2021/03/02 のログ
ご案内:「常世公園」に藤白 真夜さんが現れました。
藤白 真夜 > 講義からの帰り道。普段は寄りもしないのだけれど、ふと脚を休められそうな公園が見えると、立ち寄っていた。
公園とは言うけれど、どこか静かで、寒々しく見えた。

「……はぁ。また、失敗しちゃったな」

それはきっと、私の心が冷え込んでいるから。

1年間。
常世学園に通えるようになってから、1年間。
変な入学の仕方だったから、その分頑張ろう、って。
役に立つかわからない異能だけど、人の約に立てる方法があるんだ、って。
1年間の、研鑽、学習、努力――
その結果は、私にはわからなかった。

「……はぁ~っ」

ため息をすると幸せが逃げていくって言いますけれど、今日はちょっとむりなのです。
公園の遊具に腰掛けて、大きなためいき。
こんな時でも、行儀よく座ってしまうのが、少し悔しくて。

藤白 真夜 > 血液操作。
それが私の異能でした。
すごく気持ち悪くて、怖がられる、嫌な異能。
きっと何の約にも立たないのだろう、と。思っていたけれど。
ものすごく貴重なのだと、保護してくれた職員の方が言ってくださって。
その後、ず~っと、頑張ってみたけれど……結果は。

「……もう一度」

す、とてのひらを、宙に差し伸べる。
すると、何もせずともてのひらに傷が出来て。
ぶしゅっ、と血が吹き出たかと思えば。
ふわふわ、真っ赤な雲のように、血液が浮き上がって。

「もう一度、暗唱して。『先生』は言ってた。
 詠唱は必要無い。意識の問題。
 目的の決定。明確な想像。何より、
 ――求める想い……!」

初歩の、錬金術。
異能と組み合わせる魔術とはいえ、やることは単純な錬金術。
己の体そのものを触媒とするならばもっと簡単だと、先生は言っていた。

詠唱は要らない。ただ、意識するだけ。
―変われ……!

意識すると同時に、暗い瞳が赤く光る。
全身の血液と同時に、魔力が奔るイメージ。
一瞬の弛緩を伴って巻き起こる魔力の渦、は――

ぽふっ。

間抜けな音を立てて、てのひらの血液を、赤茶けた塵のように、吹き飛ばした。


「……、……はぁぁぁ~~~……」

しっぱい。
失敗です、失敗。

そう、何度試しても、だめ。
がくり、腰掛けたまま、また落胆して。

ご案内:「常世公園」に照月奏詩さんが現れました。
藤白 真夜 > 「……向いてないのかなぁ……」

すごく、嫌な言葉。思ってはいたけれど、そんなの、しょうがない。
事実ほんの少しずつ、上達はしていた。
最初は粉にすらならなかったんですもの。……失敗に変わりはないのだけれど。
落ち込むと、外の空気まで寒々しい気がしてきて。

そんな中、ぽてぽてと可愛らしく歩く子猫が、いっぴき。

「……あ。ご、ごめんなさい。」

思わず、誰もいないと思っていてため息を連打することに、ちょっと失礼な気がして。

「……って、猫さんに謝っても、何してるの、わたし。」

そんな自分も、少し嫌になって。
……嫌な事ばかり考えても、仕方ないから。

「……こほん。……にゃ、にゃにゃ~♪」

……そう。勇気を出して、話しかけて見るのです。
案外、猫と会話できる異能とか、あるかもしれませんし。

――ですけれど。
私に話しかけられた子猫さんは、明らかに全身の毛としっぽとおひげと、全身を奮い立たせて、ものすごい勢いで逃げていかれました。

「……、ぁ。……そ、そうですよね。……血生臭かったです、ね……」

何度も言われたこと。
気をつけようと、思っていたのに。
寒風が差し込むように、胸の中に冷たいものが、滑り込みます。

照月奏詩 >  
 今日は何事もなく、バイトを終えてその帰り道。なのだが。

「ふわぁーあ……」

 猛烈に眠い。
 最近テストやら戦争やら後始末やらで夜はロクに寝ていない。そういうこともあって大きなあくびをしていた。
 そんな帰り道にふと視界の端に留まったのはなにやら落胆している少女。
 放っておいてもいいのだろうが……はぁと息を吐く。こういう時無視できない性分なのだ。

「どうしたよそんな暗い顔して。嫌な事でもあったか」

 そっちの方に目線を向けて軽く手を振るう。
 初対面と言うこともあっていきなり近くによることはせずとりあえずまずは認識されるのが先と近寄りはせず。

藤白 真夜 > 「……ふあっ!?」

(ひ、ひとーっ!?完全に、一人だと思って、わ、私、猫さんに話しかけているところを、……う、ううっ……!)

「い、いえっ!な、なな、なんでもないんです!いつもどおり……、」

がばっ、と持ち上げて声のほうを見やれば、きっと男子生徒さんのお姿。
し、しかも男の人に……っ、見る間に顔は真っ赤になって、お湯でも沸かせそうな、あたまぐあい。
けれど、やっぱり少しだけ暗いトーンで……、

「いつもどおりの、挫折を味わっていただけ、なので。……嫌なことなんて、ありませんから」

……にこりと、せめて笑顔で、お返事を。

照月奏詩 >  
「ツッコミ所多いなおい」

 思わず少し笑ってしまう。
 いつも通り挫折と言う所もだし挫折は嫌な事じゃないのかとか色々と。
 少しだけ近寄って。

「で、挫折ってことは何か上手くいかなかったって所か? この時期だし」

 と上を見て少しだけ思考を巡らせて。
 わかったと手をポンと叩いて。

「テストで酷い点数で補講喰らったとかそういう話か? 時期が時期だし。もしくは補講すら落として追試決定したとか。それだとかなり面倒だもんな」

 なんて全然違う事を言う。
 が、この時期で悩んでいて、なおかつ踏み込めそうな領域などそれしかない。

藤白 真夜 > 「あ、あはは……」

(よ、よし……この人良い人そうだから、猫さんは誤魔化しましょう、うん)

「いえ、テストは、そこそこ。座学は、頑張れば頑張るだけ、戻ってきますからね」

(うそ。テストは、簡単。あのざまの後に言っても、もっと惨めな気がしたから)

「……ただ、異能と魔術のコントロールが、うまくいかなくて。頑張ってもうまくいかないことって、あるでしょう?」

自分のうちに何かを求めるように、手のひらに視線を落とす。……男の人の顔見れないからも、あるけど。

「……挫折って、そんなに嫌でもないと思うんです。出来なくて、どうしようもなくて。私、負けず嫌いで。だから、逆にやる気が出てきちゃうんです。……ほんとですよ?」

……でも、だめでした。
こんな、優しそうな方に心配されてしまう時点で。……やっぱりわたしは、だめ。

照月奏詩 >  
「あー、なるほどそっちか」

 なるほどなぁと。自分も昔はかなり手間取っていた記憶がある。
 それからうなずいていたが。少しだけ目を細める。

「なんというか、お前嘘下手だろ」

 パッと見た印象でそんなことを思う。
 ふぅと息を吐き出す。

「まず挫折が嫌でもないなんてわけはないし……それでホントにやる気が出てくるなら今そんな暗い顔してないだろっていう」

 流石にそれくらいはわかるぞ相手を見る。
 相手の目をまっすぐに見て

「まぁ、初対面の相手、しかも異性相手に弱音吐けなんて無茶は言わないけどさ。嫌なら嫌で良いんじゃないの? って思うぜ俺は」

 まぁそれもそれで言いづらいだろうけどと付け足して苦笑い。
 それから半歩下がって。

「練習付き合おうか? 俺防御系の異能だからいきなり大爆発とかしても無事でいる自信あるぜ?」

藤白 真夜 > 「えっ!い、いえ、そんな、嘘は――、」

優しいけど、ちゃんと私を見てくれている、瞳。
嘘じゃない……続く言葉は、出てこなくて。
嘘をついているつもりはなくて。
暗い顔をしているつもりもなくて。
でもきっとそれは、真実だったから。

「……すみません……」

どうしようもなくて、謝ってしまう。
こんな私にちゃんと向き合って言葉をかけてくれるだけで、良い人なのに。

嫌なら嫌で、良い。
その優しい言葉には、頷けなかった。

「――いいえ。ありがとうございます、先輩」

腰掛けた遊具から立ち上がる。
先輩かどうか、この学園じゃ年齢も学年もわからないけれど、今この時、この人は私の先輩だった。
私の、先に立つ人だ。

「嫌なものを受け入れるのではなく、私は良くしたいんです。……どうしても。それを、忘れていました」

少しだけ。
さっきよりかは少しだけ、まともな顔で。
きっと暗いままだ。元から顔暗いし。
それでも、まっすぐ見つめている。自分の為すべきことを。

「……防御系?……いいえ、いいんです。結局、ひとりでやらないと練習できなくて。何より、」

両の瞳から雫が溢れる。
頬を伝い溢れるそれは、真っ赤ないろ。
これは涙じゃなくて、血だから。

「私、こういう異能なんです。き、気持ち悪いですよね?」

流れる血涙が、本当に感情もなにもないように、ふわりと宙に浮かぶ。

照月奏詩 > 「そんな謝るような事はないって。それに……100%先輩じゃないぞ。俺1年だし」

 中等部ではないだろうしなお前なんて笑う。まさか先輩とは思っていなかったのでこの様である。
 その後の言葉にはうなずいて。

「なるほどな、良い考えだと思うぜ? 嫌な事を良くしたいっての。俺は結構好きだな。そう思えてるならいいじゃんか」

 なんて笑ってから相手をジッと見る。
 そして流れる涙。いやこれは……

「血か……痛くはないのか?」

 まず思ったのはそっちの感想だった。
 血など正直見飽きるほど見ているし今更気持ち悪いとかそんなことは思わない。
 だが、それゆえに血が出る状態。即ち怪我をしたのかと先に出てきた感情は心配だった。

藤白 真夜 > 「――……」

(……気持ち悪がったり、しないんだ)

内心、ちょっと悔しいくらい。
少しくらいこの人を驚かせて、やっぱり、って、思いたかったけれど。
すぐに心配してくれる、いいひと。
……うん、良い人にこういうことするのは、やめよう。

「はい、血液を動かせるので……そ、それだけなんですけど。口から血を出すより、いいですよね?」

本当は、いつも手から出す。
指からだと痛いけど、眼球からだと怖がられるから。わざと、怖がらせようとしたんですけど……。

「ふふ。良いんです。私より良い人は、みんな先輩ですから」

落ち込んでいる人間に、心配して声をかける。
当たり前かもしれないけど、それを当たり前にできる人は、絶対にいい人だ。私がそう決めたんです。

「先輩のおかげで、やるべきことを思い出せましたから、私もう行きますね!……1年生でこんなに人間が出来ている人に置いていかれたくありませんし」

……ちょこっとだけ、ぷくっと頬を膨らませて。
たくさんの感謝と、少しだけ嫉妬。

軽くなった足取りで、女子寮への帰路を取る。

「私、藤白 真夜って言います。まことのよるで、まや、です」

先輩を追い越して、振り向きざまに、自己紹介。
涙の跡はなく、ふわふわ浮いてる血に手を差し伸べれば。音も無くてのひらの傷に収まって。
そのまま、ひらりと手を振れば。

「……ありがとうございます」

最後に少しだけ、笑顔を見せて。たぶん、まだ暗い顔してますけど……。

照月奏詩 >  
「口から出されたらめちゃくちゃ慌ててただろうな。それこそ病院とかに引っ張ってくるレベルだったわ」

 それをされていたらある意味慌てた顔は見れたことだろう。間違いなく彼女の見たがった慌てるとは違うだろうが。
 それからの言葉に少しだけ笑ってしまう。

「なんだそりゃ。まぁ別にそれでいいならいいけどさ……ん、時間遅いから気を付けて帰ってくれよ。これで何かに合いましたとか色々と後味最悪だし」

 そうして見送っているが。相手が名前を名乗る。
 こちらも軽く手を上げて。

「照月奏詩だ。しっかり笑えるじゃんか。まだ少しくらいけどな」

 なんて言いながら今度こそ見送る。
 彼女が見えなくなれば軽く体を伸ばして。

「……発言からして。深読みしちまうよなぁ」

 実際自分は慣れているが血を流し操るなど気持ち悪いと言われても仕方がない。
 それゆえにあまり考えたくないが嫌な目に合ったりしてのあの性格……だったのかもしれない。
 出すがに学校版裏切りの黒をやるわけにもいかないし……はぁと息を吐き出すとこっちも帰路へ。少しだけそんな話を探ってみるかとか考えていた。

ご案内:「常世公園」から藤白 真夜さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から照月奏詩さんが去りました。