか!

「あーあれが最近の終活って奴ですか!でも公園は墓地じゃないですし……あ、やっぱり」

公園は公の園なので、勝手に穴を掘ったら大体怒られます。
すわ何事か!と風紀委員がやってきて、やいのやいのと一騒動!
ただ、会話を聞くだにゾンビもかくやの有様の彼、どうにもゾンビでは無いようで

「まあまあまあまあ、風紀委員さんはお仕事お疲れ様で!」
「最近何かとお忙しそうで大変そうですね。餅は餅屋で風紀案件は風紀委員ですからね!」
「ですからね、彼。異邦人っぽいですし同じ異邦人の私に一つご説明とかお任せ願えないかと!」

異邦人なようでして、それなら餅は餅屋と言葉に出して、二人の間に首と耳をにゅいと突っ込み言葉を挟む。
喰らえ純度200%の愛想笑いッッ!!ぴかー!!!

ケンプキン・G・ノノノフ > 「そんな…帰れない?私が??」

明らかにショックを受けている。
この様子だけみれば彼が天才ノノノフであるとはだれも思わないだろう。

『え、えーとそうだね。私は異邦人の人の手続きとか全然詳しくないから君にお願いしようかな…。
 何かあったら力になるからね。私はこの近くの詰め所でいるから。』

風紀委員は渡りに船といった感じでその場を離れていく。

「そんな…私を頼りにしていた凡人共はどうなってしまう…。
 私がいなければ耕作機械すらまともに直せないんだぞ…。
 作りかけの試作機達もあったのに…。」

残されたのは地面に手をついてぶつぶつとつぶやく男。

「あんまりだ!!運命は天才であるこの私に対してあまりにも過酷すぎる!!!」

因幡幸子 > 土気色の肌とボロッボロの衣服。これで腐ったような匂いでもすれば完全無欠のアンデッド。
常世公園は恐怖のホーラームービー世界に御招待!ってなもんですが、生憎と生物的な匂いがしません、彼。
はてと見上げると、土気色の肌身は色合いこそ色々アレですがゾンビに付きものの傷的なものがない。
けれどもそのお顔は「ゾンビに噛まれたお前は間も無く奴らの仲間入りだ…」と宣告されたかのように慄いていたのです。

「あー……そうなんですよねえ。門、基本的に一方通行なんですよ」
「ごくごくまれに、行ったり来たりする人も居るそうなんですけどね!あ、ちなみに私も一方通行です!」

駆け付けた風紀委員さんの方は、と言うと余り問題ごとには慣れておられない様子でした。
事務方だったのか、はたまた言葉通りに担当が違うのかは兎の知る所ではなく、笑顔で手を振ってお見送りするばかりです。

「あー、と。その感じだと技術者系の方なんですか?まあまあ落ち着いて、はい深呼吸深呼吸」
「慌てる乞食は貰いが少なるなるもので──ああ今の貴方の恰好の事じゃなくて!」
「というか、なんでそんなボロボロな恰好なんです?爆発事故でも起こしてカッ飛んできました?」

ぶつぶつと呟く彼に対しがやがやと言葉を投げて肩を叩く。まあまあ立ち話もなんですし、そこのベンチにでもと促したい所ですが

「とりあえず、穴埋めません?このままだと誰か落っこちるかもしれませんしね!」

先ずはヘイ!埋葬されるのは今後の懸念だぜ!みたいなノリで後顧の憂いをシャットダウン!したいかな!

ケンプキン・G・ノノノフ > 「スーハー、スーハーふう…。いかにも私は天才ゴーレム技術者にして王都専属技師ケンプキン・G・ノノノフである。
 私の世界で私以上に技術者という言葉がふさわしいものはいなかった…。」

あまりにも尊大な物言い自らを天才と信じて疑わないからこそできるトークだ。

「この服装はな…荒野を歩いているうちにボロボロになった寝間着だ。
 多くの魔物に襲われながらこの町にたどり着いたのだ…。」

促されるままにベンチに座るただし胡坐をかいている。

「そうか…もしやここは空き地ではないのだな…空き地であるならば地下に私の新たな居住を建設しようとしておったのだが…」

さっきから、主人と同じように胡坐をかいて座っているゴーレムに向けて指を鳴らすとゴーレムは早速自分が掘った穴を埋め始めた。
外国の刑務所でこんなことさせられてる…。

「礼を言うぞウサギ凡人…貴様もこの異国の地で一人大変だろうに…。」

因幡幸子 > 言葉遣いからして結構偉い立場の人っぽいなあ。なんて思っていると王都専属なんて言葉が出て来てoh!と言葉が落っこちる。

「ははあゴーレム。私の世界では馴染みが無かった……というかお話の世界の存在でしたけど、成程そういった所から」

そうなると危うく音階を間違えそうになる難解な御名前ですとか、憂いを帯びた様子は何処となく雅やかに見えなくもない。
衣服がボロボロじゃなければですけれど。

「荒野からソロで踏破とか無理してますね!?うわー大変でしたでしょうに、それはさぞや御苦労を……」

ベンチに奇妙な座り方をする彼の隣に、挙措正しく座り、挙措正しく困惑顔を向ける私が居ました。
耳とか若干萎れている感じで、次のケンプキンさんの言葉でもっと萎れます。ぐにゃあ

「ともあれ、そう!此処空き地じゃあないんですよ!勝手に穴を掘ったら怒られますし、勝手に住んだら怒られます!」
「ここは常世島にある常世公園。島の外は出た事無いのでなんともはや、ですけれど」
「私や貴方の世界とは違う世界。なのは間違いない所でして。色々すると怒られたりします!」

先日も何だがアカデミックな所で異邦人が暴れて備品を壊したとか。なんかそういう肩身が狭くなるニュースがありました。
ケンプキンさんが此処の地下に秘密基地を作ったら間違いなくニュースになってしまう所で、
そうなると異邦人全体の肩身は多分にちょっと、キュッと狭くなろうと思われて、私の言葉も若干真面目です。

「いえいえ礼だなんて。同じ異邦人仲間じゃないですかあ~ってウサギ凡人って何!?」
「あ、名乗って無かったですね。改めまして初めまして!私は因幡幸子って言います」
「ええ、大変なんですよ。だからケンプキンさん。貴方も大変なんです。だから少しでもお手伝い出来ればな~みたいな!」

理路整然と動くゴーレムの作業風景は何処となく長閑で微笑ましい。
周囲の人達も、最初のようなざわめきぶりは無くなっていて、まるで日常の一部のような感じの作業風景が面前にありました。

ケンプキン・G・ノノノフ > 「何!?ゴーレムが存在しないのか…私としてはそのような世界の方が信じられん。」

ゴーレムが存在しないとなると建築技術はそこまで進んでいなかったのだろう…
ノノノフの世界ではゴーレムがない建築など考えられない。
どんな田舎であっても建築用のゴーレムの一体ぐらいは存在していた。

「まあ、私は天才であるからな。それにゴーレムの助けもあった。」

作業するゴーレムを眺めながらつぶやく。
この世界に来るときに一緒にきたゴーレムとは残念ながら別れてしまったが…
…きっとまた会えるだろう。

「ふむ、ところ変われば法もまた変わる…この世界の法も学んでいかねばな…。
 すると…住居はどうするべきか…荒野は誰かの所有物だったりするのだろうか…。」

この場所の地下に住居を作れないとするとやはり…荒野。
荒野に家を建てるしかないかもしれないかなり危険にはなるが…。

「何?駄目かウサギ凡人確かに世話になったものを凡人と呼ぶのは天才と言えども礼を損なっている… 
 因幡幸子はなるほど…よろしくなあ因幡幸子!!
 そうか手伝ってくれるのか!ありがたい!それでは早速なのだがこの世界の法に関して知ることができる場所を教えてほしい!!」

因幡幸子 > 「そうなんですよ私の世界はゴーレムが居なかったんです」

だって私の世界はこの世界とそこまで変わらない。
異能も魔法も存在しないくらいで、月面に都市があったくらい。
だからケンプキンさんの懊悩ですとか、そういったものの本質に理解は及ばない。かもしれない。

「とはいえ、うーん便利でいいですねえゴーレム!私も代わりにアルバイトしてくれるゴーレムとか欲しいくらいですね!」

穴を掘って埋めるお仕事は時給に換算すると幾らになるんでしょう。
荒れ地の開墾には役立ちそうですね。なんて土木作業系のアルバイトが脳裏に浮かぶ。女子力の欠片も無い光景に渋面となった。
言葉で褒めて顔がしかめっ面しているので何だか忙しい感じになりまして
──ふと横を見るとケンプキンさんがもっと難しい顔をしていたので顔色を戻します。
二人揃って面白くない顔してちゃ絵になりませんからね!!

「住居はですね~。それではご説明しましょう!!」

住む場所、そしてこの島のルール!どうすればいいのかを僭越ながら因幡幸子が仕る!
得意満面度200%のドヤ顔をケンプキンさんにびかーっ!!と向けてウィンクとかもオマケします!

「一先ずですね。この島、常世学園という学校、学び舎が主になっておりまして」
「割と彼方此方の世界から異邦人、私やケンプキンさんのような違う所からの誰か。がやって参ります」
「こっちの世界では"門"と呼んでいるそうなので便宜上私もそう呼びますね」
「門が良く出現するのがこの島の荒野な所。あまりに出現するので転移荒野なんて名前がつく始末で」
「えーと常世学園はそーゆー事態を上手く収めようとする。目的もあるんですね」
「ですから、出来れば登録とかして、この世界を事を知って頂きたい。そういう感じだったんですね。さっきの人」
「ちなみに住む場所でしたら異邦人街という区画がございまして。そこに色々な世界の方がいらっしゃいますし」
「常世学園の生徒になって色々学び、知ってみよう!という感じでしたら生徒用の寮などもありますね!」
「学費などは概ね免除されたりもするんですが、生活などは自活しないとダメでして」
「ケンプキンさんでしたら……そうですね。農業系とかに参加されると皆さん喜ぶのでは!」

島の事、学園の事、風紀委員の事、ざら~っと適当に御説明をし

「他にも何か……あ、そうそう。荒野は誰のものか!というと、強いて言うなら学園の物かもしれませんね」
「勝手に住むと……どうなんだろう、ちょっと判んないですけど、そもそも怪物とかいますし不向きかな~と思います」

荒野に一言おっつけて、こんな感じでしょうか!と耳を揺らすのです!

ケンプキン・G・ノノノフ > 「因幡幸子の望みならその…アルバイトをする?ゴーレムを作ることもやぶさかではないぞ!
 最も工房がない今はそこまで複雑な行動をするゴーレムを作るのは天才と言えども不可能だがな!
 私が工房を持つ時を楽しみに待っているといい!」

あっけらかんと言ってのける。
人間ができる仕事であればそのほぼすべてを肩代わりできる理想の労働力それがゴーレム。

「なるほど…天才だから一回で理解できた天才でなければ理解できなかっただろうな…。
 つまり、この島で住居を得るにしても金銭を得るにしてこの世界を知るにしても島民として登録することはかなり有利!
 そして農業機械に関していえばこの私に比肩するものはおらんからなあ!きっと凡人の大きな助けとなるだろう。」

「面白くなってきたなあ!!それでは私は早速生活委員とやらのところに言って島民としての登録をすませてくるとしよう!!
 行くぞ!!サンドゴーレム!」

公園を埋め終えてやることもなく座っていたゴーレムの方の上に飛び乗る。これはいわゆる肩車の姿勢である。

「それではまた会おう因幡幸子!!その時は私からの多大なる礼を覚悟しておくのだなあ!!はーはっははっははは!!はーっははははははははは!!」

遠くなる高笑いと共にかなりの速さでノノノフは走り去っていく。
そのままゴーレムに乗ったその背中は見えなくなった。

因幡幸子 > あ、この人良い人だ。その上で行動力がめちゃめちゃにある。
意気軒高に工房、工場みたいなもんですかね?それを作ると言う彼の顔は眩しい。土気色だけど。

「そーうなんですよ!登録しておいて、学校に通う!これだけでも有利ですよ有利!」
「学園の方もこの世界の歴史を知ってもらいたいようで、色々と簡便ですからね」
「学園の方も、ゴーレムを作れる方。が参加する事はきっとメリットなんじゃないかな~と!」

そういった顔を見ながらに説明を一先ず終えると喉が渇いたので、立ち上がって直ぐ横の自動販売機でミネラルウォーターを二本買う。
この世界の普遍的なメーカーの代物で、今ではすっかり私の目にも馴染んでいるロゴマークが記されている。

「ケンプキンさんもどうぞ!いやあ女の子に奢らせるなんて罪な人ですね!これは一つ借りですかね!」

勝手に奢って借りを押し付けて、その上で冗談ですよHAHAHA!!と肩を竦めて笑ってみせました。
だって笑う門には福が来ると申しますし、彼の門出に福が来るなら笑顔くらい安いもんです。
でも、ケンプキンさんったら高笑いをしながら颯爽とゴーレムに乗って去って行く所でした。

「うわーっ行動力高い!じゃなくてケンプキンさんそっちは違いますって!」
「委員会街はこっちですってばー!!うおーい!?」

行先、めちゃめちゃ間違っていたので大声上げて追いかけます。今こそ100mを6秒で走る足の出番!!!
この後無事に彼が委員会街までたどり着き、登録相成ったのかはまた別の御話。ちゃんちゃん。

ご案内:「常世公園」から因幡幸子さんが去りました。
ご案内:「常世公園」からケンプキン・G・ノノノフさんが去りました。
ご案内:「常世公園」にシャーリーさんが現れました。
シャーリー >  夕方の薄暗くなった公園を猫背の少女が歩いている。長い前髪の左側だけを耳に掛けるように流し、鮮やかな緑の隻眼で辺りを窺うように忙しなく見渡している。
 この島―――世界に流されて、数日が経過した。最初は言語も通じず困惑と絶望が綯交ぜになっていたが、流れ着いた先の教会でかけられた言語通訳の魔法が効いたのか、会話は出来るようになった。ただし聞き取る事だけで、上手く話す事はまだ出来ていない。それは単純に言語ではなく、少女自身の性格の問題だった。

「………………ど、ど……どう、しよ。ひ、ヒーちゃん……。ま、ま……、迷子、かも……」

 丸くなるように胸に押し当てた腕の中、掌サイズの触手の塊のような異形にポソポソと声を掛ける。それすらも絞り出すような声で、公園の賑やかさに掻き消されてしまう。
 それでもヒーちゃんと呼ばれた異形は聞き取ったのか、触手をビタビタと弾ませて少女の腕を叩く。

「う、うん……そ、そうだよ、ね……。ひ、ヒーちゃんも、分かる、わ、わけ……な、ない、よね……」

 一緒に異世界に飛ばされてしまった異世界の魔物の友人が、この世界に詳しい訳も無く、となれば道順も分からないので返ってきた答えは少女にとって虚しいものでしか無かった。
 誰かに声を掛けられれば万事解決と相成るかもしれないが、それが出来れば迷子になる前に帰る為の道を聞く事も出来ただろう。結局誰にも声を掛けられず、ひたすら辺りを見渡し見覚えのある何かを探すしかなかった。

ご案内:「常世公園」に平和田 竜彦さんが現れました。
平和田 竜彦 > 「あ、あの~……大丈夫ですか?」

僕は日も暮れようとしていた公園で歩いている一人の女性と、その隣を歩く不思議な生物に声を掛けました。
実の所、数分ほど前から通りから眺めていたのですが、ずっと目的もなく彷徨っているようでした。
女の子が一人歩いているだけならまだいいのですが、隣の不思議な生物は人によっては大騒ぎになってしまいそうでしたので。

女性は女性で心細い感じが伺えるのですが、僕も似た様な者です。
この学園に連れてきてもらい、まだ島の事は全て理解しているわけではありません。

僕は公園の入り口から、そう、遠巻きに声を掛けました。
いきなり近づいたら向こうも警戒されるでしょうし、まずはここからです。

シャーリー > 「あうっ……!?ご、ごご、ごめんなさいっ!ごめっ、なさいっ!す、すぐ帰りますっ!すぐっ、か、帰りますからっ……!!」

 声を掛けられるとすぐさま頭を下げて、隣を歩く触手生物を拾い上げて胸に抱えた。それから一瞬で後退り、元々道の端を歩いていたもののそれをさらに食み出て茂みの中へ半ば隠れるようにした。
 引き攣ったような卑屈な笑みを浮かべ、必死に愛想笑いをしようとしているが、まったくもって下手くそだった。

平和田 竜彦 > 「あのあのあの。 隠れなくても大丈夫ですよ!」

僕はワタワタと落ち着きなく右手を上下に振り回し、どうしていいか一瞬分からなくなっていました。
声を張り上げると、茂みの中でガサゴソと動く女性のもとへと少しだけ近づきました。

あちらさんも笑顔が多少固いですが、僕は笑顔にすらなってなかったかも知れません。
眉尻を下げたままで、茂み越しに声を掛けます。

「僕は平和田 竜彦。 ここの島にある学園の生徒です。
貴方達は突然ここにやってきた方ですか? 何を言っているんだと思われるかも知れませんが、そういうことってよくあるみたいなんです。
悪いようにはしませんから、ちょっとお話しませんか? 何かお役に立てるかも。」

シャーリー > 「ひっ……す、すみま、せんっ。わ、私なんかが、し、視界にいたら……ふ、不愉快かと……」

 茂みの中から出てきたものの、先ほど以上に背を丸めて縮こまりながらぎこちない愛想笑いと共にそう呟き、視線を彷徨わせる。

「は、はぁ……。す、すみません、わ、私、なにも知らなくて……。き、きき、気付いたら此処に居ただけ、でっ……ご、ごめんなさい……。……わ、わた、私は……、シャーリーと、言います……。こ、この子は、ヒーちゃん……」

 少年が名乗るのに合わせて自分と、そして腕の中の手のひらサイズの触手生物の紹介をする。然し一定の距離を保つのは止めず、視線も向けない。

「わ、わわ……、私に何か、ご、ごよ、御用でしょうか……」

 役に立てるかもと言っている相手に対する問いかけとしては、かなり変わった問いかけをしてしまった。相手に助けてもらうという発想が無い為、何か用事があって呼び止められたと一方的に思い込んでいる様子だった。

平和田 竜彦 > 「え、不愉快!?」

なんだか凄い単語が唐突に出てきました。僕は気づけば顎が落ちていたようです。
ポカンと空いた口を閉じてから、まじまじと女性を眺めます。

「大丈夫ですよ、ここではよくあることらしいので。
シャーリーさんにヒーさんですね。始めまして。」

背丈が若干低いシャーリーさんに視線の高さを合わせてお話しするのですが、警戒されているのかまだ視線が合いません。
他の先輩たちならもっと上手い方法があるのでしょうが、僕にはちょっと思いつきません。

「お二人がここで宛てもなくなく歩いておられたので声を掛けたのですが。
そうですね、お二人はいく宛てとかあるのですか?ちなみに僕もお二人と似た様な境遇で、今はある学校でお世話になっています。
いく宛てが無いのなら僕と一緒に来るのはどうでしょう?」

僕はこの手の話を相手にする際は、いつもドキドキしています。何せ、初対面なのです。
いきなり色々と話したところで相手が耳を傾けてくれるかは分かりません。
でも、踏み込まないと何も進まない様に思います。

シャーリー > 「……え、えっと、は、初めまし、て……」

 やはり視線は合わせずにしどろもどろに小さく頭を下げた。

「……わ、私、私は……、ある教会で、お世話にな、なっていて……。今日はた、たまたま……、し、シスターのた、頼まれごとを……お、お使いを、させて、いただいて、いて……そ、それで、か、帰り路が……わ、分からなくなっただけ、です、からっ……、お、お気遣い、頂いて、う、嬉しいですが……」

 突然の言葉に戸惑いさらに視線を彷徨わせ、一歩二歩と下がっていく。
 何かの勧誘だろうか。ガッコウ、とは何だろうか。まるで分からない事だらけだが、とにかく見ず知らずの人についていってはいけないと、シスターから強く言われているのもあり、乗る事はしなかった。どの道、怖くて出来ないが。
 今にも泣き出しそうに潤んだ隻眼を彷徨わせながら、必死に愛想笑いだけは保っていると、腕の中の魔物がピョンと腕の中から飛び出た。そして触手の先端でグリグリと地面を削っていく。

『まいご いじんがい きょうかい みち しりたい』

 その字はとてつもなく下手で歪ではあったが辛うじて読めるだろうというような平仮名で、そう書いてあった。魔物はと言えば、小さな体を弾ませて強く存在を主張している。

「あ、ああ……ひ、ヒーちゃん……ご、ごめんなさい……ごめ……ごふっ。」

 そして次の瞬間には少女が勢いよく吐血した。それが足元の魔物に掛かった。大惨事である。魔物は怒ったように弾んでいるが、暴れる様子はなく、少女はダバダバと血を吐いている。

「ごぶべっ……ごべんなざい……ごほっ。」

 スプラッタな光景が広がっているが、少女は何事も無いように肩掛けで自分の口元を拭っている。

平和田 竜彦 > 頭を下げるシャーリーさんに対し、僕も会釈程度に頭を下げました。

「あ、そうなんですね。 ちゃんと住む場所があるようで良かったです。
で、帰り道が分からないと。わかりました。」

僕はこの時点で見えない選択肢の選択に失敗したことを実感しました。既に相手は一歩ずつ距離を取っています。
そりゃそうですよね。いきなり見ず知らずの人が勧誘だのしたら怖がる人も居ますよね。
防犯ブザーを鳴らされないだけましかもしれません。
八方塞になってきて、僕も頭の中が真っ白になりそうなところで助け船がやってきました。

「あ、異邦人街の教会へ行く道が知りたかったのですね。」

足元のヒーさんの機転に僕は肩の力が少し抜けるのを感じます。
異邦人街なら道順は分かります。ただ、口で説明していきなり行けるとは思えませんが。

「そうですね。口で説明することも可能なんですが…多分途中でまた迷子になると思うんです。
なので、僕が近くまでお送り……え、大丈夫ですか?」

突然口から血を吐き出したシャーリーさんは慣れた様子で口元を拭っています。
僕は咄嗟に制服からハンカチを取り出したのですが、使ってくれるでしょうか。

シャーリー > 「へ、へへ……。そ、そうです、けどっ……で、でも……お手を煩わせる、わ、わけ、にはっ……。あ、だ、大丈夫、です……。いつもの事、なので……」

 差し出されるハンカチを少女はそっと右手を持ち上げて遠慮した。
 肩掛けが真っ赤に染まっていく中、触手の魔物はぐねぐねと蠢いて自分に掛かった分と地面に落ちた分を吸い取る。やがてその体が少し赤みを帯びて、少しだけ大きくなる。掌から食み出る程度、握りこぶし二つ分くらいのサイズに。

「あ、ありが、と、ひ、ヒーちゃん……」

 口元を赤くしたまま魔物を抱き上げると、魔物は触手を伸ばして口元の血も拭うようにして吸い取った後、ぺちっと頬を叩いた。しゃんとしなさい、と言っているかのように。

「……あ、あの。ご、ごめん、なさい。……お、脅かすつもりは、な、なかったんです、けど……。あ、あの……ご、ご迷惑、で、なければ……ホントの、ホントに……ご、ご迷惑じゃ、なければ……」

 魔物に激励された少女はおずおずと身を茂みからもう一度出して、視線は合わせずに背を丸める。

「……あ、案内、を……お、おね、お願い、します……」

 そう言い終わらないうちから頭を勢いよく下げて、お願いをする―――もとい、彼の提案をようやくとばかりに受け入れる。魔物も、少女の頭の上に昇ると、同じように体をくにゃりと曲げて、頭を下げる真似をする。

平和田 竜彦 > 「でも、お二人で迷子になってたんですよね。」

やっぱりハンカチは不要なようでした。僕はお断りを受けたハンカチを制服へと直します。
そして、足元のヒーさんがなんと吐血を吸い上げています。栄養分になるのか、一回りほど大きくなっていました。
これからシャーリーさんが血を吐き出すたびに大きくなっていくのでしょうか。とても不思議です。

「はい、わかりました。教会の手前まで案内すればいいのですね。」

いきなりヒーさんが頬を叩いたりするのでびっくりしたのですが、お二人はこれで上手く行っているのでしょう。
僕はお二人の前を先導する形で異邦人街に向かって歩きます。
といっても、お二人のペースに合わせるのでそんなに早くは歩きませんが。
そうそう、その前に一つ確認です。

「歩いていくと結構遠いですし、良かったら電車に乗りませんか?
勿論、電車賃は僕が立て替えますよ。」

ここでお二人が僕の提案に載ってくれれば、そのまま駅へと向かいます。
電車を嫌がるようでしたら、歩いて目的地まで向かいましょうか。
車があればいいのですが、残念ながら僕の年齢では運転できないようです。

シャーリー > 「は、はい……。あ、でも、街までも、戻れれば……それでも、へ、平気……です……」

 少なくとも街に着けばある程度は歩き慣れている事を告げ、へらへらと卑屈な愛想笑いを少女は浮かべる。
 歩き出した少年の後ろを、何処か申し訳なさそうに背を丸めてついていく。

「……デ、ンシャ?……ご、ごめん、なさい。あの、で、デンシャ、とは……?さっきも、ガ、ガッコウ?と、お、仰ってました、よね……。あ、あの……わ、私、本当に、き、来たばかりで……」

 提案に乗るよりも先に口を突いたのは疑問だった。電車が分からないとなれば、少女と魔物がどうやって此処まで来たのかは、想像するのは難しくないだろう。そう、徒歩である。驚きである。