2021/10/19 のログ
セレネ > 己と似た色かもしれない、蒼い瞳の女性。
己は月のような髪色だからなんだか対照的に思えて。

「これからどんどん冷えてきますけれど、
代わりに月や星は綺麗に見えますよ。」

澄んだ黒い空に光る星々。
それを眺めるのもまた一興だろう。

「…成程、まだ来たばかりだったのですね。
見知らぬ土地や人ばかりいるとついつい色々気になってしまいますよね。
あら、まぁ。ふふ、綺麗だなんて嬉しいお言葉有難う御座います。
貴女の髪も素敵ですよ。夜の色みたいで、とても貴女にお似合いです。」

お世辞でも綺麗と言ってもらえるのは嬉しく、口元を手で覆いながらクスクスと笑みを零す。
相手の表情、緊張も解れてくれたなら幸いだ。

「イェリンさん。
スウェーデン…というと、北欧の方でしたよね。
私はロシアの方の生まれなのでなんだか親近感が湧きますね。
えぇ、此方こそ。呼び方は貴女が呼びやすいように。」

握手を求められれば、快く右手を差し出して握手を交わす。

「何か分からない事があれば聞いて下さいね。」

イェリン > 「満月までもう数日ってところかしら。
じきにコート1つで誤魔化せない寒さになっちゃいそう」

既にホットパンツで過ごすには時期を逃して久しい。
ベンチに触れるタイツ越しの太もももひんやりでは済まない。
が、好きな服を着て過ごすのに多少の犠牲は付き物だ。

「言葉は話せるようになってから来たし、楽しく過ごせてるわ。
文字が読めないのが不便でしょうがないくらいかしら。
伸ばすと手入れが大変だけど、好きで伸ばしてるから褒められると嬉しい物ね」

お世辞を言えるほど世間を知らない。
悪く言えば物を知らないし、良く言えば噓が無い。
様々な思惑が渦巻く学園の中で多少俗っぽくなることはあっても、
根っこの部分は揺るがない。

「そ、北欧のそれも山間の村育ちだから、寒いのは慣れっこ。
…なんだけど寒いものはやっぱり寒いわね。
一緒の北国育ちね。イェリンって名前、こっちの人は呼びづらそうにするけどあなたなら違和感無さそうね」

繋いだ手は体温以上の温もりがあった。
紅茶と、おしること。月明かりの下で白髪と黒髪が揺れる。

「分からない事、というか教えて欲しい事なんだけど
――どこのシャンプー使ってるのかしら。
それとも香水? ローズの香りってやらしいくらいキツイのが多いけど、あなたのってそうじゃないから……良かったら教えて欲しいの」

セレネ > 「そうですね。満月は確か明後日の筈です。
冬場はコート一枚だと…流石に寒いでしょうね。」

好きな服を着て歩きたいのは性別も歳も種族も関係ないのかもしれない。
お洒落するには時に何かを犠牲にしなければならない。
それは非常によく分かる。

「あぁ…日本語って難しいですよね。
文字もそうですけど言葉も。だからつい…一人だと慣れた言語を使いがちなんですけれど。
そうそう、お風呂上がりとかドライヤーで綺麗に乾かすのも時間かかりますし。」

美を極めると何事も時間が掛かるのは仕方ない事だけれど。
こうやってきちんと見てくれて褒めてくれる人がいるから嬉しい。
彼女の言葉に同意するように首肯して。

「寒さに慣れていても辛いものは辛いですしね。
えぇ、むしろ日本の方のお名前の発音が難しいとかよくありまして。」

未だに友人知人の名前が上手く発音できているか少し不安なのだ。
指摘されていないから大丈夫だと思うのだが。
相手が片手に持っているのはおしるこ。甘いものが好きなのかしら。
数秒しっかりと握手を交わせば、そっとその手を離すだろう。

「…へ、ローズ…ですか?
んー。香水は今はつけてないのですが、私からそんな香りがするのですか?
使っている化粧品も特にローズ系の香りのするものは使ってないですけれど…。」

パチリ、と蒼を瞬かせる。
不快な香りではなさそうだが、己からそんな香りがしているなんて気付かなかった。
相手から蒼を逸らして色々と記憶を探ってみるもどれも該当しそうなものはない。

イェリン > 「明後日、か。今日みたいに晴れてくれると良いのだけれど。
明日からはもう少し温かい恰好をしなくっちゃ」

暖かな恰好というのは、どうにも慣れない。
動きづらいのは致命的なので、どこかのラインで活動的な服に落ち着いてしまう。

「同じ音なのにいくつも意味があって理解するまで苦労したわ…
何も気にしなくても出てくるのは、どこまで行っても母国語よね。
髪って一日二日放っておくと何日もかけないと元に戻らないから、下手なペットより手がかかっちゃう」

魔術や武術を身に付ける傍らで、綺麗でありたいという年頃の子らしい女の子らしさは健在なのだ。
手がかかる、それが分かっているからこそ、セレネの髪を見て素直に綺麗だと告げる。

「私としては暑いのよりはよっぽど快適だけど。何事も適度よね。
名前っていうのは分かるし音も分かるんだけど、何と言うか舌が回らない…みたいな感じ」

ここまでで会っただけでも、数人。
相手が聞けば分かってはくれるであろう音で発音はできているだろうが、相手の語ったソレと似つかない物になってしまう。
それが何かを知らずに買ったらしく、最初は怪訝そうな顔をしておしるこを舐めていたが、塩気の混じった甘みが気に入ったのか、幸せそうに暖を取る傍らで飲み進めている。

「ん、甘くて優しい香り。
フレグランスで出てたら完売間違いなしのフローラル。
ってあれ、ホントに付けてない?」

クンクンと、匂いを嗅ぐようなジェスチャーをして見せるが、
やはり出所はセレネのようだ。

「これがナチュラルなら、とんでもないわね……
魔術の類ならあやかりたいくらい」

セレネ > 「折角の満月が曇りや雨で見られないなんて悲しいですものね。
風邪を引かないように気を付けて下さいな。」

慣れない環境だと特に体調も崩しやすい。
少しばかり不安そうな、心配そうな蒼を向けてしまった。

「時々相手と会話が噛み合わなくて困った事もありましたね、私も。
…髪も肌も、綺麗を保つのはお金も時間もかかりますよねぇ。」

己は全体的に色素が薄いので、紫外線や太陽光は天敵なのだ。
日中は日傘がないと外を歩けない。
お互い年頃の乙女らしく、悩む話題も共通だ。

「私も暑い時期は苦手ですからお気持ち分かります。
涼しい時期に転入してきたのは幸運でしたね。
もう少し早ければ夏場の地獄を体験する事になっていたでしょうし。
そうそう。聞いた音と自分が発音している音が違うのも分かってるのに、上手く言葉に出来ないって感じ。」

異国から来た人同士のお悩みその二。
周りにはそういった子はあまりいなかったので、共通の悩みが話せて少し上機嫌。
おしるこを飲む彼女が何だか幸せそうに見えて自然と蒼も綻んだ。

「えぇ、今日は本当に何もつけてないのですよ。
……魔術、というと。貴女も魔術を扱える方なのです?」

匂いを嗅ぐジェスチャーを受けても首を傾げるばかりの己。
しかし魔術の話となると俄然興味が出てきた。少しばかり体勢も前のめり。
相手が扱う魔術はどういったものなのか、気になって。

イェリン > 「ご心配ありがと、優しいのね。先輩」

セレネ自身、北方からこちらに来ると寒暖差等に難儀したのかも知れない。
心配そうな色を映すその蒼に、大丈夫と笑顔を返す。

「そうね……この間ハグしたら驚かれたわ。常世の距離感って難しいのね。
肌は、特にそうね。私もあなたも白いからシミ一つで台無しになっちゃう」

故郷では海とサウナは恒例の遊び場だったが、紫外線だけは徹底的に廃してきた。
セレネと比べれば些かマシな物であろうが、夏場で無かったのは救われたと言っていいのかも知れない。
思えば、同性と話すというのもこちらに来てからは初めてだ。
美容やオシャレの話題は、肌寒さを忘れて弾む。
同郷でこそ無いが、共通点が繋がり自然と盛り上がる。

「魔術研鑽のためにここに来たような物よ。
使えるのは既存のルーンマジックと、シジルマジックが一通り。
あとは、独自の物だとこんなのかしら」

コートに隠れていたポーチから羊皮紙を一枚取り出し、
ふりふりと揺らす。
すると描かれた文字とも絵とも取れぬ模様がほのかに発光したかと思うと、空中に光の玉を浮かべる。

「ルーンマジックの亜種、って言っていいのかしら。私は略式符術って呼んでるけれど。
自分の知ってる文字や言葉の意味を自分で作った文字に閉じ込めて、意味を持たせて発現させる。
簡単な事なら大概できるけど、専門な魔術と比べると些細な効果なのがネックかしら。
火を起こす事はできるけど、炎を燃え上がらせるなら素直にルーンを使った方がずっと楽だと思う」

セレネ > 「いいえ、可愛い後輩さんが体調崩すのを見たくないだけですよ。」

風邪を引いて辛いのは何よりも本人だから、なるべくなら健やかに暮らして欲しいだけの事。
笑顔を返されればそれ以上心配を投げかける事はしなかった。
相手の身体の事は相手自身が良く知っているのだろうし。

「あぁ、私もお礼の意味も込めて頬や額にキスした事ありますが、かなり驚かれましたね…。
今の所はシミも何もないですけど、維持するのも大変ですよね。
太陽は天敵です。」

己の場合、月の女神というのもあるだろうが。
だからついつい活動する時間帯が日中より夜間寄りになってしまう。
尤も、夜更かしもお肌に厳禁なのでそう長くは過ごせないけれど。

「ほう、此処では初めて見る魔術系統ですね。
ルーン、一度頑張って覚えようとした時期もあったのですが、
他の勉学と並行するとどうにも厳しくて諦めたのですよね。」

そうして相手が取り出したのは羊皮紙。此処では珍しく、己からは懐かしく思える物。
それに書かれた模様がふわりと光り、光の球が空中に現れた。
眩しさに目を細め、蒼を光の球から咄嗟に逸らす。

「…ごめんなさい、驚いてしまいました。
自分で文字を…成程、面白い魔術ですね。
燃やすルーン文字は確かアンサズでしたっけ…?」

こう、Fを少し尖らせたような、と微かな記憶を頼りに。
あまり強い光ではなかったかもしれないが、己の視界が白く染まっている。何も見えない。
色素が薄い弊害の一つだ。

イェリン > 「見知らぬ土地に来て、気にかけてくれる人がいるって幸せな事ね。
何と言うか月並みな言葉だけど、安心するわ」

有事の際に声をかければ、きっと力になってくれるだろうと思える。
彼女の有事の際には力になってあげたいという思いの裏返しでもある。

「文化の違いって、分からない物ね。相手に嫌な思いだけはさせてないかって何するにしたっておっかなびっくり。
太陽が無いと生活なんてままならないけど、太陽のおかげでスキンケアも重労働なのよね…
見上げて愛でるならやっぱり月ね」

こちらに来て以来、夜の校舎や図書館を訪れたりと夜更かし続きだが、お互いにとって夜更かしは天敵だ。

「っと、ごめんなさい。驚かせるつもりは無くって…」

光球は出した時と同様に、イェリンの手首の動き一つでかき消えた。

「祓魔の業だから、本質的には戦闘向けなの。
神秘が人に害を為した時に抗うための、対抗術式。
――でもここでそんな物騒なの使いたくなくって。
普段使いに活かせるようなのだとホントに些細な事ばっかり。
私の知ってる事なら何でもできるけど、そこまで大仰なことはできないのよね」

術式を隠しているわけではないが、それが祓魔の物という事を知らせるつもりは無かった。
この学園でそのような技術を持っている事自体、危険視されかねないのだから。

「火を起こすだけなら、ケンの一字でできちゃうのよ、
明確なイメージと、具現化するための魔術的なリソースは必要だけど」

言いながら、自身の腰からはためくスカートの中から銀色の鉄棒を取り出し、地面にひとつの文字を描く。
それは"く"の字にも似ているルーン文字。

「こんなの。
あんまり明確に意思を込めると大変だから、雰囲気だけ」

セレネ > 「えぇ、そうですね。私も此処に来た当初、気にかけてくれていた人が居まして。
何というか…自分が此処に居て良いんだなって思ったというか。
まぁ…今でも色んな人に気にかけてもらってるのですけど。」

己がそうやって気にかけてもらったから、今こうして別の人に返している。
相手もいつか、そうして誰かを気にかけてくれれば良いと思うのだ。
無論、相手が何か困った事や有事の際には力になるつもりだ。
彼女は善い人だと判断したから。

「そうそう、本当にそうですよね。文化に慣れるのも時間かかりますし。
ふふ、貴女も月がお好きなようで、私嬉しいです。」

またこうして月を見上げながらゆっくりお話するのも悪くないと思えるくらい、相手との会話は楽しいと感じた。

蒼を閉じ、何度か瞬かせながら首を横に振る。視界は暫くすれば戻るだろう。

「…眩暈が起きるくらいの光じゃなかっただけ良かったです。
油断してました、此方も申し訳ない。
――そうですね。この島の中でも危ない場所はありますから、
隠せるのなら隠しておいた方が良いかと思います。
…自分で言うのもなんですが、こう見えて口は堅いので安心して下さいね。」

己は秘匿主義だから、今受けた説明も口外するつもりは一切ない。

「あぁ、そっか。その文字もありましたっけ。
……ちょっとまだ見えにくいですが、どういうものかは分かりました。」

彼女が地面に書いた文字を何とか読む事が出来れば頷いて納得。そしてふと、

「…さて、私はそろそろ寮に戻らないと。
――貴女さえもし良ければ一緒に帰りませんか?
視界が回復するの、多分もう少しかかりそうなので…。」

もう少し此処に居るか、用事があるのなら頑張って一人で帰るつもり。
…早速手助けしてもらう事になってしまったかもしれない。

イェリン > 「何処にいたって、人が一人でできる事なんて限られてるもの。
仲間や友人、師がいてくれるだけで、自分がそこに居て良いんだって思えるのよね。
…私も、ここで先輩みたいに出会えるかしら」

既に親切な風紀委員にお世話になっていたりするのだが。
善性や悪性という物は隠せるものではあるが、セレネと話してみて彼女が前者なのだとよく分かる。

「月が満ちたら、また空でも見上げられたら良いわね」

話していく内に、時間はじわじわと過ぎていく。

「隠せる物は、隠すことにしておくわ。
――ついでにこれも秘密、ね」

そう言って銀色の棒をスカートに収納する。
よくよく見れば、分割された槍の柄だったのだと、気づけるかもしれない。

「便利な代わりに、読み取り方も自由が利く。
だからこそ、危ないからあまり進んで使わないのよ、ルーンマジック」

シンプルがゆえに誤る。
誤れば自己に帰ってくる。魔術とは、そういう物なのだから。

「そうね、もう夜更けだわ。お肌の天敵ね。
私のせいでそうなったのだし、肩でも手でも取って頂戴。
星が降ろうが何が来ようが無事に送って見せるわ」

冗談めかしてそういうと、まだ見えづらいであろう視界に映るように片膝をつき、ゆっくりと手を差し伸べる。
その手が取られたのなら、夜闇の中を白と黒のコントラストで彩りながら、寮へと歩みを進めるだろう。

セレネ > 「誰かが傍に居てくれるだけで、結構安心するものですよね。
ふふ、きっと出会えますよ。だって貴女は善い人ですもの。
それは”私”が保証します。」

月の女神のお墨付き。
彼女は優しく、善い人であると。少し話しただけだがそれは十二分に知れた。

「秋の月は特に綺麗ですから。楽しみですね。」

願わくば遠い国に居る彼女の家族も、同じ月を見上げてくれれば良い。

「…もしかして槍の柄でしょうか。
私の師も槍使いでしたから、そこも親近感ですね。」

乙女の秘密は多いのだ。口元に人差し指を添えては秘密の仕草。

「ふふ、それはなんて心強いのでしょう。
寮に戻る頃には治っていると思うので、良ければ連絡先も交換しませんか。
何かあった時でも、それ以外でも、連絡が出来た方が良いですし。」

己の前で片膝をつき、手を差し伸べてくれる彼女。
その手を取ればゆっくりと立ち上がり、長い月色と夜の色が共に公園を後にする。
無事に寮に着き、彼女が嫌がる事がなければ
別れる間際に連絡先を交換して互いの部屋に戻ることとなるのだろう――。

ご案内:「常世公園」からイェリンさんが去りました。
ご案内:「常世公園」からセレネさんが去りました。