2021/11/03 のログ
ご案内:「常世公園」にノアさんが現れました。
■ノア > 「またここ、か」
夜風の吹き抜ける公園、少ないながらも遊具やベンチ等がある街の人の憩いの場所。
当然ここに来る事自体が目的ではない。
僅かに残された探し求めた影の残滓を追ううちに、気づけばここに来ていた。
どうせこれもフェイクだろう。
追う者と追われる者。互いに手札の割れた状態での鬼ごっこだ。
「……クソがよ」
やり場のない思いを吐き出しながら、ベンチに腰を降ろして缶コーヒーのプルタブに指をかける。
抜け殻のようになった彼をただ突き動かすのは、純然たる殺意。
しかしその矛先はからかうように痕跡だけを僅かに残しては、嘲笑うように姿を見せない。
苦味を舌に感じながら、黒い水を飲み下す。
嚥下して一息ついてすぐに、大きなため息が出る。
その背中はくたびれて、凍てついた風に晒された細木のよう。
口寂しさにポケットの中のたばこに手を伸ばそうとして、やめる。
(吸うと蓮花が嫌がるんだよな…)
脳裏をよぎって喫煙を制止するのは妹の小言。
結局ポケットの中の1箱は、妹の失踪以来一本たりとも数を減らすことなくコートの中に収まっていた。
ご案内:「常世公園」に藤白 真夜さんが現れました。
■藤白 真夜 >
「吸わないのですか?」
夜の公園。
人影は無く、灯りに浮かび上がる無人の遊具がどこか物悲しい。
けど、そんなものよりもっと、寒々しいひとの後ろ姿があった。
知らず、声をかけていた。
「……あっ。
い、いえ、禁煙を頑張っていらっしゃるとかなら、いいのですが!」
自分から声をかけておいて、慌てたように取り繕う。
あまりひとに声をかけるのは、得意ではなかったけれど。
……その姿は、何処か放っておけない気がしたから。
夜の公園。
そこは、昼とは真逆だ。
賑やかなものを求める昼の姿とは違って、夜の公園は静けさを求める人が憩う場所。
私も、夜遅くまで続いてしまった雑務を切り上げて、少しだけ一休み、とでも帰り道のついでに寄っただけ、なのだけれど。
その人の背中は、声をかけなければ消えてしまいそうに見えたのだ。
■ノア > 投げかけられた声に、内心少々の驚きを持ちながら声の主を見据える。
年端もいかない見るからにはいたいけな少女がそこにいた。
夜闇の中で爛々と光る赤い目が目を引く、セーラー服の女の子。
見た目はまるで違うが、どこか妹の面影をそこに見てしまう。
「ん? あぁ見られてたか。悪いねみっともないとこ見せて。
いや、吸うと妹の機嫌が悪くなるから吸えねぇんだわ、コレ」
自然と漏れ出していた静かな薄暗い意思は鳴りを潜め、取り繕うように笑顔を貼り付けてタバコの箱をゆらゆらと揺らしてみせる。
それでも手が伸びてしまう事と捨てられないのは癖かはたまた捨てた過去への執着か。
「吸いたい、というよりはなんかね、触っちまうんだ。
それともお嬢さんが吸ってみるかい?」
冗談交じりにトントンと箱の隅を叩いて一本だけ箱からはみ出したその紫煙の元を少しだけ向けてやる。
もう遅い時間だ。
学生街とはいえ、夜ともなれば悪い物がいないとも言えない。
少しからかえば少女がまっすぐ家路につくものと思っての事だ。
向けられた不意の気遣いに照れもあったが、素直に心配して。
年下の少女に素直にそう告げるのはあまりにも説教がましいかと気が引けて、言葉が日和る。
「こんな時間に一人で出歩いてると、その、なんだ。えっと……危ないぞ?」
■藤白 真夜 >
「みっともないだなんて、とんでもありませんっ
……お兄さんというのは大変そうですね」
どこか、困ったように笑いながら答える。
……周りに誰も居ないからこそ、こういう場所に吸いに来たのかとも思ったけれど、すぐに問いはしなかった。
「い、いえっ、未成年なので、……って、冗談ですよね……?」
お断りをするように両手を前に出しつつ、 そんな冗談に怯んだ様子もなくその姿に近寄っていく。
街灯の照らす私の影が、男に触れるか触れないか、そんな微妙な距離。
近くは無いが、遠くも無い。
「……ご心配、ありがとうございます。少し、用事が長引いてしまって。
……」
内心、考え込む。これから投げる言葉は、失礼ではないだろうか。良くても余計なお世話というものだ。相手は真っ当な大人で、私は心配される側の小娘なのだし。
でも。
「危ないのは、貴方も同じではありませんか。
……貴方も、独りです」
一歩、踏み出す。ほんの少し、距離が縮まる。
「……す、すみません。変なことを言っていますね?
ただ。
……とても、……貴方が、寂しそうに見えました。」
捉えようにとっては侮辱にも近い、憐憫。
けど、少女の顔は真剣だった。どこか、痛切に。
名も知らない誰かを心配していた。
■ノア > 「大変、か……。
他に家族もいねぇし、可愛い妹の為ならそうでもねぇさ」
格好つけたりくらいはするもんなのよ、と笑って見せる。
零れそうになる本音や弱音が漏れだす前に、冗談を挟んで息継ぎをする。
「ん? あぁ、勿論。君みたいな子に吸わせたなんて言ったらそれこそ妹がおかんむりになっちまう」
不思議な子だ。
気遅れしないというのか、物怖じしないというのか。
触れてくるようなことこそないが、絶妙な距離感を保っている。
危機感が無い、というのとは少し違うのだろう。
「……」
見透かされたような言葉に、男は怒るでもなく何かを返すでもなく押し黙る。
相手の言っている事に理解が追い付かなかったというのもあるが、その言葉の真剣さに思う所があった。
「ん、……寂しそう、か。
まぁ、そうだな」
可愛い妹が自立しちゃってさ、等と軽口を挟もうとして、少女の真剣な視線に捕まる。
パチパチと何度か瞬きをしたが、逃がしてくれるような物でも無いらしく。
責められているという訳でもないのに、痛い程に心が締め付けられる。
「……君は、人の心でも分かるのかい?」
変な事言う子だ、と目線を逃げるように泳がせて言う。
ご案内:「常世公園」にノアさんが現れました。
■藤白 真夜 >
「あ、いえ、そういう異能はありませんから。
……私はただ、何も知らず貴方を、そう断言しただけです。
それについては、謝らせてください、ね。
……と、というか、いきなり寂しいもなにも、ありませんよね?
一人になりたい時なんて、誰にでもあると思いますしっ」
その指摘に、やはり慌てて弁明する。
実際の所はどうあれ、読心系の異能を持っている人間はこんな無様は晒さないだろうし。
「……私も、」
慌てふためいた様子は次の瞬間にははたと消え、足元の自分の影を見つめていた。
やはり、どこか痛切な表情で。
「私も、こういう独りになれる場所で、足を休めたコトがありました。
頑張っても、うまくいかず。
歩き続けても、見つからない。
ようやく走り出したかと思えば、道に迷ってしまう」
それは、自分の内を見ていたのかもしれない。
赤い瞳は、光無く影を見つめていた。
「……そういう時の私と、そっくりだったので……、放って、おけなくて」
顔をあげて貴方をもう一度見やれば、やはりその顔は心を配るように不安気に映る。
……あなたは、大丈夫なのですか、と。
■ノア > 「そうかい、いや随分聡い事を言うもんだからさ。
謝ったりしなくていいよ、間違ったこと言った訳でもねぇんだし。
まぁ、気に障る人なら障る、のかね。
一人になりたいってのとはちょっと違うな」
慌てる姿が愛らしく、毒気を抜かれたように言葉をつづる。
「――ずっと、一人さ」
言ってしまってから、辛そうな表情の少女を見てしくじったという顔をする。
「放っておけない、か。
人生の先輩みたいな口ぶりだ」
随分可愛らしい先輩だけどな、と言いつつ
隣、座るかい? と、ベンチの横を開けてポンポンと叩く。
少女だけ立ちっぱなしにさせているという事への心苦しさもあったが、
自身に共感しているらしい少女の事をもう少し知りたくなったというのが本音だった。
■藤白 真夜 >
「……え?」
一人なのだという。
私の中でおぼろげに勝手にできていた、妹思いの苦労性のお兄さんという想像よりも。
現実として見えていた……男の疲れ切った孤独な背中のほうが正しかったのかもしれない。
「――あ。
あ、ありがとうございますっ。
ではちょっとだけ、失礼しますね」
どこかあっけなく漏らされたその言葉の重さを考える暇もなく、誘われるままに歩み寄れば。
少しだけ距離を置いて、ベンチに腰を下ろす。
「……すみません、偉そうなことを言ってしまって。
私のほうこそ、夜道の心配をしていただいたり、よほどご迷惑をかけてるんですけど」
それでもやっぱり、どこか困ったように微笑む。
私に心配など要らないと言い捨てるかのように。
「……私、タバコ、好きなんです」
隣に座って近づいた男の顔を見つめる。あまり、近づきすぎることはしない。
「あ、いえ、吸いませんけどね!?」
先程の冗談を思い出して、慌てて付け足し。
「香りが、好きなんです。
……色んなものが、曖昧になる気がして」
男から目を逸らすと、何を見ることもなく夜闇の中を見つめていた。
何も見えることがない。……それが、優しさのように思えたから。
もう一度男を見る瞳は、
少し、潤んでいた。
「妹さんは。
何故、タバコが嫌いだったんでしょう?
香りが嫌いだったんでしょうか。
……それとも、貴方のコトを心配していたんでしょうか」
■ノア > 「皆、いなくなっちまったよ」
敢えて、自分自身が目を逸らしている事を相手に伝えたのは、きまぐれか。
見えて回るのは憎き相手の痕跡ばかり、捜せど捜せど愛しい妹の残滓すら見つかりやしない。
孤独になった中で、復讐心だけが、殺したいほどに憎む相手の存在だけが今の彼を生かしていた。
少し距離があるとはいえ、言われるままに隣に座る少女に、自分で言っておきながら多少の危機感を覚えつつ。
どーぞ、とその着席を見守る。
危機感が無い、というより自身を省みないといったような、そんな危うさを感じてしまう。
「何かしらの経験があって出てしまう言葉は、得てして正しいもんだ。それはきっと、誰かの為にはなる。
夜道の事は、まぁそうだな。
落第街の連中でも入り込めちまうからな、ここ」
実際、ノア自身歓楽街と落第街を行ったり来たりの存在だ。
「……意外だな、年頃の子なんかこういうの興味本位で触ったりしても根本的には嫌いなもんだと思ってたが。
香り、ね。もっと似合いのもんがありそうなもんだが、そういうのが欲しいって訳じゃなさそうだな」
曖昧に、濁したい。
全部ぐちゃぐちゃにしてしまう事に、価値があるのだろうか。
「……吸うとさ、長生きできねーんだってさ。
匂いも嫌だって言ってたけどな」
だからこそ、吸えば酷く叱ってきたのだろう。
立場が逆なら自分もそうしただろうから、何も言えた事は無いのだが。
潤んだ瞳を金色の眼で見つめる。
このご時世に、こんな島にいるのなら秘密の一つや二つ、それどころでは無い者を抱えている者も多い。
だからだろうか。
妙に気にかけてしまうのは。
少しばかり考えた後、ゆっくりと手を伸ばして少女が嫌がるそぶりを見せなければその頭をワシャワシャと撫でくろうとするだろう。
■藤白 真夜 >
「――そ、れは」
……言葉が出ない。
寂しそうに見えた背中は、本当に孤独の中に立つ人間のものだった。
「……、」
何も、言えなくなる。……ああ、私はダメだ。
ここで言葉をつまらせてしまうくらいならば、そもそも声をかけるべきではなく。
孤独な人間へかける言葉が、私も似た存在であるからこそわからない。
そして、本質的に加害者である私はそんな言葉を声に乗せる資格が無いのだから。
(……私が妹さんなら。タバコを吸っても良いと、言うと思います。)
――なんて安い言葉。絶対に言えない。
私はただ、潤んだ瞳で貴方を見つめることしか出来ず。
その伸ばされた手にも、抗うことなく身を任せて――、
「……ひゃ」
別に、抵抗するわけでもなく、おとなしくされるがまま。ただ、小さく声が上がるだけ。
……けれど、かすかに乱れた髪の毛の間から、顔を真っ赤にしながら何も言えず貴方を見つめて。
「あ、あ、あの?
こ、これは、いったい?」
上ずった声で。思いっきり、赤面しながら。
男の人にこうやって頭を撫でられたこともなかったり、そもそも距離が近かったことに今更気づいたり、これはどういう意味なんだろうと頭の中でわたわたと考えがめぐりきって、もはや瞳が潤むどころかぐるぐる目を回しつつあるのですけど――!
■ノア > 「ん、いやあんな事言った俺が悪いんだが、
そんな悲しそうな顔すんなって」
自身の苦悩はいくらでも受け流せるが、他人の特に少女のような子供のそれは酷く辛い。
しかし、言葉で言って何か心持ちを濁せるような物でも無いだろう。
やや強引だが、くしゃりくしゃりと、優しく頭を撫でてやる。
「あんまりさ、思いつめる必要なんてねぇんだよ。
言っちゃなんだが、俺も大概人様に顔向けできるような事して過ごしてねぇけどさ、君相手に話すのに負い目はあんまねぇんだ、これが」
根っこの部分が、過去が、精神性がそうさせるのだろうか、自罰的なそぶりを見せる少女を見て、そう言う。
異能の都合で見え隠れする少女の思いの発露を、受け止めて、言う。
「話しかけた事、後悔なんてしてくれるなよ?
これでも存外楽しく話してるんだ、久々に君くらいの年頃の子とマトモに話して楽しませてもらってるしな」
顔を赤くする少女に、同じようにすると恥ずかしそうに怒りながらも逃げなかった妹の姿を重ね、笑う。
「むかーし、警察なんかやってた頃からさ、君くらいの子が思い悩んだりせずに笑って過ごせる
世の中ってのはきっと幸せなんだろうなって思っててな」
ひとしきり撫でくった後に、最後にぽんぽんと軽く叩くようにする。
軽く乱してしまった髪を慣らすようにしてやりながら。
「自分で自分を許してやれねぇような事があるなら、それを否定したりはしない。ただ、俺と話して楽しませてくれた自分を認めて笑っててくれると、お兄さんは嬉しかったりするんだわ」
■藤白 真夜 >
彼の言葉は、何も言えないはずの私に驚くほど優しかった。
男のほうが、むしろ読心の異能があるかのような、……いや、これが大人の当たり前なのかもしれなかったけれど。
未熟な私が、良いことと悪いことにしか別けられずに好き嫌いするものを、彼はちゃんと自分の中で呑み込めているようだったから。
……ただ、問題なのは、
(あ、ああ~~……割と手が大き、ってそれは大人の男性だから当たり前で、血の匂いとか移りませんように~~、むしろ私みたいなのでなくてもっと社交的で美人な娘が居れば~~~!)
私の頭の中は羞恥と戸惑いとでいっぱいいっぱい、なのでした。
「け、警察の、方だったんです、ねっ……!」
なんとか耳に入ってきた言葉も、あんまり呑み込めた気がしない、けれど。
男の優しい世界観の片鱗は、理解出来ていたはずだから。
……子供が好きな人に悪い人は居ない。最近は、あまり聞かない言葉な気がしたけれど。
その言葉は、間違いなく当たっていると思う。
撫でられている間赤かった顔が、男の手が離れても、やっぱり赤いまま。
ようやく呼吸が出来るようになったかのように、落ち着くために深呼吸を何度か。
「……は、はい~……た、楽しませられたかは、わからないんですけどっ」
まだ頬は赤いけれど、ちゃんと男を見つめて、言う。
「今の貴方を見ても、不安にはなりません、から」
……恥じらいは残っているし、私はそもそも笑うのがあんまり上手じゃない。
だから、きっと。
はにかむような小さな微笑みを、浮かべるのでしょう。
■藤白 真夜 >
「私、3年の藤白 真夜って言います」
静かに、スカートを払ってベンチから立ち上がる。
辺りはやっぱり暗いままだけど、やっぱりその夜闇は何かを覆い隠すように優しく見えた。
恥ずかしさの残る頬の火照りを振り払うように、一度だけかぶりを振る。
「もう夜も遅いですし、一休みもできましたし。
私、行きますね。
……貴方は、一人でも帰れますか?」
なんて、やり返すわけではないけど、冗談を返してみる。
座った男を覗き込むように軽く背を曲げて、どこか満足気な顔で。
……そう。私はこの寂しそうだった人を笑わせるという目的を果たしたのだから。
■ノア > 「ん、俺はノア。歓楽街とかで個人探偵やってる」
立ち上がる少女に倣って自分もそうしながら、小さな名刺を手渡す。
暗がりの中、少女の表情から暗い色が抜けてるのを見ると満足そうに微笑む。
「悪いね、早く帰りななんて言いながら引き留めて。
そりゃ、俺は一人で大丈夫さ。いなくなった妹探しだすまではくたばってなんてやれないから、ね」
言って、満足気な表情の少女に小さく手を振り見送る。
ご案内:「常世公園」から藤白 真夜さんが去りました。
ご案内:「常世公園」からノアさんが去りました。
ご案内:「常世公園」にファロンさんが現れました。
■ファロン > 「眠い」
真っ赤なツインテールを揺らしながら、暗くなりつつある公園を歩く小さい影。
背丈の小ささといい、見た目は明らかに人間の少女ながら、後ろに伸びる尖った角が明らかに人外の存在だと主張する。
「……固くて寝づらそうだな……こっちは前に寝たから他のとこがいい。木の上は……いい感じの太さの枝がない……」
うろうろと公園のベンチやら芝生やら植え込みの裏やらを見て回るのは今夜の寝床を探すため。
ホームレスそのものの生活をしている様は端から見るとひどく不憫にも見えるかもしれないが、何もやむにやまれない事情があるわけでもなく本人が勝手にやってること。
■ファロン > ふと見上げるのは空の彼方。
この世界には、龍は雲をつかんで空を飛ぶという伝承?があるらしいが、甘く見られたものである。そんなことをしなくても龍は自分の力でどこまでも飛んでいける。
ただ、雲の上で横になって寝るというのはいいアイデアかもしれない。
「ふん、ちょうどいい、我の力をこの世界の愚民どもに見せてやるとするか……!」
バッ、と片手を天に突き出しカッコいい(?)ポーズを取る。が、そのまま数秒硬直して後、どっかりとベンチに座ってしまう。
「……やっぱりやめとこう。横で見て我を讃える者がいなければつまらん」
できないわけじゃない、決して出来ない訳じゃないが、今はやらないだけ。
それに雲の上で寝たら翌朝にはすごい遠いとこまで流されてそうだし。
うんうん、と誰にともなくうなずくと、改めて寝床について考え始める。
しばらく結論は出なさそうだ。
ご案内:「常世公園」にファロンさんが現れました。
ご案内:「常世公園」にファロンさんが現れました。
ご案内:「常世公園」に照月奏詩さんが現れました。
■照月奏詩 >
仕事の帰り、軽く欠伸を一回。
秋も深まり冬が見え始めた今日この頃、寒さの苦手な自分にはずいぶんと辛い季節が近寄りつつある。
正直言ってしまえば寒さも能力を応用すればいくらでも誤魔化せるのだが、常時能力を発動し続けるというのも面倒だしなによりバチバチと煩い。
というわけで能力を発動せずに歩いていると視界の端に映った少女。明らかに異邦人といった様相の角などを見てしまうがそれより目についたのはへそ出しの恰好。思わず声に出す。
「……それ、寒くないのか?」
寒さが苦手な自分としてはそれが中々に考えられず。
異邦人なのでもしかしたら買うお金がないとかそういう理屈かもしれないと思いそんな事を口走ってしまう。
しかし1番に思ったのは寒くないのだろうかという単純明快な疑問なわけで。
■ファロン > 「あん?なんだお前は」
話しかけられて返した言葉は、文字面だけ見ると酷く挑発的というかヤンキーライクだが、その表情はぽかんと気の抜けたもので、そこには実際怒りも苛立ちもない。
目の前の男は(ファロンから見れば)背が高く、こちらを見下ろし気味なのは気に食わないが、それも別に怒るようなことでもないし。ほんとに気にしてないし。
「ふふん、人間は不便なものだな。ついこの間まで暑い暑いと言ってたかと思えば今度は寒いなどと。我には全く無縁な悩みだが」
ベンチから立ち上がってそこまで一息に言うと、腰に手を当てて胸を張る。
大きな胸が前に突きだされた格好のままどや顔を見せているのは、当然来るであろう称賛の言葉を待っているからなのだが、果たして伝わるかどうかは別だ。
ご案内:「常世公園」にファロンさんが現れました。
■照月奏詩 >
「っと、悪い悪い。別に怪しい者じゃないって。単純に疑問に思っただけ」
と相手が少しポカンとした様子を見せればそんなことをいって苦笑いを浮かべる。
そして相手の言葉を聞けば感心したほうにホーとつぶやく。
「見た目から人間じゃないだろうなとは思ってたが……なんともうらやましい話だ。寒さだけは苦手でな」
嫌になるぜと首を軽く横に振るって。
「で、あれか。こんな時間にこんなところフラフラしてるって事は。散歩か何かか?」
まさか寝床探しなんて露も考えておらずそんなことを言う。
服が薄汚れているだとかそういうのがあればまだわかるのだろうが、そういった点が見当たらなかったからな。
まぁそんなマジマジと相手を見る事も無いが。
■ファロン > 「ふふん、まぁ人間がいくら羨んだとて手に入る力でもないが、羨むのは自由だとも」
ふふーん、と上機嫌に鼻を鳴らす。『うらやましい』はファロン的には十分称賛のうちに入る言葉だと解釈されるらしい。実際のところ特に寒さに強いという能力があるのか、それとも単に鈍感なだけなのかすら曖昧なのだが。
「うむ、聞かせてやろう。我は今日の寝床を探している。寮での暮らしは性に合わんのでな。お前、どこかいいところを知らないか?」
特に隠すことでもないので、今やっていた(?)ことをそのまま口にする。
いつもこれを言う度人に驚かれるので、寮は性に合わない、という情報を改めて付け加える癖がついていた。
■照月奏詩 >
「あん?」
相手の発言を聞いて少し怪訝な顔を浮かべる。
自分は経歴的に別にそういう相手を見るのは鳴れていないわけではない。むしろ寮に合わない相手を探す方が早いくらいだ。
「……とりあえず座るな?」
そう相手に告げてからベンチに腰を下ろす。
それから考える。相手の言葉の意味はまぁ間違いなくそのままだろう。
「ええっと、あれだ。良い場所というのは条件次第なんだが。そもそもどういう家を探してるんだ?」
と聞いてから。ああ、と思い出したように付け加えた。
「悪い、あれだ。煩い方が良いとか静かな方が良いとか。広い狭いとかそういう環境的な意味でだ。その辺を聞かないと人間にとっての良い環境しか案内できないからよ」
相手の種族か何なのかわからないが、その辺を知らないと案内はできない。
故にまずはそこを聞いた。
■ファロン > 「うむ、座るがいい」
相手がベンチに座ると、こちらもその横にちょこんと(本人的には威厳たっぷりに)座る。端から見れば兄妹かなにかに見えるかもしれない身長差だがそんなことは気にしない。本当に気にしない。
「なるほど、条件か。それは難しい問題だな。我は寝心地さえよければなんでもよいのだが……」
家。向こうがその言葉を選んだのを聞いて、ふと思い付くことがあった。それは、こちらの意図がうまく伝わっていないのではないか……とかそんな話ではもちろんなくて、
「貴様の家はどんなところなのだ?煩いのか?静かなのか?狭いのか広いのか、聞かせてみるといい」
参考までに、というようにいきなり個人情報に首を突っ込んだ。
■照月奏詩 >
「またざっくり切り込んできたな……で、俺の家?」
んーと考える。空を見て考える。
そして考えた結果。
「……何もないな。学校いってバイト行って、かえって寝るってだけだから。マジで何もない。煩くはないけどまぁ通りは少しうるさいくらいか? 少なくとも女の子にとっていい部屋じゃないって事だけは断言できる」
ホントにそんな意見だった。寝心地が良いならまだいいが、それすら安物の布団だ。
というよりそもそも家に帰らないで裏に消えていくことすら多い始末であるわけで。
「で、ホテル泊まれるだけの金もないだろうし。そうなると……難しいよなぁ。寝心地が良い場所ってのは」
安値で泊まれる場所なんて総じて良い寝心地とは言えないだろうし。良い寝心地を求めるならば総じて値段は高くなる。
そして相手に目線を向けて。
「寝心地以外の要素は、例えば今出したが。所持金とか」
■ファロン > 「何もない……ふーん、そうなのか。人間も大変だな」
何もない。通りに近い。その条件から、道路の側の公園か空き地のようなもののど真ん中で寝ている男を想像する。さきほどは寒いのはこたえると言っていたような気がするし、流石に辛かろうと少し同情してしまった。
「金?金はないが……ふむ、他の条件と言えばそうだな……星が見たいな。暗くて夜空がよく見えるところがいい」
さきほど空の上まで飛ぶということを考えていたのもあって、そんなことを思い付く。
金があればほてる?とやらに泊まれるのか……と、参考情報を心に留めているのは内緒。人間に『そんなことも知らないのか』と思われたくはないので。
■照月奏詩 >
「ない、よなぁそりゃそうだよなぁ」
そうじゃなかったらわざわざ聞いてこないよなぁと頭を抱えた。
そして飛んできた注文は星が見える場所。金が無くて星が見えてなど野宿しかない。のだが、流石に野宿しろとは言えず。
「そうだな、とりあえず星が見えるってだけならあそこの時計塔見えるだろ。あそこの天辺からなら良い感じに星は見える。でもかなり寒いから寝るにはお勧めしない」
だからと言って懐をゴソゴソ。
そしてサイフを出して。少し考える。異邦人街はあまり詳しくはなかったが。たしか……
と数枚お札を取り出して。
「こんなもんあれば異邦人街の安い宿くらいなら泊まれるはずだ。あそこならたぶんお前みたいなタイプも珍しくないだろうし。働く場所と家くらい手配してもらえるはずだ」
それをそのままファロンの方へスッと差し出す。
言ってしまえば名前もしらない関係。そこまでする義理などないのかもしれないが……だからと見捨ててしまうのはいくら何でも違う。
だからと差し出した。
■ファロン > 「時計塔か……なるほど、参考にしよう」
寒くておすすめしない、とは言われたが、こちらは寒いのなど気にしない。寝床に選んでみるのも悪くなかろう……と思っていたところに差し出されたのは横長の紙きれ。それをまじまじと見つめ、
「これが金か。なるほど……」
別に自分は宿など泊まらなくても問題ないが、泊まってみたい気持ちがあるのも事実。
しかし、むしろこれで宿に泊まらねばならないのは、『何もない』人間の方なのではなかろうか。そう思って、
「お前も一緒に泊まればよかろう」
と、軽い気持ちで言いながら、金ではなくそれを差し出した手の手首をグッとつかむ。二人泊まるからといって倍の料金が取られたりはしないだろうから、一緒の部屋に泊まるのが一番効率的なはずだ。
■照月奏詩 > 「良いわけないだろ!? 俺が怪しまれる上に俺は家あるっての!!」
たしかに何もないが、家はある。
そもそも同じホテルなど言ったら間違いなく変な目で見られる。
そもそも相手の容姿からして危ういのだ。そんな下らない事で変態扱いは真っ平ごめんな訳で。
とグイグイ手を引くがこちらは人間。力では龍には勝てない。
「というか、これが金かって、見た事も無いって……お前ずっと野宿して暮らしてきたのか……?」
相手の反応からまさかと思って問いかける。目線はしっかりと相手を見ていた。
まさかとは思うが、今の反応からしてそれもあり得るわけで。だとするとこのまま振りほどくのではなくとりあえずホテルまではついていった方がいいのだろうかとか色々と頭の中で考えていた。
■ファロン > 「何を怪しまれるんだ?宿に泊まるだけだろう」
はて?と首をかしげながら手首をつかんだまま離さない。というのは、どうしても一緒に行きたいからというよりは、なんだか嫌がられているのが気に食わないからなのだが。
「見たことはある。これがこの世界の金ということを知らなかっただけだ」
手首をつかんだまま、えへんとふんぞり返る。学校に行っていれば物を買っている生徒を見ることくらいあるが、元の世界に紙の通貨などなかったので『これが金である』と結び付かなかっただけである。
どちらにしろ手にしたことがないのは事実だし、えらそうにすることではないのだが。
■照月奏詩 >
「何でも怪しまれるんだよ。この世界はそういうものなんだ……!」
としばらくグイグイ抵抗していたが、ガクッと力が抜ける。
諦めた。
「まぁ、あれだ。ホテルまではついていくよ……でもあれだからな。明日の用意とかも家でしないといけないからそこまでだからな」
それもまた本当の話。色々な意味で準備することは山盛りなのだ。
だから話してくれと軽く握られた側の手をフリフリと。
「ああ、なるほどな。まぁ少しいれば見ないってことはないか」
そりゃそうだよなぁと頷いて。
「でも、あれか。つまりズッと野宿してたって事か……? まぁ来てから何日かとかわからないけど」
■ファロン > 「そういうものなのか。人間は何かと不便なものだな」
何を言っているのかまるで理解はしていないが、一応納得した風な顔はしておく。
せっかく気を遣って言ってるのに……という気持ちがあるのも事実だが、向こうにも事情があるならしかたない。……というのはどちらかと自分を納得するために思っていることなのだけど。
「知り合いの家で布団を借りることもあったが、基本は外だな。こういう緑のあるところだと特に、故郷を思い出せるからな」
言ってから、後半はやや失言だと思った。これではまるで故郷が恋しいみたいではないか、神の龍ともあろうものが。
そう思って、ようやく握っていた手首を離して、ぷいとそっぽを向く。
■照月奏詩 >
「なるほどな、元の世界がそういう風ならたしかに家の中ってのは少し落ち着かないか。でもそうなるとテントとかその辺手に入れないとな……」
だとするとお金が必要になってきそうだ。
だが流石にそれらを買いそろえてやれるほど資金力があるわけもなし。
少し考えたが、少し首を横にふって。
「やっぱり俺じゃいい方法思いつかないな。異邦人街でたぶん色々と聞けるからその辺で自分にあった環境なんかを探したほうがいいと思う。あそこたしかそういうガイドもいたはずだし」
いなくてもあそこなら先輩が大勢いるはずだ。だから大丈夫だろうと。
それからふと思い出すように。
「そういえば、あれだ。名前すら言ってなかったな。照月奏詩だ。よろしくな」
■ファロン > 「ふぅん、そういうのもあるのか。覚えておいてもいいか」
無論、学校のガイダンスやらなにやらで手続きやら説明やらはあったし、相談するところも教えてもらったはず。
が、そんなものを真面目に聞いて真面目に相談しに行く性格でもない。
それが何故、今はちゃんと聞いているのかと言えば。
「……ファロン。めちゃめちゃ偉い神の龍だ、覚えをめでたくしておいて損はないぞ、ソウシよ」
ふふ、と笑って見せるくらいには彼のことを気に入ったからで。
無論、覚えをめでたくしたところで具体的にどんな見返りが与えられるのかなどということは全く考えていないのだが。
■照月奏詩 >
「ほー、神の龍。神龍って奴か。すごい龍にお布施しちまったな俺は。こりゃ近い内に良いことあるかもしれないな」
ハハハと笑って返す。ホントと思うか嘘と思うか。そんな事はどうでもいい。
別に騙す理由はないだろうし、こちらとしても騙されて困る理由などない。だから信じてしまった方が良い。
「そういえば良いことで思い出したが、野宿してたんなら紅葉とかよく見てたと思うんだが……七色の紅葉とか、白色の紅葉って見つけた事あるか?」
丁度今話題の紅葉を聞いてみる。自分はどちらも生憎見つけてはいない。
たぶん見つけていないと思うのレベルだが。
■ファロン > 「ふふん、存分に崇めるがよい」
向こうが好意的に受け止めているということは、こちらを讃えているということだろう。それくらいの軽いノリで得意気になって胸を張る。
「ん、七色の紅葉に、白い紅葉?聞いたことがないな。探しているのか?」
紅くない紅葉は紅葉ではないのでは、などと野暮なことは言わない。緑色のことだってあるわけだし。
一応世話になったわけだし、なるべく力になりたいという気持ちで聞き返す。
■照月奏詩 >
「いいや? 今噂になってたからな。もしかしたら見つけたかなって思ってよ」
とベンチに深くもたれかかる。
で指を2本空に突き出して。
「七色の紅葉を見つけた人はその願いが叶うらしい」
と1本の指を折る。
そして、少しだけ笑って。
「でも白いのを見つけてしまったら……だってさ。たぶん願いが叶わなくなるとかそんな感じなんだろうな」
ただの都市伝説的なあれだよと笑って返す。
「そもそもこういうのって両方見つけたらどうなるんだとか。今みたいに知らない奴が見つけたらどうなるんだとか色々とあるし。まぁその辺も合わせて都市伝説。なんだろうけどさ。でもなんとなく面白いだろこういうの」
■ファロン > 「ふぅん、なるほどな。人間はすぐ他人に……というか、自分以外のものに願いを託すのだな」
七色の紅葉を見れば願いが叶う。
もし願いが叶うなら、自分は何を願うのか。ありがちな話題だが、自分は考えたこともなかった。
「もし七色の紅葉を見つけたらくれてやろう。少しは世話になったわけだからな」
自分なら、という思考を断ち切って軽く言ってみる。ついでに、
「白いものを見つけたら……燃やせばいいのか?」
ボッ、と口から吹き出した炎は頭ほどの大きさまで膨らんで辺りを照らすと、すぐに散るように消えていった。
よくわからないが、都合の悪いものは燃やして消す。というのが自分のやり方だ。
それで消してはいけないものを消してしまったこともあるわけだが。
■照月奏詩 > 「龍からすりゃそうなるよな。中々耳が痛い話だ」
と願いを託すという遺体所つかれれば苦笑いを浮かべる。
そして首を横にふった。
「いや、俺には渡さなくても良い。折角なら自分で見つけたいしな。白いのも同じく……燃やしてもたぶん意味なさそうだし」
そういうのは結局は見つけた事に意味があるのであって。たぶん貰っても効果は起きないのだろう。
そして白いのも同じ。例え燃やしても見つけた時点でアウトなのだと思う。
しかしそれから少し笑って。
「でもまぁ、ファロンが白いのを見つけた分には何も問題なさそうだな。神の龍なんだろ? ならそんな都市伝説なんて簡単に捻じ曲げちゃいそうだ」
なんて自信満々で火を噴いたのを見てそう答えた。
■ファロン > 「なんだ、いらんのか?まぁ、紅葉じゃなくても何か欲しいものがあれば言えばいい」
言われたところでどう用意するのかというところはやはり考えていないのだけど、お返しがしたいという気持ちがあるのは本当だった。
「ふふん、白い紅葉が何物か知らんが、所詮は植物よ、その程度……」
上機嫌に応えていたのは、『願いが叶わなくなる』という話を思い出すまで。
自分の願いが叶わなくなるのだとしたら、それはどんな結果になるのか。
例えば、二度と元の世界に帰れなくなるとか。そう考えると、声が小さく、顔は少しうつむいて。
「……やっぱり、一緒に泊まらないか?」
もう一度奏詩の手首を握って、胸の前まで持ち上げた。
どうしてそうしたのかは自分でもよくわからない。神の龍……の娘が『寂しい』などと、口にするのは愚か、思い浮かべるのも恥だ。