2022/03/19 のログ
ご案内:「常世公園」に追影切人さんが現れました。
追影切人 > ――冬の寒さもほぼ通り過ぎて、気が付けば何度目かの春を迎えた。卒業と入学の季節。
…とはいえ、自分のような監視対象身分にはそこは正直あまり関係ないとも言える。
一足先に『進んだ』元・同類とは違って自分は例え卒業をしても監視対象身分が解除される事は無い。

「――なんて、分かり切った事を考えてもしょうがねーんだが。」

常世公園のベンチにだらしなく背中を預けつつ、すっかり着慣れてしまった警備部の服装に身を包んで。
隻眼で見上げる空は既に夜の帳が落ち始めており、星空へと変わりつつある。

「…取り合えず、義手は本当にどうにかしねぇとな…隻眼は別にいいんだがよ。」

4年前から隻眼みたいなものだから、そちらは別にいいが矢張り片腕が使えないのは不便だ。
いざ、斬り合いとなればそんな事はどうでもよくなるが、平時だとやっぱり不都合が多い。

あと、一つ不満を付け加えるとするなら…刃物を持ち歩けないのがそれだ。
【何かを斬る】事を己自身の存在意義としている男に、斬る得物が手元に無いのは本末転倒でもあり。

追影切人 > 「…進路…ねぇ。先なんて俺にゃあって無いようなもんだし、考えた事もねぇな。」

周囲は割と進路だ将来だと考えている連中も多い、というかそれが普通なのだろう。
別に考えを放棄している訳ではないが、どのみち遠からず『処分』か『鉄砲玉』の未来図しか見えない。
――人の異能や得物を取り上げておいて、とことん『飼い殺し』にして利用し尽くしたいのだろう、お偉方は。
ベンチでだらけたまま、先もクソもあったもじゃねぇ、とばかりに盛大に溜息を零して。

「――やっぱり、俺は”こっち側”の人間じゃねーって事だよなぁ。」

それはもう元からずっとそう思っていたが。こちらで学ぶ事は確かに多かった。
一応、ダチも何人か出来てそれなりにこっちの生活にも順応したつもりで。
けれど、どれだけ平穏に恵まれても元々の気質や性分はどうにもならない。

(――かといって、あっさりあっちに帰るのも何か癪に障るしな…。)

尻尾を巻いて逃げるようでなんとなーく気に食わないのも事実だ。
結局、現在まで『飼い殺し』の状態が続いているので、どちらにしろ負け犬だが。

「……ま、どうせくたばるなら『傷痕』くらいは刻んでやらねーとな。」

小さく嗤う。どうせロクな死に方――末路なんざ迎えられないと分かっているから。
と、そこまで考えてからピタリ、と動きを止める。ややあってから頭を掻いて。

「…写真も預けちまったしな…尚更、ほいほいとあっちに戻るなんていう『楽な道』に進む訳にもいかねーか。」

追影■■ > 『――君の『スタートライン』はここからだよ切人。後悔の無い人生の旅路を。』

――束の間、浮かぶは長い黒髪に澄んだ瞳を持つ一人の女性。
もう、この世には存在しない…名前すら”誰も覚えていない”唯一の『恩人』の言葉。

追影切人 > 「…へいへい、わーってるよ。人生の旅路だとかスタートラインとか大袈裟だっつぅの。
…最近、矢鱈とアンタの事を思いだすのはアレか?実は背後霊にでもなってんじゃねーの?」

と、ベンチにだらけたまま独り言。勿論、背後や周囲に変な気配は感じない。
霊感などというものは特に無いと自認しているが、特異な気配には敏感だ。
それが反応しないという事は、まぁつまり…そういうものは自分には憑いていないのだろう。

(――取り合えず、まぁアンタの願い通り、あれから何とかかんとか生きてはいるぜ。)

ちょっと片目潰れたり片腕無くしたりしてるけど、まぁそれはそれだ。
五体満足ではないが、確かに今こうして生きているだけ…御の字であろう。
少なくとも、恩人への不義理にはなっていない筈だ…義理を通す、なんて昔の自分からは考えられないが。

「…ま、これも成長っちゃ成長になんのかね…。」

自分では成長した、というよりも『退化』したように感じてしまうけれど。
実際に、色々と昔に比べて弱くなった…刃の切れ味も格段に落ちている。

――あの『恩人』が死ぬ間際まで気に掛けていた『鞘』も未だに見付かってはいない。
…が、それは別にいいだろう。こうして生きているだけで最低限の義理は通している筈だから。