2021/12/18 のログ
ご案内:「常世公園」に藤白 真夜さんが現れました。
藤白 真夜 >  
 任務とアルバイトの間、外で待機する時間が出来てしまった。
 持て余すあまり、つい運動にもなるし散歩なんてことをしていたら――

「ひゃーっ、ご、ごめんなさい!」

 ばうばう。
 犬の鳴き声が響いていた。
 何をしたわけでも無いんですけれど、散歩中の犬に本気で吠えられる結構な威嚇っぷり。
 それに向かってぺこぺこ謝る私と、リードを引きながらそっちもやっぱり申し訳ないのか謝る飼い主さん。
 結局、お互いに謝りながらなんとかお犬様が落ち着いてくれはしたんですけど。

「……は~……。
 やっぱり動物は避けないとダメですね……」

 異能が目覚めて以来、動物に懐かれることは無かった。
 つい、可愛いから……なんて思って迂闊に近づくとああなってしまう。

 ベンチに座り込むも、ちょっぴり落ち込んでしんなり気味。
 うーん、この空き時間。どうしよう……。

藤白 真夜 >  
「……はあ。
 猫に逃げられるのも嫌だけど、犬に吠えられるほうがなんだか叱られた気分になっちゃうな……」

 ベンチでしょげたままぽつり。
 そもそも小心者なので、わんわんとしたあの吠え方だけでも辛いものがあります。
 ご主人さまに返事してる時みたいな声は好きなんだけどなあ……。

(……どちらかといえば、こそこそ働いてる私も犬系なはずなのに……。
 ……いやそういう問題じゃないか……)

 犬と猫。どちらかが好きかと言えば……どちらも捨てがたいのですが、私は割と犬っぽいほうだなんて益体もないことを考えてみる。……恥ずかしいので口には出さず。

(猫っぽいなんて、とんでもないもんね。
 奔放で、自由気ままとか……?
 ……私と正反対)

 はあ。
 またしても溜め息をひとつ。
 ……こうして動物に嫌われて落ち込んでいると、先生の懐かしい声を思い出す気がした。
 ――あまり、はっきりと覚えてはいなかったけれど。

「あ」

 視線の先に、野良猫と思しき猫がいっぴき。
 大分前に一度見た猫かもしれない――今度は、視線を合わせただけでずだだだだと逃げ出した。したたたた、みたいな走り方でなく。

「……は~……」

 溜め息を、もうひとつ。

藤白 真夜 >  
 ……昔にも、似たようなことがあった気がしていた。
 犬の吠える声。
 暴れる獣の足音。
 それを見て落胆する、私。
 そこへかけられる、だれかの……声。

「……、……?」

 何かを思い出しそうで、そんなことは一切なかった。
 たぶん、“先生”だ。
 私の知り合いはほとんど居ないから、ただの消去法だったけれど。
 なんというか、呆れられて馬鹿にされたような――、

「――?」

 何か理由があるわけでなく。
 首筋をぬるい風が撫でたような、感覚。
 もちろん、冬の強い風以外に吹くものはない。私は温度には鈍いから気にもしなかった。
 ただ、……何かを感じて振り返って、
 
 ……やはり、何もなかった。

「……う~~ん……最近、私ぼーっとしてるもんね……」

 今度は自己否定が始まりました。
 というのも、最近、気付くと夕暮れの教室でねこけていたり。
 気付くと、落第街の手前でぼーっとしていたり。
 知らぬ間に、知らぬひとの、知らぬ名刺を手にしていたりする。

「大丈夫かなあ……体調はよくなってるんですけれど……」

ご案内:「常世公園」に狭間在処さんが現れました。
藤白 真夜 >  
「……なんか、昔のこと思い出しちゃったな」

 学校にはいる前のこと。
 色々やっていたけれど、私はずっと……異能を鍛えていた。とある目的のためのアプローチの一つであった、それ。
 それは無駄ではあったけれど、無意味ではなかった。 
 当時からずっと、やっていたことがある。
 
 自らの掌を見るように、目線を落とした。
 寒さで白くなった指先に、ぷつり、と赤い雫が浮きでた。
 異能の指先でそれをすくい上げると、ふわりと宙に芥子粒ほどの赤い珠が浮かぶ。
 それはふつふつと湧き上がるように膨れ、見る間に掌で握れそうな大きさにまで増えた。“増やした”のだけれど。
 
(――、)

 意識するだけで、異能の力は働いた。
 私はもとから、細かな異能の操作は下手だった。というか今も頑張らないと出来ない。
 それを少しでも習熟するための、特訓。
 呆れるほどの間繰り返したそれは――

 ぎゅ、と血球が小さく収縮したかと思えば、硬質な音を立ててべきり、と伸びる。
 ぺきぺき、と宙から空へ伸び上がるように“育つ”。
 わずか10センチほどのそれは、伸び切った後にふわり、と紅い花を咲かせた。
 ……全草が赤い、まっかなバラ。

 異能の練習。暇潰しには、絶好のものだった。
 ……ただ人目に触れるには、漂う血の匂いが申し訳なくなってしまうものだったけれど、今は人も動物もいないし……。

狭間在処 > ――どうやら、自分は知らず知らず一番迷い込んではいけない地区へと迷い込んだらしい。

以前の何処か薄汚れた服装と違い、一新された服装に真新しい喉元に巻かれた包帯。
以前、浜辺で知り合った老人から好意で譲られたり提供された物だ。

…それはいいのだが、まさか落第街の道先を訪ねて素直に従ったら――学生区に訪れる羽目になってしまった。
そもそも、落第街やスラム以外の土地勘がサッパリ無いので現在地すら殆ど把握出来ていないのだが。

(――あそこは…公園というものか?…人気もあまり無さそうだし、少し休んでいくか。)

視線の先に見えた常世公園。そちらへと足を向ければ…公園の出入り口で、急に目の前を脱兎する野良猫と擦れ違った。

「……?」

やけに怯えていたようだが…気のせいだろうか?
ともあれ、そのまま公園へと足を踏み入れる。
自然と周囲を見渡して観察するのは警戒もあるが、物珍しさというのもあり――…

(……ん?あれは――…)

碧眼をぱちぱちと瞬き。ベンチに座り込んで何やら落ち込んでいるような様子の少女。
…間違いない、青垣山で以前道案内で世話になった少女である。
…改めて礼もしたかった事だし、落ち込んでいる様子は気になったが、一先ずそちらへと歩みを進めて。

「――…?」

が、丁度彼女が何かを始めた事に頭の中で疑問符を。そして、その紅い赤い花――薔薇、だろうか?
それを目撃して足を一度止めた。…異能で作り出したもの、だろうか?

藤白 真夜 >  
「……はあ。
 薔薇の薫りが欲しいなあ……」

 自らの指先にふわふわと浮かぶ赤すぎる薔薇を見つめながらぼやいても、漂うものは血の香りだけ。
 カタチだけ真似たそれはただの偽物であって――、

「……!」

 耳朶に届く足音に、思わずびくり。つられて薔薇もひょこんと跳ねて。
 ひ、ひとがいると思ってませんでした……! 
 そわそわと振り返れば、そこには、

「……在処さん?
 お久しぶりですっ。
 あの後、お変わりありませんでしたか?……ま、また迷ったりとか……」

 青垣山で、……遭難?していたところで出会えたひと。
 ちょっと失礼かもしれないけど、一応また迷っていたりしないか訪ねておく。このあたりの地理に不案内であることは知っていたし。
 
 男の人の前で緊張したわけでもないけど、薔薇はすぐに空気に溶けるように赤い砂になって散っていく。
 なるべく血の香りが飛ばないよう、血の滲んだ指先に吸い込まれると、ぷつり、と赤い痕跡は途絶えた。

狭間在処 > 「……。」

どうやら驚かせてしまったらしい。そんなつもりは無かったが悪い事をしただろうか?
…と、いうより彼女の驚きに呼応して薔薇も跳ねたように見えたが。
異能か魔術かは分からないが、おそらく彼女の感情や仕草と連動でもしているのかもしれない。
足をその場で止めたまま、軽く会釈をして挨拶の代わりとする…何しろ喋れない。

(……いかん、また迷ったとか逆に言い辛くなってしまったぞ…。)

方向音痴、というより土地勘が無いのが主な原因なのだが、それはさて置き。
やや沈黙した後、懐からメモとペンを取り出して歩みを再び進めていく。
そのまま、彼女の傍まで歩み寄れば見易いようにそちらに走り書きのメモを見せる。

『お陰さまで、こっちは何とかこの通り。…もしかして邪魔してしまったか?』

と、メモを見せつつ視線は霧散していく赤い薔薇へとちらり、と一度向けられた。
その時にはもう、赤い砂と化したソレは花の面影すら欠片も無くて。

――僅かに、常人より研ぎ澄まされた嗅覚が鮮血の香りを嗅ぎ取れたくらい。

藤白 真夜 >  
(ふう……、び、びっくりしたー……。
 あんまり人目に触れる場所で異能使わないようにしないと……、向こうのほうがびっくりしちゃいますしね)

 其処にいたのは一度きりの邂逅とはいえ、知り合った人の姿。
 心の中で胸を撫でおろし……小心者の私と言えば男性へのびっくりゲージが極端に低いものの。
 申し訳ないことのようですが在処さんの静けさは私には少しだけ、優しかったのです。

 ちらりと筆談の文字を読み取れば、よかったと自分の手と手を重ねる仕草。

「ああ、よかったです!
 ……すみません、失礼かと思ったのですが……この島は慣れないと広いですからね」

 あの時の状況を考えれば、市街地で迷うほうが遥かに健全だったとも言える、……はずだった。
 それがどのようなものか知りもせず、ただ安穏とした表情を浮かべて。

「あ、あーっ、い、いえっ、そんなことはっ。
 ……ちょっと、休んでいただけで……時間を潰していたんですけど、……一時期、暇さえあれば異能を動かしていたので……」

 しかし、その言葉――文字列に、もしかして見られちゃったかもと思いつけば、恥ずかしそうに、申し訳無さそうに顔を落として、赤面。
 ……せめて血の臭いが届いてませんように……。

「……在処さんも、休憩ですか?」

 まだ少し赤い頬でそう問いかけながら、ベンチに腰掛けながら少しスペースを空けた。
 よければどうぞ、なんて訪ねながら。

狭間在処 > (…こういう時、普通に話せたら色々と楽なんだけどな…。)

言葉は分かり易く代表的なコミュニケーション手段。
それが封じられたに等しい己は、ジェスチャーや今のように筆談でどうにかするしかない。
そろそろ、それ以外のもっと円滑な会話の手段を確保したいが…前途多難だ。
――と、このように自分の『無口』が彼女にとっては、むしろ優しさだとは気付かぬまま。

『広いのもそうだが…あまりこの辺りは土地勘が無くて参った。』

と、筆談に慣れているのかスラスラと『言葉』を返しつつも、書いてから気付いた。

(…ここで土地勘が無い、と口にするのは悪手に過ぎるだろう…!)

少なくとも、学生区やその近辺に住んではいない=学園に通う生徒ではない、と遠回しに自白するようなもの。
矢張り、こっち側に不慣れだとついついボロが出てしまうのが…情けない。
まぁ、仕方ない。気を取り直してから再びメモにサラサラと一筆。

『異能の訓練か?暇潰しのように聞こえるが、地道な努力は大したものだと思うが。』

何処か恥ずかしいような、申し訳ないような赤面顔になる少女。それに些か不思議そうに首を傾げて。

(…確かに異能を見られるのが苦手、というタイプも居るだろうが…。
変な力、という訳でも無いしな――血の匂いは…まぁ慣れているし。)

なので、その芳香に何か引っ掛かりは感じたものの、存外気にした様子も無く。
彼女からスペースを譲られれば、軽く瞬きをしてからぺこり、と会釈をして静かに腰を下ろす。

『休憩、といえばそうだな。…あと、会話がしにくいだろうが改めてすまない。』

と、初対面の時にこちらが喋れない事は彼女も把握しているだろうけど、改めて謝罪を。
やっぱり、会話のテンポがどうしても悪くなるのは自覚もあるのだ。