2021/11/23 のログ
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に雪城 氷架さんが現れました。
■雪城 氷架 >
昼下がり、一人の制服姿の女生徒が入店する
繁忙時…とりあえず毎日忙しいだろう時間帯
一部のスタッフが少女の来店を確認し即座に厨房に引っ込むと、場は騒然となった
決して少女が類稀な美少女であるから、ではない
その証拠に、慌てる様子でウェイトレスの一人が少女を広めのテーブル席へと案内した
そう、昼下がりでそれなりに席も混み合っているにも関わらる、である
しかし、この店員の対応は実に正しかった
■雪城 氷架 >
お冷とお手拭き、そしてメニューが席へと運ばれる
本来ならばご注文がお決まりになりましたら──と一旦下がるところ
すぐにメモを取り出したこのウェイトレスは、手慣れている
「えーっと」
このお客は注文を迷わない
否、迷う必要がない
メモをとるウェイトレスも、待ち構える厨房の調理スタッフも、息を呑む
「じゃあ、とりあえずこのページとこのページとこのページで」
来た、といった表情の店員さん
狼狽えず、一つ一つメニューを確認しての復唱にも淀みがない、プロだ
そして十数分後
ファミリー向けの広いテーブルいっぱい次々運ばれていくお料理と、それに向き合う小柄な一人の少女という風景がファミレス内に形作られた
知っている人間はまたか、と
知らない人間は何あれ、と
否応なく視線を集めながら、少し遅めの少女の昼食がはじまった
■雪城 氷架 >
「いただきまーす」
ちゃんと手を合わせてから、お行儀は悪くない
しかしそこからの光景は、筆舌に尽くしがたい
ふと視線を外した隙、ちょっと注意を逸らしただけ…
そんな一瞬で、空のお皿が増えてゆく
持ってる異能の影響で消化効率が段違いなのだとか
異能が無意識に消化器官内部で発動しているのだとか
色々仮説は立てられたがどれも実証には及ばず
今の所、少女のこの食事量と速度は単なる大食い早食いであるとしか言いようがないらしかった
「あの」
「追加注文いいかな」
お冷を足しに来た店員の顔が少しだけ引き攣った
■雪城 氷架 >
「──ごちそーさまでした」
手をあわせて口元を拭くと、お冷をいただく
戦いは終わった
実にメニュー6ページ分(追加で同ページ×3もアリ)の食事が終了した
だが店員は固唾を飲んで見守る…
この後、まだ続きがあるかもしれないからだ
「ん…」
ぴくり、店員が身構えた
「デザート…は今日はいいか…」
そういって少女は化粧を直し始める
それこそが、完全に戦いの終わった証…
厨房から一斉に大きなため息が聞こえた気がした
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」に皋嶺 冰さんが現れました。
■皋嶺 冰 > 「――ここ、入ったことがないお店だけど……うん、よし」
――新たな来店の音と、雪色を揺らして訪れる女学生。
真っ先に店内の異様な空気、が、弛緩するタイミングに居合わせてしまった。
……扉に手を掛け開けて一歩目、そこから若干動かなくなりながら店内をキョロキョロ見渡す。
何故こんな空気なのか、そもそういう空気になっているタイミングに来たことに若干自分の間の悪さを感じている。
ともかく、なんかあったらしい。
「……え、と、……あ、一名、です」
恐る恐る店員の一人に受付られつつ、果たしてこの空気の中心は何処かと探ると、先客らしき人がそこにいた。
いや、客の中でも特に、なんだか雰囲気が――というよりこの空気に動じてない人が。
■雪城 氷架 >
一人の少女が大テーブル席を占拠していた影響で他の席は当然混み混み
新たに入店したお客様にも店員さんはややばたばたと慌てながら応対していた
そして、一度氷架の食事は終了したのでワンチャンいいだろうと思ったのだろうか
『ご相席でも構いませんでしょうか』
そう冰と氷架へと伺うのだった
示された大テーブルには店の様子など気にすることなくお化粧なおし中の少女
そのテーブルにはまだ運びきれていない空の食器や鉄板が大量に積み重ねられた板
「…ん? 私は別にいいけど」
簡素な返事を返すと、店員は恭しく頭を下げ、作業を再開する
『すぐに片付けますので』
と別の店員が付け加えるように冰に告げて一旦奥へと慌ただしく引っ込んでいった
■皋嶺 冰 > 「あ、相席?……いや、ああ、えと、はい。大丈夫です」
混雑極まっていた。間、悪かったかなと再度思う。
……が、示す先のでっかいテーブル、大量のお皿、少女から見て先客の座っている場所とテーブルの座標が不一致だったため、その時ようやく認識した。
あ、原因、この人か。と。
そしてその人との相席ということ、一度はいと言った以上撤回出来ない、出来てもするつもりもない。
……何故かって、先客の風貌が目に留まっていた。同じ制服、同じ性別。
もしかしたらこの人、自分と同じ寮生だったりするかな、と。若干期待もあって顔を和らげ、店員さんの奮闘を見守っていた。
■雪城 氷架 >
ようやくテーブルが片付けられ、綺麗に拭き掃除もされて、案内されることだろう
広いテーブル席、少女の前側に座るも側面に座るも隣に座るも自由である
少女のほうの視線は手鏡の中に集中していたが、
案内された冰が近くに来れば視線をそちらに向け、小さく会釈をする
先輩のようには見えないし、同学年か後輩か
自分の中学生のような容姿は棚に上げてそんなことを一瞬で思った
「あ」
そしてなにかに気づいたように
「やっぱデザート頼も」
厨房から何かがひっくり返るような音が聞こえた
少女的には、相席したばかりで帰るのもなんか空気悪いじゃん、という気配りだったのだが
■皋嶺 冰 > 案内を受けて訪れた先、会釈をされれば、こちらはお辞儀を返す。
どことなくシンパシーを感じる相手、同じ学生であることもあり、小さく首を傾ぎながら自然と人懐こい柔和な笑顔を向けた。
「こんにちは。お隣、失礼するよ」
そう告げて、こそ、とそちらの隣へ。
……自分のほうが身長は高いけど、落ち着きを感じる振る舞いと、大変な量を平らげて尚涼しく化粧をしていたのからして、多分先輩なのかな、と感じている。
メニューを手にとり、何を頼もうかと悩む隣からの声。
メニューで顔が隠れていて良かった、浮かべた表情がピシリと凍り付いたのを悟られないだろうから。
代わりに響いた厨房からの音、お疲れ様です、店員さん。と心中同情を抱く。
注文を後に、とりあえずドリンクバーだけでも頼むこととして、相手へと振り返る。
「……うん、相席で何もしゃべらないのも、窮屈だと思うから」
目を柔く細めた笑顔と、自分の胸に手を当てての礼儀を意識した仕草。
「自己紹介、させてほしい。
私は皋嶺 冰、今年入学してきた学生だ。
……その、なんとなく貴女のことを先輩だと感じているのだが、名前を伺っても良いだろうか?」
■雪城 氷架 >
「こんにちわ」
挨拶は普通に返ってきた
どことなく素っ気ないような感じもしながら、別にそんな雰囲気まで感じないという不思議な塩梅
こちらに声をかける際、笑顔を浮かべている彼女はアレだ
なんていったか『コミュ力』が高いヤツだ
でなきゃ相席で隣に座ってなおかつソッコーで話しかけてくるなんてできやしない
多分後輩だろうけど、こいつ、できる…
という心中はさっぱり顔に出ない。それが美少女
「へー、今年に?じゃあ一年生じゃん」
やっぱ後輩かー、なんてぼやきつつ予想的中
…ん?そうなると先輩らしいところ見せたほうがいいのか?
「先輩であってるよ。2年の雪城氷架。
まぁ、なんかあったらヨロシク」
もしかしたら同じ講義とか取るかもしれないし
という程度のぶっきらぼうさ、まるで男の子のようである
「あ、デザートこのページで」
そしてやっぱりページ喰いだった
■皋嶺 冰 > 「やっぱりそうか!……うん、良かった。初めてこの学園で先輩の名前を知ることが出来たよ、宜しく頼むっ、雪城先輩」
心中を知る由もない。相手が予想通り先輩であったこと、素っ気なくもしっかり名前を教えてもらえたことに安堵する。
手を合わせ、満面の笑顔。初めて先輩を先輩と呼ぶのもあり、ちょっと照れ仕草も混じる。
「あ、私も何か――――」
ドリンクバーだけだと凄く駄目らしいというのは知ってるので、
メニューをもう一度見かけ、
ページ?と振り返る。今ページと言ったな、この人。
これ全部?と、恐る恐るその示されたところを見つつ。
「……私は、チーズケーキで」
小声になった。店員さん、忙しいところ、申し訳ない。
いや、これから忙しくなるのだろうけど。
■雪城 氷架 >
「氷架でいいよ。私の家族、他にも学園にいるからややこしい感じになるかもしんないし」
くぴ、とお冷を一口
うん、姉にしか見えない母とかいるし
「此処デザートも美味いんだよ」
ちょっとした先輩風、この店の味知ってんだぜ、的な
相手がそれ以外の部分で恐れを抱いていることなど想像もしてない
恐怖のページ喰い少女
そう、テーブルの上に所せましと並んでいた空き皿やプレートの山はこうして形成されたのだ
店員さん達があくせく、1つずつデザートを運びはじめている
…といおうのはおいといて
なんだか仕草や表情が逐一可愛らしい後輩である
「冰ってさー」
「男子にモテるだろ」
オブラートなし
■皋嶺 冰 > 「家族が学園に?……なんだか楽しそうだ。学校に居ても家族に会えるというのは」
声に出す言葉の割、それを聞いた横顔がちょっと微笑みを薄らせた。
羨ましそうな、淋しそうなような。
それもすぐに切り替わり、デザートのおススメに頷く。
ページで頼むということは、きっと料理も美味しいし、そしてあれだけ食べた後にまた更にページで頼むのだ、絶品に違いない。
「そうなのか……うん、なら、此処にはこれから沢山通い詰めて制覇していかないと。いや、毎日とかではないが……」
そうこうしてる間、テーブルはなんかまた凄い憩いで埋め尽くされていく。デザートで。
これ全部ひとりで食べるんだよね。胃袋。
そちらの腹部を見る、そのままちょっと上、胸。
そこから上、顔まで視線を動かしたところで、やおらに聞かれた。
「あ、あー……んー……それは、どう、なんだろうか。
私自身がそれを判断するのは、些か烏滸がましいことかもしれないが、うん、クラスの男の子たちは、私によく声を掛けてくれるし、手伝いも名乗り出てくれる。けど、それはみんなが心優しい人たちだから、だろうから」
苦笑い、若干の照れ。凄くまじめに答えているようだが、
まぁ取り敢えず大方の予想通り男子からはかなりウケているようだ。
■雪城 氷架 >
「ん、冰は兄弟とかいないのか?」
一人っ子だろうか、と
次々に到着するデザートを自分の前に綺麗に並べ直していく
冰の眺める先、少女のビジュアルは実に 細い の一言
脚、細い、折れそうだ
ふともも、細い
腰、やっぱり細い
お腹も細いし胸も…まぁあんまりない
とにかく細かった
「ははぁ、なるほどね」
モテるだろというストレートにはなるほどといった返し
これはなかなか
なかなかだ
「気をつけろよー、下心って知ってる?」
■皋嶺 冰 > 「うん、兄弟姉妹は居ない。私に居た家族は、御祖父さんと御祖母さんだけだ。
……寮に入ってから、週に二度手紙を書いて送ってるけれど、届いたの、読んでくれてるだろうか」
頬杖をついてそちらを見る。視線は少し上がって、そのまま空想を過らせる。
……また戻ってきた視線が躰付を幾らか認めると、目の細い微笑みを戻す。
「……今の、あんまり声に出して言うことではないのかもしれないな。私よりも綺麗な人は、クラスにも沢山いるし」
沢山いる。たぶん本人の世界では。
「……下心?……ん、ん……それは……なん、だろうか」
……白い肌がちょっと赤くなる。視線が逸れる。
「いや、知っている、知っているが……うん、私に、それを持つような人はいない、居ないだろう、たぶん……うん」
■雪城 氷架 >
聞くに、両親もいないということ
少し複雑な環境ということは、それだけでなんとなく察しがついた
「よく笑うし、愛嬌もあるし」
「距離感も近いし、多分誰とでも話せるだろ」
「勘違いするヤツ、多そうだけどなぁ…」
ある意味、自分とは真逆
気は使わないし、素っ気ないし、ぶっきらぼうな自分とは違う
「まぁ、一応くらいで覚えといたほうがいいよ。
この学園、優しかったり品のいい生徒ばっかりではないからさ」
ふう、とお冷やを一口飲んで、テーブルにコトリと戻す
───この間、言葉の一つ一つの節目毎にデザートの皿が一つずつ空になっている
■皋嶺 冰 > 「……」
挙げられていく自分の特徴ひとつひとつ。数えていくと、自覚がある。
段々顔ごと逸らし、顔を手で擦る。目の前の御冷を口元につけつつ、一応端っこに届いた自分の分のチーズケーキを引き寄せて、
……そこでようやく、顔をもう一度そちらへ向ける。
適度に赤い。恥入っているが、同時に若干不安な顔でもあり。
「……まだ、そういう生徒と話したり、会ったことはないから、よく判らないが。
……でも、うん。先輩がそういうなら、そういう事もあるのかもしれない。気を付ける。
――ただ、私も、反省しないといけないな」
最後に添えたような言葉と同時に、自分の耳を、耳たぶを指で触る。
「……距離感が近かったのは、少し、はしたないだろうから」
■雪城 氷架 >
「や、そのままでいいと思う」
冰の台詞に反するような言葉
そもそも、別にそういったところを窘めていたつもりもなかった
「全然リスク警戒なさそうだったから言ってみただけで、
冰のそういうのが、多分いいんじゃないかと思うけど」
誰からも話しやすい、よい学友たればそれはそれに越したことはない
ただ、当然それを悪用しようってヤツがいないとも限らない──
「きっと優しいとか、買い被ったり無条件に信用すんのは危ないなーってだけ」
そしてパフェが一瞬で消滅する
気づけばテーブルの上に並んだデザートの皿は全てが空だ
「まぁ、距離感近すぎると突然襲ってくる男子なんかもいるかもな」
冗談めかしてそう言っているだけだが、それは余程の危険人物である
■皋嶺 冰 > 「え?」
ちょうどチーズケーキにフォークを縦に入れようとした瞬間の言葉に、そのままべちゅ、と半ばでフォークがチーズケーキのチーズのほうを半ばに抉る。
意外な言葉が出たからか、ちょっと素気味に声を出す。
「……そういうのが良い、うん、良いって、いや、そうなのだろうか?良いなら、そのままで居るつもりだが……ん、む」
――空のお皿多くない?いやそんなことは別に気にしてない……わけではない。
自分の振る舞いはそのままでいい、でも警戒はしておくべきで。
警戒。まぁ、つまり、優しさとかそういうのを一方向から見続けていると危ないということ。
「……確かに、私は結構、人のことをすぐに信じてしまうかもしれない。そもそも、人に良いも悪いもない、という認識が、根の心だ。
誰にしも、優しさもあれば悪意もあるが、優しさと悪意を、切り離して考えてしまって、いる。人から与えられた優しさに、感謝はしたい、が」
「……その見返りが、下心の含まれるものを求められてしまう、と、したら……その……」
じわ、と、一層赤らむ。
「とても、困ってしまう」
■雪城 氷架 >
「良いよ。でなきゃ私初対面でそんなに話さない」
一息ついて、化粧ポーチを取り出す
デザートだけなのでたいして乱れていないし、リップグロスの塗り直しだけ
ながらで話を聞きつつも、その辺りの考え方は変わってるな、と思った
変わり者の自分が言うのもなんだけれど
「誰でも善悪はあるけどさ。それと悪意を隠して騙そうってヤツを信じちゃうのとは別じゃん?
冰なんか特に見た目で悪い虫寄ってきそーだし …いや、困ってしまう、じゃなくってさ」
どういったもんかな、と頬をかく
わかっているのやらいないのやら
「見返りで求められるくらいなら拒否ればいいけど、
本当に悪いやつは自分が悪いやつだとは思わせないようにするんだよ。
もちろんそんなのがたくさんってわけでもないだろうけど、100人中1人でもイヤじゃん、そういうの」
化粧なおしを終えてポーチを仕舞う
うーん、この後輩本当に大丈夫だろうか
まるで都会に出てきた純朴な田舎娘かなにかのように思えてきた
■皋嶺 冰 > 「……」
さらっと言われたけど、割と嬉しかった。頬が緩む。
初対面でそんなに人と話さないタイプの先輩が、自分とこうやって話してくれたことが嬉しい。
だが同時に自分の危うさへの指摘は、今まで自分の認識してなかった数々のことを教えてくれるからこそ、ちょっと難しい。
完全にデザートも喰らい尽くされたのだから、多分先輩はそろそろお暇するのだろう。とは思うが、
「……そ、そうなのか?……うん、そう、か。
私には、たぶん、そういうのを見破る力はあまり、無いのかもしれない。
――ちょっと、怖いな、うん」
ぽつ。
「……あ、ケーキ、美味し」
ぱくりと崩した一口分を口に運び、言葉の最後の淀みは塗り替わる。
「……ん。でも、そうだな。私は、これから学生として沢山の人と関わるのだから、きっとそういう部分に触れてしまったりするのかもしれない。
……そういう時が、来ないでほしいとも思うが、その時は、その」
「すごく、気を付ける」
■雪城 氷架 >
緩んでる緩んでる、なんてわかりやすいんだ
ケーキを口に運びつつも、不安を口にする冰をじーっと見つめる
あんまりこれまで、そういったことを意識してこなかったのだろうことがよくわかる
よっぽど平和な場所にいたのか、あるいは周りが優しい人間ばかりだったのか
少しだけ、それは羨ましい
「──っていうのが」
「一人なら気をつけないといけないことだから」
お会計おねがいー、と店員に挙手
ようやく本当に戦いは終わったのだ、ただいまー、という店員の言葉は開放された嬉しさに満ちていた
「友達ができたら、代わりに気ぃ張ってくれるよ」
さて、と立ち上がってスクールバッグを肩にかけ、おっと忘れるとこだったと懐からスマホを取り出す
「ん」
「連絡先、交換しとこ」
「私が一緒の時は私が気をつけてやるからさ」
そう言ってスマホを差し出す
スマホもってなかったらどうしよう
テーブルのメモ用紙借りて書いて渡すか
■皋嶺 冰 > 「……?」
穢れを知らない、悪意を知らない、たぶん、本当に『染まってない』タイプだろう。
知識はあるかもしれないが、それに付随する人間の側面を見知り触れすらしなかったまま此処まで来てしまった娘。
故に、振り返った冰の眼が少し困惑気味で見上げてきて、一人なら、と添えられた言葉に首を傾げていた。
友達ができたら、と。
「……ぇ、ぁ」
そこからスマホが目の前にあった。暫くぽかんとしたままの氷も、気づいたように目を丸くして。
「……あり、がとう……!!」
――嬉しさ極まって、ちょっと震えた声と、
紅くなりながら本当に嬉しそうに笑う顔と。
そこから自分の鞄から、割とピカピカ新品のスマホを取り出し、
画面を覚束なく操作する。連絡先の交換は問題ない。
使ってるのがお年寄り向けのラクラクとか頭につくタイプのスマホだけど。
■雪城 氷架 >
「よし」
連絡先の交換も終わり、…スマホがそのタイプなのは驚いたけど
ずっと素っ気ない表情に思えた、氷架の口の端にうっすらと笑みが浮かぶ
「じゃー、今度暇な時にでもかけるから」
暇な時…主に寮の部屋で勉強に行き詰まった時などである
じゃーな、と割とあっさり去ってゆく氷架
なかなかとんでもない額の支払いをレジにカード提示で済ませる様はとても学生には見えない
sれからもう一度じゃーなーと手を振って、氷架は店から出ていった
──その晩、早速TELされ、互いに女子寮住みだったことが判明したのだとか、なんとか
■皋嶺 冰 > 「あ、う、うん。電話、暇なときは直ぐに出れるから、待っている!」
表情に微かに笑みが見えて、また、嬉しい。
暇なときでもとはいうが、その時が早く来るといいと、思わずにいられない。
画面に表示された相手の名前と連絡先に、滲む嬉しさが笑顔にまで出た。
「また、会おう!」
手をこちらも振り返して、その背中を見送る。相席していたからこそのテーブルだったが、一人になった途端にドデカくスペースの余る所、チーズケーキをゆっくり食べて、その後少女もお店を後にする。
何故ゆっくりかって、画面に表示される初めての同じ学校の人の情報を、じっくり見てひとりでワクワクしていたからだ。
――平凡なその日、冰という少女の忘れられない一日になった。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から皋嶺 冰さんが去りました。
ご案内:「ファミレス「ニルヤカナヤ」」から雪城 氷架さんが去りました。