2019/03/09 のログ
玖美・E・A > 「……おー」

と、感嘆の声を漏らしたのは、彼の……女性にも見えるけれど、間違いなく男性であろう彼の、赤い瞳が『すごいな』と思ったからだった。だからどうということもないのだけど、その分生まれた微妙な間の後で、

「ここのお店ってー、勝手に席とか座っていい感じなんですかー?初めて来たから、よくわかんなくって、えへへー」

と、視線を合わせるように微妙に前傾姿勢になりながら尋ねる。ついでに彼の動きに合わせるように首を傾げて、気の抜けたようなスマイルもサービス。かなりあざとく見える所作だが、一応天然である。

神代理央 > 「………おー…?」

何時もならば「いったい何用かね」だの「…人の顔に何かついているか?」だのといった高慢な態度と雰囲気を纏えるだろう。しかし、生憎其処までの元気はない。
少女が零した感嘆符をオウム返し呟きながら、どうしたんだろうと不思議そうな視線を向けるばかり。

「……相席そのものは別に構わないが。こんな不愛想な男と同席を希望するなど物好きだな」

漸く回転し始めた己の思考と、いきわたった糖分で取り合えず高慢な態度は回復。回復して良いのかはともかく。
やたらとあざとい態度で首を傾げるゆるふわな少女に怪訝そうな瞳を向けたまま、相席を求められれば小さく頷いて同意するだろう。

玖美・E・A > 「いいんですか?やった、えへへ」

許可が降りると、金髪の彼の向かいの席に、ゆったりとした落ち着いた動きで座る。

「うふふっ、物好きって、よく言われますー。最近は言われてなかったから、なんだか嬉しいです」

気の抜けた笑みはいつの間にかニコニコという元気な笑みに移行していた。勝手にメニューを開いて、眠そうな(実際は特に眠くもない)緑の瞳から視線を注いでいく。

神代理央 > のほほんとした様子で腰掛ける少女を気怠さ半分、興味半分といった視線を向けて眺める。
その整った顔立ちは日本人離れしているが、外国人だと言い切れる程ではない。ハーフかクォーターかな、と思いながら珈琲の注がれたカップに口をつける。
そのゆったりとした服装からでも分かる程の大きな胸は、さぞ男子生徒の目を引くだろうな、と内心苦笑しつつ。

「物好きと言われて喜ぶなんて、変わった奴だな。……それで、私に何か用件でも?…見た感じ、大した用件ではなさそうだが」

そもそも、用事があるのかすら怪しい。というか、己が風紀委員である事も知らないんじゃないかと思う。
メニューを眺める少女を眺めながら、不思議そうな口調と共に再度首を傾げるだろう。

玖美・E・A > 「用件?……えっと……」

一旦メニューから顔を上げて、首をかしげる。あたかも『用件』という日本語の意味を知らないかのような仕草だがもちろんそんなわけはなくて、自分がなぜあえて彼に声をかけたのか思い出そうとしているのだけだ。
…自分の意図を忘れるなんて、それでも普通の感覚から言えば異常事態だろうけれど。

「そうだ、ええっと、あなたも『お仲間』かも、と思ってー」

幸いすぐに思い出せたのか、右手の人差し指を、自分の目の下に付ける。あっかんべーではなくて、自分の、日本人らしからぬ緑の目を指差して見せているのだ。

神代理央 > 用件を尋ねられて暫し考え込む少女。
何とも気の抜けた光景ではあるが、彼女の容姿と相まって貴族の令嬢の様な雰囲気を纏っている。
というよりも、本当に貴族か資産家の令嬢なんだろうかと、己の推論に一つ仮説を追加して――

「……ああ、成程。そうだな、多分『お仲間』だ。私は所謂ハーフと呼ばれる類だが、貴様もそうなのか?」

翡翠色の瞳を指差して尋ねる少女の意図に気が付き、納得した様に頷いて同意した。彼女の顔立ちや瞳の色を見れば、己と同じ人種なのだろうと先程の推測を固める。
言葉は高慢なものだが、穏やかな口調と共に小さく笑みを浮かべて見せるだろう。

玖美・E・A > 「ですよねー。えへへ、もし違ったらどうしようかと……あっ、私はクォーターです、4分の3がドイツで、残りが日本。グーテンターク、なんつって、えへへ」

思い切りカタカナ発音のドイツ語で挨拶してはにかむ。彼の口調や口ぶりを気にしたり、不機嫌そうにする様子は全くない。
それどころか、近くを通った店員の女性を呼び止めて、

「すみませーん、このロイヤルミルクティーひとつで。あっ、あと季節限定のいちごケーキと、パンケーキのバニラアイス乗せと……コーヒーゼリーも美味しそう、それもくださーい」

と、普段のおっとりのんびり口調が嘘のように矢継ぎ早に注文を並べ立てる始末。店員も少し怪訝そうな顔で注文を取っている。

神代理央 > 「ほう?奇遇だな。私の母親もドイツ……だったと思う。多分。自信は無いが」

己の魔術名や母方の実家の名を思い出せば、確かドイツだったような、と思い返す。己が特注で纏う母方の実家がデザインした制服も、悪名名高い第三帝国時代のものであるし。
尤も、そこまで両親と仲良く話をしたこともないので、多分といった程度の知識なのだが。
彼女の拙いドイツ語に苦笑いを浮かべつつ、自分もそれ程話せるわけでは無いのでお互い様かと自嘲した。

「……良く食べるな。いや、甘いものは別腹というのは十分に理解出来るが。というか、はきはき喋れるじゃないか」

矢継ぎ早に注文する少女に瞳を瞬かせた後、クスクスと可笑しそうに笑みを零す。
甘いものが大好物な自分としては気持ちは十二分に理解出来るし共感できる。ただ、注文した際の口調が先程までと違い過ぎて、思わず感想を漏らしてしまうだろう。

玖美・E・A > 「わぁー、すごい偶然ですねー、狭い島にドイツ系が二人も揃うなんてー…」

やっぱり話しかけてよかったなぁ、と満足そうな笑みを浮かべる。さっきからずっと笑っているような気もするけれど、それもいつものことだった。

「ふふっ、我慢したり、諦めたりするのは心の健康によくないですから。それに、嬉しいとお腹がすくんですー」

メニューで口許を隠すのは照れ隠しの仕草なのだけど、それでも声が笑っているのは彼に心を許している証拠だろう。……まぁ、誰にでもすぐに心を許すタイプの人間なのだが。

神代理央 > 「まあ、ハーフやクオーターどころか異世界人に獣人魔人。龍に鬼にロボットやアンドロイドと多種多様な連中が住んでいるからな。……そう考えると、確かにドイツ系のが二人揃うというのは一周回ってレアだな」

島の外では考えられない程の多くの種族が住む常世島だからこそ、逆に"普通の"ドイツ系日本人が揃うというのは珍しいかもしれない。
彼女の言葉に頷きながら、良く笑うものだな、とのんきな事を考えていたり。

「だとすれば、貴様は年がら年中お腹を空かせていそうだな。何というか、何時も幸せそうに見えるぞ」

まだ出会って幾ばくも無いが、少女の人柄や性格は何となしに掴めてきた。だからこそ、口元を隠して笑う彼女に穏やかな笑みを返しながら、再び珈琲を啜る。

「何時も笑顔でいるというのは良い事だ。周りの人も、心地良い気分になれるからな。それは貴様の………ああ、すまない。何時までも貴様呼ばわりではな。私は神代理央。風紀委員を務める一年生だ。差し支えなければ、名前を聞いても構わないか?」

今更である。
偉そうな口調と気だるげな空気を纏って己の名を告げた後、じっと少女の緑色の瞳を眺めながら名前を尋ねるだろう。

玖美・E・A > 「…………そうですねぇ、確かにいつもお腹すいてるような……」

言われてみるまで気がつかなかった。もしかして自分はいつも嬉しくて、いつもお腹がすいているのでは……?
なんだかすごい大発見をしてしまった気がしたけれど、それはそれとして、

「あ、私は玖美・エルメスティーネ・アドラスヘルムですー。すごく長いからクミちゃんでもティニでもお好きに呼んでください。よろしくお願いしますね、理央さん」

自己紹介はスムーズで淀みない。というのも、自分の名前は長くて仰々しいので、いつもちょっと引かれてしまう。だから、いつもニックネームのことまで一息に言って親しみやすさをアピールすることにしているのだ。いわばテンプレートとして頭の中に入っている一連の流れと言ったところか。

神代理央 > 「いいじゃないか。幸せそうで羨ましい事だ。ただ、食べ過ぎには注意する事だな。…まあ、貴様ならば物を食べている姿にすら惹かれる男子も多かろうが」

彼女程整った容姿の少女が美味しそうに食事をしている様だけでも、男子生徒の視線を集めるには十分だろう。
そういった意味では、穏やかな外見だが中々罪作りな少女だな、と内心苦笑い。

「……本当に長いな。んー…それじゃあ、ティニと呼ばせてもらおう。改めて宜しくな、ティニ」

すらすらと名前を告げる彼女の様子と、その仰々しい名前にぱちくりと瞳を瞬かせる。
しかしそれは一瞬の事。高慢な態度を消失させて穏やかに微笑めば、彼女の要望に応えて親しみやすい名前で呼びかけるだろう。
普段仏頂面の自分が此処迄ほわほわしてしまうのは、彼女の雰囲気に釣られているのだろうか、なんて考えながら。

玖美・E・A > 「んー、そういうものですかー?あまり意識したことはないんですけど……」

男子の視線がどうとか、モテるモテないとか、玖美にとっては遠い世界の出来事のことのようだった。というのも、単に玖美にとって友人や知り合いに男も女も関係なくて、そういう視点から人間関係を考えてみたこともないというだけなのだけど。

「えへへ、よろしくー。なんだか少し照れちゃいますねー」

ティニというニックネームはいつも自分から言うのだけど、実際そう呼んでくる友人は多くなかったので、少し新鮮な気分だ。
なんて言っていると、机の上にさっき頼んだスイーツの類いが到着した。店員に軽く頭を下げると、早速いちごケーキから手をつけ始める。

神代理央 > 「まあ、特別意識することでもないしな。とはいえ、事実である事に変わりはないと思うけどな」

残り少なくなった珈琲を啜りながら、小さく肩を竦める。

「…此方とて、初めて会った女子をあだ名で呼ぶというのは中々に恥ずかしいものがあるんだ。お互い様だろう?」

ケーキに手を付け始めた少女を眺めつつ、小さく苦笑いを浮かべて肩を竦めた。

玖美・E・A > 「ふふっ、そうかもですねー……」

甘いものを食べれば、ただでさえ嬉しそうだったのが、ますます上機嫌になっていく。そのスピードは特別はやいというわけではないけれど、淀みなくテンポよく、次々口へと運んでいくもので、

「私達、すっごく仲良くなれそうな気がするんですー。ね?理央さん」

と、人懐っこい、満面の笑みを見せた。甘いものと、新しい友達。それは玖美にとって望みうる限り一番嬉しくて、価値のあるものだ。

神代理央 > 次々と甘味を頬張る少女を、微笑ましいものを見る様な目でのんびりと眺める。
甘いものを美味しそうに食べる相手とは仲良くなれそうだ、と普段の自分では考えない様なのほほんとした思考に走るのは彼女に釣られてしまったからだろう。

「…そうだな。寧ろ、此方こそ是非仲良くしてほしいものだ。甘いものを好む同士は、中々に得難い友人だからな」

人よりも多少――いや、かなり甘味を接種する自分としては、彼女の様に美味しそうに甘味を頬張り、それを共に出来る相手というのは中々出会えないものだった。
だからこそ、彼女の言葉に小さく頷き、クスクスと笑いながら言葉を返すだろう。

そんな穏やかな時間。硝煙も砲声も無い、揺蕩う様な午後の一時を、新たに得た友人と共に和やかに、穏やかに過ごしたのだろう。
彼女と別れてから、自分らしからぬほわほわした態度を取った事に一人枕に顔をうずめてじたばたしたとかしなかったとか。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から玖美・E・Aさんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から神代理央さんが去りました。