2020/06/17 のログ
黒藤彩子 > 「は、八割……!が、がんばります……」

後日図書館に封じ込められたが如く本の中に苦しむ私が居ることだろう。
頑張れ未来の彩子ちゃん。おけまるな未来を目指せ。
そう意気込んで挑戦に頷き、ヨキセンセの牙のような歯、自前だというそれを不躾に注視する。
彼の大きな口には良く似合っているように思えた。

「異能。私は自分の……そう嫌いじゃあないんですけど。眼は、いつか治るといいかなあ。なんて」
「友達にすっごく綺麗な眼と髪の毛の子がいて、いいなあ~って。隣の芝はなんとかですけど」

白、白、何色でもない無彩色。"面白い"状態は何一つ面白く無くて嘆息して窓の外を見る。
仲睦まじい様子で腕を組んで道を行く男女の姿が合った。それこそ隣の芝のように眩しく見えて、瞳を細める。
けれども、そうした合間に入る耳より情報は何よりなもの。

「へぇ、ほぉ、ふぅん……それってヨキセンセが皆のパパみたい」
「でもステキかもかも。そっか、やっぱりセンセってポジティブゥ~」

瞳を向け、顔を向け、御行儀悪く頬杖をついたまま猫みたいに相好を崩して、前向き極まる彼に笑んでみせる。
まるきり自然に言い切るあたり、すっごく頼もしく見えてしまうのだ。

「じゃあ、そんな超前向きなセンセの期待に応えれるよう、彩子ちゃんがんばりまーす!ね?」

何だか元気が出て来た気がして、パフェを一気に飲むようにしてから席を立ち、意気揚々と会計へと向かう。

「センセ、約束ですよう!八割〇ならクレープふたつ!」

店内に迷惑なくらいに声だって上げて、手を振って後にするんだ。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から黒藤彩子さんが去りました。
ヨキ > 「どうせなら、目標は高い方がいいだろう?
ヨキは手加減はせんぞ。はりきって頑張ることだ」

彩子の真っ白な瞳と髪を見つめながら、眉を下げて。

「自分の好きな色に染めるだけでは、根本的な解決にはならないものな。
どうにかして、君が満足できる状態になれればよいのだが」

こういうとき、ヨキは相手の髪色や瞳を生半可に褒めたりはしなかった。

「ヨキは常に前向きさ。
前向きに教え子のことを考えていなければ、先生は務まらないということだ。

くれぐれも根詰めすぎて、体調を崩したりすることのないようにな」

笑って彩子を見送る。
大声で手を振る彼女に、こちらもまた長い手を振って。

自分もまた、綺麗に食べ終えた食器を揃えて席を立つ。

ご案内:「カフェテラス「橘」」からヨキさんが去りました。