2020/07/16 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に鈴ヶ森綾さんが現れました。
鈴ヶ森綾 > 「あらまあ」

時刻は夕方、今日受ける試験を全て終わらせ、寮への帰りがけに寄ったその店は
学園からほど近い立地という事もあってこの時間帯は非常に混雑する。
しかし今は期末試験期間真っ只中、普段よりも客足も引いているのではと当て込んだのが
扉をくぐってみればあいにくの大繁盛であった。

「まったく、テスト期間だというのに。勉強はいいのかしら。」

自分の事を棚上げにして小さく呟く。
そうこうしていると店員がやって来たので自分が一人である事を伝えたところ

『少々お待ち下さい。…ただいま店内が非常に混雑しておりまして。後ほど相席になるかもしれませんが、それでもよろしければすぐにご案内できますが』

「ええ、構わないわ。お願いできる?」

そんなやり取りの後通されたのは4人がけの四角いテーブル席。
立ち去ろうとする店員にアイスティーを注文し、隣の座席に鞄を置いて軽く店内を見回す。
なるほどカウンターや二人がけのテーブルは全て埋まっているようだった。

鈴ヶ森綾 > そうして注文したアイスティーを待つ間にメニューを眺めながら
ケーキにしようか、パフェにしようかと考えを巡らせる合間、なんの気無しに周囲の喧騒に耳を傾けてみた
聞こえてくるのはテストの出来栄えがどうだとか、間近に迫った夏休みの予定だとか
新作の映画がどうだとか、アイドルグループがどうのという、学生らしい話題で占められているようだ。

「平和だこと」

平和であるのは自分としても好ましい事だと思う。
そうでなければこうしてゆっくりお茶を楽しむことさえできやしないのだから。
そんな事をぼんやりと考えている内にアイスティーが運ばれてきた。
自分の前に置かれた茶色い液体で満たされたグラス、そこへまずはガムシロップの口を折って中身を注ぐ。
一つ、また一つ、さらに一つ。
かさを増したグラスの中の液体をストローで軽くかき混ぜてから静かに口をつけ中身を吸い上げる。

「……ん」

ほんの僅かに喉を鳴らして甘い液体を飲み下す。しかしすぐにストローの先端から口を離すと
再びテーブルに備え付けの籠に手を伸ばしてガムシロップをさらに二つつまみ上げる。

鈴ヶ森綾 > パキッ
小気味良い音を立ててまたガムシロップの容器の口が折られた。
二つの容器の中身は残さずグラスの中へと注がれ、後には綺麗に並べられた空の容器がテーブルに残される。
既に猛烈な甘さとなっていることが想像に難くないアイスティー
それを氷が音を立てぬように静かに撹拌してから再度ストローに口をつける。

「………」

一口飲み下すと女生徒の顔が音もなく曇った。
だがその原因はアイスティーが甘すぎることにあったわけではないようで。

「何か…物足りないのよね。」

物足りない。そう口にはしたが、その手がそれ以上ガムシロップに伸びる事はなかった。
かといってミルクやレモンを要求するでもなく、ただ物足りないとばかりにくるくるとストローを使ってグラスの中身を掻き回す事に終始して。

鈴ヶ森綾 > 「これは…そうね、多分」

お茶でもなく、ケーキでもなく、パフェでもなく
甘いものには違いないが、ここでは供されていないものを身体が欲しているのだろう。
なるほどどうりで、ガムシロップを幾ら足しても物足りないわけだ。

それを自覚した後の行動は迅速だった。
シロップ5杯分かさ増しされたアイスティーを一息に飲み干して鞄を手にすると
支払いを済ませて足取りも軽くカフェを後にした。
その足が向く先は現在の自宅となっている学園寮ではなく、島の東方
歓楽区や落第街と呼ばれる場所を目指していた。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から鈴ヶ森綾さんが去りました。