2021/11/05 のログ
ご案内:「常世公園」に比良坂 冥さんが現れました。
■比良坂 冥 >
今日は珍しく学校に行った
久しぶりに登校したものだから、教員の人の様子が少しおかしかったけれど
ただそれだけで、何事もなく時間は過ぎた
相変わらず退屈な講義、授業
何を言ってるかもわからないし、また単位は貰えないだろうな、なんて
想いながらの帰り道
どうせ急いで帰っても彼は今日は、遅くなるか帰れないか
そう言っていた気がするので、これも気まぐれ
たまには、のんびり時間を過ごそう
ふと目に入った公園のベンチに、腰を下ろす
■比良坂 冥 >
秋風に雲が流されていく
短いスカートには少し肌寒い時期になってきた
近くの自販機で缶のコーンスープを買って手に取ると、熱が伝わって心地よかった
違反部活で日銭を稼いでいた時期に比べれば今は温かい暮らしをしている
「………はぁ」
甘く香ばしい香りが口一杯に広がる
缶のコーンスープはなぜか美味しい
缶の底にコーンが残ってしまうことを除けば、とても好きだった
「……ん」
のんびりしていると、動物の鳴き声
小さく、か細く、可愛らしい
視線を向けた先には、小さな黒猫がこちらを見ていた
すぐに首輪をしていないことに気づいた
野良猫かな、珍しい、なんて
■比良坂 冥 >
「……おいで」
寒いのかな、と思い
ベンチに座ったまま、屈んで手を差し出す
小さく唇を鳴らして、呼んでみる
小さな猫は少しだけ警戒した様子を見せてから、少しずつ近づいて…
───瞬間
猛烈な音と風に叩かれて、猫は逃げていった
「……?」
風は、ただの突風だったのかも
でも、音は続いていて、秋空を見上げると、見慣れないモノが飛んでいた
「……なんだろ」
はるか向こうへと飛び去ってゆくヘリコプターを眺め、ぼんやりと呟く
今日は、珍しいことがたくさんだった
■比良坂 冥 >
突風が公園の紅葉を散らし、秋焼けの空を美しいく彩っていた
彼方へと飛び去ったヘリコプターを追うように舞い散る紅葉はそれは美しいものだった
美しいものだった、はずだ
それを見る少女の感性が普通なら
可愛いもの、きれいなもの、美しいもの
全く興味がなかった
多分、自分にまったく関係のないものだから
なのでそれを見て少女が思ったことは一つ
「……そういえばヘンな噂、あったっけ」
なんだっけ、七色紅葉を見つけると、願いが叶う
そんな子供じみた、ヘンな噂
流し見ただけだから詳細は忘れてしまった
思い立ちスマホを取り出して見てみるも、前に見たそれはぱっとは出てこなくて、すぐに探すのが面倒になってしまう
まぁ、いいか
なんて思って舞い散る紅葉の中に七色を探してみるけど、そんなものあるわけがなかった
■比良坂 冥 >
ほんの1、2分
探してみて、ばからしくなって、やめる
そもそも…願いってなんだろう?と
欲しいもの?欲しいものなら、決まってる
生まれた時からずうっと、欲しいけど手に入らないものがあったから
でもそれを願い事、というには少し惨めだ
"普通の人"が願わなくても持っているモノに他ならない
執拗で陰湿な虐めの中で思っていたことはいつもそれ
普通の子だったらこんな目に遭わずに済むのに
だから、普通になりたかった
抱いた願いなんて、それくらい
「……帰ろ」
暇つぶしに遊んでくれそうだった猫も、どこかにいってしまった
■比良坂 冥 >
もう一度、風が吹く
色の抜けたような白い髪や、スカートが風に煽られ靡く
ぱさ、と乾いた音と共に左胸に紅葉が張り付いた
「……」
自分と同じ、大事な色<モノ>の抜けた
"普通"とは見てもらえない、一枚の紅葉
七色は見つからないのに、こういうモノばかり見つかる
「……お似合い、っていうことかな」
自分と同じなのだろう、アルビノの紅葉を胸ポケットに差し、帰路についた
風は、とても冷たい
温かいシチューでも作り置いておこうかな
そんなことをぼんやりと考えながら
ご案内:「常世公園」から比良坂 冥さんが去りました。