2021/12/02 のログ
ご案内:「常世公園」に天月九郎さんが現れました。
天月九郎 > 「まいったな……これ」

すっかり日が沈み外灯がちりちりと夜闇を晴らすような時間帯。
一人の少年がベンチに座り込み途方に暮れていた。
その膝の上には小さな黒猫が丸まりゆったりと呼吸を繰り返していた。

さかのぼる事一時間前、コンビニで色々と買い込み公園のベンチで肉まんを食べていたところ猫が寄って来て。
懐いてきたのが嬉しくて構っていたら膝の上で寝てしまった。
回想終了。

天月九郎 > 猫、猫である。
その歴史は古く壁画にも書かれるほど。
日本では平安貴族が職場に猫を連れて来たいがために従五位下の官位を与えている。
弾正忠信長と同格だと言えばやりすぎなのが判るだろう。
一方エジプトでは神聖な生き物とされ、戦争相手が盾に猫を縛り付けて構えた結果攻撃できなくて敗走したという。
怒りのあまり通背拳に目覚めそうな案件である。

かように人類は猫に勝てない運命の元にあり、それがたとえ両手で容易く包めるような子猫であっても…否子猫だからこそ勝てない。
起こしてしまってこいつ嫌い!という目で見られたらおそらく三日は立ち直れまい。
ゆえに、ここで取れるのは待ちの一手であった。

天月九郎 > 「うう、ヤバイ寒くなって来た……」

日が落ちれば気温が下がるのは道理、異能……というより肉体が変質した時に多少の気温では身体を壊さなくなった。
極論すれば全裸でスキーをしても警察と社会性以外は怖いものは無いだろう。
それはそれとして寒い物は寒いのである。カクカクと膝が震えるが両手に余る程度の小柄な猫の身体が縦ノリを始めると起こしてしまわないようにぐっと堪える。
鎮まれ……鎮まれ俺の不随意筋……。

天月九郎 > ただ寒いからこそこの膝の上のぬくもりという幸せを享受出来るというのは間違いなくある。
そっと毛並みを撫でれば成猫になり立てなのだろうか、身体の大きさから想像するよりもふわふわの手触りが返って来て思わず頬がにやけてしまう。

これも夜の公園というロケーションのおかげだろう、人の多い昼間の公園では野良猫を可愛がってニヤけ散らすなんて流石に恥ずかしくて顔を引き締めてしまう。
うっかりイケメンになってしまうところだった。

「コンビニ寄っといて良かったな……」
ある程度備蓄出来るようにと多めに買っておいたのが功を奏した。
流石に腹が減り喉が渇くとなれば猫ちゃんにごめんなさいをする必要があっただろう。
でっかいコンビニ袋から紙パックを取り出し、そこから伸びた紐を勢いよく引っ張る。
するとブシュウウウウ!と凄い勢いで蒸気が吹き出し、中のシュウマイが温められていく。
都会のコンビニって凄いよな、こんな未来技術を使った弁当があるんだから。

天月九郎 > 火どころかレンジも使わずにお弁当を温められるとはやっぱり都会って凄い。
やっぱ使ってるのかな……魔術。
そうしてシュウマイ弁当を食べ終えればお腹も膨らみ身体も内側から暖まり、少し余裕も出てきた。

「お前はあったかい毛並みが合っていいよなあ」
どっしりと膝の上で眠り続ける猫は良い感じの重さでどっしりとした存在感を伝えてくる。
こうして公園で色んな人から餌とか貰ってるからこんな福福と育ったのだろうか。
俺も肉まんの皮部分あげちゃったし。
なら少しくらい返してもらってもいいよな、とそっと腕を回し指が埋もれてしまいそうなふっかふかの毛並みを楽しみ続けて。

天月九郎 > 「どーすっかなあ。流石に公園で夜明かしはしたくないけど、こいつ連れて帰るわけにはいかないしなあ……デカいし」

軽く身体を前に曲げれば背中に乗っかってしまう程でかい猫を抱えて帰るのは流石にしんどい。
まあおかげでこうして背中は寒くても胸の前は温かいのだけど。
それにこうしていれば背中の毛並みに顔を埋められてふわふわとしてとても気持ちい……。
しかし改めて思うが……。

「なんかでかくない?」
最初は寝る子は育つって言うし成長期かなあ?と思っていたがどう考えてもデカくなっている。
そろそろ膝がプルプルして来たしほっといたらどこまでデカくなるんだろうか。ちょっと怖い。
そう思っていたらついに抱えきれないくらい大きくなってずしんっとのしかかってくる。

「ふぁ……」
全身が毛並みに包まれて、悪くない。
幸せかもしれない、身体強化されてて本当に良かった。