2020/09/28 のログ
■枝の先の火 >
御白が真珠星をイメージしたのとほぼ同時。
目を閉じて集中しているため本人は気付いていないが、小さな火がその輝きを増した。
先程のように大きくはならないが、白昼にあってなお存在感を放つその光はさながら星のよう。
■クロロ >
燃え盛る炎は炎の輝きではなく、それは麗しき星の光。
炎と言うには余りにも静かで、真白の灯火。
「へェ、それがお前のか。想像力はまァまァだな」
彼女の素養はおおむね理解した。
此れなら魔術も問題なく使えそうだ。
満足げに頷いて、パチンと指を鳴らした。
枝について火はあっという間に消えてしまう。
「おーし。こンだけ出来りゃ大体出来ンだろ。
お前なら、その辺の魔導書一冊ならヨユーそうだが……なァ、おい」
ずぃ、と顔を近づけてその瞳を覗き込む金色。
「教える駄賃代わりッてワケでもねーけど、お前が強くなろうとしたきッかけ。
あン時躍起になッてた理由ッつーか、キッカケ位教えろよ」
■御白 夕花 >
「……へ? あっ!」
クロロさんの言葉で火に変化があったことに気付いた。
目を開けた時には消えてしまっていて、どんな風だったのかも分からない。
まぁでも、反応を見る限り悪くはないみたいだ。
「ほ、本当ですか? 良かった……ぁえっ」
ホッとしたところに投げかけられる問いかけ。金色の瞳がじっと見つめてきて、思わずたじろいでしまった。
ひとまず枝を地面に置いて、ベンチに座り直しながらその質問に答える。
「ちょっと前に相性の悪い相手と戦ったんですけど、一方的にやられちゃって。
まだ異能使うのを控えてた頃だから手も足も出なくって……」
違反部活荒らしに遭遇したことと、その正体については喋らないと決めてる。
あの子はナナちゃんと同じで……何か目的があって動いてるようだったから。
■クロロ >
「…………」
御白を見据える金が細くなった。
有無を居合わさない威圧感が其処に在る。
「リベンジに燃えてるッて?どンな奴だ。別に仇を取ろうとは考えねーし
聞いてどうこうしようッてワケじゃねェ。ただ、興味がある」
「お前、単純なボーリョクとか、あンまり好きじゃねェだろ?
勝つとか負けるとかじゃなくて、もッと別の所に理由があンじゃねェか?」
少なくとも彼女は自分の異能を、力に"躊躇い"を持っていた。
普通の人間としては間違いではない。その感性は正しい。
だからこそ、その相手を打ち倒す為に力を付けるとは思えない。
クロロは馬鹿だが阿呆ではない。煌々と輝く金が、底を覗くように見据えている。
「別に、だからッてどーとか口は挟まねェよ。
教える以上は、そう言うの聞いとかねェと、"万一"ッてなッたら
教えたオレ様の方でケツ持たなきゃ"スジ"通ンねェからな」
■御白 夕花 >
やっぱりクロロさんは鋭いな。
そこまで隠そうと思ってたわけじゃないし、これは話しちゃおう。
「その子……えっと、アストロっていう赤い髪の小さな子なんですけど。
負けちゃったこと自体は大した問題じゃないんです」
見逃されなかったら死んじゃってたかもしれないから、問題ないなんてことはないけれど。
「私には守りたいものがあって、このままじゃ叶わないって思ったのと……
何より、そうなったら人に向けて異能を使うのを躊躇わないって考えちゃったことが嫌で」
だから異能に頼らなくていいように、もっと強くなりたいと思ってた。
それが甘い考えだってクロロさんに言われてからは、異能と向き合いながら大事なものを守れるように。
どっちみち、今のままじゃ駄目だと思ったからだ。
■クロロ >
「アストロォ?」
思わず素っ頓狂な声が漏れた。
よもや、彼女があのアストロと知り合いとは思わなかった。
特徴的に間違いないし、アイツなら適当に喧嘩を吹っ掛けると言う確信がある。
が、寄りにもよって身内と来たか。世間は狭いな。
御白から離れると、片手で顔を覆って溜息を吐いた。
「いや、なンつーか……すまン。知り合いの名前出てくるとは思わなくてな……。
マジで節操ねーな、アイツ。今度わからせるか……お前、怪我とかしてねェの?」
代わりに謝ると言う訳では無いが、一応のスジ通しはしておこう。
ベンチから立ち上がると、一息ついて指先を宙でクルクル回す。
「……まァ、とりあえず大よその事情はわかッた。
一々人様の戦う理由にケチつけねェよ。守りたいものがあるッつーのは、オレ様は良いと思うぜ?ただ……」
回して指先から不意に、細い光が空を走った。
その辺りの木枝を切り落とした一瞬の閃光。
"彼女の異能を、見よう見まねで魔術で再現したもの"だ。
「程度にもよるけど、ヘンに躊躇うと逆に殺しかねないぜ?
一度"やる"ッて覚悟決めたら、それこそ"躊躇わないのが正解"だ。
剣先向けただけで、人間は死なねーよ。そりゃ、刺したりすりゃ傷つくけど、喧嘩も戦いもそンなモンだ」
ある種の割きりとも言っていい。
これはクロロなりの覚悟の決め方だ。
変に躊躇っていても、それは余計な負の連鎖を生むだけだ。
自分の我儘を、望む結果を出すなら、それこそ力をふるうのにためらいなんて、必要ない。
「……けどまァ、気持ちは忘れなくていいンだぜ?
そーゆー優しさ持ッてねェと、裏でも表でも人間らしく生きられねェよ」
けど、その心意気は理解し、許容する。
振り返れば口元を緩め、薄く微笑んだ。
■御白 夕花 >
「えっ、クロロさんもアストロを知ってるんですか?」
アストロのやってきた事を考えれば知り合っていてもおかしくない。
でも今の言い方はもっと身近な人に対するもののように感じた。
違反部活荒らしのこととか教えなくて正解だったかも。
「怪我はないです。窒息させられかけたくらいで……
バイザーは割れちゃったけど、もう新調して認識阻害もかけ直してもらいましたし」
傷を負わせてくるような攻撃は全部避けたから大丈夫。
こっちの攻撃は水のようにすり抜けちゃったし、向こうもケガはしてないと思う。
なんて当時を思い出してたら、クロロさんが私の異能みたいな事をやってのけた。
はらりと落ちた木の枝に息を呑みながら彼を見る。
「っ……そうですよね。結局のところ、私は昔みたいに戻るのが嫌だっただけで。
だからこそ、今は自分の過去と向き合いたいと思ってます」
この気持ちを捨てるつもりはない。
だけど、昔の罪から目を背けることもしたくない。
そういう覚悟を彼のおかげで抱くことができたから。
■クロロ >
「まァな、オレ様が気に掛けてる水ガキッつーか
目が離させないクソガキッつーか。殺し合う仲?
アイツの事は色々知ッてる。まァそンな所だ。オレ様のが強ェーけど」
とりあえず不仲とは言い難い。
思い返せば中々奇妙な関係だが、言っている事に嘘は無い。
ただ気に入った女、それだけだ。
とりあえず、負ける気は一切ないし、やったらこっちが勝つ。
尚、ある勝率は悪い。現状四連敗中。何がとは言わない。
「窒息、な。まァ死ンでねーなら何よりだ。
落第街にいりゃ、そう言う時もある」
それこそアストロだけじゃない。
喧嘩売る連中なんてそれこそゴマンといる。
心配はするが、あそこにいる以上自業自得だ。
彼も腐っても、裏側の人間だと言う事を忘れてはいけない。
「お前の過去に何したかは知らねェけど、今は今。過去は過去。
昔のお前とは、違うンだろ?なら、戻る事はねェだろう。心配すンな」
今更どんな過去があったかなんて聞きはしない。
後ろ暗い過去なんて、彼女以外だって持っている。
今更掘り返すことは必要ない。ただ、誰かが言ってやる必要はある。
過去との違いを。彼女の過去は知らないが、そう言えるという事は変わっているのは違いないからだ。
「とりあえず、何から教えるかな。魔術ッつーのは、マジで色々あるからな。
一通りは教えてやッけど、御白はどンな事してーンだ?異能の制御は勿論教えッけど……ああ、そうだ」
「なンか、アストロの方からお前に言われた事とかあるか?」
■御白 夕花 >
「水ガキって……その呼び方してるの私だけじゃなかったんですね」
私は白ガキ。見たまんまで呼ぶのが通例みたいだ。
殺し合う仲っていうのは気になるけど、邪魔しちゃいけない気がしたから触れないでおく。
落第街で危ない目に遭うのは本当に珍しい事じゃないし、そこも食い下がらない。
「……そう、ですよね。そうだと思いたいです」
今の私は少なくとも命令に従うだけの『兵士』じゃない。
色んな人と出会って、支えられて今がある。好きなものも増えたし、楽しみもできた。
そんなかけがえのない日常を、いなくなった皆の分も大切にしたいから。
「それなんですけど、クロロさんみたいに逆の性質を持った魔術で異能を抑制するよりは、近い性質……
光とか、雷とか扱えるようになったら異能の制御もしやすくなったりしないですかね?」
そっちの方が要領を掴みやすそう、なんて安い打算も込みで。
提案してみるだけならタダだ。
「アストロに言われた事、ですか?
うーん……相手の能力は測った方がいい、とか」
ダメ出しされた覚えしかない。
もう一つの名前───226番については話すべきかどうか。
■クロロ >
「オレ様オリジナルの呼び方」
ドヤ顔で言ってのけた。馬鹿がいる。
「そうだと"思いたい"じゃなくて、お前が"そうだ"ッて言えるようになンねェとな。
お前自身の事だ。オレ様達が幾ら背中押しても、助言しても、決めるのはお前自身だ」
結局それは、自分の事だ。
他人の言われるままに決めていては、それこそ彼女の思う『兵士』と何ら変わらない。
当然、クロロは彼女の過去は知り得ない。知りもしない、興味も無い。
こうやって彼女の背中を押しても、自分の事を決めるのは自分自身。
それで初めて、『御白 夕花』と言う少女がそこにいる事になる。
「ア?そーゆーの使いてェの?別にいいけど」
ケロッと呑み込んだ。
自分が使う術以外にも幾らでも基礎程度なら教えれる。
こう言うのは、まずは好きな事からやらせるのが一番だと思ってる。
「要するに、"ヘナチョコ"ッて言われた訳な」
悪意は無いが物言いが一々ストレート!
「で、他には?アイツは確かに、お楽しみはとッとくタイプだが……
ああ見えて、ケッコー人に気に掛けるタイプだしな。他に何かあッたンじゃねェの?」
■御白 夕花 >
「はい。だから、ここからは私自身が頑張るところですっ」
与えられるだけじゃなく、自分も誰かの力になれるように。
私は『御白 夕花』なんだと胸を張って言えるように。
「おお……言ってみるものですね」
どんな種類があるのかも分かってないから駄目もとだったけど。
あっさり了承されて、魔術とクロロさんの懐の広さを思い知った。
「へ、へなちょこ……確かに間違ってはないですけど……」
ぐぬぬ、遺憾だけど反論できない……!
確かに相性の悪さを抜きにしてもアストロの方が何枚も上手だった。
見逃してもらえたのは、たまたま彼女がナナちゃんに見えたからで───
「……友達のこと、気にかけてました。
私と仲良くしてくれてる子が、アストロの古い友達だったみたいで」
■クロロ >
「おう、頑張れよ」
わかっているなら其れ以上言う事は無い。
これは彼女の人生だ。ただ、笑って見送り
"篝火"として、時には道を照らすのみ。
「……アイツの古いダチ、な……差し詰め"元・道具仲間"ッて所か……」
島の外から来た彼女の境遇は一応知っている。
詳しい事までは知らない。ただ、ろくでもない事は確かだ。
何とも言えない表情で眉を顰めて、腕を組んだ。
「ま、とりあえず触りだけでも教えとくが、オレ様が教える魔術ッつーのは
かなり"自由な感じ"だ。単純に魔力を思ッたモンに変換する技だ」
クルクルと指先を回せばふわり、と互いの周囲をそよぐ柔い風。
魔術により作り出した、緑の風だ。
「大事なのはさッきの火みてーに、"想像力"だな。
お前が光とか雷出してェッて思うなら、それを"想像"して"創造"するだけ。
……異能を出す感覚と変わりねェが、出すのは魔力だ。さッきの火に注ぐ感じだな」
「まァ、習うより慣れろだ。とりあえず、適当にやッてみろ」
■御白 夕花 >
あ、そこまで知ってるんだ。
なら話しても問題なかったかな……と思いつつ、今は魔術の勉強だ。
解説を聞き逃さないように、一挙手一投足から目を離さないように。
……したかったけど、実際に魔術を見せられると驚きと興奮が勝ってしまった。
「思ってたよりずっと自由なんですね……想像力……」
魔術なんて触ったこともない私でもできるのかな?
ううん、できるかな? じゃない、やるんだ。やってみせる!
そのくらいの意気込みがなきゃ始まらないよね。
「………………」
目を閉じて、まず想像するのは一等星。
その眩い光を両手の中に閉じ込めるように胸の前で構えた。
異能を放つ時にすることは、念じる。ただそれだけ。
さっきの感覚を思い出しながら、次に想像したのは───雷。
「……っ!」
目を開く。するとバチッ! という音がして、手と手の間で一筋の閃光が走った。
不思議と痛みはない。きっと、これが私から出た力だからだ。
■クロロ >
バチッ!と目の前で爆ぜる小さな閃光。
ほう、と感嘆の声が漏れた。中々見どころがありそうだ。
煌々とした金色が楽しげに細くなる。
「中々やるじゃねェか。後は、お前の想像力次第だな」
「オレ様の教える奴はな。その分、幅はそンなに広くねェ。作れるモンに限界はある。
まァ、ソイツの素養次第だがその気になりゃ雷ぐれェは慣れれば落とせるようにはなるぜ?」
こんな風に、と言わんばかりにクルンクルン、と指先を回す。
するとバチィ!と小さな落雷が目の前に落ちたり
その回転に合わせて雷がぐるぐる回転したりと自由自在。
まさに"想像力次第"、それが全ての素養が試される魔術だ。
「因みに出来ないモンはそもそも出ねェし
後属性相性が悪ィと思ッたよりしょッぱいモンが生まれる。
オレ様の場合、水とかだな。水出すのはケッコー骨が折れる」
体のせいが一番の原因だ。
それでも使えなくは無いが、わざわざ自滅覚悟で水をを呼ぶ事も余りない。
■御白 夕花 >
「わぁっ、できました! ちょっぴりだけど……えへへ」
素質はあったみたいで一安心。褒められると嬉しくなる。
この調子で想像を膨らませていけば、いつかクロロさんみたいに自在に操れるようになるかな?
「持ち味を活かせってことですね!」
得意不得意は人それぞれ。
やっぱり、異能と近いイメージができる雷を選んで正解だったかもしれない。
これが真逆の闇とか影とかだとこうはいかなかったと思う。
■クロロ >
「最初の一歩なンてそンなモンだろ。オレ様も─────」
<─────少しは貴様も、人間の真似事位は出来るようになったな>
不意に誰かの声が、脳裏に響いた。
酷く懐かしくて、嫌に傲慢な男の声。
思わず振り返っても、誰もいない。当たり前だ。
「…………」
軽く首を振って、後頭部を掻いた。
白昼夢でもあるまいし、そんな自分に嫌気が差す。
「まァ、そう言うこッた。それと、アストロの事なンだが……
お前のダチの古いダチ……だッたか?ま、なンかあッたら手ェ借りるかもしれンから、覚えとけ」
何かしら根深い因果を感じる。此れは勘だ。
しかし、そう言う縁なら無視は出来まい。
脳裏に響いた幻聴を振り払うように、ひと呼吸入れた。
「ンじゃァ、今日はみッちり行くから覚悟しとけや」
彼女の気が済むまで、今日はずっと付き合うつもりだ。
■御白 夕花 >
「……? どうかしましたか?」
言葉の途中で後ろを振り向いたのを見て首を傾げる。
なんでもない、って言われたら追及はしない。お互い様だ。
「お礼ってわけじゃないですけど、私で力になれそうな事なら遠慮なく言ってください」
アストロにはまだ聞きたい事がたくさんあるし、できればナナちゃんにも会わせてあげたい。
違反部活荒らしには協力できないけど、それで風紀委員に処分されたりするのは困る。
だから、組織の理念に反しない範囲でなら協力しよう。
「何はともあれ……よろしくお願いしますっ!」
───魔術の行使に精神力的なリソースを消費するってことを知ったのは、日が暮れてヘトヘトになってから。
ご案内:「常世公園」からクロロさんが去りました。
ご案内:「常世公園」から御白 夕花さんが去りました。