2020/07/09 のログ
鞘師華奈 > 「――どういたしまして。ただ、選んだのは君自身なんだから、私にお礼より自分を誇っていいと思うよ」

と、少し捻くれた返しになってしまった。素直に受け取れただろうけれど出来なかった。何でだろう。

自分とは対照的な青い綺麗な瞳がこちらを見つめている。
深い湖面のような、或いは蒼穹の空のような色彩がこちらを見つめている。
――対して、自分の瞳には…未だ燻り続けてまだ燃え盛るには至らない残り火。
血の色ではなく炎の色。ただ、それも今はまだその色彩を輝かせるには至らず。

そもそも、少女にどういう経緯があって、落第街からここに居るのか。
少女の身に起きたことも何もかも女は知らない。だから、彼女の背負うものも今は気付けない。

「―――あ~…ほんと、あかねの荷物を持った時もそうだったけど、何で私はこうかなぁ」

嬉しそうにしているニーナを見てから、くしゃり、と黒髪を掻き毟りながら完全に独り言。
――まぁ、結局。鞘師華奈という女はやっぱり甘いのだろう。分かっていたけれど。

「まぁ、そういう事で”友達”として助けられる範囲で何かあれば助けるさ」

227番 > 「ほこって……?」

またよく知らない概念に首をかしげる。
まだまだ知らないことばかりだ。もっと勉強しなくては。

(あかね……あかねも、会いたいな……)

独り言を拾って、すこし思案顔。

「……うん。ともだちは、頼る。」

おそらく227の一番変わった所。人を頼ろうと思えるようになったこと。
そして。

「だから、カナも、わたしに、手伝えること、あったら、いつでも」

それに報えるようになりたいと思うようになったこと。

鞘師華奈 > 「…分かり易く言えば、自信を持っていいって事かな」

厳密には少々違うかもしれないが、まぁこのくらい噛み砕いたほうが彼女も分かり易い、筈だ。
自分の出した名前に、彼女が反応したことには気付かず。

「――そうか。それならいい」

友達を頼る。落第街の路地裏に暮らしたままではおそらく芽生えなかったかもしれない概念。
それは大きな変化であるし、同時に彼女の成長でもあるのだろうな、と。

「――あんまり自分の事に人を巻き込みたくないんだけどなぁ…でも、まぁ」

小さく肩を竦めてから、彼女の頭、というより麦藁帽子をポンッと軽く右手で撫でてから立ち上がろう。

「――いざとなったら君も頼らせてもらうよニーナ。…友達だからね」

そう、微笑みながらも「そろそろ私は帰るけど君はどうする?」と、問い掛けて。
彼女も帰るなら最寄までは送るつもりではあるけれど。

227番 > 「自信を、持つ……そうなった、のは、みんなの、おかげ、だから……
 やっぱり、ありがとう、かも」

説明されて、考えて、同じ結論に至る。
頭をぽんとされれば、軽く身体を揺する。この感覚は好きなのだ。

「うん。そのときは、よろしく」

嬉しそうに頷く。
すぐに力にはなれなくとも、満足感を得られた。十分だ。

「……うーん。今日は、帰る」

だから、出てきたばかりだが、おとなしく帰ることにする。
送ってもらえるのなら、素直に頼ることだろう。

鞘師華奈 > 「はいはい、どういたしまして。ニーナ、お礼は一度だけでいいよ。あまり何度も言うと有り難味が薄れるからね」

と、本気か冗談か小さく笑ってそう述べながらもう一度彼女の頭を帽子越しに撫でつつ。

「――ああ、”その時は”よろしく」

そんな日が来ないほうがきっといいのだろうけれど。
だが、人生何が起こるかわからない、だから――止めよう、栓の無いことだ。

「了解、じゃあ最寄まで送るよ…と、いうかニーナは何処に今は住んでるんだい?」

と、そんな質問などもしながら少女と共に女も公園を立ち去るだろう。
微かに夜風の中、煙草の香りが燻った炎のように揺れていた。

ご案内:「常世公園」から鞘師華奈さんが去りました。
227番 > 「一度だけ……」

そういうものなのか、と認識を改める。
住んでる場所を問われれば、夢莉のところに居ると正直に話すだろう。

とことこと楽しげに歩く靴音が公園に響いた。

ご案内:「常世公園」から227番さんが去りました。