2020/07/08 のログ
227番 > 「えっと、こん、にちわ。
 きれい……ありがとう?」

ぎこちなく挨拶を返す。最近教えてもらったものだ。
……どれくらい前だったかな。すっかり思い出せない。
日付感覚は未だ身についていない。

「……見てる、なにかは、あの時だけ、みたい……」

不思議そうに首を傾ける。
違う日に勇気を出して踏み出してみれば、その時は何も起こらなかった。

「だから、今は、大丈、夫」

ヨキ > たどたどしい挨拶に、うんうんと頷きを返した。

「よかった。
今はもう、怖い思いはしなくて済んでいるのだね。
本当に良かった……」

へたり込みそうなほどに安堵する。
眉を下げて、いっそ泣きそうな笑顔で。

「227君。こっちの街はとても広いだろう。
山本君という……頭のモコモコした(モコモコするジェスチャ)彼から……君がこっちへ出てきたという話を聞いてね。
君のことがずっと気になっていたんだ。

これでもっとたくさん、君の“先生”が出来ると思うと、ヨキも嬉しいよ」

227番 > とはいえ、解決したわけではない。
いつか来るかも知れない、というのはあるだろう。

「……先生?大丈夫?」

227は言葉のコミュニケーションは未だ苦手なので、
相手の表情の動きには敏感である。

「うん……おととい?迷子、になった……。
 やまもと……(ジェスチャを見る)……あ、エイジ。

 わたしも、また、会えて、うれしい」

ヨキ > 「いや、済まない。大丈夫だ。
あのとき、怖い思いをしていた君のことが、とても心配だったから。
今だけでも、怖い気持ちがなくなったのが嬉しいんだよ」

息を吐く。気を取り直して、少女へ向き直る。

「あはは、迷子になったか。
それでも帰れるようになって……いろんな人に助けてもらえているんだな。
ふふ、そうそう。エイジのことだよ」

笑いながら、地面に腰を下ろして緩い体育座り。

「学園には行ってみたかね?
ヨキはいつもあの高い建物の中で、勉強を教えているんだよ。
そのうち227君も、ヨキと一緒にお勉強をする日が来るかもね」

227番 > 「そっか……えっと、ありがとう」

大丈夫だと言われれば、こちらも安堵の表情。
それから、心配してくれる人にはお礼を言うようにしている。

「その時は、ソラに、こうあん?に連れてってもらった」

実際、落第街に比べると、かなり広い。
迷子として見つけてもらった時もかなりの距離を一人で歩いていたらしい。

「がくえん?
 あれのとこには、行ったけど……」

時計塔を指差す。降りれなくなっていた、というのは聞いているかも知れない。

「教える……先生、の、しごと……?」

ヨキ > どういたしまして、と頷く。
少女から他人の名前が出るのは嬉しいものだった。

「公安か。公安はね、この街のことをよく知っている人たちだよ。
その人たちに助けてもらえたなら、君はこれからもきっとホッと出来る」

時計塔を見上げて。

「ああ、そういえば、山本君が“あれのとこ”で君を助けたと言っていたっけ」

つい先日、アフロヘアの彼から聞いたことの顛末だ。

「うん。そうだよ。
字が書けるようになるとか、絵が描けるようになるとか。
空に浮かんでいるのが雲だとか、そこの池を泳いでいるのが魚だとか……。

君が知らないことを、いっぱい話して、覚えてもらうことだ。
それがヨキの、先生の“しごと”なんだ。

それで、知らないことを覚える人たちを“生徒”という。
もしも生徒になったら、君も今よりもっとずっと、いろんなことが覚えられるよ」

227番 > 「街を、よく知ってる……。人、探せる?」

227は会いたい人がいる。しかし、手がかりは何もない。
尋ねる相手が違うかもしれないし、
なんなら保護者も公安の一員だったりするのだが。

「高いとこ、ちょっと、怖い…かも」

腕を抱える。あれから、一人では登らないと決めている。

「字、絵…くも……?あ、さっきの、さかな?」

じっとしゃがんで追っていたものは魚だったようだ。
魚自体は、落第街でも見たことは有る。大半は生ゴミの状態だが。

「勉強……わたしも、いろんなこと、知りたい。
 わたしの、ことも、みんなの、ことも。
 わたしも、せいと。なれる……?」

ヨキ > 「もしかすると、一緒に捜してくれるかも知れないね。
もしも“公安”をやっている人が近くに居たら、人を捜していますって相談してごらん。

あはは……。そうか、登っちゃったか。
高いところ、すごく怖かったろう?
だから本当は、あすこへは入ってはいけなかったんだよ。
次からは、あまり高いところへは行かないようにな」

苦笑する。
彼女が立入禁止の看板が読めなかったことをすぐに察して、言葉遣いは優しい。

「うん。いろんなことを知ると、いろんなことを考えられるようになる。
怖いものが怖くなくなったり、楽しいことがもっと楽しくなったりするよ。

君が今、誰と一緒に居るのかヨキは判らないが……。
その人にも、相談してみるといい。
すぐには生徒にはなれないかも知れないけれど、きっと前向きに考えてくれるよ」

両手を広げてみせる。
まるで生徒になった先の、華やぐ夢を見せるように。

227番 > 「……わかった、聞いてみる……」

知らない人に話しかけるのは、まだ苦手なので、知っている人を当たるのだろう。

「入ったら、ダメ…そう、なんだ。気を付ける」

ダメと言われたら、認識を改める。
素直に言いつけを守るだろう。

「……怖いものが、怖く、なくなる……、

 "ほご"して、くれたのは、ゆーり。歌、教えて、くれた。
 そうだん……うん、聞いて、みる」

伺うように見ていた表情は一転、笑顔になった。

ヨキ > 素直な少女の様子に、ヨキは満足げに笑った。

「ああ。それが気を付けられるなら、もう大丈夫。
怖い思いもしなくなるよ」

ゆーり。その名を聞いて、ほう、と頷いた。
彼女を助けてくれた者の名を、しっかりと覚えるように。

「ああ。ヨキはいつでも、新しく生徒になってくれる子を待っている。
だから227君、君も。
エイジや他の友達と一緒に、いっぱいいっぱい“お勉強”が出来るといいね」

はたと気付いて、鞄を探る。

「……そうだ。君にこれを渡しておこう。
もしも学園の人の助けが必要なときには、これを人に見せて。
これがあれば、君はヨキを知っていることが判るから」

少女へ差し出したのは、一枚の名刺。
彼女には読めない、難しい文字がたくさん書かれている――何ということはない、ヨキの肩書や連絡先だ。

「ああ、そろそろヨキは“お仕事”に戻らなくてはいけないな」

227番 > 「うん。わたしも、勉強、したい」

期待…というよりは、希望か。そんな眼差し。

「……カード?……わかった」

それから、差し出されたものを受け取って、見てみる。
裏返したり、違う角度で見てみたり。
当然ながら、全く読めない。
それを小さなポーチに丁寧にしまう。

「……おしごと、わかった。」

ちょっとだけ寂しそうな表情を見せるが、すぐに笑顔に戻る。

「帰り、気を付けて」

ヨキ > 少女のきらきらとした眼差しを受け止めて。
名刺を興味深そうに眺める様子を見つめる。

「ああ、君とはもっともっとお話がしていたかったが……。
だがね、“生徒”になれば、人とお話する時間もいっぱい増えるんだ。
それもまた、ヨキは楽しみにしているよ」

立ち上がって、尻の土埃を軽く払う。

「ありがとう。君も気を付けたまえよ。
暗くなると、街はどこも怖くなってしまうからね。
周りが真っ暗になる前に、君もお帰りよ」

帽子を被った少女の頭を、軽くぽんぽんと撫ぜて。
手を振りながら、“高い建物”の方へ帰っていく。

ご案内:「常世公園」からヨキさんが去りました。
227番 > 人と話をするのは苦手だが、楽しいのも事実。
勉強すれば、人と話す機会が増えれば、苦手もなくなるだろうか?
そうだったら、自分もとても楽しみだ。

「うん、夜はあぶないって、ソラ、言ってたから、
 もうちょっと、したら、帰る」

去っていく姿に手を大きく振って見送っていると、
ぱしゃんと水面で水がはねる。

そちらに目をやるが、その正体が魚だとしったから、今日はもう十分。
すっと立ち上がり、小走りで帰路につく。

ご案内:「常世公園」から227番さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に鞘師華奈さんが現れました。
鞘師華奈 > 夜の常世公園――明かりも充分、人気も疎らにあるが矢張り昼間の賑わいと比べると静かな空間。
公園の一角にあるベンチに腰を下ろしながら、何時ものスーツ姿で口の端に煙草を咥えながら黄昏ている。

「………ん。」

ゆっくりと紫煙を吐き出しながら、懐から取り出したのは簡易的な”身分証明書”…公安のものだ。
それを繁々と無表情で眺めた後、軽く指で弾くように真上へ飛ばす。
夜闇に舞う身分証明書…やがて、重力に任せて真下に落下するそれをピッ、と右手の人差し指と中指で挟み込むようにしてキャッチ。

「――ユーリの話だと公安の中では比較的”緩い”部署らしいけど…さて。」

改めて身分証明書を一瞥すれば懐へと戻す。友人の推薦もあったとはいえ、公安に属したのは自分の意志だ。
風紀の道もあるにはあったが――自分は鉄火場には向いていない。

そういうのは3年前に自身の矜持ごと打ち砕かれたのだから。
ゆっくりともう一度煙草を蒸かしながら一息。左手に持った缶コーヒーをゆらゆらと揺らし。

ご案内:「常世公園」に227番さんが現れました。
鞘師華奈 > (――もっとも、”私の物語”を始めるスタートライン…に、なってる気はあんまりしないけれどね)

自分で選んで自分で決めた。けれど、3年間も傍観者気取りの怠惰を貫いていたのだ。
そう簡単にその癖は抜けないし、焦って選んでもそれはただ流されて決めただけに過ぎない。

「――あれこれ迷うのも随分と久しぶりだね、本当に」

だが、迷いの無い決断はきっと自分には無理だ。だから今の内にせいぜい迷ってやろう。
そこから生まれる決断にこそ、己だけの物語がきっとある筈だから。

「――なんて、格好つけても様にならないんだけど。まぁ、一先ずは公安の下っ端として頑張ろうか」

3年前まで悪名”しかない”違反部活の幹部をやっていたと思えば、今は公安の新人だ。
世の中、本当分からないモノだな…なんて、今更だろうか。煙草を蒸かしながら微苦笑を浮かべて。

227番 > 日課の散歩。夕食が終わった後の、暇つぶし。
探し人については、未だ聞けないでいるので、期待はせずにのんびり歩く。
白いワンピースに麦わら帽子。すっかり夏の格好だ。
これで夜じゃなければ絵になるのだろうが……。

今日は何処へ行こうか。
昨日は結局姿を見ることが出来なかった池の魚でも見てみようか。
そんなノリで公園に歩けば、なにやら覚えのある煙の匂い。

「……カナ?」

鞘師華奈 > 「―――ん?…ああ、ニーナか……いや、何でこんな所に?」

煙草を蒸かしたまま、そちらに赤い瞳を向ければ覚えのある少女の姿。
――なのだが、服装もそうだけどそもそもここに居る、というのに違和感を感じる。
てっきり、未だ落第街で暮らしていると思っていたのだが…あぁ、いや。

「――そういえば、ユーリから少し聞いた気がするな…まぁ、ともあれ久しぶり、元気そうだね」

こちらは、あの時からそんなに変わってはいない。緩い仕草で右手を軽く振って挨拶をしながら。

227番 > 良かった、名前を覚えていられた。

「……カナ!」

未だ履き慣れない靴でとことこと足音をたてて駆け寄る少女。
伝言についてはもう不要だと伝えられているので、特に用事はないのだが、それはそれとして、会えるのが嬉しい。

「うん、おかげさま?で……カナは、げんき?」

慣れない言葉を首を傾げながら使う。
"あっち"で見たボロボロの少女の面影は、あまり残っていない。

鞘師華奈 > 正直、こちらの名前がまだ覚えていられるとは思わなかった。
そういう意味ではちょっぴり嬉しい感情も出る…のだけど、相変わらずこの女の態度は何時も通りのもので。

「…私かい?私は見ての通り変わりないよ…あーー少し変わった事もあるといえばあるかな」

足元は靴、服装も白いワンピースに麦藁帽子…すっかり路地裏の少女が可愛くなったものだ。
靴にまだ慣れてないのか、何処か危なっかしい駆け寄りをしてくる少女に合わせて、吸っていた煙草を取り出した携帯灰皿に放り込みつつ。

「…しかし、まぁ随分と君の方は変わったものだなぁ…色々あったんだろうけど」

そもそも、こちら側に居る時点で驚きなのだけれど。「隣座るかい?」と、真ん中を占拠していたベンチのスペースを横にズレて空けようとしつつ。

227番 > 前とさほど変わらぬ様子に安心感を覚えていると、

「……変わった?」

気になることを言われた。
本人に説明を求める意図はないが、そう解釈されても仕方ないかもしれない。

「うん。ゆーりとか、みんなに、いろいろ、もらった」

たどたどしい、気弱そうな声色は変わらないものの、どこか明るさが加わっている。
ベンチのスペースを空けられれば、少し考えて、割と近い所にちょんと座った。

鞘師華奈 > 「うん、まず見た目とかだね。…あと、余裕が出てきたのかな?少し明るくなって気がするよ」

少なくとも、女から見た少女は以前の路地裏で暮らしていた少女と比べるとそこがまず違う点で。

「あーーーそうそう、そのユーリと同じ場所、というか仕事場で働く事になってね。
もしかしたら、ニーナと顔を合わせることも多くなるかもしれないけど、よろしくね。」

基本、彼女の保護担当はユーリだと勝手に思っているが、自分も何かしら手伝える範囲で手伝う気はある。
隣にちょこん、と腰を下ろす少女をちらり、と一瞥してから視線を一度前に戻して。

「――今の生活はどうだい?」

色々と貰った。それは形あるものだけではない…かもしれないし。
だから、何気なく今の生活はどう思うかを彼女に聞いてみたかった。

227番 > 「よゆう……そう、かも……?」

少なくとも、飢えや雨風の心配もない……といっても、
隠れ家を貰った時点でそれは避けられているのだが。
常に怯えている必要がないというのが大きいか。

「ゆーりと同じ"しごと"……
 うん……わかった、よろしく……」

自分を"保護"できるような仕事、ということしか把握しておらず、
あまり詳しく聞いていなかった。今度聞いてみようかな。

「今の?……ずっと、たのしい」

質問の返事は一言だけ。
細かく気持ちを表現できるような語彙を持たない。

鞘師華奈 > (まぁ、ユーリや他の誰かが彼女にお節介を焼いたりここに連れてきてくれたんだろうね)

――私?私はただ、師の遺した財産の一部を彼女に譲っただけだ。大した事はしていない。
そもそも、偶々少女と出会ったから提供しただけに過ぎないのだし。

「…まぁ、私は兎も角としてユーリは信用していいんじゃないかと思うよ」

自分みたいなのにより、彼の方がよっぽど親身に少女の事を考えているだろうから。
自分は別にお人よしでも何でもないし――嗚呼、だからユーリに比べたらきっと薄情だ。
少なくとも、周りのように彼女の為に動いたりはしなかったのだから。

「――そうか。…続くといいね、楽しい事が、さ」

僅かに目を伏せながら、何処か願うように祈るように口にするのは独り言に近い。
人生そう簡単には行かないもの――この先、何があるかも分からないのだから。

(――まぁ、私に出来る事は大してないんだけどね。そこはユーリや他の御節介さん達の出番さ)

227番 > 相手の思惑はつゆ知らず。
処分のために渡されたこともただの理由付けだと認識している227は、あれも好意の上だと思っている。

「カナ、いたから、ゆーりも、少し、話せた。だから、カナも、おかげ」

隠れ家がなければ、彼に最初に会った日に、保護されていたかも知れない。
だが、その場合は今の生活は無かっただろうし、227が決心することもなかった。
だから、227は、あなたのおかげでもある、と言う。

「……うん。そうだと、いいな」

こちらも、信じて止まない、といった様子ではない。
上がる事があれば、下がることもあるというのは、向こうでも経験したことだ。

「──ねぇ、カナ。カナは、ともだち?」

鞘師華奈 > お人好しなんてロクな事にならない…だから、私は面倒臭がりの怠惰になった。
本来”そういうタイプじゃない”としても、3年間もやっていれば、いい加減そちらが地にも近付いてくる。


(――それに、そういう甘さで私は私の居場所と仲間を全員喪った…いいや、”私も死んだ”)


だから、御節介をうっかり焼いたとしても、誰かの為に動いたとしても。
私は誰にも深入りしないように、そうやって傍観者気取りでいたのだ…ある友人に指摘されるまでは。

「――そっか。私が君の手助けになってるなら、それは素直に嬉しい事さ」

口元を僅かに緩めてそう答える。ちょっと苦笑じみているのは己に対しての呆れのせいか。

(――なんて、気取りつつも私は結局”こう”なんだろうねぇ)

人間、環境で幾らでも変わろうと根っこの部分はそうそう変えられないものらしい。
ニーナの言葉に、彼女も現状の楽しさが続くことを信じきっている風ではない事に少し、安心した。
冷たい言い方にはなるが、彼女なりに現実をちゃんと見据えている、というか。

「―――はい?」

友達、と聞かれて一瞬目を丸くする。煙草をもし咥えていたらポロリと地面に落としていただろう。
別に友達ではない、と何時ものように距離を空けたりも出来るが…。

「―――そうだね、君がそう思ってくれるなら私は君の友達だと思うよ」

本当に、”あの友人”といいこの少女といい、不意にズバズバ言ってくるものだ、と。

227番 > 「うん、助かって、る。……ありがとう」

ぎこちなく頭を下げた。お礼の言い方はまだ勉強中らしい。

あなたが思案をしている間も、変わらず少女はまんまるな青い瞳で見つめている。
それは表情の変化を追う程度のもので、相手の考えていることを読み取るような、
ましてや根底の性格を見透かせるような、技能、あるいは教養はまだないし、
そういう意図があるわけでもない。信頼出来る人、の一人であるから。

自分を襲った存在も残っているし、あの日見た影も解決したわけではない。
これから学園(ここ)で自分を知っていくうえで、いつか向き合う過去。
今が幸せでも、逃げるつもりは、毛頭ないのだ。

返事とともに、意外そうな表情に変わった時、
227は不安そうな目で見上げたが、肯定してもらえれば。

「……よかった。カナも、ともだち」

心から嬉しそうに笑顔を浮かべた。