2024/05/29 のログ
ご案内:「常世公園」に夜合 音夢さんが現れました。
■夜合 音夢 >
西日に照らされた放課後の常世公園。
その片隅でベンチに浅く腰掛け、足下に集まったハトの群れにパンくずを投げ込む少女が一人。
コンビニ袋から取り出したコッペパンを指先で細かく千切っては放り投げ、それを見たハト達が我先にと啄む様を眺めている。
「はいはい、喧嘩しないの。まだあるからね」
なるべく集団が分散するように右へ左へパンくずを飛ばすも、それを追いかけて殆どのハトが大移動。
結局また取り合いになってしまい、やれやれと溜息を吐いた。
この場に学園での彼女を知る者がいるならば、見たこともない優しげな表情をしていると思うかもしれない。
幼い子供へ向けたような言葉も、声音も、教室で見る鉄面皮ぶりからは想像もつかないほど柔和であった。
ご案内:「常世公園」に橘壱さんが現れました。
■橘壱 >
「ハッ…ハッ…!」
夕日に染められながら走り込む眼鏡少年。
暇な時間はずっと機体のアセンばかり考えているわけじゃない。
パワードスーツを着込む人間も、その能力を活かすために鍛えて置かねばならないというもの。
世の中、とりあえず困ったら走れと言うが凡そ合っている。
地味なトレーニングではあるが、コツコツと積み重ねでしか頂点には登れない。
「フゥー……。」
道を踏み鳴らし、常世公園付近で徐々に速度を落としていく。
適度にメリハリと休憩が必要だ。首に掛けたタオルで汗を拭き取り、眼鏡の位置を直す。
とりあえず水分だ。公園にある自販機へ向かう矢先、そこにいるのは鳩と戯れる女性。
多分、女子生徒だと思われる。随分と楽しそうではある。
「……ちょっと通っていい?鳩多すぎ、邪魔。アンタのペット?」
歩み寄って第一声はこれ。
まだ少し肩で息を切らしながら、訝しげな顔で第一声。
自販機まで向かいたいが、世の中言い方ってものもある。
少年には、初対面の相手を気遣う能力はほとんどないらしい。
レンズの奥の視線も気だるそうだ。
■夜合 音夢 >
学生街の只中にある公園だから、人通りは少なくない。
公園の前を通りかかる学生や遊びに来た子供たち。こちらへ干渉してこない限りは、こちらも気に留めない。
だから、声を掛けられるまで接近する人物にも気を払ってすらいなかった。
「うん……?」
意識の外から聞こえた声に顔を上げる。
人慣れしたハト達は逃げ出すことなく呑気に次のパンくずを待っているようだ。
少女が手を止めたため、不思議そうに首を傾げるばかりであるが……
「野生だけど……
別に襲ってきたりしないから、迂回してけばいいんじゃないかな」
確かに、少年の現在位置から自販機までの最短ルート上にはハトの群れがいる。
回り込めば辿り着けるとはいえ、邪魔と思うのも無理はなかろう。
ハト達を一所に集めたのは自分なので、自分のせいとも言える。
なので少年の態度に腹を立てたりはせず、せめてもの詫びとしてそんな提案をしたが、澄ました顔のせいであまり悪びれているようには見えないだろう。
■橘壱 >
「僕はそこを通りたいんだが?……だが、アンタの言うことも理解できる。」
売り言葉になんとやら。ああ言えばこう言う。
少年も少年で引く気はない。喧嘩腰という訳では無いが、我の強さは滲み出ている。
なんとも言えない雰囲気とは乖離してハト達はパンくずに夢中。くるっぽー。
ちらりとハトを一瞥するも、随分と人馴れしているようだ。
「随分と懐かれているんだな。
もしかして、野生なのに毎日餌やりしてないよな?」
学園内部だから人馴れしていてもおかしくはないが
何処となく彼女に懐いているような気もする。
鳥頭でも、恩人の顔は覚えているものなんだろうか。
まぁ、余り興味はない。ズボンのポケットから取り出した携帯端末の液晶画面をスライドする。
「僕は興味ないけど、あんまり餌やりしすぎで根付くと鳥害も起きるから程々に。
……とは、一応言っておく。僕としては好きにすればいいと思うけど……で、だ。」
「アンタって動物に詳しい?ハトって、ペットボトルの水とかやってもいいわけ?」
■夜合 音夢 >
「そうなの? じゃあ……」
どうしても通りたいなら考えがあるのか、何かをしようとして。
少年からの問いかけに、今一度そちらへ意識を戻す。
「毎日、ではないけど……ちょくちょく来てる」
ハトからすれば、労せずとも餌が降ってくる夢のような環境だ。
誰がというのは重要ではなく、ここにいれば餌にありつけるという認識なのだろう。
しかし少年は餌やり体験に興味が無いらしい。残念だ。
鳥害に関しては、ここまで人慣れしている時点で手遅れかもしれない。
「ん……それなり? ただの水なら何も問題無いよ。
ハトは頭を下に向けて飲むから、キャップとかに注いであげるのがいいと思う」
それはキャップを犠牲にしろと言っているのと同義なわけだが―――
■橘壱 >
「ちょくちょく、ね。
一応僕、風紀委員なんだけど。聞かなかった事にしとくよ。」
どうせこういうのは、最終的には生活委員会の管轄(多分)だ。
流石にこの量で根付いてると周辺のフンやら何やらで大変かもしれない。
寮はここから離れていて良かったとちょっとだけ思う。
とりあえず何かあった時の言い逃れように注意した、という免罪符は付けておく。ちゃっかりだ。
無愛想な仏頂面に、相変わらず興味なさそうな顔。
仕方ない、と自身の前髪を書き上げて迂回して自販機へ。
今や電子決算だってお手の物。携帯端末を操作すれば、ガコン、ガコン、と飲み物が落ちる。
一本はスポドリ、自分用。もう一本は、よくある水だ。
「どうせ、コイツ等用にしか買ってないよ。
アンタの代わりの奢り。キャップ小さいけどコレ、取り合いにならない?」
改めて見返すなんか絨毯みたいになってる。もこっ。
動物好きなら壮観なんだろうけど、少年から見るとなんか毛玉がギュウギュウ詰めだ。
別にハトが飲むための水だから、キャップくらいくれてやるが……。
一個のキャップではすぐひっくり返りそうな気がする。まぁいいか。
ほら、と水の方はぽいっと彼女へと投げ渡した。
■夜合 音夢 >
「……それはどうも」
どうやら見逃してもらえるらしい。
代わりに何か要求されるのかと一瞬だけ身構えたが、そういった様子も無いと見れば肩の力を抜いて。
律儀にハトの群れを迂回して自販機へ向かう少年の姿を目で追いかける。
ぼーっと眺めていたら、取り出した二本のうち一本がこちらへ飛んできた。
「っとと……セーフ」
取り落としそうになるのを慌ててキャッチ。
足下の群れに落として脳天直撃でもしたら一大事だ。
無事に掴んで一息吐いてから、奢りという言葉に目を瞬かせる。
「パンと違って一斉に群がってきたりはしないと思うけど……いいの?
水代くらい、すぐ返せるよ」
質問を返しつつ、ボトルを開ける手に躊躇いはない。
裏返したキャップいっぱいに水を注いで、群れから少し離れた地面に置いた。
それに気づいたハトが一羽、くるっぽ鳴きながら寄ってくる。
嘴を突っ込んで、これでも一応飲めてはいるらしい。
■橘壱 >
きゅっ、とキャップを外してグビリとスポドリを喉に流し込む。
乾いた喉に火照った体にはよく染みる。思わず口元も無意識に緩んでしまうもの。
とは言え、美味さにカマをかけ一気飲みは宜しく無い。
一定量を飲めばしっかり蓋を締めて、雑にズボンに突っ込んだ。
「ふぅ……別に水代位でケチケチしない。
僕が勝手にやったことだし、何かを感じる必要もない。」
物のついでだ。先客に対する詫び料程度。ふん、と鼻を鳴らす眼鏡を上げた。
どうやら、曲がりなりにも突っかかったことに対する"多少"の罪悪感はあるらしい。
決して自分が間違っているとは思わない。だからとりあえずの折衷。
此れを落とし所にしておけという行動の現れだ。面倒くさい男である。
「なんか啄んでるけど、飲めてるのかそれ?
……これ、こいつ等が鳥害の元なら、僕も"共犯"か?」
飲めてるのか飲めてないのか微妙なついばみ。
ん~?と訝しげにハトを見下ろした後にはっとする。
■夜合 音夢 >
汗でほんのり髪を湿らせた少年が喉を鳴らしてドリンクを飲む姿はなんだか様になっている。
しばらく眺めたところで、ふと手元のボトルに視線を落とした。
今のペースでハトに水を飲ませていたら、ボトルが空になる頃には夜になってしまう。
仕方無く、残った水は自分で飲むことにした。
両手でボトルを持ち、くぴくぴ……少年とハトの中間くらいの飲みっぷり。
「そう。ありがと」
初対面の相手に奢ってもらう申し訳無さもあったが、お言葉に甘えることにした。
いきなり不躾な態度を取られたことについては、初めから気にしていない。
むしろ、意外と律儀な人だな……と思ったくらいである。
「ん、大丈夫。ハトはこうやって飲むものだから」
何故ハトが鳥類の中でも珍しいとされる飲み方をするのか、なんて専門的な事は知らないが、少女にとっては見慣れた光景だ。
心配ないよと言おうとした矢先、別の心配事に気付いたらしい少年に、ふっと口元を緩めて。
「ふふ……これで、私と同罪だね」
別に責任を擦り付けようとか、皮肉るような意図はなく。
そんな風に真面目に考えてしまうのが可笑しくて、つい顔に出てしまった。
初めにハト達へ向けていたような、自然で柔和な笑みであった。
■橘壱 >
スポドリを入れてからは随分と体も冷えてきた。
立ち話しているだけでも体もまぁ回復してきたほうだ。
人間とハトを比べるのはナンセンスだが、なんともちびちびした飲みっぷり。
彼女曰く、大丈夫らしい。自分より詳しそうな子が言うのであればそうなのだろう。
パンくずを水をせっせと忙しない連中だ。
だが、愛嬌があるのはわかる。ぼーっと眺めているだけで、なんとも言えない気持ちになる。
「……まぁ、こうして眺めているのも悪くはないな。」
平和な風景が嫌いなわけじゃない。
別に荒廃を望んでいるわけじゃないし、そう思う気持ちはある。
仏頂面だった表情も、同罪と言われれば少し目を見開いた。
けど、すぐにふ、とそれこそ楽しそうに笑みを浮かべた。
「それはどうも、共犯者さん。
バレたらお互い、先生に注意されるかもね。」
軽く首を撫でればじ、と緑の視線が相手を見やる。
「……常世学園風紀委員会所属一年、橘壱。アンタは?」