2021/11/20 のログ
■深見 透悟 > ここで寝てしまうのは流石に不本意
寝るならせめて布団で眠りたいから、どうにかこうにか起きている事にした透悟
少なくとも、頭さえ動かしていれば寝ることは無いことはこれまでの幽霊生活から理解している
肉体は仮初、であれば本来睡眠など不要なのだが
「まあ、今回は精神的な疲労がガッツリ来てるという事で
体動かすと魔力の消耗が生じるので、いわゆる月光浴しながら頭だけ動かすー……ああ、あと口も」
完全たるひとりごと。ただ黙ってぼーっとしてるのは性に合わないから
取り留めもなく物事を考えるのは好きな方だし、考えた事を口から垂れ流すのも嫌いじゃない
話し相手が居ればそれに越した事は無いが、幽霊になって、この世界に漂着しての数週間はずっと独り言で乗り切ってきたのだから
「まあ、今更だよなー
さて今回のお題は……自分の魔力周りについて考えよか
返事は来ないけど、リリィが聞いててくれるからヨシ!」
横目で傍らに座るテディベアを見る
まだまだ長い付き合いになりそうだ、と含み笑いをしつつも、こほん、と咳払いをして
■深見 透悟 > 「肉体改造のための知識収集としてこの世界の文献を漁った結果、
魔力に関する構造は俺の世界とこの世界とでさほど差は無い事は分かった
つまるところ、俺の故郷での理論はある程度通用する……って事だな
実際ゴーレム……今の人間体の構築には成功してるわけだし、そこは間違いないとみて良い」
夜空で煌めく星々を眺めながら、ぽつぽつと確かめる様に呟いていく
傍らのテディベアは何も口を挟まず、少年の独り言を静聴している
「であれば、肉体の方は前にイェリンさんとも話したけど、何らかの動力源さえ確保出来れば良いわけで
その動力源に関してもある程度、元の世界の理論を基にして構築出来る筈なんだけど……
問題は、俺本体の方の魔力だよな。つまり……
幽霊、魂、思念体……実体を持たない俺は、どうやって存在しているのか、だ」
ふー、と息を吐くそぶりを見せても土塊の身体から実際に吐息が発するわけではない
肺が存在していないのだから、当然と言えば当然だ
あくまでも生前行っていた動作を模倣してるだけに過ぎない
■深見 透悟 > 「こればっかりは俺が探れる文献には無かったんだよなあ……
幽霊がどのように存在し、活動の為に何を必要としてるか、なんて
俺の世界でもそんなもん定義出来てなかったしな……」
まいったまいった、と傍らに置いてあるテディベアを手に取り、自分の膝に乗せる
熊の人形は黙したまま、じっと少年を見つめて
「天才が聞いて呆れるぜ、自分の身に起きてる現象に理屈をつけられないってんだから
まあそれでも仮説は立てられる。ただ、そのどれもが確証を持たせられないんだよな……
魂を解析した、なんて話聞いたこと無いし……実際出来るとも俺にも思えないし
漠然と『たぶんこういうモノだろう』ってのはゴロゴロ出てくるしゴロゴロ出てくる分だけ結論もバラバラだし、もー……何なんだよってーの!」
段々と愚痴めいてきてもテディベアは口を挟まず
ばたばたと動かされる少年の脚の上で、小刻みに揺れている
■深見 透悟 > 「……肉体が無いにも関わらず、こうして話すことも考えることも出来るし、
喜んだり、焦ったり、悶えたりするし性欲もある……何なんだろうな、この状況
記憶だって脳があるわけでも無いのに更新されるし」
テディベアをじっと見つめ、ぎゅっと抱きしめる
譲り受けてからというもの誰かに抱き締められることは多々あれど、こうして自分で抱き締めたのは初めてだった
やわらかい、と小さく呟いてから、ほぅと小さく吐息を呟いて
「まあ結局やれる事をやれる範囲でやる、しかないんだよ
俺は天才なので?やれる範囲がクソほど広いし、日々拡張させられるわけだけど
……まあ、打つ手なしの袋小路よりはよっぽどマシだよな」
テディベアを抱いたまま、横目でベンチに置かれた書類を見る
学園に入学する為に必要な諸々、それらを再び手に取って
「とりあえず小目標として入学書類を片付けるのと、転移荒野に行ってみるか
俺の世界から何か流れ着いてる可能性もある、って話だし
地味にだけど土塊ボディの稼働時間も多少は長くなってるみたいだから、そろそろ頃合いだろっ」
ちょいせ、とベンチから立ち上がって背負い紐は使わずテディベアを抱いたまま
書類を手に取り、透悟は公園を後にしたのだった
ご案内:「常世公園」から深見 透悟さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にノアさんが現れました。
■ノア > 月明かりの下でコーヒーを開ける。
いつものブラックとは違う乳白色の缶、甘ったるいカフェオレが手の中に収まっていた。
ただの気まぐれ、友人と飲んだ甘ったるい酒の余韻に縋りたかっただけなのかもしれない。
手の中で振れば強く熱を持つスチール缶は、自分の居場所を曖昧に溶かしてくれるようで。
穏やかな陽だまりのような空間、火傷するような気がして触れるのを躊躇ったモノが、少しだけ近くに感じて、自然と頬が緩む。
『お前も刑事なら、一つの事件に執着しすぎるな――呑まれるぞ』
残響となって脳裏に貼りつくのは教訓、自身を教導した刑事の言葉。
既にこの身は事件を追っていない。とっくに呑まれて胃の中だ。
妄執に取り憑かれて、狂ったようにたった一人を捕える事に躍起になっているだけの、
ただのしがない捜索者。
■ノア > 「……手遅れだよなぁ」
自嘲するように鼻で笑うのも何度目か。
少し前までは、思い出すだけで冷や水をかけられたように心まで冷え切った物だというのに。
自身が救った訳でもない、友が救ってやった訳でも無い。
誰かの手を借りて勝手に這い上がった学生がいた。
ただ、それだけ。
たったそれだけが、ただただ心に陽を当てている。
未練がましくもこの島に持ちこんだ警察手帳は今のこの手には重たいが、
為すべき事に進むための標として手放せない。
「早く透ヶ谷の野郎を捕まえないと……」
まだ、足りない。
この身に宿る探索の力は、未だその背に届かない。
己にだけ見える細糸の中に混じるどす黒い赤、
それは手をかけた端からすり抜けていく。
だからもっと強く、もっと深く。
記憶に、心に、記録に触れるその先へ――
■ノア > ふと、思い出すのはまことしやかに囁かれる噂話。
曰く「裏常世渋谷」を探索することで新たな「異能」を獲得することができる、だとか。
「裏常世渋谷、ね」
数度、迷い込んだことはある。
一度目に帰れたのは運が良かったとしか、言いようがない。
異形の群れ、怪異の巣。
身に付けた銀鎖とて、二度目からこさえた帰り道の道しるべの魔具だ。
それでも、ただ堂々巡りの現状を変えるために。
足を運ぶのも良いのかも知れない。
■ノア > 腹は決まった。
行き先も同様に。
飲み切った缶コーヒーをゴミ箱目掛けて放り投げ、ベンチを立つ。
「あっ……」
枠から外れたスチール缶が転がり出て、
カラリカラリと音を立てる。
誰も見てはいないか等と周囲に気をやりながら、
ゴミ箱に駆け寄り捨てなおすと、男は足早に外に停めたバイクへと駆けて行った。
その顔は僅かに朱に染まり、人並の情が見え隠れしていた。
ご案内:「常世公園」からノアさんが去りました。