2021/03/13 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に雪城涼子さんが現れました。
雪城涼子 >  
「……はぁ」

思わずため息をつく。だいぶ慣れてきたとはいえ、娘と同年代の少女たちといるとたまに……そう、ごくたまに、だ。
ものすごく、ものすごく、まれに、だ。
パワー、とでもいうのだろうか。そういったものに押し負けてしまうことがある。

今日はまあ、そういう日だったのだ。


「まあ、時期が時期……だもんね」


そう、折しもホワイトデーが目の前。
少女たちの話題は、お返しについて……とてもとても
それはもう、とても盛り上がっていたのだ。

雪城涼子 >  
――回想――

英美 > 「ねーねー、ホワイトデーのお返し、どんな感じになりそう?」
美衣子 > 「んー……ま、あたしは●●欲しいって言ったし、確実でしょ」
椎名 > 「マジで言ってる、それ? 彼氏かわいそー」
英美 > 「何いってんの。あんたなんか■■頼んでたでしょ。しかも、バレンタインとか別になんにもしてないくせに」
椎名 > 「えー、そんなことないって。ただ、アイツさ―。チョコより××して欲しいっていうからさ。それはだるいから、代わりに▲▲を◆◆してさー」
美衣子 > 「うわー……引くわー……」
英美 > 「そんなんでいいの、あいつ……っていうか、涼子も引いてない? 大丈夫?」
雪城涼子 >  
「あ、あはは、大丈夫大丈夫」
(うーん……こういうのも、青春……なの、かなあ……)

思わず年寄りくさい感想を抱き……結局、愛想笑いのまま過ごしたのだった

雪城涼子 >  
――回想終了

雪城涼子 >  
「……うーん、やっぱり若い……って、こと……なのかなあ」

ぽつ、と呟いてからとても虚しい発言であることに気がつく。
思わず首を振って心のなかで否定する。

ただちょっとそれとは別に、少し引っかかっていることがあった。


「涼子は、なんて聞かれても、ねえ……素直には、こう……いいづらい、よね……」


当然のように惚気話を炸裂させてもいいのかもしれないが。
同年代のように接している相手に、『既婚子持ちです』とはちょっとなかなか言えない。


「……騙す気もないんだけど」

軽くため息をつく。
あとついでに、自分がバレンタインのときにやらかしてしまった所業もあまり声を大にして言えないので
それも含めて……やはりちょっと事実を口にできていないのが辛い。

雪城涼子 >  
そう。
いくら張り切っていたからとはいえ、だ。
その上、彼が好きなコーヒーをベースにしたチョコとクリームの試作がうまく言ったからとはいえ、だ。


「流石に、10号は大きすぎたよね……タワーにしなかっただけマシだけど……」


思わず、しょんぼりしてしまう。
どう考えても一人で食べるには巨大すぎた”それ”。

仕方ないので「職場のみんなで食べてね」なんて、誤魔化して届けたのだった。
それだけだとあまりに悲しいので、残り物で作ったささやかなトリュフチョコを添えて。


「……はぁ」

思わず机につっぷした