2023/06/21 のログ
ご案内:「常世公園」にジョン・ドゥさんが現れました。
ジョン・ドゥ >  
「……ああ゛ぁ~~……」

季節と言えば気づけば梅雨時。クソったれなほどに平和な生活にもすっかり慣れちまったが。

「だるい……」

気温はまだ夏ほどではないが、湿度が殺人的だ。まるで温いサウナに入ってるような気分だ。
人間を蒸したって、美味しく食うのなんざ……いや、結構いそうだな、この島。

「……フロリスでも誘えばよかったか。
 暇つぶし……も、面倒くさいなあ」

つーわけで、ごく潰しの風紀委員は、公園のベンチでだれているわけだ。
表向き、こうも平和な島だと、俺みたいな荒事が得意分野の人員は、どうにも暇になっちまう。
……いやな、もちろん平和である事に越したこた、ないんだけどさ。
 

ご案内:「常世公園」にアリシアさんが現れました。
アリシア >  
世間は暑いらしい。
いや、それが理解できないほど私も愚鈍ではない。
ただ私は異能で服の中に冷気を生成し続けることで
普通に歩いている分には然程気にならなかったりする。

公園のベンチで気だるげにしている人がいた。
近づいてみる。

「こんにちは、6月もこの時期になると暑いな」

確かこういう季節の挨拶を人は好むと聞いた。

「早めの夏バテだろうか? あまり好ましい状態変化ではないな」
「あ……敬語…私は敬語ができない。すまない」

ジョン・ドゥ >  
「……暑そうなやつだな」

声を掛けられて、最初に出てくる言葉がこれな辺り、敬語が使えないっていうガキとまあまあお似合いか。

「夏バテってほどじゃねえし、南米に放り込まれたときに比べりゃ数段マシだけどな……。
 それでもやっぱ、この湿気がまとわりつく感じは気持ちよくはないだろ」

だら、っと体を起こしてガキと向き合ってみるが、見れば見るほど暑そうな格好だ。

「まあ、単純に暇してただけだ。
 おまわりさんも、事件が無ければお仕事もないわけよ」

いや、世の中のおまわりさんに失礼名セリフだろ。我ながら。
 

アリシア >  
「……ひょっとして世間では夏場にゴシックドレスは着ないのだろうか」

自分の体に手を触れる。
確かに世間では半袖の人が増えている。

「南米……?」
「よくわからないが、人生経験が豊富なのだな」

私はイギリスの研究所と常世島以外知らない。

「おまわりさん…つまり、風紀委員か」
「暇なのは良いことだな、辻斬りヴィランも変身する破壊者もいないのだから」

「私は風紀委員は消火器だと考えている。出番がないにこしたことはないさ」

ジョン・ドゥ >  
「……まあ」

着るか着ないかで言えば、着ない気がするけどなあ。

「……着るやつもいるんじゃないか?
 別に服なんざ、好きなもんを着ればいいだろ」

TPOとか、俺もあまり考えないしなあ。どこでもジャケット一枚だ。
夏場なんざ、シャツ一枚に肩からこれかけてるだけだしなあ。

「人生経験っつーか、なんだ?
 戦争経験が豊富っつーかな。
 この島に来る前は、まあ散々世界中転がされてたからな」

人生経験自体はまあ、ガキよりは多少あるくらいなもんだろ。

「消火器ねえ、確かにそんなもんであるべきなんだろうな。
 でもなぁ~……暇なんだよ」

つい、気だるい息が漏れてしまう。

「……顔はいいな。
 お前も暇なら、デートでもするか?」

おまわりさん、事案です。まあお巡りさんは俺なんだが。
 

アリシア >  
「それはそうだ、私はこの服をとても気に入っている」
「一番上の姉様も私にゴシックが似合うと言ってくれた」

そして相手の言葉。戦争経験。
異能と魔術がある昨今、戦争での人的消耗率は跳ね上がった。
攻撃も防御も過剰な今、毎秒命が消し飛ぶ戦場もあると聞く。

その戦地をこの若さで豊富と言うまで巡ったのであれば。

「練達の兵士なのだな」

風が吹いた。髪が靡いて、それを両手で押さえる。

「仕事がない以上退屈は仕方のないことだ、人は10分あれば退屈に陥る」

そして彼から聞き慣れない言葉が出てきた。

「“でーと”とはなんだ? 暇つぶしのゲームなのか?」

顎に手を当てて考え込む。
確かに私も暇だ。水曜日の午後にも授業を取っておくべきだった。

ジョン・ドゥ >  
「そうだな、確かに似合ってると思うぞ。
 あと五年くらいしたら俺の女にならないか?」

素材は非常にいい。ちょいと好みよりガキだが、もう少し女らしくなれば、他の男にやるには勿体ないくらいの女になるだろう。

「いーや、ただの負け犬だ」

死ななかっただけで敗残兵の成れの果て。生きてるだけ儲けもん。

「……いや、モルモットか?」

扱いはすっかり実験動物だからな。どっちにしろ、生きてるだけいいか。

「へえ、そうなのか。
 じゃあ小一時間ここに居た俺は、うっかり退屈を極めてしまったのか。
 これからは退屈の達人とでも呼んでくれ」

10分で退屈になるもんなのか……物知りだなあ、こいつ。

「デートってのはそうだなあ。
 男と女が連れ立って出かけて、買い物したり飯食って、最終的にはヤることヤる遊びの事だ」

我ながら最低の説明だった。
 

アリシア >  
「俺の女……?」
「よくわからないが、慣用句なのだろうか」
「普通、人を所有するという表現は使わないと思っていた」

彼は風紀委員である以上、会ったばかりの学生に
侮蔑のニュアンスがある言葉を使ったりはしないだろう。
となると……モノ扱いではなく、何かの意図が隠されている…?

「私はあなたをよく知らない」
「だがあなたは人間であるように思う」
「アンダードッグ(負け犬)もモルモット(実験動物)もあなたも生きている一つの命だ」

「自分を落とす表現として動物を使うのは避けたいと思わないか?」

退屈の達人と聞けば、クスリと笑って。

「あなたは面白い言葉を使うな…」
「男と女……買い物をしたり、食事をしたり…?」

「その、最終的にやることとはなんだろうか」
「世間知らずなんだ、教えてもらえないだろうか」

しかし“でーと”とはいつも放課後に生徒たちが遊びに行くことも言うのだろうか。
謎は尽きない。

ジョン・ドゥ >  
「ああ、うん」

なんか罪悪感がわいてきた。
世間知らずと言うか、無知、無垢……純粋かはわからないが。

「あー、お前も、なんだ。
 面白い言い方するな。
 命が平等だとするなら、自嘲に使うのは可哀そうだ」

これからはもう少し、モルモットに敬意を払う事にしよう。

「男と女がやる事っつったらなあ……」

ガキに言っていいのか? と、コンマ数秒だけ考えたが、別にいいか。

「あー、セックスだ、セックス。性行為。
 古今、男と女のコミュニケーションって言えば最終的にはこれだからな、うん」

……言ってしまったが、これ、マジで風紀委員が言っていい事じゃないんじゃないか?セクハラだろこれ。罪悪感すごいなあ。
 

アリシア >  
相手が引いている気がする。
私が喋ると色んな人が言い淀む。
これもひとえに人生経験の不足がゆえ。

「すまない、初対面の相手に言葉が多かったようだ」
「しかし私は犬とモルモットが好きだ」

自分でもよくわからない言い訳をしながら、
お詫びに氷嚢を錬成して差し出した。

「暑いのだろう? 使い終わったら捨てるなり返すなりしてくれ」

そして相手の言葉からセックスという言葉が出てきた。
これは知っている言葉だ。

「そうか……セックスだったのか」
「しかし姉様からヒトや怪異と粘膜接触はするなと言い含められている」

「すまないがデートのセックス抜きというのはないのか?」
「それともデートは必ず最後にセックスするものなのだろうか」

だとしたら困ったものだ。
人は退屈を紛らわせるために粘膜接触するのか?

ジョン・ドゥ >  
「ああ、俺も犬とモルモットは好きだぞ。
 気にすんな、喋らないよりは、喋る方が面白い」

無口なやつを無理やり喋らせるのも面白いけどな。

「……転送?いや、創造か?
 すごいな。この島に来てから、驚かされる事ばっかりだ」

氷嚢はありがたく貰おう。
首筋に当てれば、なかなかに気持ちがいい。

「あぁ~……」

つい変な声がでる。

「あ~……そうだな、不用意に粘膜接触するもんじゃない。
 お前の姉様とやらはしっかりしてるな、いい姉さんだ」

すごいな、ドン引きされてるような事を言った気がするんだが、びくともしない。
ちょっと面白いぞこいつ。

「いや、別にヤらなきゃいけないわけじゃないし、普通に遊びに行くだけだってまあ、デートと言えばデートだ。
 というか、初対面のガキをホテルに連れ込んだら、俺が上役から怒られるから無理だな、うん」

プライベートまで文句を付けられたりはしないが、流石に風紀委員が風紀を乱すようじゃだめだろ。

「まあ互いに暇なら、暇つぶしにどっか遊びにでも行くか?
 俺はジョン・ドゥ、ジョンでいい。
 どっか行ってみたいところとかあるなら、連れてってやるぞ」
 

アリシア >  
「そうか? ならよかった」

少なくとも不興を買ったわけではないようだ。
こう考えるとコミュニケーションはとても難しい。
この島に来てから3冊ほど対面コミュニケーションの本を読んだが。
身になっているとは言い難い気がする。

「創造だよ」

右の手のひらに雪だるまを作り、それを左手で頭を押さえると熱々のピザになる。
ピザを指先でくるくる回すとナイフになり、足元に転がすと水風船になった。
水風船は溶けるように輪郭を失い、無害な大気成分になって消えていった。

「そうか?」

姉様を褒められると喜色満面に喜んで。

「そうだろう? ワン姉様は理知的で、トウ姉様は可愛らしいんだ」
「スリイ姉様は培養槽から出られないけれど、とても異能の出力が高くて優しい」
「フォウ姉様は……ああ、ええと」

喋りすぎている。それは良くない傾向だ。

「そういうものなのか? じゃあデートのセックス抜きを頼む」
「私はアリシアだ、アリシア・アンダーソン」
「トウ姉様にもらったファミリーネームで、とても気に入っている」

考え込んで。

「下賤? と空桶? というのがみんなよく話題に出しているな」

それがゲーセンとカラオケと知ったのは後の話だ。

ジョン・ドゥ >  
「おう、すごくいいぞ」

賑やかなくらいの方が遊びがいがある。
むしろ、このくらいの年齢で、コミュニケーションにこなれてる方が、不自然なくらいだ。
自分本位に喋り過ぎるくらいの方が、可愛げがあるってもんだろう?

「やっぱ創造か……マジで凄いな。
 めっちゃ便利そうでいいな」

月並みな感想しかでない。
というよりも、それがどれくらいすごいのか、この島に来てから基準がブレ続けててわからないのが正しいか。

「ま、悪い事に使わないようにな。
 そうじゃないと、消化器が使われる事になっちまうからさ」

腕章をとんとん、と指先で示してみる。とはいえ、自分本位に能力を悪用するタイプには、あまり見えないから、一応、職務を全うしたという事で。

「……くくっ」

【姉様】を褒める様子は、まあ、子供らしくていい。
ああ、とてもいいな。本当に大事な姉たちなんだろう。

「オーケー、アリシアな。
 くく、斬新なオーダーで面白いな」

なんだ、デートのセックス抜きって。
笑いながら、氷嚢を持って立ち上がろう。あー……立つともう一回りくらい小さく見えるな、こいつ。

「げせん?空桶?……ああ、ゲームセンターとカラオケな。
 じゃあとりあえずゲーセンにでも行ってみるか。
 ……あ、お前ぬいぐるみとか好きか?」

氷嚢は、捨ててもいいって言ってたし、とりあえずゴミ箱に放り込ませてもらおう。
ぬいぐるみなりなんなり、好きなもんでもあればクレーンにコインを流し込むのもやぶさかじゃない。
最高にいいタイミングで遊び相手がやってきたんだ、初デートくらい楽しませてやらないと、だよな?
 

アリシア >  
「便利だが、作ってはいけないものもたくさんある」
「金やプラチナ、サフランなど希少なものは作ってはならないことになっているな」

「悪用されれば私にも責任がある、それは避けたいことだ」

腕章を見て、目をパチパチさせる。

「意識したことはなかったが、風紀委員は皆、これをつけているものなのか?」

斬新なオーダーと言われると顎に指を当てて考え込んでしまう。
そもそもセックスとはあまり人は好んで口にしない言葉であったような。

「ああ、そうだ…ゲーセンだ」
「なんだって…ゲーセンにはぬいぐるみが売っているのか?」
「それはいい、行こうじゃあないか」

それから二人でゲームセンターに遊びにいった。
あれこれと初めての経験だったが、とても楽しかった。

移ろう季節、しかし人は流されるだけではない。

ご案内:「常世公園」からアリシアさんが去りました。
ご案内:「常世公園」からジョン・ドゥさんが去りました。