2020/08/10 のログ
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に園刃 華霧さんが現れました。
水無月 斬鬼丸 > お昼時もいいところ。
今日はバイトも休みなので久しぶりにファミレスで飯を食うことになった。
「レモンのいれもん」という気の抜けたフォントの文字とレモン型の容器のイラストのプリントされたTシャツを着た少年は
やっすいドリアとからあげと、ドリンクバーを購入。
エアコンの効いている店内で少し粘ろうという魂胆がミエミエのメニューである。

園刃 華霧 >  
「ハー……」

ここの所、色々と目まぐるしいことがあって流石にちょっと一息入れたかった。
たまにはファミレスで一息、なんていうのもいいだろう。
此処に来るのも久しぶりだ……何て思っていたら……

おや、あれは……みっくん。
一人か。
うん、ちょうどいい。
秒でやることを決定して、足早に近づく。

「ヤ、若者! そこいいかナ?」

許可を得るまでもなく強引に目の前に座ろうとする傍若無人がそこに居た。

水無月 斬鬼丸 > ドリンクバーで水無月スペシャル(カルピス7:メロンソーダ3)を完成させ
戻ってくると、前にあった顔…
足早に歩み寄ってくるあたり、あちらもこちらを覚えているようだ。
たしか…

「あー、確か、風紀の…カギリ先輩…」

めちゃめちゃ良く食う先輩だ。たしか。
そう返すまもなく自分の体面に座るあたり
間違いはなさそうだ。

園刃 華霧 >  
「そうダよー、かぎりんダよー。
 おひサー、みっくん。元気してター?」

にひひ、と笑いながら小さく手をふる。
もう片方の手は遠慮なくメニューを開いていた。

「あと、なに?
 今日はマた、サボり?」

笑いを崩さないまま、続ける。
今は夏休み真っ盛り。
当然、サボりなど存在しない。
それでも、そう聞いた。

「あと、みっくん今日はなに頼んだノ?
 ピザ? パスタ?」

グイグイ来た。

水無月 斬鬼丸 > 「久しぶり…っす。
えーと、まぁ、はい
それなりに。病気とかはしてないっす」

そのせつはどうもと軽く頭を下げる。
いたずらっ子みたいな笑顔は前にあったとおりで
気安い感じも相変わらず。

「今日はバイトは休みなんで。
ガッコも夏休み…
先輩は…またサボりっすか?」

夏休み真っ最中なのは先輩も知っての通り
人の悪い言い方をすると困ったような表情をしつつも返事を返す。
それだけでは癪だと同じように聞いてみたり。

「ドリアっす……前とおなじ…
あとからあげ…」

距離感も変わらない。

園刃 華霧 >  
「もー、なンだよー。
 相変わらズだなー、みっくんー。
 ま、そこガみっくんなンだろーけドさ」

ちょっと距離のある感じ。
あんまり変わってないなあ。
逆にソコが妙に嬉しくて、けたけた笑っている。

「ひひひ、そダよ。
 今日もおサぼりサン。
 ……おっと、今回は前と立場逆?」

相変わらず笑いながら続ける。
前は、サボり学生と風紀委員。
今度は、普通の学生とサボり風紀委員。
いやはやいやはや。

「アー、マたドリアね。
 あ、でも今度はデザートじゃなくテ、からあげなンか。
 いヤー……オトコノコ、それデ保つノ?」

あれやこれや、ドリアを中心に探りつつ
そんな疑問を口にする。

水無月 斬鬼丸 > 「相変わらずはまぁ、先輩も…
お変わりないようで?」

元気そうで何よりというところはある。
まぁ、風紀ってここのところわちゃわちゃしてたらしいが。
沙羅ちゃんがあそこまで疲弊する程度には。

「そっすね。逆…っすけど…
まぁ、前の借りもあるんで
俺も別にほかの風紀にいったりはしねーっす」

前はたしか、手入れを行わない建前として
自分が利用された感じ…だったか。
その時からなんとなく風紀っていうより
もっと融通のきく…どちらかというと一般よりの感性をもった先輩って感じだった
なので、かしこまりはするものの
堅苦しくは感じなかった。

「まぁ、晩飯までは。
足りなかったらコンビニでなんか買うんで…
カギリ先輩は…なにを?」

園刃 華霧 >  
「ひひ、まーネ?」

お変わりないようで

本当は色々変わったところがある。
とはいえ、目の前の相手には無関係の話。
此処で話題にすることもないだろう。

「お、密告なし? マジで?
 そリャ助かル!
 みっくん、今度こそ、奢ろッカ?」

忘れてないぞ、あの時の話!
そんな風に笑う。

なんというか、遠慮深いというか距離があるというか……
地味に、そういう反応は新鮮なのだ。
ああまあ、完全に引かれる、はよくあるんだけど。

「ンあ……アタシ。アタシかー……
 せっかくだカら、みっくんに倣って……
 ドリア、からあげー……ン―……オーブン焼き……いいネ……
 ピザ……まずは、そンなとコ?」

まずはと言ったのは、既にこの小柄な少女に入るには多そうな量。
それでも以前よりは控えめではある。
といっても、まずは。油断はできない。

水無月 斬鬼丸 > 少なくとも、こちらから見た感じは変わってはいない。
口調とか接し方は。
変わったところといえば……

「そういえばその…チョーカー?
前付けてましたっけ?
かっこいいっすね」

まぁそれくらいか。
とはいえ、ファッションやら装飾品やら
それこそ毎日変わるものだ。
自分はといえばレモンのいれもんだし…
こんなセンスのやつに言われても嬉しくはないかも知れないが。

「あ、覚えてたんっすね。
律儀っていうか…まぁ、その…
ちょっと色々財政的に厳しいんで今日は甘えてもいいっすかね…?」

バイトはしているものの、あまり自由には使えない。
理由はある。
初対面を通り越した相手ではあるので
前よりは少しこちらからも歩み寄ってみる。

「…まずは、で結構食いますね…」

成人男性でも結構満腹になるラインナップだが
それでまずは。らしい。
まぁ、以前見ているため、それで終わったら逆に驚くが。

園刃 華霧 >  
「オ? みっくん、そコに気づクとはお目が高イね!
 なーンだよぉ、みっくん。いいじゃンいイじゃーン!」

なにがいいのかサッパリだが、喜んでいるらしい。
バンバンっと肩をたたきそうな勢いだったが……
流石にちょっと自重。代わりに宙を叩いた。
隣りに座ってたらしたかもしれない。
正面に座っててよかったな?

「これナ、トモダチとお揃いなノ。
 ちょっト遠く行っちゃッテ、簡単ニ会えなイかラさー。
 カッコいい、なラ……嬉しいネ」

ちょっと身を乗り出して、首元を見せつける。
黒のチョーカーと、あとまあ其の辺が見える。

「はハ、オトコノコは色々とお金の使い先ガあるッテ?
 いいヨいいヨー。
 なンなら、好きなの追加しナよ。今日くらいはサ」

割と其の辺、おおらかなのだ。
自分のお金の使い方がおおらかなのもあるが……
そもそも使うのも食事代くらいしかないから、割とお金はある。

「ンー……? みっくんが食べなサすぎ、ダと思うけドなー?」

そう? とメニューをまだ視界の端で眺めてる。

水無月 斬鬼丸 > なんかものすごく上機嫌だ。
結構グイグイ来たりして
なんというか男勝りって感じの先輩だが
ファッションを褒められると嬉しいらしい。
ここまで喜んでもらえると、こちらだって少し嬉しい。

「あ。え。はは、ど、ども…」

嬉しいが、まぁちょっと照れくさいので返事は控えめ。
なんかワケアリっぽいところもあるので
あまり深くは言うまい。
見せられる首元はなんとなく色っぽいというか。
視線を下に落としてはいけない気がした。
この人の距離の近さに合わせると、青少年のいろいろがよろしくない。

「うん、似合ってると思うっす。
追加するならそれはそれで自分で払うんで。
流石におごってもらうって聞いてから追加するのはせこいっつーか…」

おおらかなので彼女なので遠慮はすべきではないのかも知れないが
それでも、食えない量頼むのもどうかともおもうし
なにより、それはかっこわるいというか。
女子の前ではあまりかっこ悪い真似はしたくないというのが男子というものだ。

園刃 華霧 >  
「ン。
 いや、ホント……ありガと、みっくん。
 トモダチが褒めラれたみたいデ、すごく嬉しいンだ。」

控えめな返事を貰えば、すとん、と席に座り直して微笑む。
いつものけらけらした軽い笑いとは別種の笑い方だった。
本当に嬉しいのだろう。

「そーオ?
 んじゃ、まア。気が向いたラ追加してネ。
 ァ―、なンならピザとカ、つまンでヨ。」

そこで、食事が届く。
いきなりテーブルの上がにぎやかになった。
件のピザもそこにあった。

肉!肉!肉!トリプルミートピザ!!

とかいう実に肉肉しいピザだった。
乙女の頼むものじゃない、多分。

「そーイや。みっくんって水無月、ダっけ。
 珍しい名字だッタりすル?」

むしゃ、と遠慮なく自分のドリアを食べ始めながら、
なんの気なしに聞く。

水無月 斬鬼丸 > いつもと違う雰囲気というか
少し控えめ…いや、なんというのか
少女らしい微笑み。
なんか別の顔を見た感じがして一瞬言葉を失う。

「あ、あえ、えっと!
いや、ほんと…お、思ったこと言っただけなんで!
お礼なんて、その…」

返事に困る。少し顔が赤いかも知れない。
いや、距離を近づけたときよりもずっとそう見えるだろう。
すこししどろもどろになりつつも
店員が料理を持ってくる間になんとか立て直す。
彼女にとっては控えめとはいえ、それでも二人がけのテーブルには十分すぎる量だ。
肉密度が高いし。

「ぁ、はい、そうします…」

まぁ、余ったものをという感じの心持ちだが、彼女のことだ、余らせることはあるまい。
自身もからあげに手を付けていると
質問が飛んでくる。名字に関してだ。なんで?

「え?あー…他ではあんま聞きませんね。
それがどうか?」

なんかおかしいことでもあったのだろうか?と、少し不思議そうに答える。

園刃 華霧 >  
「ひひ、なーンだよォ。
 みっくん、ひょっトして、お礼言わレ慣れてナい?
 そンな慌てンなってー」

先程までの笑顔は何処へやら。
ドギマギした相手に、けらけらと笑い返した。
うん、楽しい。

「ンー……そッカー……
 ァー、いヤね。この間、風紀委員で旅行あッテさ。
 そン時、水無月って子に会ったかラさぁ。
 
 うちッテ、結構アレこれ居るカら意外とメンバーって
 知らないト知らナいままナんよネー。」

珍しい、のであれば。
ひょっとして、妹とか姉とか、そういうのだろうか。
と、ふと想った。

水無月 斬鬼丸 > 「まぁ、その…あんまり…」

それもあるのだが…真意は言わないほうがいいだろう
先輩との距離感的にも。
楽しそうに笑う先輩に照れくさそうに答えて。
むしろそれを言ったところでカウンター決めてきそうな余裕がこの先輩にはある。

「ああ、旅行…知ってます。
その、えーと…妹に聞いたんで。
ってか、たぶん、先輩の言ってるの妹っすね…」

少しばかり視線をそらす。
正直に答えはするが…
少し答えづらい。
別に質問が悪いとか沙羅ちゃんが悪いわけじゃないし
ましてや先輩が悪いわけではない。
自分の心境的な問題だ。

園刃 華霧 >  
「そッカ。
 みっくん、いいヤつなんダしお礼くラい言われ慣れとケよ?
 どうセ、この先、何度も言われルぞ?」

相手の真意は知らず。
でもまあ、そんなこと関係なくけらけらと笑ってアドバイス。
アドバイスになってるかは不明だが。

「アー、妹!
 そウなんダ。いい子だネぇ。
 みっくんの妹かー……なーるホどねぇ……」

そっかそっかー
ならいい子なのも納得……
ちょっと感情の起伏激しい気もするけれど……

……いや、でも

無感情だった、という話も聞いた。
なにかがあって、変わった、とも。
……この辺、あんまり突っ込まない方がいいのかな……
でも

「ンー……みっくん、どうシたのサ?」

逸らされた視線に、できるだけ回り込んで視線を合わせようとする。
自然、顔は近づく。

水無月 斬鬼丸 > 「あはは…そんなことないっすよ。
別に人助けとかやるってわけでもないんで…
むしろ言われるのは先輩とかそういう人かと…」

いいやつだと思ってくれるのは嬉しいが
風紀委員にそう言われてはと笑って返す。
特に先輩のような気のいい人だと。

「あ、ああ…同じ風紀っすからね。
そうなんっすよ。いい子で…ほんといい子で…
我慢強くて、賢くて…俺にはもったいないっつーか…」

本当にいい子だ。
だけど、その子も疲れて…潰れそうになって…
はては自分なんかになにか求めて…
その答えをまだ自分は掴みきれていない。

情けない。

と、もの思いにふけっていると…

「うわぁ!?」

近い。座ったままでは後ろにも引けないじゃないか。

園刃 華霧 >  
「我慢強くて……賢くて……
 ねェ?
 それに、もったいない?」

復唱する。

我慢強い?
ああ、我慢強いのはそうなんだろうなあって思う。
少なくとも短い付き合いでもなんとなく、わかった。

賢い?
さて、あれだけの付き合いではよく分からなかった。
けれど、多分ただ賢いというわけではなさそうだった。

もったいない?
……なにが?

「どうシたのさ、みっくん?」

改めて、視線を無理やり合わせたまま聞いた。

水無月 斬鬼丸 > 「え?は…な、なにが…、っすか?
あ、え、ぼーっとしてましたね…
すんません、はい…」

どうしたのか、と聞かれて我に返る。
ここの所どうも悩みっきりでだめだ。
沙羅ちゃんのことになると思考が渦を巻く。

「なんでもないっす。
まぁ、あれっすよ…
すごい子なんですけど…
最近疲れてるみたいで心配っていうか…まぁそんなかんじで…
でも、その、旅行で気分転換できたなら良かったなあって」

乾いた笑い。そして目をそらす。
きやすい先輩といえ、この距離は少しばかり恥ずかしいし。

園刃 華霧 >  
「ンー……」

考える。
腕を組む。
考える。

全てはわからない。
けれど、あの子は気持ちを色々と持て余している感じもある。
いや、他に抱えるなにかもあるのかもしれない。

それもあるけれど。

「むー……みっくん、さァ。
 ……アぁ、いいヤ。いいたクないナら。」

考えて、少しばかり言葉にする。
お互いの微妙な距離を計りながら。

「でモ、なんか辛そウだぞ?
 辛いナら、そレだケでもソウ言え?」

ゆったりといった。

水無月 斬鬼丸 > 「……」

顔に出ていただろうか。
いや、態度にか。
カギリ先輩を見返すも、こちらの眉はハの字。
気を使わせてしまっているのもよく分かる。

「ちょっと、だけ…その……少しだけ…」

彼女の言葉にうなずいた。

園刃 華霧 >  
「ン……そッカ。」

座って、手をのばす。
届くかな。届かなければ、腰を少し浮かせて。

水無月斬鬼丸の頭に、手をのばす。

「大変だったナぁ、みっくん」

やんわりとした口調と、声。

水無月 斬鬼丸 > ふわりと…手が触れた。
びくりと、肩がはねた。

「ちがっ…そうじゃ、なくて…
その、大変だったのは沙羅ちゃんの方で…
俺は、その、なんもしてなくて…怒られたっていうか…
助けたかったんだけど…俺、自分の異能怖くて…なんも、できなくて…
あのこ、あれ…違うじゃないっすか…
風紀ってその……俺の、俺のいる…日常っつーか…ふつうと…ちがって…
だから…助けたいって……守りたいって…なっても…どうするのがいいかって……
帰る場所で待ってるのが、いいのか…護れる力、つけたほうがいいのか
居場所になれるだけの…立派な、お兄ちゃんになればいいのかなって…
ずっと、わかんなくて、なやんでて…
それでも…沙羅ちゃんが…たいへんなのは…わかってて…」

なんか、溢れた。
優しい言葉に、撫でてくれるその手に…。

園刃 華霧 >  
「いーや。さらっちも、勿論大変だったんだろうけど。
 みっくんも十分、大変だったろ?」

遠慮なく撫でる。
これは、お返し。
自分が貰ってきたものへのお返し。
それに……

「悩んでるだろ?
 それこそ、死ぬほど。」

撫でる。

「なあ、みっくん。
 確かに、風紀ってのは日常じゃないかもな。
 なら、さ。日常って、それこそ大事じゃない?
 みっくんは、みっくん。
 そういう、当たり前なのがいいんじゃないかね。」

少なくとも、自分にはそうだ。
そもそも自分は風紀以前に、日常というものを知らないできた。
だから、この少年はとても貴重な知り合いだ。
この日常の象徴である少年は。

「あんま気負うなよ。
 それこそ、さらっちの居場所がなくなっちまう。
 ま……努力したいって気持ちは大事だけどな?」

ゆったりと笑う。
自分がどうすればいいか、と悩む。
結局、どいつもこいつもそれで悩んで悩んで。
うっかり変な道に踏み出したりするんだよなあ……
やれやれ。

「だいたい人間、思い詰めすぎるとろくなことにならない。
 ちょっと前に思い知ったばっかりさ。
 一回、休んで。落ち着いて色々振り返ってもいいかもな?」

それが出来なかったから。
自分は大失敗をして、今や首輪付きだ。
まあ、お陰で色々学べたのは収穫なんだけれど。

水無月 斬鬼丸 > 「でもっ…その…沙羅ちゃんが……嫌な思いや苦しい思いしてるの知ってて…
俺は…俺が怖いからって…俺の異能…とか、そういうの…ぜんぶ蓋してたんっす…
…このあいだ…異能、使ってみたら…その、なんか…気づいちゃって…
そしたら、見るだけで…斬れるように…っ、それ…そうなって!おれ…すげぇなんていうか…
嫌っていうか、怖いっつーか……そんなんなって!!
でも、沙羅ちゃん、昔っからそういうの…やってて…俺はそれを見捨てたんだって…
おもったら…なんか、しなくちゃって…
でも、シュシュ…あぇ……知り合いの女の子と話して…
居場所…なくさないようにしなきゃとも…考えちゃって…訳わかんなくて…」

肯定してくれる先輩。やさしい。
その声も、手も。
だけど、自分はわからない。
同じ舞台に上ってこいと、自分をチェインリッパーとよんだ妹の真意が。

助けたい、守りたい
沙羅にとってのあの日の花畑でありたい。

だからこそ何を求めているのかわからなくて…

「当たり前であっていいのか…日常であっていいのか…
なにかしたほうがいいのか……って…
振り返っても、結局わからずじまいで…
あそこまで言われたのに、オレはオレのちから、コワイまんまで……」

どうすればいいかわからない。
再びそうつぶやくと、力なくうなだれた。
声は涙で濡れている。
優しさに触れてしまって決壊してしまった。
シュシュクルのときといいぼろぼろだ…

「先輩、俺…休んでてもいいんっすか…?」

園刃 華霧 >  
「……」

必死で訴えてくる。
山積みの苦悩。
この少年と、沙羅の間に何があったのか。
それ以外にも、何を抱えているのか。

それは、分からない。
分からないから、安易なことは言えない。
けれども

「怖いのは、それでいいんじゃない?
 むしろ、ヤバい力が怖くないって……
 それこそヤバいやつだろう?
 少なくとも、さらっちがそれをみっくんに望むとは思えないな。」

いくらどんなことがあろうとも、そこだけはそうあって欲しい、と思う。
これは自分の願望かもしれない。
……だから、これは欺瞞かもしれない。

「多分、な。
 ちょっと、上手くいえないけれど……
 『向き合うこと』なんじゃないのかな。」

本当に、うまく言えない。
こういう時、頭が悪いのって辛い。

「力を使えるようにしろ、とかそんなじゃなく。
 そういう、ヤバい力を持っている。
 ただ、その現実を見ないふりしないでちゃんと付き合う。
 さらっちの現実にも……いや、多分これは向き合ってるのか……
 でも、改めて、なにか見えることがあるかもしれない。」

どうやって、とか、どんな風にっていうのは、すごく難しい。
アタシには持ち合わせない苦労だ。
だから、無責任に言うのは……それはそれで心苦しい。

「で、其の上で――日常で生きるって、最高にロックだ。
 案外、日常だけに生きるのってきっついんだぞ?」

外の世界は知らないから、よくわからない。
それでも、騒動だらけのこの島にいれば、まあろくでもない日常が待っているのはよく分かる。
当然、非日常、とかいうヤツもすぐ横で口を開いていやがる。

「ただまあ、きっつい。
 だから、一回休んでもいいとは思う。
 休んで、また歩けよ。」

優しく頭を撫でる。

「なんとなったら、アタシに全責任おしつけろ。
 アタシの言ってること全部が正解、ともいえんしね。」

水無月 斬鬼丸 > うなだれたまま
肩を震わせて、同じように震える両手で
すがるように…カギリ先輩の手を握った。
撫でてくれる。
自分の弱音を受け止めてくれる
自分の言葉で答えようとしてくれる

ちょっと前に思い知ったと先輩はいった。
おそらく先輩自身にも何か、辛いことがあったんだ。
なのに、それをおくびにも出さない。
強く、優しい少女…。

向かい合う。
妹は、沙羅ちゃんは
『私を見てよ』と叫んだ。
それはきっと先輩の言うことなんだろう。
自分には、そうした上で
覚悟を聞かれた気がしていた。
だからそれを怖いと感じてしまった。

気持ちがあっても覚悟となれば
齢16の少年には難しい。
だが、彼女の周辺にはそれができるものが多いのだろう。
それは彼女も含めて。…そして、目の前の先輩も。

だからこそ答えがわかる。
だからこそ問うた上で、その真意が伝わると思っているのかも知れない。
そういういみでも、彼女らと、自分たちのいる場所は遠すぎた。
もっと近く…もっと、言葉をかわすべきなのだろう。
日常に生きるものと、非日常をかけるものではそれくらいの隔たりがある。
カギリ先輩の言葉はストンと…胃の腑に落ちたようで…

どこまでも優しくて…

「うえ…えぇぇぇえぇぇええぇ……」

みっともなく泣いた。
ファミレスの席で。
泣いてばかりだ。情けない。
こんなことで護れる男になるのか?
でも、止められなかった。
溢れ出した言葉と同じで、弱い自分を押さえられなかった。

園刃 華霧 >  
「泣け泣け。
 みっくんは泣いていい。
 怖かった? 苦しかった?
 辛くてしょうがなかった?
 いいよ、なんでも。全部、流しちまえ」

泣き崩れる少年を前に、
静かに声をかける。

「泣けるってのは、いいことだよ。
 泣けないようじゃ、ろくなことはない」

つい先日まで、泣くことすら知らなかった。
泣いたら負け、とそんな風な意識がきっと何処かにあった。

そんなもの、異常でしかないのに。

水無月 斬鬼丸 > 「ぜんばっ…げほっ…うぇっ…
ごめっ…おれっ…おれ、こんな…
なざけな…っ…いっ…とこ…えぐ…
でもっ…おれっ…なん、どまら…なぐ…
うぇぇ…げほっおぇっ…」

言葉にならない。すがりついたままに。
周囲の目は怪訝なものを見るようなものになっているだろう。
なのに、そばにいてくれる…
泣けと、優しく声をかけてくれる。

出会いは数ヶ月前…
会話したのは二度目。
弱音をぶつけて、だらしなく泣いて
みっともないところを見せてしまった。

「ぜんば、ぃ…ごめん、な…ざい…っ…
ごんな…はなし…」

園刃 華霧 >  
「言ったろ? 泣いていいって。
 誰にも文句を言わせやしないさ。
 勿論、アタシ自身にもさ」

すがりつくままにさせて、軽く抱きしめてやる。
少しは周りの視線も気にならなくなるかもしれない。

「それに、情けない?
 いいんだよ、情けなくて。
 いや……違うな。
 今のみっくんは、イイ男だよ」

背中をかるくさする。
ああ、そういえば自分もこんなことされたな……

「気にするなって。
 そもそも、アタシが聞いた話だ。」

水無月 斬鬼丸 > すがりつき抱きしめられ、その胸をかりる。
温かい、優しい、少女のぬくもりが伝わる。
とめどなく溢れる涙と嗚咽は少女に胸に吸い込まれ
背中を擦られれば呼吸も落ち着いたものになっていくだろう。

「俺、ちゃんと…向かい合って……
俺、どうすればいいのか…聞いて、みます…
かぎり、センパい…
あり、がと…ござ、いま…」

喉がしゃくりあげてしまい言葉をうまく紡げないが
なんとか伝え
しばらくすれば、ようやく涙もおさまったのか
顔を上げる。

ひどい顔だ。
さんざ泣きはらした目に、すすり上げて赤くなった鼻。
下がった眉に頬には涙の跡。

「すいません…大丈夫す…ありがとう、ございました…」

園刃 華霧 >  
「おウ、そっか」

軽く笑って、座り直した。
まるで何事もなかったのように。

「ま、さらっちも……
 うまく言えないことがあるんだとは思うよ。
 だから、じっくり話すといいさ。」

ごくり、と水を飲む。
うん、いいね。いい。

「そーダ。
 みっくん、オムライス、食べない?
 『世界、取れる』らしいぜ?」

もうそこには、穏やかな彼女はおらず。
へらへらと、いつもの調子の少女が笑っていた。

水無月 斬鬼丸 > 「あい…たべる、す…」

座り直し
おしぼりで顔を拭う。
あまりにもひどい顔と声。
それでも笑顔の少女に
無理やり笑って、そう答えるのだった。

園刃 華霧 >  
「ひひ、良い返事ダ。
 じゃ、食べよーナ。アタシの奢りで」

そこは有無を言わさず容赦なく
二人分のオムライスを注文した。

ドリアと唐揚げを食べた水無月斬鬼丸の腹や、いかに。
彼はこの後の試練を乗り越えられるのか。

頑張ってほしい。

ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から水無月 斬鬼丸さんが去りました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から園刃 華霧さんが去りました。