2019/02/08 のログ
栗川 有栖 > くすと言う笑みがちらっと伺う時に見えて。
やっちゃった的後悔気味の表情を浮かべて。

「えぇっと……独り身、同士の、お茶会で、どうでしょう。
あ、はいっ、1年生の栗川有栖、です。」

物探ししてた人以来の数ヶ月ぶりの他人との距離の近い会話に落ち着きがぜんぜん整わないまま噛まない様に発音意識して途切れ途切れの受け答え。
顔をちゃんと上げれば目をじっと見つめています。

北条 御影 > 「有栖ちゃんか。よろしくね」

まじまじと見つめられ、さらに落ち着き払ってカフェラテを一口。
無駄に背筋を伸ばし、どことなく上品に見えるように意識する。
年上だからね。ちょっとぐらいはカッコつけなきゃね

「あは、在学年数は一緒なんだね。私も今年此処に来たばっかりなんだよねー。
 学年は一緒だけど、歳はー…年下、だよね?」

一瞬、年下であることを前提に話を進めようとしたがふと思いとどまった。
此処は常世学園。見た目=年齢を表すなどという一般常識は通用しないのだ。
3桁年齢を超えている見た目幼女の先生とか割とゴロゴロいる。いるのだ

栗川 有栖 > 今、いい響きが聞こえた気がする。

「御影、さん、よろしく。」

無表情気味の口元笑み。
がんばってよろしくのお返事。
すごいなぁ、しっかりものみたい、と両手でココアのコップ抱えました。

「あれ?そう、なんですか?
私は13、そろそろ14歳が近づいていますけど…」

もしかして、これで同い年や年下だったら物凄い差がついてると思います。
憧れ、上を見るような目をしてさらに見つめていて。
確か年齢一桁で見た目の年齢近い子がいたと思うのです。記憶が確かだったら。

北条 御影 > 「あ、よかった。ちゃんと見た目通りの年齢みたいだね」

極めて常識的な年齢に内心ほっと胸をなでおろす。
これだけお姉さん面しておいて、実は向こうの方が年上でしたなんて、異能が無くても記憶を消していしまいたくなる。

「私は今年で16歳。歳は違うけど…ま、新入生同士ってことで」

両手でコップを抱える有栖を見て思わず頬が綻ぶ。
何だろう、この天然記念物のような小動物感。端的に言ってとてもかわいい。

「ね、有栖ちゃんはどうしてこの学園に?
 此処で生まれ育ったとか、異世界から来た、とかならまぁ分かるけど…見た感じ普通の子、だよね」

と、割とぶしつけな質問を投げかけてしまったのは
有栖の可愛さに気が緩んだからだろうか。
それとも、どうせ忘れてしまうからという、褒められたものではない無意識の想い故か

栗川 有栖 > 「見た目で判断すると驚く人多いです、よね。
新入生、だけど試験近い、ですよね。」

ここ、と見た通りの年齢同士でほっとしました。
そして新入生だけど進級を問う試練が近いことを思い出してぶるぶる。
ココアちょっと啜って、試験の恐怖をごまかしました。

「ん、それ、は……。」

けれど表情はそこでどんより。
宙を指立ててくるくる回して言いよどんで。

「……取り柄が何もなかったから、取り柄を探しに。」

特別になりたいなんて、言い出し辛かったから、それだけ言って、ココアのコップで口元を隠しました。

北条 御影 > 「―そっか」

何となく、わかる気がした。
自分もこの学園に来る前は何の取り得もない、影の薄いごく普通の学生だったのだ。
そんな自分が嫌で、変えたいと思っては居たがそれはいつも思うだけだった。
だからこそ―

「へぇ、凄いじゃん。それで新しい環境に飛び込んできた!ってわけでしょ?
 ふふ、それって私からすれば十分尊敬出来る行動力なんだけどな」

あまり、言いたくないことだったのだろう。
それでも、自分からすれば尊敬に値するというのは本心だ。

「だってさ、私も有栖ちゃんと似たようなこと思ってた時期あったよ?
 自分には何で何もないんだろーって。それでも、特に何かをする決心なんてつかなかったから。
 …だからさ、凄いよ有栖ちゃんは。私より全然」

顔を隠すように俯く有栖に対し、真正面からにっこりと笑みを向ける。
恥じることなんてないのだから、顔を上げてほしいと。そんな思いを込めて

栗川 有栖 > 「えっ?」

凄い、なんて言って貰えるなんて思ってもいませんでした。
藁にも縋る様に自分に異能が、特別がないかを求めて、特別を羨んで妬んで、欲しがった。
それが…凄い?

「行動力……、行動力。振り絞ったら行動力、あった、のかも。」

励ましと笑みと、感情や内心を察する能力が乏しくても、これは表向きとか、そんなんじゃないと思ったから。

「あ、りがと…う。
で、も。……御影さんの方が何もないと思ってたのに自分に自信、持ててて、凄い。」

ココア抱えたまま、小さく、小さく、お礼を言って、微笑んだ。
微笑みはココアのコップに隠されたままだったけれど。

北条 御影 > 「うん、それがあるだけで凄いことだよ。
 世の中さ、不満があったとしても内に閉じ込めて飲み込んじゃう人が大半だもん。
 そうやって行動起こせるだけ、立派ってことで」

段々と照れくさくなってきた。
誤魔化すようにあはは、と笑ってカフェラテを飲み干した。

「ん、んー……私のは何て言うかさ、ほら。自信とかそういうのじゃないの
 ある種の諦め?というか何というか。ほら、世の中そんなもんなんだなーって。そう、思っちゃってさ」

目の前の小さな少女の行動力を称えた後で、
こんな自分の話をするのは相当にバツが悪くて、誤魔化してしまいたくなる。
けれども、此処で本心を全て隠してしまうのは彼女をだましてしまうような気がしたから

「それとー…まぁ、何かしないとホントに不味いからね、私の場合。
 必要に駆られて、必死こいてもがいて、とりあえずなんでもやってみよーって。そう思ってるの」

何を言っているのか自分でもよく分からないけれど。
それでも、前に進もうとあがいているのは嘘ではないし、
この小さな身体に大きな勇気を秘めた少女に年上面をしてしまったのだから、
恥ずかしくても、バツが悪くても、きちんと向き合わなければ、それこそ合わせる顔が無いというものだ

栗川 有栖 > 「飲み込んじゃう方が、偉いって言われる事、多いと思う、のに。
内に閉じ込めて我慢しきれなくなって、どーんってなっちゃった、から。」

行動力と暴走は紙一重で、そう取られてもおかしくないのに。
理由が、妬みと羨望と宝くじに当たってるように祈ってたようなものなのに。
理由は、言えてないけど、凄いことだと、言ってくれた。

「諦め、……飲み込んじゃった、から?
でも、私に…声、かけてくれましたよね?」

御影さんの言葉と凄いことだと褒めてくれる意味が、良く分からなくて、お話をよく聞いて、よーく意味を考えて。
頭の上に湯気が出そうなほど考えて。

「もしかして、……何かの限界が、近いんですか?
御影、さん。」

出した結論がタイムリミット、そういうものが近い自分を弱らせる異能とか、何かの期限があるんじゃないかと言うこと。
ココアを置いて、じっと見つめてみたのです。

北条 御影 > 「―」

この子は、聡い。
断片的ともいえないほどの、あまりにも抽象的な言葉の羅列から、その言葉が出てくるかと、思わず息を呑んだ。

ぐ、と出かけた言葉もまた呑み込んでから苦虫を噛むような顔でむぐむぐと口元だけが動く。
言っていいものかと暫しそれを繰り返し―

「あー…まぁ、明確に限界が近いってわけじゃないんだよね。
 単に、この学園で何も出来なかったら、私という存在はそれこそ居ないも同然になっちゃうんだよ」

やがて、観念したかのように溜息交じりに話し始める。

「世界で此処ほど異能に詳しい場所は無いでしょ?
 だから、此処での生活の中で私の異能をどうにかしない限り、私は今後一生、どうにもならないままなんだ。
 だからー……そうだな、とりあえず、私のことを覚えておいてよ」

これはあくまで私の問題だから、と付け加えて照れくさそうに笑った。
別に命の危険があるわけでもないし、4年が過ぎたところで物理的にどうかなるわけでもない。
ただ、自分の心持の問題という部分が大きいから。
あんまり露骨に協力を求めることは出来ない。

栗川 有栖 > 「…。」

あてずっぽ、に近かったけど、根拠がないわけじゃなかった。
内に閉じ込めて飲み込んじゃう方が偉いといわれることが多いのに、行動力を凄いといってくれたこと。

そこで諦めて、飲み込んで動かなかった事を、後悔しているんじゃないかと思い至った。
そして、この学園に来ているという事。
必要に駆られて動き出すのと何かしないと不味いってお話は動かないうちにやらないといけない事にかけられる時間がなくなってたんじゃないか、夏休みの宿題の放置と言うと、規模をちっちゃくしてしまって言えないけど、そんなイメージから辿ってた。

「え、えぇ、っと……いないも同然、そんな状態……
異能をどうにか、そ、そうだ。
私と――――暮らしてみませんか?」

異能そのものはどうにもならない。
けれど、地味な自分の異能なら、どうにかできなくても、なんて、閃いちゃったのだ。
そして、突然距離感を縮める癖が出た。

北条 御影 > 「―」

再び、息を呑む。
今度は先ほどとは全く違う理由によるものだが。

「っぷ、あはは!流石の私もいきなり同棲なんて言われたのは初めてだよ。
 こりゃモテ期が来ちゃったかなぁ、なんてね」

唐突な申し出にその真意を測りかねて思わず笑ってしまった。
それでも、彼女の目は真剣そのものだ。きっとこの申し出は意味があってのことなのだろう。
それでも―

「ありがと、有栖ちゃん。多分、私のことを思って、私のための提案…なんだよね?
 一緒に暮らせば私の異能をどうにか出来る…ってことなのかな、きっと」

十中八九そういうことだろうとは思う。
その手を取るのは簡単だし、彼女に縋っていればきっと本当に何とかなってしまうのだろう。
それでも、それは―

「それは―私が求める未来とはちょっと違うんだよね。
 まだ完全に道が閉ざされたわけじゃぁないし。もうちょっと頑張らせて欲しいなぁ。
 私もさ、最近やっと歩き始めて、その楽しさ…っていうのかな。
 充実感?みたいなのを感じてるんだ。
 だから、とりあえずは…お友達から、かな」

言って、席を立つ。

「少なくともさ、有栖ちゃんの前ではもうちょっとカッコつけてたいんだよ、年上としてはさ。
 だからね、本当にどうしようもなくなったらその時はもう一度、声を掛けるよ。
 今、有栖ちゃんにお願いしたいのは一つだけ。私のこと、忘れないでね」

人に頼ることは簡単だ。
自分では何もできないと、諦めてしまうことも同様に容易い。
だからこそ、もう少し足掻いてみたいと思う。

今此処では手を取ることは出来ないけれど―

「ありがと、有栖ちゃん。
 次に会った時、貴方が私のことを忘れてなければ…この話の続きをしようね。約束だよ」

そう言い残し、店を後にした。
手を取ることはしなかったけれど、自分に手を差し伸べてくれたことは素直に嬉しい。
だから、次に会った時―

次に会った時の彼女の反応で、全てが分かる。

その手を掴むことで自分に訪れるのは
救いか、それとも―

ご案内:「カフェテラス「橘」」から北条 御影さんが去りました。
栗川 有栖 > 「え…あっ」

同棲。何言ったのか自覚して、表情七転八起。

「えぇっと、どうにかというか…」

どう言えばいいのか、自分のは緩和や弱化であって停止じゃない。
切羽詰ってなくてもいつ来るか分からない期限は引き伸ばせるかも知れない。

「自分で頑張る……それはやっぱり、自分の歩く力を信じているって事、だと思いますよ?
だから、えっと。
…お、お友達。二人目のお友達…!」

内心の喜びと、異能の不安と入り混じって。
席を立つ御影さんを見上げて。

「じゃあ、約束…しましょう。
覚えてますから!
二人目のお友達、覚えてますからねー!お話の続き……!」

そういって手をぶんぶんと振って…見送った。

「……まさかの同棲もちかけ……!」

そして口走った事を思い出して、頭を抱えた。

……しばらく突っ伏した後、料金を払って、帰宅する事に。
何故か、一人での帰り道で話し相手もいないのに、11月の公園の時位には調子が良かったような気がした。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から栗川 有栖さんが去りました。