2020/11/29 のログ
ご案内:「常世公園」にクロロさんが現れました。
クロロ >  
「アー……。」

実に、実に気だるそうな声が男から漏れた。
退屈と言えば退屈だった。
手持無沙汰と言えばそうだ。何もない。
色々落第街の方ではドンパチあったが、"出る幕"でなければ、見過ごすのが"スジ"だ。
とはいえ、退屈も平和も適度に人を殺す。
公園のベンチにどかっ、と腰を下ろして天を仰いだ。
今日も綺麗な夜空、夜の公園。
生憎、寒さには滅法強いのでわからないが、今は寒い季節らしい。

「……仕方ねェ。」

仕方がない。
買ったはいいが乗り気ではないあれを読むか。
ジャケット裏より取り出したるその本こそ『ママの手料理』とでかでかと書かれた料理本。
おおよそ、その辺のヤンキーが手にしない代物。
この本を装備する事により、いかつい雰囲気が20%減少する。(当社比)

「…………」

明らかに微妙そうな顔をしている。
しょうがない、料理とかガラじゃないし。
渋々、と言わんばかりにぺらりと本を開いた。

クロロ >  
本当に乗り気ではなかった。
食事は"必要ない"体だからだ。
無駄なものは必要ない。クロロは魔術師故に、効率主義者。
暖炉と同じだ。燃えれば何でも魔力になる。
それはそれとして、裏切りの黒の連中はどうだ。
特にエル辺りの食事らしい食事なんて見た事ない。栄養食女だ。

「…………」

まぁ、要するに気に掛けた相手にひと肌脱ごうと買ったわけだ。
あくまで、必要ないから料理に興味がなかっただけであり
娯楽としての意味は理解している。
少しでも、アイツ等の足しになれば重畳。

「そういや、アイツ等何が好みなんだ……?」

思ったよりも食の好みがわからん。
エルはともかく、ソレイユとか霞でも食ってそうだし。
己が食事に誘わなかったら、もしかしてアイツも栄養食派か?

「…………」

よもやよもや、全員栄養食で済ましたりするのか…?
裏切りの黒怖……。

クロロ >  
流石に日常までヘンテコではないだろう、多分。
しかし、思ったよりも料理とは奥深そうだ。
何処にでもあるような家庭料理本だが、思ったより仕組みは深い。
パズルのようなものだ。クロロは魔術師だ。一度興味が出ればとことんのめりこむ。
知識欲とは、本当に深いものだ。

「……人様の事言えねェが、アイツもちゃンとイイモン食ッたら笑うンかね?」

無い感情をなぞる少女。
人としての人格の根底が無いなどと宣うが、未だ信じちゃいない。
そこまで言うなら、こっちだって意地にもなる。
魔術に不可能は無い。真白の記憶でさえ、それは信じて疑わない。

「……ヘッ。」

何時か、笑えるといいな。
悪が笑うというと、世も末だが、少しくらいはバチも当たるまい。
期待を胸に心を躍らせて、ニヤリと笑った。

「アイツ等に、オレ様の飯を食わせてやるのも悪かねェな。」

クロロ >  
――悪には悪の矜持を。
――悪には悪の救済を。
――悪には悪の断罪を。

「……よく言うぜ。」

暗がりでしか生きられない人間を知っている。
己のように、そっちのが居心地のいい人間を数多く知っている。
そして、"それが無い方が良い事を痛いほど知っている"。
絵空事、夢物語。だが、いいじゃないか。
何時か、必要なくなった時。"その後"の事を考えるくらい。

「オレ様が言えた義理でもねーけどな。」

相変わらず、自分が誰かもわからずじまいだ。
まぁ、いいか。何時か分かる。
ぱたん、と本を閉じてベンチを立ち上がり、軽く伸びながら帰路についた。

ご案内:「常世公園」からクロロさんが去りました。