2020/08/18 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に橘 紅蓮さんが現れました。
橘 紅蓮 > 「ふむ……なるほど。 これでひと段落という感じか。」

カチリ。 という音を立てて何かのボタンを押す。
耳にしていたイヤホンと、それに繋がっている無線機の様なものを懐に仕舞った。
聴いていたのはとある人物の会話の一幕に過ぎない。
予め危険そうな人物に目をつけて監視する、というのも仕事の一環だ。

スクールカウンセラーの、というわけではない。

「今のところ暴走の兆候もなし。危険レベルは下ったとみていいだろう。
 しばらくの間は静観と言ったところか。
 まったく、ガキの癖にガキらしくないというのは手に余る。
 こういうのはもっと適役が居るだろうに。」

小さく愚痴を零す。
もうすぐ日は落ち、夕暮れ時になるだろうか。
紅蓮の一番嫌いな時間、『空』が赤く染まる時間がやってくる。

「報告書を後でまとめなくてはならないな。」

持ち歩いているアタッシュケースから、自分専用のワイングラスと、赤いボトルワインを取り出してグラスに注いだ。

『不味い』酒を一杯。

「……はぁ。 さて、コレでしばらくはこっちの仕事は休暇になるだろう。
 少しは羽を伸ばしてやりたいこともやれるというものだ。」

沈んでいく夕陽を見ながら、思う。

「お前たちは、私をきっと軽蔑するだろうな。 あぁ、分かっているとも。
 私は自分勝手に動いているに過ぎない、今までもこれからも。
 私が私のやりたいようにするために、この学園を利用させてもらうさ。」

赤いワインを一気に飲み干した後。
この学生の生徒の名簿をシステムから呼び出し、端末から覗いていた。
何か面白い、揶揄い甲斐のある生徒でもいればいいのだが。

橘 紅蓮 > 懐から煙草、『マルボロ』を取り出して、ジッポライターで火をつける。
先端が燻り、火が付いたのを確認してから、ジッポの蓋を閉じる。
深く息を吸い、肺まで空気をくぐらせた後、頭上に小さな輪っかを作るように煙を吐いた。

酸味と微かな甘み、そして辛みが心地よく咥内を満たしていく。
自分にとって至福の時。
吸えば吸うほど短くなる、味わうほどに寿命は尽きていく、短い命だ。
フィルターギリギリまで吸いおわると、胸元に仕舞ってあった携帯灰皿に吸い殻を捨てる。
自宅ではやる必要もないが、一般の店となると話はそうもいかない。
これ以上喫煙者の肩身が狭くなるもの避けたい、ならルールは守るべきだろう。

「神代理央は面白い検体だが……こいつはダメだな、セットになって暴走しそうなやつが問題すぎる。
 水無月斬鬼丸。こいつもだめだな、異能が少々強力すぎる。何かの拍子に覚醒してしまったら手にも負えない。
 水無月沙羅。論外だ。
 風紀の中に手ごろな戦闘系のやつが居れば面白いんだがな……。
 ふん。」

暫くそうして考え事で時間をつぶしている。
自分の目的にそった、ちょうどいい人物というのは見つからない。
そうなると、やはりねらい目は二級生、『落第街』や『スラム』にいる連中がちょうどいいかもしれない。
そう、例えば。

異能を持たない連中に異能が目覚めたように思わせる、とか。

「我ながらなかなか面白いことを考える。」

教師の筈の女性はケタケタと不気味に笑う。

橘 紅蓮 > 「そうなると協力者が欲しいところだな。
 あぁ、何と言ったか。 ライハ、とか言った教師が居たな。
 彼なら、まぁ、ひょっともすれば協力してくれるかもしれないな。」

となれば。

「善は急げか。」

席代代わりに一万円札をテーブルに置いて、端末と、綺麗に拭いた後でワイングラスとボトルワインを片付ける。
とりあえずの行き先は『落第街』、及び『スラム』あたりだろうか。

「そろそろ、気づかせてやろう。
 自分たちがいかに不安定な足場で、何を礎に今の生活を築いているのかを。
 平和ボケした連中に教えなくちゃならない。」

「なぁそうだろう? お前も、そう思わないか?」

誰も居ない筈の空に向けて声を放つ。

もう、空は紅く染まっている。

「ちっ……嫌な色だ。」

橘 紅蓮 > 栄養代わりに呑んでいる、銀色のパックを啜る。
紅蓮が上手いと感じる数少ない食品の一つだ。
なかなか手に入る物でもないので、かなり値が張るのが偶に瑕ではある。

動くにあたってのとりあえずの栄養補給は終えた。
あとはこれから計画を緻密に練り上げ、生徒も二級生も、違反生も、不法入島者も、教師も、全てを巻き添えにした計画を始めなくてはならない。
無論、これは成功しない計画の一端に過ぎない。
あったとして、大きな水面に波紋が立つかどうかの代物だろう。

しかし、そうであっても自分のやることは変わりない。
それが幾人かの目に留まったのならばそれでいい。

「さて、それでは計画を始めようか。」

そうして、橘紅蓮は目的の街へ向かう。
この島の闇が詰まった巣窟へ。

橘 紅蓮 >  
「観て見ぬふりは、もうやめにしようか。」 
 

ご案内:「カフェテラス「橘」」から橘 紅蓮さんが去りました。