2021/11/04 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に『調香師』さんが現れました。
『調香師』 > 少女は2階席テラス、その一角に座っている

街並みを見下ろして、往来を行く人々の行先を眺め
今日は嗅覚ではなく、聴覚で情報を知る

冗談であって欲しい位簡単に、情報は集まった
歓楽街を出て、学生たちのテリトリー
噂に聡い者たちは潜めたつもりでこう囁く

『風紀委員過激派が動き出す
 物資・兵器を集めて大きなことを為すつもりらしい』

ただの客の零した言葉だった
私はそれを信じないようにと考えながら、
『嘘である』との裏付けを求めて歩いて

その結果得られたものは薄氷の下に潜む船影ともいうべき計画の裏付け
自分が情報を得た頃には既に、氷は砕かれ浮上しようとしている最中であった

ご案内:「カフェテラス「橘」」に黛 薫さんが現れました。
黛 薫 >  
学生通りのカフェテラス、普段なら違反学生には
無縁(主観)の空間。まずカフェテラスという響きが
キラキラしていて眩し過ぎる。憧れこそあるものの
楽しむために入るなんて、まず考え付かない場所。

しかし、今日はきちんとした目的がある。
場違いではないかという緊張を抑えながら入店し
"学生街を行き交う人がよく見える"席を探し──

「うゎ」

予想外の場所に見知った顔を見つけて声を上げる。
一瞬引き返そうかとも考えたが、2階に上がろうと
している客が後につかえていたので諦めた。

『調香師』 > 矛先の確証は得られない。しかし、楽観出来ないのは確か
自分がこんなに容易く得られる情報を、『彼』が知らない訳はないと思いながらも

(このまま行くともう、先は長くないのかな)

首を傾け、憂う目線で引き続き街の様子を見つめている
『組織に依存しない行先を』『私を欲しがってくれるように』
スタンプカードの思惑、3つ貯まったのは2人で

...そのどちらも、私の為に願いを使う
それを素直に、喜んでしまう自分が居て
企み事って、そんなに得意じゃないのかな


『シナモンミルクとブリュレです』


目線を戻したのは、店員にそう呼ばれて
注文が届いたんだと、変わらない笑みを向けると

...貴女が居た

黛 薫 >  
一旦感情を抜きにして取るべき手を考える。

情報収集に1番向いていそうな席に座る知り合い。
誰もいなければ遠慮なく座れたが相席を頼める分
知らない人が座っているよりは都合が良い。

しかし情報収集が目的である以上、怪しまれても
困る。偶然知り合いに出会ったというのは絶好の
理由付けであると同時に、その知り合いに内面を
読まれるリスクを内包する。とりわけ今席にいる
彼女は思考の癖が近いのだ。

ただでさえ悩ましいのに、感情を考慮する場合は
余計に迷いが膨らむ。別に嫌いな相手ではないし
一緒の時間を過ごせるなら好ましいとさえ思うが
つい先日、きっと嫌われるであろう『お願い』を
押し付けたばかり。ついでにその日は恥ずかしい
姿を晒してしまったし。

包み隠さず言うなら、気まずい。

しかし声を上げたのが失敗だったのだろうか。
迷っているうちに目があってしまって。

「……席、ご一緒してイィですか」

半ばやけっぱちで相席をお願いするのだった。

『調香師』 > 「いいよ」

快く引き受けたつもりだった
1人で黙々と積み上げていた胸中の蟠りも、
見知った顔と合わせれば自ずと軽くはなってくれる

それでも、変わらぬ笑みに差す翳りは残っていたのだろう

「お店の外じゃ初めてかな
 近いうちに連絡とかしたかもだけど」

まずはどうぞ、と。口を付けていないホットミルクのカップをそちらへとずらす
店で纏っていた彼女の香りは仄かに
今ならば、無自覚の内に惑わされず彼女と相対する事が出来るのだろう

黛 薫 >  
「ありがとーござぃます」

軽く頭を下げ、テーブルを挟んで対面に座る。
随分前、表の街の情勢を知る必要があったときは
ちょうどこの向かい、貴女のいる席に座っていた。

当時と変わらず、この席は学生通りの様子がよく
見えるし、注力すれば声も多く聞こえる。

「そっすね、お店の外ではコレがはじめましてか。
 あーしからすれば、あーたを店の外で見かけて
 びっくりしたってか、違和感があるくらいすよ。
 てっきり香りの中で生きてる妖精的なモノかと。
 カフェにもイィ香りのもんはありそーですけぉ」

渡されたホットミルクと貴女の顔を交互に見る。
未だ口が付けられていないこと、注文したのに
自分で飲まないことを少し怪訝に思いつつ。

「……お店の側から連絡するってのも珍しいな?
 お得意さま相手のご案内的な?」

ひとまず、晩秋の風に晒されて冷えた手を
温かいカップで温めながら問うてみる。

『調香師』 > 「香りの中で...うん
 間違いじゃないかな。私の使命はそういう物
 私のしたい事はそういう物だから

 ...買い物したり露店を開いてみたり、
 アウトドア路線も狙ってるんだよ?」

首をぎこちなく傾ける。今日の目的はそのどちらでもない
この席を選んだのは、きっと貴女と考えが似ていたから

「お得意様というのも、そうだね
 あなたを呼びたかった。と、言うよりも」

『遠ざけたかった』
落第街、いつか混沌の坩堝と化す事が予想されるあの地帯から
口には出せない。あまりにあからさまに口を閉ざして
聡い貴女の追及から逃れる様に目が泳ぐ。次の話のネタは...

「何食べる?ブリュレは、今日の私の気分だから
 こっちは渡せなかったんだよね」

小さなフォークで、その薄膜をつつく

黛 薫 >  
「あーたの容姿は良くも悪くも目ぇ惹きそうよな。
 露店で座ってたらみんな振り返ってくだろーよ。
 店に籠ってるよか、宣伝には効果ありそーだ」

それに、歓楽街の店よりは外の方が善良な客の
割合も多いだろうから。そんな本音は皮肉とも
受け取れる冗談めかした口調に包んで隠す。

「あーしに?まさかとは思うけぉ……もう既に
 聞き入れたくなぃお願いしてきそーな客が
 3回来てるとか、そーゆーのじゃなぃよな?」

そう問いながらも、違うと感じていた。
もしそうなら、彼女はもっと嫌そうにしている。
頼まれるであろう願いより自分が先に取り付けた
お願いを嫌がっているだろうから。

相席を頼んだときの僅かな表情の翳りも気になる。
しかし、自分個人に?どうして?推測は数浮かべど
確信に至る情報は未だ無い。

だから。

「いぁ、あーしは当面ミルクがあれば十分す。
 あーし、猫舌なんで飲むのに時間かかるのよな。
 丁度この席なら外の景色も見えるし……何なら
 話も聞こえるから、冷めるまで退屈しねーし」

世間話を装いつつ、少しだけ踏み込んでみる。

熱い飲み物を頼めば、長時間席を占領していても
不自然に思われない。貴女もそうだったのでは?
……と、深読みされるか、否か。

『調香師』 > 「危ないお願いとかは、無いよ?
 昨日だって初めてだけど、『どんな事でも』って言い切れない説明、したんだから」

本人にとっては大変だったらしい
約束は律儀に、守っている...との文言

「そうだね。あったかいミルクの香り
 立ち上る湯気に混ざるまろやかさ
 シナモンの甘さが混ざって、微睡む前の夜を想う

 そうやって、今日が静かに終わってくれれば良いのにね」

憶測は中らず
彼女は情報を集め終えた後
この席を選んだのもロケーションが良いのもあったのだろうが...繰り返されるのは既に知った裏付けばかり

しかし、遠からず
彼女は時間を使う為にここに来た
徒に温かい物を頼み、それが冷めるまでの間はこの場に留まれると考えていた
帰りたくはない。『あの場所』の近くへ。きっと、臭いはやってくる

不安な仕草をするときばかり、彼女は随分と『人間のふり』をするのが得意だった

「薫さま。私を見た時どう思った?
 ふふ、嬉しかったのかな

 私はいま、安心してるよ
 この後の事を考えてる」

落第街に戻らない為に、あなたを連れて何処へ行こうかと
目線に籠る一番の感情はその言葉に違える『焦燥感』

黛 薫 >  
「そりゃ重畳。もしムリって話だったら憎まれ事は
 全部丸投げしてもらっても別に良かったんだけぉ、
 あーたが頑張れる分があんなら、あーしの姿勢は
 『代行』じゃなくて『協力』でイケるってコトだ。
 その方が据わりも良ぃし?」

会話の傍ら、情報収集のために学生街の通りに
気を配る……その手筈だったのに、意識が逸れる。

じりじりと肌を焼く、はっきり分かる焦燥の視線。

お願いを強要したときの不満の視線も大概だったが、
彼女がここまで切迫した感情を抱いているだなんて。
つられて思考を、結論を焦りそうで──直接真意を
問いただしそうになった言葉をミルクで流し込む。

「ん、んー……まあ、見つけたときは、かなーり
 びっくりはした……あー、ぅ゛ー、違うよな?
 何か、反射で誤魔化す方に頭が向いちまって。
 うん、だから、その。正直、嬉しかったです。
 ふと寄ったお店でゆぅ……知り合いと会うとか、
 フツーの学生っぽいってか……ワクワクする?
 みたぃな?そーゆーアレです、はぃ」

素直に答えるところまでは頑張ったが、その後は
若干日和気味の回答。会話に意識を割き過ぎたのは
失敗だったな、と思い至ったのは口を開いてから。

「この後、何が控えてんすか。焦ってるでしょ。
 あーたが焦ってるのなんて初めて見たから、
 そっちで驚きが上書きされた……かも……」

一度飲み込んだ焦りが、ぽろりと溢れて。
急ぎ過ぎた結論の語尾を濁すけれど、後の祭り。