2022/02/26 のログ
黛 薫 >  
「下んねーコトに悩んでたってか、悩まなくて
 済むくらぃ大人になったら、真剣な悩み事も
 下らなく思ぇるよーになっちまったんだろ」

ずけずけと口にする内容が黛薫の価値観、主張と
一致しているかと言われれば否である。彼女自身
見透かされる前提で口にして、ナイーブな内面を
守ろうとしている節がある。仮に相対する貴女が
聡明でなく、言葉通りに受け取ってしまうくらい
鈍かったら躊躇っていたであろう発言だ。

「……頭で考えたコトと、心で感じたコトが中々
 一致しねーって点につぃては、同意しますけぉ」

だからこそ、ぽつりと漏れた本音が分かりやすい。

「つかあーたくらぃ賢きゃ、あーしの警戒の原因が
 ドコにあったかも分かってたろ。そーゆーヤツに
 警戒し過ぎが疲れるとか言われても説得力なんざ
 ねーーってんですよ、もぅ」

ついでに、漏れた本音を誤魔化そうとする
大袈裟な拗ね方も非常に分かりやすい。

「ん。あーし『黛 薫(まゆずみ かおる)』って言ぃます。
 あーたの名前も教ぇてもらって構ぃませんかね」

清水千里 >  
「人は罪を好む瞬間があるものだからね」

 と、少女の本音の言葉に、考え込むように答えた。
 そこに彼女を非難しようとする意志はない。

「私が思うに、ね。黛君。まだ時が来ていないというだけの話さ。
 心の中で解決されていない問題は、人を苦しめる。
 しかし時に人というのは、自らを苦しめているはずのそれそのものによって憂さを晴らそうとするものだからね」

 そう、卑屈になるな、と言って。

「苦しさも、いつか解決するはずだよ。疑いなく信じることだね」

 そう、いなして、彼女の顔を見る。

「――私は清水千里。さっきまでとは偉い違いだね、キミが元気になってよかったよ」

黛 薫 >  
人は罪を好む瞬間がある。
自らを苦しめているはずのそれそのものによって
憂さを晴らそうとする。思い当たる節があったのか
傷付いた手指をそっとパーカーの袖に引っ込めた。

「お陰さまで!」

変わらず拗ねたままの声音、しかし皮肉の色が
混じらないように抑えてもいる。感謝の言葉は
含みなく伝えたいのに、素直な言葉にするのは
難しい。内心が複雑に絡み合って、それでいて
彼女の為人をこの上なく表した返答だった。

貴女が『元気になった』と評した通り、黛薫は
血色を取り戻して見える。体調が良くなかった
などと口にしていたが、対話で回復したのなら
それはきっと精神の不調だったのだろう。

「んじゃ、あーしはコレで。
 引き止めちまって悪かったっすね」

黛薫は最後に軽く手を振ると、電動の車椅子を
操作してその場を去っていった。

自称した通り捻くれていて、しかし素直でもある。
皮肉っぽく粗野な口調の割に卑屈で、感じやすくて。
後ろ向きな癖にもがいて前に進もうとしている。

矛盾と分裂の迷宮に迷う、人間の精神性。
誤魔化しを除いて要素を洗い出せば、思春期の
女の子らしい、意地っ張りなだけの少女だった。

ご案内:「常世公園」から黛 薫さんが去りました。
清水千里 >  
「気を付けてね!」

 何も特別なことはない、意地っ張りな十代の少女。
 清水にとってはまた、彼女も愛する人間の内の一人だ。
 舌足らずでも、彼女の思いは確かに伝わっている。 
 彼女の姿を目で追ったのち、見えなくなってから、
 また清水も踵を返してトイレに入った。

ご案内:「常世公園」から清水千里さんが去りました。