2020/10/02 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に山本 英治さんが現れました。
■山本 英治 >
今日は夢莉さんと待ち合わせになっている。
アフロを揺らしてカフェテラス橘へ。
いかん、少し遅れたか?
まだ時間ちょうどくらいだが。
既にいるかも知れない夢莉さんを探してキョロキョロとテラス席を見渡す。
季節に関係なくとても賑わいのある店。
探すのも一苦労だ。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に夢莉さんが現れました。
■夢莉 >
「あぁ…こっちです」
テラス席をキョロキョロと見渡している男性に、声をかける人物が一人。
手入れの届いている真っ直ぐに伸びた綺麗な金髪と、大きな赤い瞳。
人形のように整った顔立ちをした、女性的な人物が一人いる。
カジュアルながら上品な印象を感じさせる、白と黒を貴重にした韓国風の衣服。
黒のロングスカートのせいか、何処か落ち着いた雰囲気を感じさせるだろう。
その人物に男性が気が付くと、そちらに手を振って少し微笑む。
「今日は貴重な時間を割いてくださって、本当にありがとうございます。
久しぶりですね、ヤマモトさん。
何か飲まれますか?」
丁寧で柔らかい口調で、男に話す。
少し前に、縁あって知り合った人物だ。
顔を合わせたのは数回目。
だけど此方には、目の前の男性に返しきれないほどの恩が、あった。
■山本 英治 >
声をかけられると。
その綺麗な声を聞き間違うことはない。
今日は外国風の服装か。
頭に手を当てて笑って。
「いえいえ、夢莉さんに割く時間を惜しいとは思いませんよ」
「……こちらにも、色々と言いたいお礼もありますしね」
席に座ってメニューを見る。ホットのレモンティーを注文して。
穏やかな表情で小さく頭を下げた。
「どうも、今日は綺麗なお召し物を着てらっしゃる」
「俺は仕事帰りなんでいつもの調子で気後れしますね」
対面に座ると、隣にいないはずの人の気配を感じる。
未来だ。親友の。遠山未来。死んだはずの。
殺した異能使いに呪われてから、最近はずっと傍に“彼女”のニセモノがいる。
そこを見ないように視線を彷徨わせて。
■夢莉 >
「娘の命の恩人の前なんですから、少し位ちゃんとした格好できたくて」
くすり、と笑う。
”娘”といっても、血のつながりのある子供ではない。
訳あって一緒に暮らし、世話としている元落第街の女の子だ。
それでも、自分にとっては大事な”家族”で。
それを助けてくれた人。
だからこそ少しちゃんとしたカッコでないと。
あと、口調もちゃんとしとかないと。
あんまりしない敬語だけど、この人の前であんまり口悪くしたくねーし。
…まぁ、この口調だと大抵女に間違われるというか、普段の三割増しで勘違いされるけど。
そう思いながら自分もコーヒーを頼めば、相手の様子を見て。
視線が安定しない。そんなに挙動不審になるような人ではなかったから、少し違和感を感じた。
…話に聞いた通り、か。
そんな風に心の中で思いつつ。
「…色々、大変だったって聞いてます。
仕事で入院した、とか。
体の方は大丈夫ですか?」
■山本 英治 >
「そこですよ」
うんうんと頷いて、白い歯を見せてニカッと笑う。
「ニーナは俺の友達です。だから、友達の居場所になってくれた人に」
「俺はお礼を言わなきゃいけないんです」
「ちゃんとした形で言いたかった。ありがとうございます、夢莉さん」
顔を上げて。隣にいる幻影の気配は薄れていた。
大丈夫だ。大丈夫。まだ、俺は日常にいられる。
「はぁ、まぁ………大変でした」
実際、大変だった。それでも、大勢の人に心をもらったから。
何とか自分の足で立てている。
「体はもう大丈夫なんですが……」
歯切れも悪く言い淀んでいると、注文した飲み物が届いた。
■夢莉 >
「…いえ、お礼言うのはこっちの方です。
ニーナは娘で…多分自分の事よりも大事です。
ニーナが危険な目に遭ったって聞いた時は、正直、生きた心地しなくて……
…私が出来てる事なんて、そんなに多くはないですから。
だから、改めて……ありがとうございます」
深く、頭を下げる。
ニーナとこんなマトモな人が仲良くしてくれてる事も、身を挺してニーナを守ってくれた事も、総て、感謝の言葉じゃ足りない。
「……違法部活との闘いで、呪いを受けたって聞いてます。
まだ…その影響はあるんですね。
そんな大変な時期なのに、態々時間作ってもらって…すみません。
……今日来てもらったのは…その件、についてもあって。」
そう言いながら、隣に置いていたカバンから一枚紙を取り出す。
厚みのある、カード状の紙。
名刺…だろう。
それを、相手の席の前に置く。
『公安第四特別教室 諜報係 夢莉』
名刺には、そう書かれていた。
■山本 英治 >
「娘………ですか」
その言葉に穏やかな心持ちになる。
ニーナ、素敵な巡り合わせがあったな。
思えば、最初に会った時から頭のいい子で。
こういう風に幸せになれる素養は、あったんだ。
「俺、最初はニーナが心配で仕方なかった……」
「落第街にいて、裸足だし、真っ当な神経をした子で…」
「でも、今安心して見ていられるのは。夢莉さんがいるからなんですね」
レモンティーを一口、飲んだ。
血錆の匂いがしたのを、表情に出さないよう堪えた。
「いえ、お気遣いいただきありがとうございます」
「時間があっても、何もかも空振りしている時期なので」
「こうして平和な会話ができる人と会えるのは、嬉しいです」
出された名刺を見ると。
すぐに顔を上げて。
「あの遊撃隊扱いの?」
正直、詳しいわけではない。けど。その名前が出ることには驚いた。
四方 阿頼耶が室長代理を務める公安の特殊な部署だと聞いている。
■夢莉 >
「…本当に、気にかけてくださってありがとうございます」
少しだけ微笑んだ。
実際の所…あの子にどれだけの事がしてあげているのかは分からない。
仕事で開ける事も多いし、いい親…というものも、見て来たわけじゃない。
本当に探り探りだ……
「はい。
…ウt…私の今の職場です。
…単刀直入に話をしますね。
ヤマモトさん。私は、貴方に”恩返し”がしたいんです。
だから……」
そう言いながら、男の目をじっ…と見た。
落ち着いてるように見える。いや……
他人の感情の機微は、専門家ほどじゃないが少なからず見て来た。
今の仕事でも、昔の仕事でも。
特に、男の感情なら、沢山。
…尾を引いてる顔。
そう、見えた。
「……公安は風紀委員とは違う視点から、色んな事を見る事が出来る仕事です。
落第街、スラム…そこにある違法部活に関しても、風紀委員じゃ手に入らないネタ……情報が舞い込んできます。
……『協力者』になる気はありませんか?」
■山本 英治 >
「お互い、ニーナのことで山程お礼が言いたいらしい」
ニーナは良い子だ。だから、彼女の幸せを願う。
もちろん、祈りはただあるだけじゃ意味がない。
想いに寄り添う人がいなくては。
「そうなんですか………恩返し…」
と、言われて。
悪い話を振る人でないことはひと目でわかる。
「『協力者』………ですか…」
「いえ、善意に反目するつもりは一切ないのですが」
「風紀委員という立場上、慎重に考えたほうがいいんでしょうね」
じっと相手の目を見た。
相手の瞳に嘘偽り無く。
「協力者というからには」
「こちらから何を提供すればいいのでしょう」
■夢莉 >
「主に情報、偶に戦力…でしょうか。
公安委員会は、風紀委員とは別の警察組織みたいなモノです。
司法権もあるし、場合によっては常世島の内部組織の摘発もします。
風紀委員会の権力を悪用する人間、とかも。」
風紀委員会に所属している彼にとってはあまりいい話ではないだろう。
とはいえ、話さない訳にもいかない。
協力者となる、というのは一方通行で彼の手伝いをするだけではいられない。
此方も手を貸す、代わりに相手からも手を借りる。
そういう関係。
「…本当は正直、手だけ貸したいのが私の本心です。
でも、公安の仕事は、外の人間に気軽に漏らしていい内容じゃない。
”上司”に相談して、ヤマモトさんに公安として手を貸す条件として言われたのが、『協力者』になってもらう事でした。
ただ…『協力者』になる事での利点は、絶対にあります。
さっき言ったみたいに、情報面でヤマモトさんに協力できる事もだし……万が一風紀の掲げる正義に対立するような事があった時、公安としてヤマモトさんの肩を持つ事が出来ます。
必要であれば、戦力として頼る事も。
……ニーナを殺そうとした相手と、因縁が…あるんですよね?」
松葉雷覇。
主に目の前の男性が報告した情報だが、娘に危害を加えようとした相手として名前だけは自分の耳にも入っている。
落第街での出来事であったが故に、風紀委員側からは表立って起きた出来事を事件として扱ってはもらえなかったが……
自分にとっては、憎き相手だ。
■山本 英治 >
「……なるほど、そういうことですか」
二つ返事でハイと言っていい案件ではない。
だから、熟考を重ねた上で。自分の頭で精査をして。
これに返事をしなくちゃいけないんだ。
そして話が出ると、確かに情報は確かなようだ。
松葉雷覇。あいつの存在を既に探り当てているなんて。
「はい、今はニーナを殺そうとした相手と個人的な決着をつけることを目的としています」
「あいつの力も、思想も、危険すぎるから」
「……もっと言えば、俺個人の我侭です」
しばらく考えて。レモンティーを飲む。
コトリ、とカップを置けば。
静かな風がテラス席を通り抜けていた。
「その話、受けます」
「俺の体、弱ってきてて……もう手段を選んでいられない」
「死ぬ気も風紀を辞める気もありませんが」
「……弱り切る前に。あの男と、決着をつけたい」
私闘に公安を。夢莉さんを巻き込んでいいのかはわからない。
でも、今は。自分の信じたものを握りしめて。
■夢莉 >
「……なら」
決着をつけたい、といった恩人を見て、少しだけ微笑む。
微笑んで、から…
一度だけ瞳を閉じて…
「…この話に乗るなら、もう”恩人”としてふるまう訳にもいかねぇよな」
声色と、目つきが代わり、今までとは違う……ニッ、とした悪い笑みを作る。
「OK、なら……これからはアンタを”ニーナの恩人のヤマモトエイジ”じゃなく”公安の協力者ヤマモトエイジ”として扱わせてもらうぜ。
これからは親としての面だけ見せる訳にもいかねぇからな。口も悪くなるだろーけど、出来れば大目に見てくれや。
アンタにゃ”本来の夢莉”で接しねぇと、筋が通りゃしねえからな。」
足を組み、行儀悪くコーヒーを飲みながらニヤリと笑う。
先ほどまでの温和な母親然とした姿から、がらりと変わった雰囲気。
「で…何、してほしい?
アンタの頼みなら何だってやってやるよ。
その疲れ切ったツラを治すために先ずはイロイロ発散でもするかい?」
からかうように言いつつ。
■山本 英治 >
お、おう?
なんか雰囲気がガラリと変わった……?
なんとも悪い笑みを見せる夢莉さんは。
なるほど表情も仕草もしっくりくる。
これがこのヒトの普通なのか……?
「だったらこっちも協力者相当の喋り方でいいか?」
「本来がそうだとは、なかなかわからないもんだな」
口の端を持ち上げて、ティーカップの液面を覗き込む。
俺の隣では、血塗れの未来が笑っていた。
「間に合ってる」
からかわれると、肩を竦めて苦笑した。
「あの男の………松葉雷覇を探したい」
「見つけて、決着をつけないと俺は前に進めない」
「可能な限り情報をくれ」
肩に赤く汚れた手をまとわりつかせてくる幻影を手で払って。
■夢莉 >
「そりゃ残念」
ククク、と笑いながら”間に合ってる”と言った彼に返し。
「間に合ってるってんなら、なおさら解決しねぇとな。
OK,アイツの情報をこっちでも探っとくよ。
アンタが血眼になっても見つけらんねぇアイツのケツの皺から何まで、探ってやる。
だから……
アンタがぶっ潰せ。お膳立ては、まかせろ。
そんで帰って、ニーナと遊んでやってくれ。」
何かあったら名刺の連絡先を何時でも頼ってくれ、と言いながら。
協力者…と言ったが、別に何をしてもらうなんてつもりはない。
これは、ただの”借りを返す”だけの事だ。
この人が今までやってきた事を、こっちで勝手に返すだけ。
この人が作った縁が、勝手に巡り巡ってこの人の助けになればいい。
縁なんて、そんなモンだろ。
ただオレが、この人にとっての”良い縁”であってほしいだけの話だ。
■山本 英治 >
「ああ……あいつは俺が倒す」
「どうあっても、決着をつける」
それまでの導線を頼む、と頭を下げて。
ニーナの名前を出されると……弱い。
無事に帰ってジュンヌ・フィーユと遊んでやらないと。
そんな思いが過ぎって、表情が緩む。
名刺を受け取って名刺入れに入れて。
自分の名刺も相手に渡す。
「……ありがとう、夢莉さん」
しみじみとその言葉を発して。
また一つ、俺は心をもらっていた。
ややもすれば捨て鉢になりそうな心を。
引き止めてくれる、心。
その日は談笑をして別れた。
俺たちの縁は。これからも繋がっていく。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から夢莉さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から山本 英治さんが去りました。