2022/11/18 のログ
■蘇芳那由他 > 「…成程。信仰…祈りの力とかそういう感じの意味合いなんでしょうね。
大事なのは強いイメージ、ですか…。
…あ、はい…少なくとも、僕自身に悪影響などは特に出てはいませんね。
…あぁ、でも声は常に微かにですが響いているといいますか。多分今の僕では声まではどうこう出来ないのかなと。」
そう答えるけれど、そもそも悪影響が彼自身の精神の安定性で相殺されているので、出ていないのではなく”気付けていない”というのが正しい。
現状、常に声が響き続けている以外では明確な悪影響はどちらにしろ出ていないが。
「…給料が出るというのは、実際の所は魅力的ではあるんですよね…人間、生活にはお金が必要ですから。」
と、口にするがそこまで金銭欲がある訳では無い。口にした通り、生きていく為に金銭は必要だから。
かといって、仕事の『具体的な内容』も分からないので安請け合いも出来無いだろう。
「…そうなると、神器持ちへの影響はそれぞれバラバラで『個人差がある』、という感じですかね…。
…あー…そうか、まぁ致命的に変化が訪れる訳でもなければ、僕個人としてそこまで問題は無いのですが。
…成程、利点と問題点についても把握しました。そうなると…。」
ふむ、と考え込む。仕事の内容は兎も角、それに応じて給料が出るなら悪くは無い。
今の所、委員会に所属したりするつもりもないので、そういう意味でも助かる。
…が、そもそも自分に信仰心というものがあっただろうか?と、内心で首を傾げる。
【黒き神】ご本人がすぐそこに居るとはいえ、会ったばかりの神格でもあり…。
「…了解しました。ただ、今の所は『返還』は今すぐにするつもりはないですね。
僕自身は、ご本人を前にして言うのもアレですが自衛手段がこの【槍】の力以外は無いので。
そういう意味でも、自衛手段や不測の事態への対処手段として、今しばしは『借りておきたい』というのが本音です。」
選ばれたからと言って調子に乗るでも、変に意識するでもなく。
淡々と現実的な『手札』として己には必要だと言うのが少年お現時点での意見だ。
別に悪用なんて考えた事も無いが、そもそも善行を積む為に使う訳でもないのだから。
利己的かもしれないが、まだ【槍】に選ばれて月日はそこまで経過していない。
『理解』が深まれば、また意見も変わってくるかもしれないが、現状ではそんな所だ。」
「――取り敢えず、現状はそのくらいですね。後は仕事の内容、そのものくらいでしょうか。」
そう、今までハッキリと彼女から語られていない仕事内容。
勧誘を受けるも断るも、結局、先の質問の答えも含めはするがそれが一番重要だ。
■神樹椎苗 >
「思った以上に現実的、随分と地に足が着いた物言いですね。
――ああ、いい理解の仕方です」
少年のある意味淡々とした受け答えは、椎苗としては好感が持てる。
「『返還』に関しては自由にしてもらって構いません。
『使徒』にならないからと言って、とりあげるようなつもりもありませんから安心してください」
どっちみち、神器は所有者にしか扱えない。
そして一人一つしか持てないものだ。
少年から取りあげたところで、ただのガラクタに戻るのが関の山なのである。
「――うん、正直でいいですね。
さて仕事――ここでは、使徒としての『お役目』としますが。
この『お役目』はある程度、所有する神器によって変わります。
例えば、しいの持つこの剣は、『死なない存在を殺す事が出来る』剣です。
これを持つしいの『お役目』は、生死の循環、理から外れた存在を、正しい循環に戻す事。
簡単に言えば、不死殺し、悪魔払い、除霊などと言ったものです」
と、まず自分の『お役目』を説明する。
「それでその槍ですが、一番の特徴は、その浄化能力です。
なので、お前がすべき『お役目』があるとすれば、ですが。
例えば、病魔や呪詛、薬品などもですか。
そうしたもので不当に命を落とすものを助ける事でしょう。
本来はまだ死なずに済むものが命を落とすのも、正しい循環とは言えません。
なのでそれらのバランスを正常に保つ事、が第一になるでしょう」
その基準については敢えて触れないで話す。
誰を助けて、誰を助けないか。
その選択をする事を含めて、『お役目』を預かる責任なのだから。
「あとは、しいのように、悪魔や悪霊を祓ったりしてみるとか。
特に霊魂などが現世に留まっているのは生命の循環から大きく外れますからね。
ただこれは、危険が伴いますし、オススメはしませんけど」
わざわざ不要な危険を冒す必要はない。
椎苗のように、まさにそれが『お役目』であるなら別だが。
少年はそれ以外でも『お役目』を果たす事が十分に出来るのだ。
しかも、形としては恐らくヒトダスケ、になるだろう。
「どのような命も、正しく死して、審判を受け、いずれ楽園へと至るべき魂です。
それらを導く事、正しく保つ事。
それが『使徒』共通の『お役目』となります」
そう話した後、手元の剣を紅い霧に溶かすように消して、親指と人差し指で円を作った。
「さて、ビジネスとしての話ですが。
『使徒』になるかは二の次として、お前がそうした『お役目』となる人助けを行うのであれば、毎月一定の報酬を約束します。
もちろん、やり方はお前次第ですし、規模や数もお前自身の判断で構いません。
その際、危険が伴っていたりすれば手当も追加します。
基本は――そうですね、これくらいでどうでしょう」
薄い液晶端末を取り出して、ざっと計算した基本報酬を提示する。
月払いでおよそ日本円換算で数十万と言った所。
「他にも、『黒き神』の教えを広めたり、信じる者を増やしてくれれば、都度、ボーナスも用意しましょう」
と、金勘定をし始める。
条件としては、比較的良好だろう。
なにせ、仕事は自己判断で、ノルマも無し。
なにもしなくとも、基本となる報酬は最低保証として支払われるのだ。
「この額面は、お前への期待と、命に係わる責任の金額です。
不当な額ではないと思いますが、どうですか?」
そう金額を提示して、少年の答えを待つ。
白骨の神は、そんな金勘定をする現在唯一の信徒の行動に、骨だけの手を額に当てて困ったように嘆息しているようだった。
■蘇芳那由他 > 「…現実的、というか…最初に話した通り、少しでも早く自活出来るようになりたいので。
勿論、自活する為には金銭が必要ですし――かといって、委員会に所属する気は今の時点ではあまり無いので。」
だったら普通のアルバイトをしろよ、という意見もあるだろうがそれはその通り。
しかし、適性の無いアルバイトを受けても経験にはなるだろうが長続きはしないと見ている。
少年としては少しでも早く自活したいが、現状の自分では力不足に加えて経験不足だ。
(どうせ仕事をするなら、出来る限り長くやりたいしね…。)
まぁ、こういう所が現実的というかそんな感じなのだろうか?と、思いながら。
さて、どうしたものかと思考を切り替える。『使徒』そのものに特に忌避感は無いが、積極的に『使徒』として動けるかどうか。
ただ、この【槍】を『借りている』以上は、相応の責任は持って然るべきでもあろうか。
「…先輩の『お役目』は生命の循環から『外れた』存在を処罰する事で、僕に『お役目』が仮に割り当てられるならば――『不当な穢れで命を落とす者を救う』みたいな感じでしょうかねぇ。」
病魔や呪詛、危険薬物を穢れと大雑把に見立ててそう口にしてみる。
少なくとも、誰かを傷つけたり殺すよりはよっぽどマシであろうかと思う。
自分は、人を殺す覚悟も無いし、殺し殺されなんてそれこそ御免だ。
人間、誰しもどんな形であれ死ぬからそこは割り切っているが、ならば少しでもマシな死に方を。
(――死は否定せず、しかし出来る限り抗うっていうのが僕の考えだしね。)
死ぬのは当然嫌だ。けど、どうしようもなくなったら潔く僕は死のう。
勿論、大人しく死ぬのではなく『凡人』なりに足掻いて死ぬ、という前提で。
それが少年の大まかな死への向き合い方でスタンスだ。
奇跡は都合よく起こらない。自分の手札を全て使って、それでも逃れられない死があるならしょうがない。
(…後ろ向きではあるんだけど、まぁ…僕は超人でも何でもないしねぇ)
「……まぁ、危険かどうかは僕には『分からない』ので、そこは臨機応変に行きます。」
ぽつり、と。危機感が無いので、『何が脅威なのかが分からない』。
故に、少年は本人の自覚無くそういう鉄火場に足を踏み込んでしまう。
どれだけ注意しても、そこらの感情が欠落しているからどうしようもない。
――で、打って変わって今度はビジネス面での話。こちらはむしろ分かり易い。
気のせいか、死神さんが呆れたような仕草をしているが…ご愁傷様です、と心の中で拝む他は無い。
「――成程、大体は分かりました。『人助け』になって給料も入るなら悪くは無い条件ですね。
…あ、僕は勧誘とか教えを広めるとか、そういうのはちょっと苦手なのでそっちは正直遠慮したいですが。」
そういうのは話術や社交性がある程度必要となるが、少年はそちら方面の自信は最初から無い。
肩を竦めてそう口にしつつ、手元の【槍】と先輩、そして最後に死神へと視線を移して。
「――残念ですが、僕は自称とはいえ『凡人』です。なので『使徒』にはなれません。
もしかしたら、今後気が変わる可能性もあるのでハッキリ断言は出来ないのが我ながら優柔不断かと思いますが…。」
と、口にするがそれは前置きだ。自分にとって本題はむしろこの後口にする言葉で。
「――『お役目』…人助けについては僕なりにやってみます。
金銭面で魅力的ですし、【槍】の力をきちんと把握しておきたいし、何より――」
そこで、少し苦笑気味に肩を竦めてみせた。
「――凡人にだって些細な人助けくらいは出来るなら、それに越した事は無いんです。
だから、僕は僕なりに考えて、自分なりの基準でこの【槍】で誰かを助けます。」
それが結論。使徒にはならない。けれど神器に選ばれた者として、自分なりのやり方で『お役目』は果たす。
「…と、これが僕の現時点での最終結論です。」
■神樹椎苗 >
少年の考えと結論を聞いて、椎苗は深く頷いた。
「――いい答えです」
出来ない事は出来ないと言い、やりたい事、ささやかな理想もしっかり持っている。
こういう人物になら、安心して神器を預ける事が出来る。
「では、ビジネス契約、と言う事にしておきましょう。
お互いその方が分かりやすいですしね」
一先ずはそれで充分が過ぎるだろう。
いきなり、宗教がどうだ、使徒がなんだと言われるよりは明快だ。
「お前が自分を誇れるような、『凡人』になれるよう、応援していますよ。
ああ、もし、なにか困った事があればいつでも相談するといいです。
神器を使う練習なんかにも付き合えますし。
連絡先は――はい、送っておきました」
少年の端末に、アクセス許可を申請して、連絡先データを送信する。
これで、必要があれば連絡が取れるだろう。
「まあ使徒については――いずれ機会があれば、しいと『黒き神』について話すとして。
無理強いはしませんから、気軽にかまえていてください」
そう言って笑って、おそらく立ち上がろうとしたのだが。
難しい顔で、軽く前のめりになったまま止まってしまう。
「あー、はい。
――『非凡人』、早速の人助けの仕事ですが」
そう言って、少年に右手を差し出す。
「疲れて立てそうにないので、寮まで連れてってください」
そしてにっこりと、渾身の笑顔を向けるのだった。
■蘇芳那由他 > 大事なのは、自分に出来る/出来ない事を明確に相手に伝える事。
そして、自分はどうしたいのか?を真っ直ぐに伝える事。
(…今の僕の結論はこの程度だけど、神樹先輩は納得してくれたみたいだし良かった…。)
まぁ、自称『凡人』故に、内心では変な空気にならないだろうか?という懸念も実はあったのだ。
だが、そういう所も含めて今の自分なのだから、正直に伝えた事に後悔は無い。
「ビジネス契約…了解です。僕もその方が何と言うか分かり易いので。」
報酬、役目(しごと)の内容、自分に出来る範囲でやれる事が明確化している。
ドライといえばドライだが、それは冷たさではなく、現実的であり同時に今の自分の理想と限界点だ。
今の自分は、この程度の事しか出来ないが――まぁ、今後がどうなるかは神様にだって分からない。
彼女の申し出に。「いいんですか?」と、少し驚いたように目を丸くして。
とはいえ、神器の扱いについては彼女の方が遥かに先達だし、使徒にならないとしても【黒き神】の知識を学ぶ事も無駄では無い筈だ。
端末を取り出して確認すれば、彼女の連絡先が表示されているのを確認。
手早く、【神樹先輩/死神さん】と、何故か【黒き神】も一緒にセット登録だ。
見る限り、常に先輩を見守っているようにも思えたのでセットでも問題ない、と勝手に思っておく。
「あぁ、それは是非。なる/ならないは別にして、そういう話は為になると思いますので。」
あくまで使徒にならないだけで、知識や知恵、役目については存外に前向きだ。
ともあれ、解散の流れになったので、自分もベンチから立ち上がろうとして…。
「……先輩?」
不自然な姿勢で動かなくなった彼女を訝しそうに見ていたが…。
にっこりと笑顔で右手を差し出してのたまう彼女に、はぁ…と、少し呆れたように。
「…やっぱり何かしら無理していたんでしょう?不調なら素直にそう言ってくださいよ…。」
あと、非凡人って何ですか?と、問い掛けながらもその手を取って。
さて、おんぶでもしたのか彼女の手を引いて寮まで送り届けたのか。そこはまた余談であろう。
ご案内:「常世公園」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から蘇芳那由他さんが去りました。