2020/10/04 のログ
ご案内:「常世公園」にアーテルさんが現れました。
■アーテル > 「いーい匂いがするー。」
ふらふらと何かに誘われるように、一匹の猫が公園にやってきた。
もう日が落ちて久しい頃合いだ。凡そ人目の失せた空間となれば不審に思われることもないだろう。
そもそもそんなものを気にする性根でもないが。
「……なんだー?
この前までこんな匂いしなかったんだけどなー……」
はすはす、鼻を擽るその香の源を求めて園内をうろうろ。
あちらにこちらに顔を向けて、ふらふらふらふら彷徨って。
寄り道するようでいて、確実にそこへと向けて足が進んでいた。
■アーテル > 「………これは……」
そして、精々が1,2メートルほどの細い樹木の前で立ち止まる。
猫の姿であれば見上げる程度の高さのそれは、葉の付け根にオレンジ色の小さな花を沢山咲かせていて、
あまり目立たない様相のくせに、その香はとても甘くて薫り高く…
「……どこか懐かしい気がする、うん。
…さて、なんでだろーかな………」
とことこ。更に距離を詰めてみれば、比例して香りもより強まった。
強くはあるが、不快ではない。
不思議な気分にさせられながら、深呼吸して胸いっぱいにそれを堪能すると…
「………なんて名前の樹なんだろーな、これ。」
普段であれば、ただの雑木の一つに過ぎないと捨て置いたろう。
何故か惹かれるその樹のことが、気になって仕方なくなった。
■アーテル > 「………んー。
図書館で調べりゃ、名前なんか出てくるか……」
名前なんて、今はどうでもいい。
大切なのは、そんないい匂いをさせる樹が目の前にあるということだ。
そこに長居してしまえば、きっと鼻が慣れて感じなくなってしまうだろう。
だが、それでも少しでも長く感じて居たかったものだから。
「……今日の寝床はここにしようかね。」
幸い、雨が降る気配はない。
地べたで寝る経験も久方ぶりだが、できないわけでもない。
少し気が早いが、この樹の根本を寝床にしようととことこ近づいて…ころん、と丸くなった。
「はー………
いいにおいするー………」
甘い匂いに包まれて、少し幸せな気分になったりして、猫の目じりがとろりと落ちる。
そうして公園の中に控えめに聳える樹の根本に、黒い猫が丸まっていた。