2021/07/25 のログ
セレネ > 「成程、焦らしはお好きじゃないと。」

少しばかり語弊のありそうな言い方。
焦らして拗ねる猫ちゃんも可愛いけれど、機嫌を損ねさせてしまうのは本意ではない。

「違う国から、違う世界から人が…人じゃない種も、やってくる。
…だからこそ面白い事もありますし、難儀な部分もありますよね。」

良い所も悪い所も、あるからこそ面白い。
相手もそうなのだと聞くと、興味深そうに蒼を細めて。

「ふふ、そんな偏った考えを持つ程固い頭はしていないつもりですが、よく知らない相手に対する疑いは尤もです。」

自分のせいで他の種もそういうものなのだ、と思われると困るし申し訳ないと思うのは分からない訳ではない。
だからこそ、相手の言葉にクスクスと笑った。
嫌なものだと感じておらず、むしろ好意的に思うから。

そっぽを向く相手、その毛艶の良さに、少し触れてみたくなって。
そうっと白い手を伸ばし、その頭を撫でようと試みる。

嫌がられれば大人しくその手は引っ込めるつもり。

アーテル > 「………や、まった。
 焦らされてもいいと思うこともあるが、そりゃ時と場合と内容による。」

ちょっと迷った。そして、発言を翻した。
そういう遊びだとわかっているならまだしも、
空腹のときに目の前に人参をぶら下げられるような所業はゴメンだと、
それなりの趣向は理解しているつもりだ。

「……むー、それならいいんだがー。
 なんだいお前さん、やたらと柔軟じゃあないか。
 いちいち言わずとも、俺の心配は十全に避けてさえくれそうじゃないかよう。」

相手の出自が出自なので、そういう価値観は既に構築済みだっただろうけれども、
それでも自分がわざわざ説明する必要もなかったのではないか、と思い至ったものだから。
そんな言葉が、つい口をついて出てきた。
ただ、そろりと白い手が延ばされると…

「んっ…………」

もごもご言ってた言葉も全部呑み込んで、目を細めておとなしーく、撫でられるに至るのだった。
猫の姿でその心地よさを知る以上、されるとわかると抗えないものがあった。

セレネ > 「目の前に”美味しいもの”があってお預けを食らう焦らしが辛いのは、猫ちゃんも人も同じなのですねぇ。」

前言を撤回した相手に軽く笑えば、含みのある言い方を再度。
食欲にせよ、別の何かにせよ、本能に抗うのは難しい。
趣向を理解している彼にはちょっと満足げ。

「自身の推測や憶測が本当に合っているかは分からないので、
むしろ言葉にしてくれたのは有難いことですよ?
言う手間が省けたじゃないか、というのはあるかもですけど。」

だから、わざわざ言葉にしてくれてありがとう、と。
労わる気持ちも込めて相手を撫でる。

頭を撫でて、顎を擽るように撫で、耳の後ろやら背中も撫でてしまおう。
毛艶が良いからついつい多く撫でてしまう。
撫で心地は抜群だ。

「野良…の割には艶が良いですけど、誰かからお世話されてたりするのです?」

アーテル > 「…そりゃそうさ。
 ニンゲンだろーと、猫だろーと、欲求に抗う辛さは同じだもんよ。
 ……お前さんだって、そうだろ?」

我慢はできる。が、我慢するだけあって無関心ではいられない。
大なり小なり、そういう欲を発散できる機会を目の前に待たされる辛さは同じだと説いた。

「……ん-むう。まあ、そーだが……そーだがぁ。
 俺だって、言われなきゃ分からないし、分かろうとしないタイプだがー…っ。」

そんな自覚があるにも関わらず、柔軟な考えができるのが羨ましいらしい。
もごもご口ごもりながらも、おとなしくなでられている。
そして毛艶を褒められがちに飼い猫かと問われると、

「世話なら色んな人んところでされてらぁ。
 だから、特定の誰かに飼われてるって気にはなってねぇな。
 毛艶がいいのは、俺のこだわりでもあるがなー。」

色んな人のところにふらふらと行って世話されてると返した。
耳の後ろやら、背中やら、細い手が通うと心地よさそうに鼻を鳴らしたりもして。

セレネ > 「…さてそれはどうでしょう。」

相手には言わせたくせに、己ははぐらかす始末。
軽く肩を竦めておどけてみせた。

「ふふふ、可愛らしいですね。
相手が本当にどう思っているのか分からない以上、下手な事を言うのは危険だったりしますし、
相手はきっと察してくれるだろう、と思われてしまうとその人の甘えにも繋がりかねませんので…。
まぁ、一長一短、といったところでしょうか。」

己の身近に居た人物が、相手のように「言われなきゃ分からない」タイプだったから。
それが良いのか悪いのかは、己も分からないけれど、
それはそれで良いではないかと思うのだ。

「根無し草…ならぬ、根無し猫…?
貴方のような猫ちゃんは誰かに飼われるのは嫌いそうですね。
自由を愛する、というか。」

誰かに縛られることなく、行きたい所に行って気付けばふらりと去っていって。
自由気まま、心の行くまま。
待つ人の事など、少しは考えてくれているのだろうかと此方が不安になるくらい。

相手の毛並みを撫でながら、蒼を細めた。
湛える感情は寂し気な、悲し気な、懐かしそうな。そんな感情が混ざったもの。

アーテル > 「…飼われることを、嫌うつもりはねぇさ。
 ただ、……そうだなあ。どうしても、時間の過ぎ方を考えることはある。」

自分と相手の時間の過ぎ方は、違う。
猫の姿でそれを言えば、きっと自分の方が生き急がねばならないのだと思われるだろうが。

「……俺を飼うとするならば、せめて好意の一言くらい示してほしいと思うのは、きっと傲慢だろうけどさ。
 それでも俺からすれば……それで充分なのさ。きっと、な。」

先ほど口にした「言われなければ分からない」タイプとして、
せめて自分を手懐けるのであれば、自分を好く相手であってほしい。
…酷くハードルの低いものではあるが、これがなかなかどうして難しい。
喋る猫に、そんな言葉をかけよう相手がいるものか。
ましてや、この猫の正体を知ってまで、なお。

「………なんだい。
 お前さんこそ、やけに身に覚えのあるツラするじゃあないか。」

徐に見上げてみれば、彼女のその眼がどこか物憂げに映る。
そんな彼女の事情が気になって、つい首を突っ込もうとした。

セレネ > 「人と猫ちゃんだと時間の過ぎ方も違いますからねぇ。」

己も人では無いからその気持ちは分かる。
尤も、相手が猫だと思っているから猫の方が短命だよね、と考えての言葉になるけれど。

「好意的な言葉が欲しいのは人も同じでしょう。
自分の事を好いてくれる人を嫌う人は…まぁ、あまりいないでしょうし。」

己はそれを傲慢だと思わないし、むしろ当たり前ではないかと。
喋る猫、という相手は確かに珍しい部類に入るのだろうし、相手の正体も知らないからそれくらいしか言えないが。

「…貴方のようにふらふらどこかに行っては帰ってくる人が身近に居たので、思い出してただけですよー。」

突っ込まれた言葉には、苦笑を浮かべて。
ついでに相手の可愛らしい鼻をツンツン、軽く指先でつつこうとした。

アーテル > 「……ほぉーん?」

自分と同じように、ふらふらとどこかに行っては帰ってくる人がいたと彼女は言う。
なるほど、そういう男が傍にいたかと猫はほくそ笑んだ。

「なんだ、俺をそいつと重ねたか?
 似てるのはそういう気質ってだけだと思うがねー?にしし。」

からかうように笑っていると、鼻をつんつんつつかれる。
こちらは軽口を叩いているのだから、鼻先触られることくらい余裕で許容した。
…ふすんと鼻を一度鳴らすと、更に踏み込んでみる。

「それともなんだ。
 今は会えない相手の話を、俺はしたかい?」

セレネ > 「…あー、何か期待している所悪いですが、その人は私の父親ですよ。
好きな人がそんな自由人だったら、お付き合いは致しませんので。」

溜息一つついた後、ほくそ笑んでいる相手にそう言葉を投げかけた。
己と付き合ってくれるようなそんな物好きがいるのなら、己はもっと真面目な人と付き合いたい。

「えぇ貴方と似ているのはその猫のような気質だけです。
貴方そういうお話好きなので?」

他人の恋愛事情とか、からかって楽しむような性質なのだろうか。

「…貴方の話は今この世界に居る人の事でしょう。
会えるのなら、話せるのなら、自分の思いを伝えてみるというのも一つの手かもしれませんよ?」

相手を飼ってくれるような人だって、相手のように言わないと分からないような人かもしれないし。

アーテル > 「おおなるほど、そいつぁ合点がいく。」

言われてなるほどと頷いた。
ため息交じりの彼女に対してこちらは悪びれもせずに、くつくつ笑っていたが。

「そりゃあそうさ。
 なんだってニンゲンてのはとかく恋や愛だのと複雑に考える。
 獣のそれより、もっと複雑なのをな。」

猫だって恋はする。だが、人間ほどに複雑ではないという。
猫だって縄張りや恋を巡って戦いこそするが、人間のそれほど多様ではないと。
愛の形も、きっと人間の方が多いだろうと。

「やめてくれぃ。こんな物件押し付けたらそれこそ訴えられらぁよ。」

それこそご冗談を、とばかりにからからと笑っていたが。

「それに俺は、ニンゲンの心がわからない。ニンゲンの傍にいたいとは思うけど、な。
 ただ、交わることのない平行線だからこそ…常に傍にいることができるのかもしれねぇな。」

そう呟くと、猫は寂しそうに小さな息を吐いた。

セレネ > 「人が複雑なのは、他の動物より本能のみで行動していないからかもしれませんね。
単純じゃないからこそ色々大変で、面倒で、でも面白いという事なのでは。」

理性や知性があるからここまで発展できたのだろう。
獣と同じならば、文明など築けないだろうし、言葉や文字も生み出せていないかもしれない。

「猫ちゃんを訴える人がいるのです…?」

人なら兎も角、相手は猫だ。
笑う相手に己は不思議そうに首を傾げていたが。

「分からないなら、分かるように努力をしてみるとか。
それでも分からないのなら仕方ありませんけれど…。
人間の傍に居たい、ね。貴方随分と人間の事がお好きなようで。」

己はそこまで人を好きだとは思ってない。
だから、相手を不思議に思った。
傍に居たいと思えるくらい強い想いがあるとは、と。

「…それも一つの愛なのでしょうね。」

アーテル > 「………ニンゲンと、俺の生きる時間は違う。
 それは、俺が長すぎるって意味で、だ。」

ここで、自分のことをもう一つ話す。
先ほど同じことを言った時には、話さなかったことを。

「俺がニンゲンの心が分かるか、っつったら…そりゃあ分かった頃があったさ。
 だが心あるものに、俺の在り方をさせるのは残酷が過ぎる。
 そりゃあ、耐えがたかったもんだ。」

既に一度は分かった身であると、猫はつぶやく。
更に言葉を続けるように。

「自分にとって近い将来、必ず愛するものを失うことに怯えるか。
 あるいは例え魅力的に思う誰とも一線を越えず我慢しながら、永遠の孤独を貫くか。
 そんな惨い生き方、心を持つものにはできねぇよ。」

だから逆説的に、自分は人間の心が分からないと言ったという。
猫にとって経験から学んだそれは、然るに一種の保険だった。

「言われなきゃ分からねぇってのはつまり、自分からも言わねぇってことだ。
 ……できることなら、蓋したまま捨ておきたいんだよ。
 種としてのニンゲンへの好奇心ならまだしも、特定個人への想い入れはな。」

セレネ > 「…あぁ、そういう事でしたか。」

種は違えど相手も己と同じようなものだったか。
納得したように呟いた。驚く事もなく、ただ平然と。

「……。」

相手の紡ぐ言葉に黙って耳を傾ける。
少し温くなった紅茶を口に運んで喉を潤して。

「――貴方、もしかして現在そんな想い入れをする方がいるという事でしょうか。
もしそうであるなら、自分の想いを殺して生きるのも、相当辛いものですよ。
毎日毎日、心をすり減らして。
心が擦り切れたらいっそ、その”想い”も擦り切れてしまうのかもしれませんが。
その想いを抱えたまま生きるのは、生き地獄みたいなものです。」

今まで浮かべていた感情はなく、淡々と述べる。

「まぁ、貴方がどうしたいかは貴方次第ですし、部外者がとやかくいうものでもないのですけれど。」

アーテル > 彼女の言葉を聞き届ける。
淡々と述べた後に、選択するのは自分自身だと告げる頃に、
こちらはふすんと鼻を鳴らして。

「だから、
 俺にはニンゲンの心がわからない、って。
 そう言ったろ?」

最初から、彼女の言う生き地獄を味わうつもりなのだと。
何度も体験した自分なら、"もう"大丈夫なのだと。
獣は彼女に、薄く笑った。

セレネ > 「私も貴方のようになるには、あとどれくらい生きれば良いのでしょうかねぇ…。」

己が抱えるのは憎悪。
相手と抱える感情は違うが、生き地獄なのは互いに同じか。
捨てられればどんなに楽か。忘れられればどんなに幸せか。

「笑って地獄を進んで行けるなら、それもまた楽しいかもしれませんね。」

彼には彼なりの苦悩も勿論あるだろうが、己にはそれが少し羨ましく思えた。
もう一度、相手の毛並みを堪能しようと手を伸ばそうとする。

「そういえば貴方、お名前は?」

アーテル > 「……お前さんが抱えるそれが何なのか、俺にゃわからないがー…
 まあ、なんだ。後腐れだけはないように、な。」

先に地獄を見たものとして、彼女に何がいえようか。
かける言葉を迷いつつも、きっとわかるものだけ包んでおいた。

「ん。
 ………アーテル。俺はアーテル。
 お前さんとは、以前に図書館で会ったことがある。」

撫でられながら名前を尋ねられると、観念したように多少の間を空けてから名乗り始めた。
そして、自分と初めて会った場所の話も添えて。

「あの時、俺は赤い髪したニンゲンの姿だったがよ。」

セレネ > 「ふふ、元の世界にこの感情も置いていけたら良かったなぁと何度も思いますよ。」

お陰でただでさえ生き辛い性格に拍車がかかっている。
どうにかして、この想いは今後捨てなければ。
地獄を見た先輩からの言葉には、苦笑を浮かべて。

「…あら、まぁ。
貴方猫ちゃんに化けられたのですね?
なら、自己紹介はせずに済みました。」

以前会った姿と、今の猫の姿。名を聞いて化けられるのかと蒼を瞬かせて驚いた。

「全く気づきませんでしたよ。
早く言ってくれれば良かったのに、何故隠していたのです?」

わしゃわしゃと、少しだけ雑に撫で回してみたり。

アーテル > 「そりゃお前さん、出会って早々に俺はあの時のニンゲンに化けてたんだーなんてほざいてみろい。
 もう不審猫を見る目になるだろうがよう。
 物事にゃ流れってのもあれば、そもそもここまで明かすつもりもなかったんだよ。」

自分と会ったことがあると、いうつもりは本当はなかったらしい。
それを言わせた動機は…

「…お前さんも、こんな猫相手に自分のことをかなり語ってくれたもんだからさ。
 次、もしニンゲンの姿で会ったときに素知らぬ顔をできなくなっちまう。
 だったら、ここで明かしておいた方がいいって思ったのさ。」

わしゃわしゃ、雑な撫でくりも甘んじて受け入れるも

「んむむむ、前髪が乱れるっ……」

ただ頭をわしゃわしゃされると、ついそんなことを言ってしまったりして。

セレネ > 「まぁ普通ならそうですね。
貴方、猫ちゃんの姿が本当なのです?もしかして他にも化けられたりとか?」

元居た世界で目の前の彼のように自在に姿を変える子を使役していたので見慣れている、とは口に出さない。
ただ己の場合大抵の事ならば驚かないので大丈夫…だと思う。

「こんな猫相手というか、猫相手だったからこそと言いますか。
動物相手だと気が緩むんですよ、可愛いですし。
貴方が以前と同じ人間の姿だったら、多分ここまで話してなかったと思いますし。
此処で私が話した事、他の人に言わないで下さいね?」

相手は口が堅い…と思うが、一応の念押し。

「隠してた仕返しですー!」

一頻りわしゃわしゃ毛並みを乱せれば、満足したか指先で彼の毛並みを整えてあげよう。
毛並みを崩されると嫌がるのはどの動物も同じなようだ。

アーテル > 「俺の真の姿かあ?そりゃあ、猫でも、ニンゲンでもない。
 それに、他にも化けられるしな。
 まあ、俺の機嫌と運がよけりゃ、どこかで見られるさ。」

自分の正体については、嘘を言わない範囲でぼかした。
この他に化けられることも付け加えておいて。

「…わかってる。
 俺もこういう身の上なだけに、秘密の話は好きでね。
 それに知られることの恐ろしさだって知ってる。
 だから心配はいらないさ。なんだったらもっと言ってくれてもいいと思うくr――」

なんて、調子に乗って言葉をつらつら続けようとしたときだった。

「――んむむむむっっ!!」

思いっきり、毛並みをわしゃわしゃに乱された。
その後で整えなおしてくれたから、不平不満こそ言わなかったが。
それでも若干のむくれっつらを彼女に向けていた。

「んにゃろう。思いっきりわしゃりやがってからに。」

セレネ > 「成程?ではまた次の機会に、ですね。
しかし、色んな姿に化けられるのは羨ましい…。」

相手の正体が見られる日が来たなら、その時は己も正体を明かすとしようか。
姿だけならいつか見せても良いと判断した。

「秘密のお話は少しずつするのが楽しいのではないですか。
これ以上は…そうですね。信頼度を上げて頂かないと。」

それにこういう話は等価交換。己が話せば相手にも話してもらわないと釣り合わない。

「ふふふ、猫ちゃんの姿だから何をしても可愛らしいですね?」

機嫌直してー、と少しばかりの猫なで声。
やはり猫は可愛い。

アーテル > 「あんまりおすすめしねーぞー?
 なんたってやりすぎると、自分が何者か…わからなくなるからな。
 レパートリーは多くとも、普段使いは少しがいいさ。」

この世界で、自分の正体についてここまで語った相手がいただろうか。
相手は少なくともただの人間じゃないと悟ってこそいても、
話の流れで、どんどん自分のことも喋っている気さえする。

「むむ。信頼かあ……まあ、出せるカードはまだあるしな。
 その辺はお互いじっくり吟味しようや。こういうやりとりは嫌いじゃあない。」

なんて、やりとりこそは互いの知性を試しあうようなものだったが。

「……ぅ、うっせえやい。俺だって雄なんだぞー。
 なんだったらニンゲンに化けてやろうかニンゲンにー。」

猫の姿で語られても、若干滑稽には映っただろう。
そんな猫撫で声に、照れ隠しやら否定したい気持ちやらがごちゃ混ぜになっていた。

セレネ > 「化けると習性もその動物に引っ張られるのですか?
…だとしたら確かに…うーん、少しで良いかもしれませんね。」

ただの人間じゃないどころか人ですらない己。
翼を隠してしまえば見た目は人と変わらないのだ。

「一人くらいこういった友人が居ても良いですしね。
まぁ、末永く仲良くしていきましょう。」

お互い色々抱える者同士、通じ合う何かがあるかもしれないし。

「人に化けられたらツヤツヤ毛並みではなくなるじゃないですか…!」

今はまだこの毛並みを堪能していたいのです!
と主張を強めておく。

アーテル > 「ある程度はこうして融通利かせられるけどな。
 喋ったり、ニンゲンの食事を食えたりとか……
 ただまあ、仰るように引っ張られることも多いのが難点さ。」

つい最近まで猫の発情期に悩まされたのは伏せておいた。

「……しゃーねーなー。
 末永く仲良くされてやらー。」

なんて、棒読み気味に言ってはいるが。
声色のそこかしこに嬉しさが隠しきれてなかった。

「………た、確かにそりゃあ、そうだ。
 まあ……俺の毛並みでいいなら、せいぜい今のうちに堪能してもらえりゃいいか…」

なんだかんだ、あてにされるのは悪い気はしなかった。
毛並みを堪能されたいというのなら、照れ隠し気味に猫のままでいてやろうと。

セレネ > 「そっか、普通の猫ちゃんだと人と同じ食べ物は食べられない事も多いですからねぇ。
人に愛でてもらえる反面、苦労も多いと。
…難しいところですねぇ。」

可愛いだけではないのだな、と人知れず苦労しているらしい相手に少し同情。

「成程これが”ツンデレ”ですね?」

言葉はぶっきらぼうだが隠し切れていない嬉しそうな感情に、
自身の顎に指を添えて納得の顔。

「ふふ、ではもう暫くはこのままでー。」

思う存分今の毛並みをもふってしまおう。

暫ししっかりたっぷり毛並みを堪能していれば、ふとスマホで時刻を確認。
……あ、もうそろそろ帰らないと。

「さて、アーテルさんの毛並みも堪能出来ましたし、色々お話も出来ましたし、私はそろそろ帰りますね。
あまり遅くなるとうちの子が寂しがってしまいますので。

お話、楽しかったです。
また会えた時は宜しくお願いしますね。」

立ち上がり、相手に小さく手を振ると先に公園から立ち去るとしよう――。

アーテル > 「そうともさ。猫はこうしてニンゲンに近くて俺ってば気に入ってんだけどな。
 ……それに、時期も見なくちゃ大変になることもあるしよ。」

つい、その話題を僅かに出したがやはり遠い目をした。

「誰がツンデレじゃい。デレがどこにあるんだデレが。」

ツンデレという言葉は知ってたようで、
デレはどこだと本人は問い詰めるが、まあ言うまでもなく。

「んん。……しょうがねえなぁ……―――」

そのまま、彼女に身をゆだねてしまおう。
主にもふられる方向で。

さて、そうしてしばらくたった頃。
話し込んだのも相まって、会ったときからどれだけ経ったか。

「ん、そうか。なんだかんだ話し込んじまって長居させたな。
 ありがよと、俺も楽しかった。」

猫はそのままベンチの上で、彼女が去るのを見送った―――

ご案内:「常世公園」からセレネさんが去りました。
ご案内:「常世公園」からアーテルさんが去りました。