2020/08/18 のログ
神代理央 >  
彼女の言葉には、此方は真面目な表情を浮かべて思案。
それは此方も同じアドバイスを受けていたこと。
というよりも、色々と早すぎて、急ぎ過ぎたのだろう。
余りにも多くの出来事が、そう考える暇すら無い程にあったのだから。

「…そうだな。きっと、その方が良いんだろう。
俺達は、御互いをゆっくり知る時間が無さ過ぎた。
そうあるべき期間を、色んな事件の中で過ごしてしまった。
御互いに良くない事、だったかもしれないしな」

こくり、と頷いて。彼女の提案に同意する。
ゆっくりと。歩く様な早さで御互いの事をもっと知れば良い。
いきなり零距離からスタートしても、良い事は無い。
先ずは、歩み寄るところから。始めて行こう。

「……俺が其処まで寂しがり屋に見え――いや、まあ。否定はしないが」

気恥ずかしそうに頬をかきながらも。
さて、そうなると彼女の荷物を――余り多くは無いが――今の彼女の住居に送らなければ、とワーカーな脳が思考を走らせかけて。
そう言えば今彼女は何処に住んでいるんだろうか。
ああ、成程。おかあさんのところに――

「………おかあさん?」

はて、彼女は天涯孤独と聞いていたのだが。
最近の常世は龍や妖精、獣人に飽き足らず両親まで生えてくるようになったのだろうか。
そんなポカンとも、きょとん、とも言いたげな表情が、彼女に向けられるだろうか。

水無月 沙羅 > 「あー……あはは、当然そういう顔になりますよね。」

苦笑いをして、提案に同意されるとよかったと胸を撫で下ろす。

「そりゃそうですよ、だって理央さん。 私に手を振り払われただけであの始末だったんですから。
 寂しがりの極致みたいな人じゃないですか。
 僕を見てくれ、助けてくれって。」

クスクスと笑う。あまり笑い事ではないかもしれないけれど、それはもう過ぎ去ったことだ。

「おかあさん……というか、お母さんみたいに優しい人、ですかね。
 今の私を、形作るための私の根源を拾い上げてくれた大事な人。
 理央さんと同じくらい、大切な人です。
 神樹椎苗っていうんですけどね。
 あー……年齢は10歳らしいんですけど……まぁ、お母さんの意味は会えばわかると思います。」

目を逸らして、自分が頭がおかしくなったのではないかという目線が来ることに備える。
一見してみれば幼女をママと呼ぶ危ない人にしか見えないが。
そうではないと伝わっているといいのだが。

神代理央 >  
「…め、明言されると中々…いや、大分こう…うむ……」

事実ではあるので否定も出来ず。さりとてその通りだと深く同意する事も出来ず。
再び顔を真っ赤にして、ちょっと俯いてしまうのだろう。

とはいえ、その視線は。
『おかあさん』の説明を彼女が始めれば、ふむ、と考える様な表情と共に再度彼女に向けられる。
年齢を聞いたあたりから、思案の表情は困惑へと変化し、そして再び深い思案顔へと戻り。

「…………ふむ。お前が世話になっているなら、御挨拶くらいには、伺いたいところだけどな。
良い人に巡り合えたみたいで、何よりだ。そういう出会いを、大事にしていって欲しいな」

何かの折り合いがついたのか。
うむ、と言わんばかりに、彼女の言葉に頷くのだろう。
疑問や怪訝の色は無い。唯々、彼女の言葉を己の中で咀嚼し、理解に努めようと思考を走らせた上で、頷いた。

水無月 沙羅 > 「……まだ完璧には理解できてないって感じですね。 まぁ、わかります。
 たぶんね、私、家族っていうものを求めてるんだと思います。
 だから、かぎりん……えっと、かぎり先輩はお姉ちゃんって呼んじゃったし、あの人もそれでいいって感じだったけど。
 お兄ちゃん……斬鬼丸も、本当は従兄だけど兄ですし。
 うん、そういう、家族みたいなものが……欲しかったんじゃないかなって。
 今にして思うんです。」

はずかしい告白をするように、両ての指を突き合わせながら親指をくるくるくるくる。
自分でもなかなかおかしなことをしているという自覚はある。

「えっと、なら、今度ちゃんと紹介する……というか。
 二人で会ってもらえませんか?
 きっと、私が居ないから話せることもあると思うので。」

うんうんと頷いて。
家族に会ってほしいと懇願する。
大事な人たち同士だから、理解してほしいという我儘でもある。

神代理央 >  
「かぎりん…?…ああ、かぎりって、園刃の事か…。
…フフ、そうか。私よりも大家族だな。それに、本当の家族差乍らに、きっと家族愛も深いんだろう。
良い人に。良い出会いに巡り合えたのは、お前の行動と努力の結果だろう。今上げた者達はきっと、間違いなくお前の家族だよ」

親指をくるくると回す彼女に、クスクスと笑いながらぽんぽんと頭を撫でる。
母、兄、姉。この調子でいけば父や妹や弟も出来るんじゃないだろうか。
其処でふと、己の両親祖父母を思い出そうとして――此の場に相応しくない思い出に、緩く首を振った。

「ああ、そうだな。その時は、時間を作ろう。
お前が居ても構わないとは思うんだが…」

まあ、彼女がそう言うなら、二人で会っても良いのだが。
そんなものなのかなと首を傾げながらも、彼女の提案に素直に頷くのだろう。

水無月 沙羅 > 「それじゃぁ、時間を取ってもらう手始めに。」
水無月 沙羅 >  
 
「デートしましょ、理央せんぱいっ」
 
 

水無月 沙羅 > ようやく言いたかった一言を言い出すことができた。
これが最初の一歩。
お互いがお互いの我儘を言い合うようになるための、恋人になるための小さな一歩。
恋人としてはきっと当たり前なそれは、私達にはきっと難しいのだろう。
それでも、おざなりにしていい理由にはならないから。

二人の距離を測るためにも、お互いに少しづつ変わっていくために。
先ずはそこから始めよう。

神代理央 > ぱちくり。
恋人からの言葉に、瞳を瞬かせた後――

神代理央 > 「…ああ、行こう。夏らしいこと、まだ何もしてないもんな」
神代理央 >  
と、ふわり微笑んだ。

御互いの好意を伝え合ってから、激流の様に過ぎ去った時間を。
御互いに抱える過去を。
隣り合う為に、変わっていく事を。

少しずつ、少しずつ変えていくために。
先ずは、そこから。
ゆっくりと、初めて行こう――

ご案内:「常世公園」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から神代理央さんが去りました。