2020/11/05 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」にツァラさんが現れました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に伊伏さんが現れました。
■ツァラ >
昼食時、白髪の少年がてこてことカフェテラスの中を歩いている。
特に何か注文した品を持っている訳でもなく、客の間をただただ、歩いている。
本来学園の大方の施設は学生証か職員証が無ければ利用は出来ない。
その少年はそれを持っているような素振りは全くない。
しかし、誰もそんな少年に、気づかない。
彼の存在を感知するのは容易ではない。
少年は、ちいさなちいさな"カミサマ"なのだから。
とはいえ、全知全能の神様という訳でもない。
八百万の神の一人のような、そこに居てそこに居ないモノ。
信仰と謂れが姿を成した、我々のすぐ隣に在るモノ。
その成り立ちと在り様を知っていれば、見ることは出来るかもしれない。
そんな小さなカミサマの青い瞳は、目的を確かに見つめていた。
外のテラス席で一人いる青年を見て、歩みを進めていた。
■伊伏 >
最近は陽が出ていても、風が冷たいと感じるようになった。
他の人間なんかもそうなんだろう。テラス席は比較的空いている。
それはこの伊伏にとって、大変都合が良かった。
人混みや喧噪は嫌いというほど避けるものではないけれど、静かな分は甘んじる性質だからだ。
ただ、自分が誰かの目的にされてるなど、つゆも思っていない。
その証拠に、伊伏は自分の髪を半分いじりながらメニューを眺めていた。
ぼちぼち、この毛先を切っちまおうか。
あんまり伸ばしすぎると、毛先の赤みが強くなる。
染めたかのようになるので、見るやつは見るようになるのだ。それは、好ましくない。
「…甘いもんって、なんでこんな種類あんだろな」
それを食べに来たわけだが、別に甘ければ何でも良かった。
店内を進む小さな神など知る由も無い。
自分で決めるのも面倒だ。店員を呼んでオススメを貰ってしまおうかと、顔を上げる。
■ツァラ >
ごくごく自然に、青年が座る席の隣に、少年は座る。
まだ感知はされない。次の瞬間だ。
「色々楽しめてイイじゃない? 定番も季節モノも良いよネ」
そう軽い言葉を伊伏にかけた瞬間、"青年にだけ"その存在が感知される。
波長を合わせたと言っても良い。
この青年はカミサマにとって"お気に入り"となってしまった。
ちょうど青年が顔を上げた瞬間とぴったり同時である。
なんだったらやっほーとばかりに、手をヒラヒラと青年に向かって振っている。
こういう芸当が出来るカミサマや怪異、妖怪はそこそこ居る。
《大変容》が起きたこの世の中ではさして珍しくもないだろう。
起きる前にこういうことに遭遇していたモノもいるには居るだろうが。
■伊伏 >
ビックリしない奴がいるか?
いねえよ。心臓に毛なんか生えてないんだよ。こちとらよ。
「えん゛゛ッッッッ」
思い切り店員を呼ぶボタンを押してしまった。
店内にアナウンス音が流れるくらいなら、手をあげて合図でもいいか?とか。
そういう事に悩んでたら、がっちり押してしまった。
指先をこねる。ちょっと痛かったらしい。
「……結構俗っぽいな?」
挨拶は飛ばなかった。飛ばす余裕が無かった、とも言える。
のんきに手をひらひら振っているこの幸運の祟り神に、小さなしかめ面を向けて。
「選ぶ楽しみがある奴は、そりゃ楽しいだろうけどさ。
俺は別にそこまで気にするほどでもな……ああ~~…、店員来ちゃったな…」
なんか食うの?と言葉を含んだ眼を、ツァラに向けた。
店員は、テーブルのすぐそばに立った。
ただ、伊伏はツァラの姿がどう映っているのかを、知らない。
■ツァラ >
この常世島だと、びっくりしない人って割といる。
多分どこぞの竜研究者は驚かない。
別段あの男は心臓に毛は生えていないが、
やはり異邦のモノに慣れているかそうでないかの差は大きいのだろう。
「あ、スゴイ声ー。」
きゃっきゃと高い声が笑った。
こうやって驚いてくれる子が一番一緒に居て楽しいのだ。
そういうヒトの子にこそ、己が"幸運の祟り神"とちょっかいをかけるに相応しい。
やってきた一見人間のような店員はきょろりと伊伏と…誰も居ないと見えた空席を見た。
しかし侮るなかれ、ここは常世島。
見える見えないで接客態度をそう変えはしないだろうし、
多少の違和感はありとて、誰も居ない場所にあたかも居るように会話しているならば、そこに客はいる。
「アハ、僕ねー、ケーキ食べたい。
こないだ奢ってくれるって言ってたよね?」
テラス席の椅子の上、テーブルの下で地面につかない足をぷらぷらと揺らしながら少年は告げる。
今日は耳も尻尾もない。
その背もたれの間に白いもふもふは無くて、普通に小さな背中がくっついている。
■伊伏 >
驚かしてきたくせに、何がすごい声だ。
人によってはもっとすごい声だって出るぞ、人間は。
だから何だと言われたら、まあ、そうだなとしか返せないが。
伊伏は店員の視線のやりように気づいた。
一応ここに居るんですけどね、見えなかったらすいませんねと断っておく。
「言ったよ。こっちは救ってもらったわけだしな。
…ケーキったって色々あるよ、どうすんの」
そう言って、伊伏はツァラのよそいき(?)姿を眺める。
耳と尻尾外せるんだな。そらそうか、神様だし。そんくらいはするのか。
普段から置かれているケーキから、それこそツァラの言う様な期間限定まで。
今の時期はぶどうや栗、洋梨やリンゴといった類か。
ついでに店員にオススメのパフェを聞いておこう。
自分はそれでいい。そのオススメと、後はホットミルク。紅茶でもコーヒーでもない。牛の乳。
■ツァラ >
小さい手の指先同士を重ねてにこにこ笑顔。
最初に伊伏と逢った時も確か、少年に耳も尻尾も無かったはずだ。
取り外しと言うよりは、化けているに過ぎないのだが。
店員は見えないなりにちゃんと応対してくれる。
伊伏が学生証を持っているのだから、問題はほとんどない。
そう、伊伏が少年を問題にするような行動をしなければ、だが。
今日は他の人に見えないスタイルで行くらしい。
「えっとね、ここのー、洋ナシのコンポートのケーキが良いナ。
ホールじゃなくてイイよ。キミも嫌いじゃなかったら一緒に食べよ?」
見た目和風のカミサマだというに、すんなりとケーキの種類を言って来た。
カミサマだって新しいモノを取り入れることはあるのだ。
少年は至ってご機嫌だ。
もし耳や尻尾があれば、ゆらゆらと揺れているぐらいに。
■伊伏 >
「洋ナシのコンポートのケーキを1ピース。
嫌いじゃねーけど、えっ?シェアすんの…?」
シェアするんだ…。と、謎の小さな感銘。
それはさておき。
飲み物はいるかとツァラに聞き、答えを貰えば店員に託す。
注文は洋ナシのコンポートのケーキと、常世栗のモンブランパフェ。あと飲み物。
ついでにと増やされたお冷は、ツァラにあげておこう。
「機嫌よさそだね。なんか事件でもあったか?」
人間の感情が揺さぶられているようなものが。
■ツァラ >
「美味しいモノ食べてる時って人間幸せじゃない?
自分で食べるのもスキだけど、やっぱり自分にとっての栄養補給もネ。」
飲み物はねーココア―って言いながら少年はそう零す。
店員は伊伏が代弁してくれるのならありがたいとばかりに、
注文をさくさくと復唱してくれるだろう。
きっとたまにあることなのだ。こういう"存在しているか分からない"客相手、というのは。
「個人規模の事件なら毎日あるヨ。
まぁ、"この間のこと"みたいなのは、早々無いだろうケド。
キミはどう? あれから"眼"はヘイキ?」
この間のこと。
このハシバミ色の瞳を持つ青年が、"裏"の常世渋谷に迷い込んだこと。
そこでこの"カミサマ"の少年と、『朧車』と呼ばれる怪異を『横転させる』によって撃退したこと。
…その後、こうして青年を日常に返した訳だが、何か後遺症はないかと聞く。
■伊伏 >
自分の横髪の先を、小指にくるっと絡ませて。
ツァラが答えた幸せには、まあ確かに美味けりゃ幸せだなと肯定しながら頬杖をつく。
「個人規模ねェ。大事じゃないなら、どうでもよいな。
"裏"みてェなのは御免だろさ、あんなんで喜ぶのは戦闘狂とオカルト好きくらいだろ」
言いたい放題である。
ただ、自分の方はどうかと言われると、あーとぼやいて言葉を濁す。
するりと頬杖をといて、自分の分の水グラスに口をつけた。
「眼は無事回復したよ。心配ドーモ。
昔っから、異能を使い過ぎるとああなるんだよなァ…」
しばしの間は弱視状態で過ごすことになったが、妙なへまはせずに体調も戻った。
はしばみ色の眼は、ツァラが海岸で見た頃と遜色はない。
ただ、それ以外にも少し気にかかる事はひとつある。
後遺症というよりは…
…それを言うかどうしようかと悩んだところで、飲み物が先にやって来た。
ホットミルクのマグを片手に、どうしよっかなと幸運の祟り神を見る。
これを後遺症と言うにはちょっと具合が違う気がして、悩んでいるような眼だった。
あー、ホットミルク美味いな。
■ツァラ >
「ソーだねぇ、後はトレジャーハンターみたいなのもたまに来るね。裏はネ。
僕らみたいなのにとってはああいう"裏"は居心地が良かったり、
住む所ではあるけれど、人間にはちょっと刺激がツヨイよね。」
言いたい放題を少年は否定しない。実際間違っている訳でもない。
なんなら付け足してしまうぐらいなモノだ。
自分から"異"にまみれた場所に飛び込むのは、
余程の物好きか、そちらの方が性に合っているか、この世が面白く無いか…。
そうでなければその世界の素材が必要なこと、ぐらいか。
「力に反動があるのは大変だネ。
そういう力を持ってる人間が多いから、
やっぱり不具合も比例して増えるんだろうねぇ。」
無事回復したと聞けば、にっと微笑んで見せた。
後遺症は無い。無いが…。
この"幸運の祟り神"に好かれてしまったのは、ある意味後遺症のひとつなのかもしれない。
そういう存在に好かれるということは、往々にして厄介ごとにも好かれやすくなる。
「どしたの?」
具合の違う悩みがもしそれで無いのなら、なんだろう。
少年はまるで軽い悩みでも聞くような態度で、あっさりと歯切れの悪い反応をする相手に問う。
■伊伏 >
「あぁ、やっぱ居心地いいのか……」
裏渋谷でツァラと出会った時、余裕があるように見えたのはそのせいか。
いや、でも相手は神様だった。どっちだ?
むしろいつでも余裕そうな顔してそうだよな、このキツネチャン。
ホットミルクをすすり、ごく数秒の 間。
「神様だとか力のある存在は、反動を気にしないのも多そうだもんな。
…うーん、言うかちと悩むが…」
自分に変化が起きたのは、この幸運の祟り神と裏渋谷から出た後だ。
関係があるように思えるし、相手に心当たりがあるなら、やはり聞いたほうが話は早い、はず。
伊伏は指先にぽうっと青白い火を灯して、それをツァラに見せながら言う。
「俺の異能は、この火を好きなところに灯せること。
ツァラが見たように、集中すれば攻撃にも転じさせることが出来る。
能力を調べた時は、ほんとそのくらいだったんだよ。出来る事は火を灯すってだけで…。
伸びしろもさ、"火力が強くなる"範囲じゃないか?ってことでさ」
青白い火がぽぽぽと連続して燃焼し、ぱっと散った。
「異能としちゃ、火という概念からずれなさそうだったんだよ。
なのに、ほら……結晶が出来るようになっちまった」
伊伏の指先には、うっすらと紫がかった水晶のようなものが出来ている。
透明な部分も出来たその結晶は、熱を帯びたままだ。
「ちょっと予測しない方向に"伸びたらしい"んだよ。俺の能力。
まだ検査はしに行ってねーんだけどね。これもキミの運ってものに引っかかるのかな、とさ」
■ツァラ >
少なくとも、そういう場所では別段周りを気にしなくていい。
一応曲がりなりにも自分は異邦人。
この《大変容》の起きた世界にも、複雑化はしただろうが"法"というモノはあるだろうし、
異邦人の自分がいつまでもこうして彷徨っているのを、快く思わないモノだっているだろう。
この常世島のルールに従って生きていないモノ。それがこの目の前の狐。
「……んーと、火を起こした場所の跡に、結晶が残るようになったってこと?」
指先でその結晶をつついてみたりする。
熱いというのは、火傷をするぐらいの温度なのだろうか?
まぁ、熱かろうが少年は気にしないのかも、しれないが。
『朧車』という列車を"横転させてしまった"こと。
それはまるで、レールに置いた小石のような…いや、綺麗なモノだが。
「んんー。僕の能力は"厄を幸に"、
元々の素養に対して、"運良く"作用するってぐらいだからなぁ。
能力が伸びたっていうなら、運良くに引っかかったんジャナイ?」
少年とて、はいそうですとは明瞭に告げられることでは無かった。