2020/06/21 のログ
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」にラピスさんが現れました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」にイヴェットさんが現れました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」からイヴェットさんが去りました。
ラピス > 仕事終わりのへっぽこ教師は、オムライスが食べたくて、エビフライも食べたかった。
だからと夕飯に足を伸ばしたのは、どちらのメニューもありそうなファミリーレストラン。
入店すると、愛想の良い店員に連れられて、ちんまりちょこんと四人席の一角へ。
店が混み合ったら相席なんかもあるらしいが、気にしないタイプなので是と答えて。
次いで出されたお冷で一服。それからメニューに手を伸ばして――。

「……どっちにするか、まだ決めてませんでしたねっ!」

オムライスか、エビフライか。それが問題だ。
育ち盛りの生徒諸君ならどちらもペロッと平らげられそうなものだが、このちびっ子はそうはいかない。
両方頼んだならば、お腹がぽんぽんになってしまって、絶対にどちらかを残すのだ。
或いは、最悪の想定としてはどちらも中途半端に食べて、中途半端に残しかねない。
つまり、むむーと難しい顔でメニューとにらめっこする今この瞬間が、正しく決断の時なのである。
――実を言えば、最適解としてどちらも乗っかったメニューが一つだけ存在する。
それこそは、みんなご存知のお子様ランチ。子供達の夢が詰まったワンプレート。
しかし、大人を自負するへっぽこ教師がお子様メニューにたどり着くのは、もう少し先のことである。

ラピス > むぅむぅ、と悩みの唸りを上げながら、辿り着くのはお子様メニュー。
ページの左上にデカデカと載っている写真をちらりと見るや、ぎゅぴん、と目を輝かせる。
オムライスにエビフライにハンバーグ、デザートにプリンまで付いている完璧メニュー。
今の欲求を同時に満たしてお釣りが来る、お子様ランチの存在にようやく気づいたのである。
これだ、と決まれば話は早い。店員を呼ぶためのボタンに手を伸ばしかけて――。

「……でも、私お子様じゃないのでは?」

先生ですし。えぇ、先生ですもの。お子様じゃありません。立派なレディーです。
意味もなく胸を張るちんちくりんは、一人芝居の真っ最中だ。
お子様じゃないからお子様ランチを頼むのは、ちょっと気が引けるとか。
でもお子様っぽい見た目を利用すれば、お子様ランチはすんなり頼めるとか。
どこからどう見ても外も中もお子様な教師は、まだまだ注文には至れない。

ラピス > それから悩むこと数分、少女の手はついにボタンを押し込んだ。
結論から言えば、頼むのはお子様ランチだ。誘惑には勝てなかった。
大事なのは満足感であり、小さなプライドではないのだ。

それから十分程度の後、店員がにこやかにお子様ランチを運んでくる。
ハンバーグにエビフライ、タルタルソースがちょこんと乗って、オムライスには旗が立つ。
デザートのプリンに、コーンポタージュスープ、謎の玩具(着せかえ人形っぽい何か)もセットである。
流石に玩具は不要だったのだが、折角だから貰っておくことにする。ちょっと可愛いし。

「それでは、いただきまーすっ!」

小さな両手をぺちっと合わせて、一人ぼっちの夕食が始まる。
それからは、ただ自由気ままにフォークを動かし、プレートの上の料理を貪るのみ。
満ち足りて満面の笑みを浮かべた少女が店を出るのは、それから二十分ほど後のことだった。

ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」からラピスさんが去りました。