2021/07/04 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」にシャンティさんが現れました。
シャンティ > 「……はぁ」

薄い桃色の唇から、小さなため息が漏れる。女には珍しい行為であった。
それというのも、今の時節が関係する。


「……六月、には……雨、も……落ち着、く……と、思った、のに……ね、ぇ……」


視線……らしきものを、手元の本に落とす。店の外では雨がしとしとと振り続ける音がしている。
もっとも、この女の耳にそれが届いているかといえば……


「湿気……嫌い、なの、に、ぃ……」


ぽつ、と愚痴のように零した。

シャンティ > 「ん……」

人差し指を唇に当てて、少し考える。
自分の所有する禁書類の中に天候操作などなかっただろうか……


「……あぁ……で、も……たし、か……六月、から、の……は。精霊、とか……その類、も……あった、の、よね、ぇ……」

そもそも天候操作は大魔法である。仮に成し遂げたとして、精霊や心霊の影響であれば折角の苦労も水の泡かもしれない。それは些か以上に勿体ない。


「いっそ……根絶、やし……は、それ、こそ……よ、ねぇ……」

一瞬、物騒なことを考えるがこちらも実効性が薄い。こちらも仮に成し遂げられたとして、後々厄介なことになるのは目に見えている。お尋ね者になるのはいいとしても、追われるのであればせめてもう少しまともな罪状で追われたいものだ。


「……せめ、て……娯楽、でも……あれ、ば……ね、ぇ……」

基本的には本があれば十分、ではある。けれど、こんな湿気った環境は本には優しくない。それに、新しい刺激も欲しい。なかなか複雑な気持ちがそこにある。

「……はぁ」

また、小さなため息が漏れた。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
「…浮かない様子だな。物憂げ、と言っても良いかもしれないが。
夏季休暇前の悩み事かね?」

雨垂れの止まぬカフェテラスに、傘を閉じて入店すれば店内には見知った女の姿。
仲が良い、という訳でもないが態々避けるのは性に合わない。
結果として、店員が案内するよりも早く、彼女の席に歩み寄れば穏やかに――所謂外面の良い声色で――語りかける。

「それとも、流石にこうも雨が続けば貴様でも憂鬱になるのかな。
気持ちは分からなくもないが」

そのまま、彼女の許可を取る事も無く、対面の席へと腰掛ける。
声色は外向けのものでも、尊大な態度は隠す事も無い。

「……ああ、私はホットココアで。席は此の侭で良い」

と、おっかなびっくり声をかけてきた店員には、社交的な笑みと共に注文を告げて。
店員が去れば、仏頂面と共に彼女に視線を向けるのだろうか。

シャンティ > 『――然とした見目の少年が、歩いてくる。穏やかに、大胆に彼は言葉を発する。「――」。』


少し、気を緩めてはいたが訪問者にはかろうじて気づく。故に、謳う。彼の来訪に応えるように。


「……あ、らぁ……相席、OK……とは……まだ、言って、ない……わ、よぉ……?」


くすくすと笑いながら、尊大な態度を取る少年に臆することもなく言葉を返す。


「ま、ぁ……いつ、かの……約束、も……ある、しぃ――入れて、あげて、も……いい、けれ、どぉ……? それ、なら……その、仏頂面、は……よく、ない……わ、よぉ……? ふふ。女の子、の……前、なの、にぃ……? 店員、さん、も……怯え、ちゃう、わ、ぁ?」


挑戦的とも言える笑顔を向けて、女は言葉を継いだ。水を得た魚のよう、に思える。


「それ、でぇ……問、の……方、だけ、れ、どぉ……ふふ。それ、は……ま、ぁ……雨、は……好き、では……ない、も、のぉ……と、いう、よ、りぃ……」

人差し指を、形の良い唇に当てる。


「湿気――が、いや、なの……」

少し、いつもと違う空気の声。とてもとても儚い、消えてしまいそうな言の葉。

神代理央 >  
「……別に怯えさせる意図がある訳ではない。この顔は元からだ。
私だって、早々毎日笑顔でいられる様な性格でも無いのでな」

仏頂面が良くない、と謳う様に紡がれれば、眉間の皺は深くなるばかり。相席の許可を出していない、という言葉は丁寧に――という程でも無いが――返事を見送った。
彼女ならば拒むまい、と思っていたし、実際返って来たのはそういう返事なのだから別に良いだろう…くらいの、傲慢。

「………湿気が?何と言うか…意外な程俗世的というか……こう、まともな理由だな。
確かに、同僚の女性陣もやれ髪がどうこうだとか、湿気を嫌うものは多いが……」

しかし、問いに対する彼女の答えには、ぱちくり、と意外そうな表情を隠す事は出来ない。
最初は、彼女もそういう事を気にするのだろうかと思案していたが――答えられたその声色と纏う空気は、とてもそんな理由ではない…気がする。
意外そうな表情はそのまま思案顔へ。やがて、彼女が常に持ち歩いている物や、それに類するものへと思考を巡らせた時――

「……もしかして、本が傷むから、か?」

読書が趣味、と言う程でも無いがそれなりに嗜む身としても湿気は好ましいものではない。
同じ理由がどうかはさておき、そんな問い掛けを一つ。彼女に投げかけてみようか。

シャンティ > 「あ、ら……そ、ぉ……? それ、な、らぁ……ふふ。 私、が……今、頼んで、る……新作、の……スイーツ、とか……でも、変わら、ない、かし、らぁ……?」


元からこんなものだ、と嘯く少年にからかうように問いかける。たまたま本日から販売開始の新作があったので何の気無しに頼んだのだが、甘いものが好きな少年はどう思うのだろうか。


「ん……なぁ、にぃ……? 私、を……なんだ、と……思って、るの、かしら、ねぇ……? 私、はぁ……普通、の……学生、よぉ……?」


意外そうな顔をする少年に小さく、口を尖らせて反論してみせる。そう見せているだけではあるが、事実特別な人間であるとも思ってはいないので言葉に嘘もない。本当に、大したことのある人間であれば苦労はない。


「そう……そう、よぉ……ほ、らぁ……髪……だって……ね、ぇ?」


湿気を吸って重くなった白髪を持ってみせる。特に意図しているわけではないがそこはかとない色気が漂い、見るものが見れば魅了されるのやもしれない。


「……ふふ。一応――見る、ところ、は……見て、いるの、ねぇ……」

思案顔から少年が発した言葉に……くすり、と少しだけ微笑む。からかうのとも違う、なんとも言えない普段と違う種類の笑顔だった。


「そ、う……本、が……傷む、から……いま、や……保存、なん、て……色々、方法、は……ある、け、れ、どぉ……そういう、もの、では……ない、わぁ……」