2021/10/24 のログ
鞘師華奈 > 寝顔が死人みたいに生気が無いと言われた事がある。
実際、3年前に致命傷を負ってあの黄泉の穴に落ちていった事までは覚えている。
そこからの記憶がぷっつり途絶えているが――あの時、自分は確実に死んだ筈なのに。

(…動く死体…ではないけど、こうして死に際を思い出す限りあながち間違いでもないのかな。)

だが、生身の肉体だし傷跡すら無い。記憶がそこだけ飛んでいる以外は以前と変わらない。
…或いは、自分自身が自覚出来ていないだけで致命的な何かが生じてしまっているかもしれない。

等と、推測と憶測が入り混じり少し憂鬱な気分になりそうだ。
ただでさえ、自身の正体探しの進展が遅々として進まないのだし。
”相棒”にもちょくちょく手伝って貰っているが…矢張り、自分でも情報を集めるべきだろうか。

「――焦ってもしょうがないのは分かってるさ。けど…もどかしさはあるんだ。」

確かに死んだ筈の自分が何故こうして五体満足で生きているのか。
薄々、勘付いている事はあるがそれをあまり直視したくは無い気持ちもある。
短くなった煙草を懐から取り出した携帯灰皿に押し付けて火を消しつつ。

(まぁ、まずは目の前の仕事を最優先で片付けないといけないんだけどね…。)

ご案内:「常世公園」に鞘師華奈さんが現れました。
鞘師華奈 > 油断するとつい、怠惰だった頃の自分に戻りそうになってしまう。
そうはならない、自分の足で、自分の道を、物語を歩むと決意したのだから。
立ち止まっても座り込んでもいいけれど、来た道を戻る事だけはしたくない。

「――もっと前向きに生きて行けたらいいんだけどね…。」

染み付いた性分だろうか…全く。ゆっくりとベンチから立ち上がれば軽く首や肩を回して。
今日は流石に自室へと戻ろう。家事も溜まっている事だし。飼い猫も暫し預けていたが引き取りにいかなければ。

緩やかに歩き出せば、静かに女は公園を後にする。

ご案内:「常世公園」から鞘師華奈さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に東山 正治さんが現れました。
東山 正治 >  
夜空に吐いた息は寒空に消えていく。
まだ息が白くなるほどの看破は来ていないが、急な寒さは勘弁だ。

「アー……」

ベンチにもたれ掛かるだらしなさ満点の中年姿。
正直眠いし気だるいが、寒さが絶妙に眠気を奪っていく。
適当に教師の本職でもほっぽりだして、家に帰れば良かったと軽く後悔。

「もうこんな時間だよ……あーあー」

ちょっと色気出して法学とってる生徒に小テスト。
ちょっと熱意出して過去の法律を参考程度に教えて現在の法律との変動の理由とかなんとか。
ちょっと優しさ出して他の教師の手伝いをしていたら。
あらまぁ、あっという間に真っ暗ですよ、と。

「……仕事、行かなきゃダメだよねェ……」

溜息交じりに吐き捨てた言葉には今日の気だるさが詰まっている。
人間、たまには善行詰もうとか思うものじゃないな。
委員会街の方角を、曇った眼が見据えて溜息だ。

東山 正治 >  
「…………つってもねェ」

勿論公安の仕事なんて自分からおっ被ってるから
睡眠時間返上で仕事もしてますとも。
書類整理に現場の張り込み、情報の是正。
特に情報は重要だ。数時間前の新鮮さは、数分で腐ってしまう事も在る。

「わざわざ"ガキの喧嘩"に首突っ込むのもなァ……」

ちょっと落第街の方じゃある違反部活が幅を利かせているらしい。
風紀委員の生徒を誘拐して手籠めにしているとか。
傍から見れば重大な事件だ。だが、正直言えば東山にとってはさして重大には思えない。

「……ま、ないワケじゃねェしなァ」

普通の生徒でも"不慮の事故"は起きるものだ。
ましてや、その"事故"に巻き込まれやすい風紀委員だ。
安否の確認が取れないのであれば葬式の準備でもしとけばいい。
華やかな学園生活の裏側、人の命は吹いては飛ぶ。

「ソレに、人権問題の話すんなら、"二級"の奴等はどうすんだよ……っと、くく」

あんまり口に出すような事じゃない。
わざとらしく、おどけるように笑って見せた。

東山 正治 >  
何より、向こうは向こうでこっちの情報。
風紀の動きだけでどうにかなるだろう。
此方は何時も通り裏方に接し、華々しく制圧してもらうとしよう。
牢獄行きかその場で処分か。どっちにしろ、ロクな死に方はしなさそうだ。

この騒動も、それなりのケリがつくだろう。
そもそも、こっちの手に負えないならもっと"手早く"終わってるはずだ。
お上を怒らせると怖いのは、何処の業界でも同じ事。
此方が必要以上に動く義理はなさそうだ。

「風紀の連中がその内ズバーッてやってくれんでしょうよ。それより……」

今日の仕事のが憂鬱だ。
ハァー。今日何度目だよ、この溜息。

「いっそ、最近頑張ってる華奈ちゃんに適当に押し付けちまおうかなァ」

ぼんやり。
ろくでもない教師もいたもんだ。

「……ジョーダンでも、言って良い事と悪い事があるって」

なんて、思わず苦笑い。

東山 正治 >  
「…………」

言って良い事と悪い事がある。
脳裏にふと思い浮かぶのは、数少ない自分の教え子。
真面目で、性悪で、実の所悪戯好き。
妖精っていうのは、元来そう言う人の隣人…らしい。

「─────」

吐き気がする。
喉奥にドロッとした嫌悪感が競り上がる感触。
どうしようもない程の嫌悪感。
東山はどうしようもなく、人成らざるものが嫌いでしかたかなかった。

「……なのに、さ……」

そう、つい真面目だったから、優秀だったから。
ついつい此方も入れ込んでしまった。
そして、その結果があれ。

「ロクでもねぇよなァ、やっぱ」

人間、色気づくものじゃないとつくづく思った。
それでも、時折思ってしまう。

「……もうちょい真面目さが傾いてりゃ、顎で使えたんかねェ」

嫌いなものは嫌いだ。
それはそれとして、優秀さも有能さも認める。
そこに差別は無い。毅然とした事実だけがある。
だから、思い出さずにはいられない。教え子の事を。
そう、口惜しかった。優秀な人材の落ちぶれた姿は。

「フられた男じゃねェんだからさ、気持ち悪……」

そして、同時に自他の嫌悪も同じほど沸き上がった。

東山 正治 >  
…まぁ、当人が今の生活に満足なら言う事は何もない。
結局は、"そう言う事"にしかならなかった。それだけだ。
おもむろにポケットに突っ込んだ手は、虚しく空箱を握り潰した。

「……あれまぁ、切らしてら」

しょうがねぇ、と気だるそうに立ち上がれば軽く肩を回した。
なんだかちょっと、肩が重い。因みに背中で手は繋げない。
中年の肉体に鞭打って、のらりくらりと歩き始める。

「一仕事する前に、コンビニでも行くか」

ハハ、と乾いた笑みをこぼし東山はのらりくらり。
実に自然とその姿は、夜の闇に溶け込んでいくのだった。

ご案内:「常世公園」から東山 正治さんが去りました。