2020/08/28 のログ
日下 葵 > 「でしょうねえ。
 しかも寄りにもよってオフの日に会うとは貴女も運がないと思います」

舌打ちを物ともせず、咥えていた煙草に火をつけてベンチに座りなおす。
今度は真ん中にドカッとではなく、端の方に。

「いやー、嫌がらせの二つや三つでもしようかと思ったんですが、
 そこまでの傷を負ってるとなると萎えるんですよ」

抵抗してくれないんですもの。
なんて言って、煙を吐き出す。

「別にそんなの見て気分悪くなるようなタマじゃないですよ。
 スプラッタ映画に”出演”しながら焼肉パーティーできるくらいには図太いので」

見ながらではなく、出演しながらというのがポイントである。
黒く変色して乾いた包帯を取ると、
どくどくと鮮血があふれるのをしばらく見学する。

「以前会った時もボロ雑巾みたいになってましたけど、
 毎日喧嘩でもしてるんです?
 それとも”そういうサービス”してるとか」

そういうサービス、他人から暴行を受けて金銭をもらうサービスのことであるが。
こんな幼げな子に暴行したいと思う輩なんているのだろうか。>

神樹椎苗 >  
 萎えると言われれば、それはそれで、うわぁと引いたような顔になる。

「抵抗は、たとえ万全でもろくにできやしねーですよ。
 しいは見た目通りでしかねーんですから」

 言いながら、ウェストポーチからゴムチューブを取り出して左手と口で器用に太ももを締め付ける。
 そうして止血しながら、ガーゼと消毒薬の小瓶を出して傷口をぬぐう。

「本当に趣味の悪い奴ですね」

 嫌悪感を表しつつ、新しい医療用保護フィルムを傷口に貼り付ける。
 本当なら縫合までしたかったところだが、さすがに道具を持ってきていない。

「前も言いましたが――言いましたか?
 まあいいです。
 この傷もそうですが、ほとんどが古傷ですよ、二年以上前の」

 大腿部の血流を止めたまま、ベンチに寄りかかって、だるそうに夜空を見上げる。
 少しばかり出血が多すぎただろうか。
 頭がぼんやりとしていた。

日下 葵 > 「別に殴り返してこなくていいんですよ。
 呻くだけでもいいですし、泣いてくれてもいいんですけど」

貴女の場合そういう反応も期待できそうにないですし?
引いたような顔をされても構わない様子なのは、
ほとんど本性を見透かされていると思っているからだろう。

「趣味と往生際の悪さが専売特許ですので」

伊達に「死んでなんぼ、命のクーポン券」を自称していない。

「あー、そんなことも言っていたかもしれませんね。
 本当はデータベースでも覗けば貴女のことを詳しく知れたんでしょうけど、
 最近何かと忙しかったのと、報告書を読むのが嫌いな性でして。

 ん、おやおや、低血圧ですね。
 ぼーっとしてませんか?
 ベンチ全部使っていいんで横になって頭を下げてください。
 あと膝を立てて傷口を高くして」

そう言っている間に、ぼーっとした様子の彼女を見てはベンチから立ち上がる。
彼女――神樹椎苗は恐らく死なないか、死んでも復活する存在なのだろう。
しかし目の前で死なれては困る>

神樹椎苗 >  
「そこは、素直に答えてやる必要はねーですね。
 お前に期待されてねーのはありがてーです」

 嫌がらせはされないに越したことはない。
 痛いのも苦しいのも、嫌いなのだから。

「あー、読まなくていーですいーです。
 お前が余計な事知ったら鬱陶しそーですほんとに、心から」

 そう言いながら、ぐったりとベンチに横たわる。
 ベンチの端と端と言えど、横になれば頭がすぐ近くになるだろう。

「――言葉に甘えはしましたが。
 お前が近くに見えるのは、落ち着かねーですね」

 と、複雑そうな表情でタバコを吸う相手を見上げる。

日下 葵 > 「おやおや、そんなことを言われては俄然読みたくなってきますねえ」

ぐったりと横たわった彼女のすぐ横に再度腰掛ければ、
意地悪そうに笑った。
読もうと思えば読める。しかし読む理由がなかった。
しかしたった今読む理由ができた気がする。

「別に取って食ったりしませんよ。
 曲がりなりにも風紀委員ですよ?
 いくら非番とはいえそんなひどいことするわけないじゃないですか」

そう言って煙草を握りつぶすとポケット灰皿に吸い殻を放り込んで、
”楽しそうに”彼女の顔を覗き込む。
主導権を握っているような感覚に浸れればそれだけでいいのだ。
今の状態はそれを満たしている。>

神樹椎苗 >  
「じゃあどうぞ読んでください。
 その程度どうって事でもねーですし」

 嫌がってしまったのが運の尽き。
 相手の性格を忘れていた。

「それが信じられねーってんですよ。
 お前みたいな倒錯した性癖の人間でも、風紀委員ってのにはなれるんですね」

 のぞき込んでくる愉しそうな顔から、嫌そうに眼をそらした。
 今は貧血の上に疲労もある。
 思考が鈍っている状態では、どうしたって主導権は取られてしまう。

日下 葵 > 「今更そんなこと言っても強がっているように見えるだけですよ?」

それはそれで”そそられる”ので大変良い。
頭が回っていないからなのか、墓穴を掘る様子が面白い。

「信じてもらわなくてもいいですし、
 今の言葉もタテマエですから。
 私みたいな風紀委員もうまく使えば人を助けられるんですよ?」

こちらの楽しそうな顔とは対照的に、
心底嫌そうな顔をする彼女をみて、また満足気な表情>

神樹椎苗 >  
「――まあ、見るなら好きにしやがれ、ですよ。
 いつでも自殺できるよう、準備しておきますから」

 玩具にされるくらいなら、さっさと死んで逃げてしまうに越した事はない。
 そもそも、最初から誰でも知れる内容なのだから、今更だ。
 最近はいつどこで誰と出会ったかまで記録されているくらいなのだ。

「なるほど、上手く使われてるわけですか。
 まあそうでもなければ、お前みたいなやつが人助けなんてしねーでしょうけど」

 少なくとも親切心で人助け、なんてことをするようには見えない。
 今もどうせ、主導権を握って嫌がる顔を観察できるからとか、そんな理由に違いないのだ。

「で、非番の風紀がこんな場所でなにしてんですか。
 新しい玩具でもさがしてましたか」

 と、不愉快そうにしながらも顔を見上げて訊ね返す。
 はっきり言って興味はなかったが、好きに喋られるのも不愉快だ。

日下 葵 > 「じゃあ今端末で見ちゃいましょうかね。
 ――やっぱり死んでも問題ない能力なんですねえ?」

自殺できるようにしておく。
その言葉を聞いた瞬間、やっぱり!といった風に表情が明るくなる。

「逆です逆、うまく使ってくださいって私が頼んでいるんですよ。
 じゃなきゃ私収入ゼロですから。
 それに私、”無償で誰かを助ける”っていうのが好きじゃないんです」

貯蓄は腐るほどあるが、稼ぎがないといずれそこを付いてしまう。
風紀委員をやっている理由の一つは収入のためだ。

「今日ですかぁ?
 新しい玩具はいつでも探してるんですけど、
 今日は主に買い出しとかですかね。
 荷物を置いた後に散歩に出てたところです」>

神樹椎苗 >  
「本人の前で見ようってところは、ほんとにいい趣味してやがりますね」

 死んでも問題ないとわかった瞬間、この表情だ。
 本当に心底、倒錯した人間だ。

「なんだ、そこは健全な価値観してやがるんですね。
 そりゃそうです、『無償の人助け』なんてやるのは物好きだけですよ」

 そんなもの好きが、どうも自分の周囲には多いようだが。

「ああ、散歩ですか。
 こんな蒸し暑い中、わざわざ外に出る必要もねーでしょうに」

日下 葵 > 「そういうふうに面白い反応が返ってくるとつい調子に乗っちゃうんですよねえ」

虐めるのが好き。
揶揄うのが好き。
困らせるのが好き。
とにかく相手の反応が好き。
そういう意味で、他人にひどく行動基準を依存しているともいえる。

「いくら性格趣味嗜好がぶっ飛んでても、
 まともなところの一つや二つくらいありますよ。
 私は基本

 『求められなきゃ救わない、得がないなら救わない、報酬がないなら救わない』

 がモットーですから」

私の周りにも、無償で他人を助けたがる人は多い。
というか、風紀委員ってそういう人が多い気がする。

「快適な部屋にこもっていてもいいんですけど、
 こういう蒸し暑さとか、不快感をたまに味わっておかないと感覚が鈍りますから」

ただでさえ痛みに対して反応が薄いのだ。
このまま何も感じなくなってしまうのが怖い、とでもいうべきだろうか>

神樹椎苗 >  
「面白いの基準がぶっ壊れてますよ、お前。
 まあ、しいには関係ねーですけど」

 今後、関係を持たれてしまいそうだが。
 お断りしたい関係だが、逃げ回れば嬉々として追い回してきそうだ。

「その辺に関しては、理解できない話じゃねーですね。
 しいも基本的に『求められなければなにもしない』ですし。
 だから、無償の人助けみてーな事をするやつには、相応の報酬を支払ってやりたくもなるんですが」

 先日の寄付しかり、今朝振り込んだ依頼料しかり。
 行いにはそれに相応しい対価が支払われるべきなのだ。

「不快感を味わいたいですか。
 そいつもまた、妙な趣味してますね」

 そろそろ血も止まっただろうか。
 左足がしびれて感覚がなくなってきたところで、ゴムチューブを緩める。
 少しずつ緩めて血流を戻していく。
 幸い、出血はだいぶ収まったようで、じわりと滲みだすが、フィルムからあふれ出るほどではなくなった。

日下 葵 > 「これくらいの方が個性的で良くないですか?
 風紀委員をクビになるようなヘマはしてませんし」

社会的に死なないように辛うじて倫理観が働いている、と言ったところだろうか。

「相応の報酬を支払いたくなるのはわかりますねえ。
 やっぱり貸しっぱなし、借りっぱなしは気持ちが悪いですから」

といっても、誰かを食わせるくらいの稼ぎも、
救えるほどの力もないので、命で支払っているわけだが。

「気持ちいことばっかりしてると退化しちゃうんですよ、いろいろ」

この欠落した倫理観も痛みに慣れた結果の退化だろう。
今の身体も性格も我ながら気に入っているが、
これ以上は少々問題がありそうだ。

「出血は随分と穏やかになったようですね。
 目眩とか貧血はどうですか?」>

神樹椎苗 >  
「個性的、個性的ですか。
 まあまだギリギリ、個性で済ませられますかね。
 さっさとクビになっちまえ、とも思いますが」

 社会的に死んで制裁を受けてほしい。
 そのまま檻の中で一生を終えてほしいところだ。
 主に自分の安全のために。

「まったくですね。
 どいつもこいつも、自分の行動の価値を安く見過ぎてんですよ」

 自分も、他人から見ればそう見えるのかもしれないが。

 退化するという発言に、この相手にもそれなりの事情はあるのだろう、という程度は思っておく。
 それ以上は特に、知りたくもないので『解析』するつもりもない。

「そうですね――まだ左足はしびれてますが。
 もうそろそろ動けそうです。
 お前もそろそろお愉しみは満足しやがりましたか」

 と、嫌そうにじっとりとした視線で相手を見上げた。

日下 葵 > 「そのギリギリを責めるのもスリルがあって楽しいんですけどね」

社会的に死ぬようなことがあれば……
その時はそのときに楽しめることを見つけようじゃないか。

「どうでしょうねえ。
 他人のことがとても高価に見えているのかもしれませんし。
 その辺は難しいところです」

私には他人の命がショウウィンドウに飾られたブランド品のように見えます。
そんな言葉を続ける。
一度壊れたら戻らない儚さに価値を見出しているといってもいいかもしれない。

「あまり締めすぎるとうっ血してしまいますから、
 後は帰ってから止血剤ですかねえ。
 ええ、思いがけず”遊び相手”を見つけられて私も満足ですよ」

嫌そうに見上げてくる彼女の視線を受けて浮かべる表情は大変に楽しそうである>

神樹椎苗 >  
「――また嫌な一致ですね。
 しいも、『生きてる』人間は、それだけでとても価値があるモノに見えますよ」

 どうやら。
 倫理観はともかく、価値観は多少、近いものがあるようだ。
 非常にうれしくない共感だったが。

「薬が使えればいいんですがね。
 薬が効かねー体質なんですよ。
 帰ったら傷口を縫合しておきます」

 言いながら、ゆっくりと様子を確かめるようにしながら起き上がる。
 ふらつきはない。
 どうやら最低限は回復できたようだ。

「しいは適当にタクシーでも呼んで帰る事にしますよ。
 これで歩いて帰って、また傷口が開いたんじゃ、娘が騒ぎ出しそうですから」

 ウェストポーチから端末を取り出しながら言う。
 家で待つ同居人の事を考えると、隠れて処置しないといけない。
 寝ていてくれればいいのだが。

日下 葵 > 「おやおや、やっぱり死ねない者同士、近しいものがあるようですねえ?」

倫理観は乖離していても、価値観が似ている。
そんなことあるのか、なんて思っていたが、案外あり得るようだ。

「おやおや、薬が効かないんですか。
 それはむしろうらやましく思えますけど……
 傷が治らないんじゃ考え物ですね」

私は傷がすぐに治ってくれるからいいが、彼女はそうではない。
同じ不死身に近しい存在でも、そういう違いはあるのだろう。

「私も帰りますか。
 一服もしましたし、”楽しいお話”もできましたし」

タクシーで帰るという彼女に続くように、こちらも立ち上がって帰路につく。
公園をでたあと、ふと「娘……?娘?」
と違和感を抱くころにはお互いが見えないところまで来てしまっていたことだろう>

ご案内:「常世公園」から日下 葵さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に綿津見くらげさんが現れました。
綿津見くらげ > 晩夏の夕、ふわふわと浮遊しながら公園を横切る少女。
彼女の名は綿津見くらげ、この街に暮らす何の変哲も無い学生である。
今日も図書館で課題をこなし、部屋へと帰る途中。

日が傾くと、暑さもかなり和らいでくるこの頃。
夏を終わりが近い事を告げる様に、ひぐらしが鳴く。

少女はふわりと地に足を降ろし、
ベンチに座って夏の終わりの空気を吸いながら思いを巡らす。

「………うむ。
 何も、夏っぽい事してない。」
前期の殆どを、入院して病院で過ごしていたため、
夏季休暇は補講や課題に追われていた。

ふと振り返ってみれば、プールに行くだの海水浴だの、
夏らしきイベントを全くしていないでは無いか。

ご案内:「常世公園」に時任時図さんが現れました。
時任時図 >  
「超奇遇じゃん。僕もだよ」

ベンチのすぐ隣。どこぞで購入したタピオカを啜る少年。
非対称の黒髪。眼帯つきの赤い瞳。
着崩した制服を揺らして、恐らく独り言だったであろう呟きに図々しく返事をする。

「こんばんは。夏も気付けば終わりだね」

綿津見くらげ > 「ほう……
 この私に察知されぬとは。
 気配を。」
知らぬ間に隣に居た少年に気づくと、
妙に強キャラ感を滲ませた台詞を吐く。
内心では結構びっくりしているし、
別に気配の察知が得意な訳でも無い。

こんばんわ、と挨拶されれば、
締まりの無い笑みを浮かべたまま軽く頭を下げる。

「無為に過ごしたか、夏を。
 お前も。
 ふふふ………ウケる。」
などと言いながら、少し自嘲混じりの笑い声をくつくつと漏らした。

時任時図 >  
「無理もないよ、僕はゴーストだからね。
 柳の下の幽霊さ」

当然、柳なんて近場にないし、夕方でも街灯は煌々と照らされている。
少年の頭の先から爪先まで明々と。

「幽霊は陰キャと相場で決まってるから無理もないことなのさ。
 あ、隣いい?
 歩き疲れちゃったし」

了承も取らず、ベンチの隣に腰掛ける。
タピオカはもう半分以下まで水位を下げている。
だが、タピオカ自体はまだゴロゴロ中に残っていた。
恐らく、先にミルクティーだけなくなる。

綿津見くらげ > 「幽霊?
 マジか。
 遭遇してしまった、ヤバいのに。」
笑みを浮かべた顔のまま、顔色だけが青ざめて行く。
幽霊に遭遇するとは、ある意味夏らしい怪談話では無いか。

しかし、どうやら少年の冗談である事に気づくと、
再び顔色が良くなっていった。

「良いだろう。
 座るがいい、勝手に。」
陰キャを自称する少年。
……そう言えば、数日前も別に陰キャ少年と出会った。

「くく……
 バーゲンセールだな、陰キャの……。」
もちろん自分も陰キャ、その自覚はある。
いつの間にこの世界は、陰の住民が住まう闇の国と化したのか。

時任時図 >  
「異能者だの魔術師だのなんて、大体陰キャと相場で決まってるぜ」

若干癖のある、投げっぱなしな笑みを浮かべながら、少年はタピオカを啜る。

「まぁ、常世島なんて物騒な名前なんだし、そりゃ陰キャも集まるさ。
 闇の学園だね。
 やべー、中二病みたいなこといっちゃったよ僕」

中二病みたいな眼帯を軽く直しながら、ついでに前髪をかきあげる。
うっすらと浮かんだ汗が、制服の袖口に吸われて消えた。

「僕は時任時図。おねーさんは?」

綿津見くらげ > 「大体が中二病患者だ。
 異能者なんて。
 重度の。」
つまりこの島は、中二病で陰の者の巣窟である。
なんと恐ろしい……。

なんてどうでもいい事を思っていたら、名を問われた。

「綿津見くらげ。
 1年だ、高校の。」
時任も同じ1年、しかし少女については殆ど見覚えが無いだろう。
それもそのはず、前期の殆どは体調を崩して病院暮らしだった。

時任時図 >  
「ああ、じゃあタメじゃん。
 つか、くらげて。
 僕の名前も大概だけど、くらげの名前も相当だな」

遠慮もクソもなく下の名前で馴れ馴れしく呼ぶ。
陰キャは距離感を測るのがヘタ。

「でも教室で全然みなかったじゃん。
 まぁクソ広い学校だから校舎違いますーとか言われたらそうなんだで終わる話だけどさ」

綿津見くらげ > 「ふむ、タメか。
 ま、ひとつよろしく、時任。」
馴れ馴れしい態度はお互い様で、それほど気にしては無い様だ。

「ふふふ。
 ウケるでしょ。軟体生物。」
自分でも、この名前は無いわ、と思っている。
が、そんな名前で16年も暮らしてると流石に慣れた。

「入院してたんよ。
 ちょっと前まで。」

「故に、陰キャかつぼっち。
 ……くく……ウケるな。」
くつくつと乾いた笑い声を自嘲気味に漏らす……
が、言うほど気にはしていない様子。

「犬に噛まれて、熱出して寝込んでた。
 ……丁度あんな感じの。」
指さす先に、黒い中型の野良犬。

時任時図 >  
「マジかよ、割と大事じゃん。
 良く生きてたな」
 
指差す先にいる黒い野良犬を見て眉を顰める。
中型犬に子女が襲われたとなれば、落命していてもおかしくない。

「くらげ運がつえーんだな。
 僕だったら多分そのまま死んでるわ。
 僕じゃなくてよかった」

自嘲の笑みに冗句の笑みを合わせて、ジズも笑う。

「じゃあ、僕に会えて良かったじゃん。
 今から少なくとも異性の知人が出来たぜ。
 しかも晩夏の夕暮れ、シチュエーションとして完璧でしょ」

綿津見くらげ > 「ふふふ……。
 彷徨ってた、生死を。」
後で聞いた話では、数週間昏睡状態だったらしい。
確かに、命があるだけでも運が良いと言える。

野犬はこちらをじっと見つめると、
茂みの奥へと消えていった。
気のせいか、その目が不自然に赤く光っていた気がする。


「完璧、ね……?
 ふむ。」
じーっと時任の顔を品定めする様に眺め……

「ま、そう言う事にしとく。
 お前も良かったな。
 遭遇出来て、こんな美少女に。」
自分で美少女とか言っちゃってる辺り、
結構な性格をしている。

時任時図 >  
「うわ、自己評価たっか。
 陰キャにあるまじき発言。
 陽キャじゃんくらげ」

ケタケタと笑う。
茂みに消えた犬と似た赤い片目を揺らしながら。

「じゃあ美少女さんはなんか夏の思い出とか陰キャ少年にクリエイトしてくれちゃうのかな?
 夏祭り一緒にいくとか?
 もう多分やってないけど」

祭事も流石にシーズン遅れである。
もう八月も僅か。

「まぁでも、幽霊と死にかけた美少女なら割かし悪くない取り合わせだな。
 詩的だと思わない?」

綿津見くらげ > 「くく……
 ……初対面の美少女にナンパしてくる
 お前の方が、陽キャだぞ?」
などと言い返し……

「だが、悪くないだろう。
 クリエイトするのも。
 16の夏の思い出を。
 ………今更、何処で何するかが問題。」
一緒に何処かに遊びに行くのは、存外乗り気な様子。
果たして、何処へ行くものか……

「………。
 嘘、だよね?幽霊って。」
疑いの視線を投げかけながら、
少しだけ顔を青ざめさせる。

時任時図 >  
にやぁとジズは意味深に微笑み。

「どうかな?」

空になったタピオカのプラカップを屑籠に放り投げて、立ち上がった。
気付けば、とっぷりと日が暮れている。

「僕が本当に幽霊かどうかは……まぁ、ついてくればわかるさ。
 『読み違える』かもしれないけどな。
 僕はよく『読み違える』し」

そういって、ふらふらと何処へなりと歩き出す。
ついていくかどうかは、自称美少女の自由。
まぁ、ついていったとしても、適当に駅前をブラつくだけ。
茶の一杯くらいは驕ったかもしれないが。
それ以上をどう読むかは……各々、御自由に。

ご案内:「常世公園」から時任時図さんが去りました。
綿津見くらげ > 「読み違え?」
時任の言葉の意味が良く分からず、首を傾げ……
着いて来い、という時任に、
ふわりと浮かんでホイホイと着いて行く。

その先で見た物とは、果たして?

ご案内:「常世公園」から綿津見くらげさんが去りました。