2021/03/03 のログ
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に黛 薫さんが現れました。
■黛 薫 > からん、とドアベルが鳴る。
どの店でもベルの音なんて大差ないはずなのに、
ファミレスのベルは賑やかで、お高い店のベルは
落ち着いた音に聞こえるのは錯覚だろうか。
「あ、はい。1名で……えぁ、ボックス席……?
いぁ、テーブル……あ、無ければいいんで……」
そんな場所に、珍しく立ち寄る少女が1人。
初手の対応の時点で不慣れを露呈してしまい、
生優しい『視線』を受けてもう帰りたい。
さておき。
彼女──黛薫は普段滅多に外食をしない。
店員と会話するだけでも結構消耗するし、
コスパ、というか量あたりの値段を考えると
決してお得ではない。貧乏人には痛い出費だ。
そんな彼女も、贅沢をしたい日だってある。
具体的には気分が落ち込んでいる──というより
自己嫌悪が酷くて自分に価値が見出せないとき。
要するに落伍者でない、まともな人の真似事をして
自分だって『人間』であり『学生』だ、生きていても
良いんだ、という自己肯定感が欲しいのである。
なお、大体6割くらいの確率で余計に世間との差を
実感して自爆する。つまりこれは賭けなのだ。
■黛 薫 >
席に案内され、テーブルにはメニューが置かれる。
一緒に提供されるのはおしぼりとお冷。季節や店舗
次第では温かいお茶が提供されたりもする。
常連はメニューすら開かず注文したりすると聞くが、
当然自分はメニューの把握なんて出来ていない。
しかし、この場で店員を見送ってゆっくり注文を
考える──というのもまた違って。
「あの、お水……ピッチャーで頂けますか」
黛薫は結構水分を摂る方だ。普段の食生活からして
固形物より水の比率が多い所為なのか、特に味の濃い
食べ物を口にするとすぐに水分が欲しくなる。
水が無くなるたび、都度店員を呼んで頼み直すのは
非常に居心地が悪く……そのため別の用事で店員が
側にいるうちにピッチャーを頼むのが最適解だ。
それだけにも結構勇気は要るが、何度も呼ぶより
精神的負担は少なくて済む。
■黛 薫 >
さて、これで第一の関門は無事に越えたことになる。
次はメニューを開き、何を注文するか決めなければ。
お冷の入ったコップを口に運びつつ思案する。
メニュー選びにかける時間が長ければ長いほど、
先に飲む水の量も多くなる。水でお腹が膨れれば
高いものを頼まなくて済むので、時間をかけて
選ぶのも悪い選択肢ではない。
しかし、必要以上に店員を待たせている気分に
なってしまうと、お腹よりも先に不安が膨らむ。
だからほどほどにゆっくりくらいが丁度良い。
真っ先に目に入るのは別紙に記載された季節の
お勧めメニュー、そして通年メニューの表紙を
飾る人気メニューの類だ。
無難も無難、時間や精神に余裕が無い場合など
とりあえず頼めばハズレはしないありがたさ。
しかし、今日はそこまで追い詰められては……
結構追い詰められてはいるが最悪ではないので、
とりあえずメニューを流し見ることにする。
■黛 薫 >
「……どーしょ……」
言うまでもないが、黛薫は空腹である。
それ故に記載されているメニュー全てが美味しそうに
見えてしまう。だからといってそんなにたくさんは
お腹に入らない。普段から食物を入れておかないと
胃の容量は簡単に小さくなるものだ。
例えばランチに人気なサンドイッチのセット。
ほどほどに軽く値段もお手頃、バリエーションも
豊富で食べ比べたらきっと幸せだろう。
しかしこの時間、人気メニューのグリル系もまた
捨てがたい。ハンバーグやグリルチキンは勿論、
ちょっと値は張るがステーキだって載っている。
今の手持ちなら頼むことはできるのだ。
贅沢を楽しむなら、サイドメニューをいくつも
頼んでみるのも悪くない。コスパは良くないが、
一品物ではない複数メニューを味わう楽しみは
なかなか抗いがたい魅力だ。
■黛 薫 >
悩んだ末、折衷案として軽めのメインを1品と、
サイドメニューを1つか2つ頼むことに決めた。
複数頼むなら、重いものは避けるべきだろうか。
そうなるとグリル系は候補から外すべきか?
だが『ファミレスで食事をした』という気分を
1番味わえるのはグリル系な気がする。
悩んだ末に目についたのは、サイコロステーキ。
正直なところ、高い。その割には多くない。
ハンバーグやミックスグリルの方が多くて安いが、
今の自分のお腹に収まるかを考えると……。
(いぁ、やっぱダメダメ……安いやつ……)
すんでのところで誘惑を振り切ることに成功。
食費に使える手持ちは高額紙幣が1枚。
その気になれば1月暮らせる金額とはいえど、
残しておいた方が楽なのは変わりない。
■黛 薫 >
(……いや、待てよ?)
閃きが走る。テーブル傍に立てられた広告ポップ、
そこに記載されたQRコードから、その場でアプリを
ダウンロード。お店の公式アプリでクーポンを調べる。
(……やった!)
初回限定特典の割引クーポンが盛り沢山。
そして高いメニューの方が割引率は大きい。
当然それを差し引いてもサイコロステーキの方が
ハンバーグよりは高額だが……トッピング付きの
メニュー、例えばチーズインハンバーグやおろし
ハンバーグとほぼ並ぶ値段にまで抑えられる。
これでメインは決定した。
あとはサイドメニューをどうするべきか。
■黛 薫 >
(野菜……食べた方がイィのかなー……)
気になるのは栄養の偏り。肉の塊を食べるなら
多少なりとも野菜も摂った方が良いのだろうか。
とはいえ野菜はそんなに好きでもないし、
先日カット野菜を食べたので、ビタミン不足に
危機感を抱いた身体からの警鐘も今はない。
植物由来で、何か惹かれるメニューはないか。
期待せずに眺めていたら、良いものを見つけた。
つまり、フライドポテトである。
(……イモって野菜カウントで合ってるよな?)
じゃがいもはでんぷん質、どちらかと言えば主食。
しかし悲しいかな、落第街暮らしの学生に栄養学の
知識はなかったのだ。サイドメニューが決定した。
■黛 薫 >
もう1品頼むかどうかは随分悩んだが……
ハンバーグほどでは無くともメインは重め。
サイドは1品に留めて注文のボタンを押す。
……反応がない。
もう一回押してみる。やはり反応がない。
すわ故障かと焦ったものの……単純に押し込みが
足りないだけだった。誰に見られていたわけでも
ないが、妙に恥ずかしい。
訪れた店員さんに向けて、淀みなく注文を済ませる。
これで第二関門も突破……と、油断した矢先。
「こちら+150円でお得なセットを付けられますが、
宜しければ如何でしょうか?」
「えぁっ、えっあ、はい、お願いします……?」
『お得』と言われて反射的に肯定を返したものの、
セットメニューの内容なんて把握していない。
色々確認されたのを全て『はい』で押し通しつつ、
店員が去ってから慌ててセットを確認。
■黛 薫 >
セットメニューの内容はライス、またはパン。
そして選べるスープとドリンクバー、デザート。
なるほどこれだけついて150円は確かにお得だ。
……お得、なのだが。
(……ドリンクバー頼んじゃったじゃん……)
自分で自由にドリンクを選べるサービス。
そう、店員を呼ばなくても飲み物が飲める。
お冷をピッチャーで持ってきてもらった意味は
……たった今、完全に消滅したのである。
(……いや、前向きに、前向きに……)
別に頼んだからと水を飲み干さなければいけない
道理はない。ただちょっと心が痛むだけだ。
ドリンクバーでコーラを汲んで一口。
少しだけ気持ちが明るくなった気がする。
炭酸は偉大だ。
■黛 薫 >
普段なら飲み放題を幸いにドリンクでお腹を
満たして出費を抑えるところ、今日は高めの
メインを頼んだので、美味しく食べるために
多くは飲まないつもり……だったが。
(慣れって怖いな……)
いつもの癖で最初の1杯は飲み干してしまった。
次の1杯を組みに行こうかとも思ったが、もし
ドリンクを補充に行っている最中に注文した
メニューが来たら、と思うと動けない。
■黛 薫 >
そして待つこと数分。
ほどほどに混雑した店内は繁盛が伺えるが、
それによって長く待たされることはなく、
無事注文の品が届けられた。
サイコロステーキ(割引)とフライドポテト、
そして(よく確認していなかった)セットの
ライスとコーンポタージュ。
文句なしに美味しそうな品だが、問題もひとつ。
(……これ、もしかして思ったより多ぃ?)
そう、予定外のセットを頼んだお陰で想定より
量がある。ついでにフライドポテトもシェアを
想定されたサイズで、結構大盛りだ。
しかしそれを差し引いても今は食欲が勝っている。
多少の困惑こそあったものの、手を合わせた頃には
お腹いっぱい食べられる喜びの方が大きかった。
■黛 薫 >
「いただきまぁす」
まず最初にメイン、サイコロステーキを一口。
鉄板の上でじゅうじゅうと食欲を唆る音を立て、
美味しそうな肉汁を滴らせている牛肉の塊に
フォークを突き立てて口に運ぶ。
「うっま」
一口サイズの肉というのは実に良い。ナイフと
フォークの扱いに慣れていなくても食べやすい。
抵抗なくフォークが刺さる柔らかさと、程良い
噛み応えを両立した食感に、溢れる肉汁の旨味。
焼きたての肉は人を幸せにしてくれる。
次いでフライドポテトに手を伸ばそうとして──
ふと、動きが止まる。
(これ、手で食べていぃヤツなのかな……?)
■黛 薫 >
フライドポテトを食べたことはある。
つまりジャンクフードの……バーガーショップで。
あそこでは誰もが一緒にポテトを頼んでいたし、
そもそもメインのハンバーガーも手掴みで食べる。
だから、何の疑問も抱いていなかったのだが……
果たしてファミレスでも変わらないのだろうか?
箸やフォークを使った方が良いのではないか。
手掴みは行儀が悪いとか思われないだろうか。
試しに一本、箸で摘んでみる。
(無理だわ)
早々に挫折。次にフォークを試す。
(食べにくっ)
一度に何本も突き刺してしまうお陰で上手に
食べられない。そうなるとやはり手で摘んで
食べるのが1番見苦しくない気がするが……。
少し考えて、ドリンクバーのグラス片手に席を立つ。
ドリンクを補充するついでに他のテーブルを観察し、
ポテトを頼んでいる客がいないか探す計画だ。
■黛 薫 >
……果たして、作戦はうまく行った。
ドリンクバー付近の席の客がフライドポテトを
手で摘んで食べていた。そして傍にはテーブルに
備え付けられた紙ナプキンと、おしぼり。
都度拭きながら食べればテーブルや食器を汚さずに
済む、という気付きを得て黛薫は上機嫌に帰還する。
因みに次のドリンクは炭酸入りの乳酸菌飲料である。
好奇心に負けて少しだけメロンソーダを混ぜた。
テーブルに戻ってすぐ、憚ることなくポテトを
手で摘んで食べる。やはりこの方が食べやすい。
サクサク薄塩味のポテトはジャンクフード店の
濃い味より少し優しく、しかし食べ飽きない。
何より味付けが控えめだから付属のケチャップと
マスタードがよく合うのだ。
「……うん、良いな、良い」
付け合わせと呼ぶには多少重いが、ステーキの
肉汁と揚げたじゃがいもの組み合わせも悪くないし、
油のしつこさが気になったなら、炭酸のドリンクで
流してしまえば良い。これは完璧な組み合わせだ。
■黛 薫 >
強いて悩みがあるとするなら、ポテトだけでなく
セットのライスも肉との相性が良いところか。
ステーキを食べた後、次にどちらを取るべきか
一瞬迷ってしまう。むしろ嬉しい悩みだが。
そうやって幸せに食べ進める最中、特筆するほど
でもないが、困ったことがひとつだけ出てきた。
(……トイレ行きたいな)
先についてから黛薫が口にした水分は多い。
最初のお冷と、無性に気に入って早々に飲み干して
しまったセットのコーンスープ、ここに至るまでに
ドリンクは既に5杯ほど空にしている。
別にドリンクバーのために何度も席を立っているし
トイレに寄るくらい悪いことではないと思うのだが、
何せこういう店にはあまり入らないから、本当に
マナーとして大丈夫なのか、自信が持てない。
■黛 薫 >
6杯目のドリンク──今度は少しコーラを混ぜた
乳酸菌飲料(炭酸入り)──を飲みながら思案する。
防犯的なことを考えると、荷物を席に置いたまま
どこかに行くのは怖い。実際ドリンクバーに行く
だけでも気になって、毎回荷物を持っていく。
しかし……荷物を持ったままトイレに行くのは、
どうだろうか。良くない気がする。食べかけの
料理が残っているとはいえ、荷物も残っていない
席にしばらく客が帰ってこないとなれば、例えば
食い逃げとかあらぬ疑いをかけられないだろうか。
そもそも食事中に用を足しに行くのはありなのか。
手を洗うとはいえ、衛生的に大丈夫なのだろうか。
マナーに反するとか言われたらどうしよう。
……悩んだ末に、今はやめておくことにした。
別に食べ終わってからでも問題はないだろう。
今はこの幸せを満喫することが先決だ。
■黛 薫 >
結論から言うと、量は少しだけ多かった。
しかし十分許容範囲内、食べ過ぎたかなと不安に
なれど、気持ち悪さを覚えるほどではなかった。
メインのサイコロステーキから得られた幸福度は
言うに及ばず、特に何とも思っていなかったのに
口にしたら予想以上に美味しくて驚いたスープ、
味付けがなくても組み合わせ次第ではこんなにも
満足感を高めてくれるのかと教えてくれたライス。
そして多すぎるかと思ったのに手が止まらなくて
綺麗に無くなってしまったフライドポテト。
「ごちそうさまでした」
こんなに満ち足りた気持ちで食事を終えられたのは
果たしていつぶりだろうか。幸せな気持ちで席を
立とうとして──
「空いたお皿、お下げしますね。
デザート、お持ちしても宜しいでしょうか?」
「へぁっ?あ、セットの、はい、よろっ……
よろしく、おねっ……が、いしま、す」
忘れていた。セットにはデザートも付いていた。
店員さんは、自分が完全にそれを忘れていると
気付いて声をかけてくれたのだと『視線』から
読み取れて……ありがたいやら恥ずかしいやらで
真っ赤になった顔を両の手で覆う。
■黛 薫 >
さて、デザートを待つ間は多少の手持ち無沙汰。
待ってる間にトイレ行ったらまずいかな、とか
考えてはみるものの、やはり席を立っている間に
運ばれてきたら気まずいな、という気持ちが強く
結局は待つしかない。
ちょっと食べ過ぎな今の腹具合で、デザートを
食べ切れるのかという不安もあったのだが……
「お待たせしました、こちらセットのデザートです」
「あ、ありがとうござぃます……」
少なくとも、そちらの不安については運ばれてきた
デザートを見て即座に吹っ飛んだ。甘いものは別腹、
乙女は甘味に抗えないようにできている。
因みにセットのデザートはカッサータ。
こんなお洒落なデザートを口にしたことがないので
どうやって食べたら良いか、非常に動揺している。
■黛 薫 >
(これってケーキなのかな?いぁ、アイスかも?
フォークで食べるのかな、スプーンの方が良い?
迷ってると溶けるかも、それは勿体ないな……)
うだうだと悩んではみたが、目の前にあるのは氷菓。
早めに手をつけるべしとフォークを手に取った。
「あっ、これヤバィな」
氷菓らしい食感はほんの一瞬、直後に下の上で
蕩けて、感じられるのは濃厚な甘味と爽やかさ。
材料はチョコ?生クリーム?チーズ?見当すら
つかないが……とにかく美味しいとだけ分かる。
■黛 薫 >
最初の一口は純粋に氷菓の味。
しかし中にはドライフルーツやナッツが詰め込まれ、
香ばしさや自然な甘味、クリームに浸された具材の
しっとりとした食感がいつまでも食べ飽きない。
「……ご馳走でした」
今度こそ、本当に食べ終わり。
幸せと同じくらいに食べ終わってしまった寂しさを
感じる。しかし……この幸せがいつまでも続けば
良かったのに、という気持ちもまた幸せの一部。
静かに手荷物を肩にかけ、余韻に浸りつつ席を立つ。
「おぅっふ」
……お腹が重い。やっぱり食べ過ぎは食べ過ぎだった。
■黛 薫 >
支払いを済ませようとして、レジに向かう最中。
ほんの少し迷いが生じる。トイレはレジ横にある、
先に済ませてきても良いものだろうか?
しかし食事を終えた客がレジをスルーしていくのを
見たら店員はどう思うのだろうか。事情は察して
くれると思うが……良い気持ちはしないのでは。
実のところ、もう済ませられるという気の緩みと
荷物を持って立ち上がった負荷のお陰でなかなか
限界が近い。しかし会計の時間くらいなら問題は
ないはず。先にレジへと向かうことに。
「……あの、会計、ぉ願いしま……え、伝票?」
そう、伝票をテーブルに置いたままだった。
慌てて取って返し、レジに伝票を手渡す。
しかしここで激しく動いたのは失敗だった。
下腹に負荷がかかり、思わず前屈みになる。
■黛 薫 >
「あぇ、ゃ、ちょ、待って……ごめんなさい!」
合計金額を聞く前に紙幣を一枚レジに叩きつけ、
お釣りの受け取りに先立ってトイレに駆け込む。
……結果として、乙女の尊厳は守られた。
店員さんには随分失礼な対応をしてしまった、と
思ったが……全く迷惑に思っていない『視線』で
優しそうに見送られてしまったので何も言えない。
ついでに恥ずかしさのあまり、お釣りを受け取り
忘れそうになったが、ちゃんと引き止めてくれた。
「あぁ゛ーー……なんであーしはこうなんだ……」
来店時の挙動不審とか、不要だったピッチャーを
頼んでしまったとか、フライドポテトの食べ方が
分からず焦ったとか、トイレに行くタイミングを
逃し続けたとか。失敗は山ほどある、が。
「……いやでも、収支……総合でプラスだし……
めっちゃ美味しかったし、お得だったし……」
真っ赤な顔でぶつぶつと呟いているものだから、
学生街の生徒たちの『視線』が刺さってつらい。
しかし、それを全部ひっくるめて差し引いても
今日の食事は美味しかったし、楽しかったのだ。
「……よし、よし。ガンバレ、あーし」
大きく深呼吸して、人目の少ない通りに逃げる。
いつか胸を張ってこの通りを歩けるようになったら
またこのお店に来よう、と心に決めて。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から黛 薫さんが去りました。