2020/06/25 のログ
ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
水無月 斬鬼丸 > ベッドの上。天井を眺めてゴロゴロと。
テスト勉強に励むでもなく、ゲームや漫画といった趣味に興じるでもなく
ただ、なにもしていない。

男子寮内は割と静か。
皆各々、しているのだろうか。テストに向けての努力を。
この島のテストは異能の実技テストなんかもあったりするらしい。
ただでさえ、授業の内容が難しいのにかったるいな。

異能…そう…異能…
自分が異能を使えるようになったのはいつだったか。
結構幼い頃から、この力を使えるようになっていた気がする。

水無月 斬鬼丸 > たしかなんだったか…
家の手伝いだかなんだかで包丁を少し触った時
玉ねぎ、まな板、キッチンもろとも斬ってしまったことがきっかけで
この異能の存在に気づいたっけ。

最初の頃は面白がって、何でもかんでもスパスパやってた。
ちゃんと制御できてたかも怪しい。
親も困ったもんで、せっかくだからと中学に上がるのをきっかけに剣術とかやらせてくれた。
斬るというイメージ、斬らないというイメージ、心構え
なんか色々教わった気がする。
まぁ、まちなかの剣術道場で強くなるためにーってわけでもないからそこまで入れ込んでたわけじゃないけど。
それでも、異能の制御という点ではイロイロとためになっていた。

異能への理解とかコントロールとか…そういうのが深まったある日
素手でもものが斬れるようになった。

水無月 斬鬼丸 > 驚きはしたが、異能に気づいたころとはちがい
無闇矢鱈に異能を振り回すことはしなかった。
だが一般生活でハサミやカッターの代わりに使える異能ということで便利には使っていた。
しばらくは、それでよかった。
なんの不自由もしなかった。
でも…今となっては、自分でもなんであんなことをしたのか…

14だか15だかのある日、漫画を読んでた。
当時大好きだった漫画で、いわゆるバトルもの。
主人公が追い詰められ大ピンチ。そこで主人公が己の限界を突破する。
このときに、鎖を引きちぎるシーンがあってさ
かっこいいなとおもったっけ。

俺もこういうかっこいいなんかがあって
己の鎖を断ち切って最強パワーで悪漢をボッコボッコに…
なんて妄想もしたことはある。
だから、してみたんだ。鎖を断ち切るイメージ。俺は、斬る異能をもってたから。

水無月 斬鬼丸 > そしたら…なんだか、自分の中でなんか斬れた。
よくわからないけど、なんか斬れてしまった。
すっと、背筋が冷えた感触がして…少し怖くなった。
一日横になって次の日…『もしかして』とおもってさ…
少しだけやってみたんだ、魔術の勉強ってやつを。
魔術と言えば難しいイメージ強かったし、学校でもそれに詳しいやつなんてそうはいなかった。
まぁ、ちょっとやってできなかったら才能がなかった、勘違いだったですんでいた。

でも、そうはならなかった。

わずか一週間だった。
俺は魔術のいくつかを習得していた。
足もぐんぐん早くなったし、剣術も上達速度が今までと段違いだった。

正直、俺は怖くなった。

ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
水無月 斬鬼丸 > 剣術の教室をやめて、魔術の勉強もやめて
断ち切った鎖をもとに戻せないか…
泣きそうになりながらいろいろやった。
でも、無理だった。
俺の異能は斬る異能だから。
斬ったものをもとに戻せるような異能じゃないから。

俺は怖かった。
このままなにか続けて
努力して、勉強して…鎖がなくなった俺はどうなってしまうのか。
異能だってそうだ。
このまま…人じゃなくなってしまいそうで

こわかった。

水無月 斬鬼丸 > 怖くて、戻せなくて、どうしようもなくて
高校に上がるとき、この島に来た。
なんとかなるんじゃないかっておもって。

でも、どうにもならなかった。
なら…どうするか。

俺は努力をやめた。
ただの学生で、ただの人間でありたかったから、そうした。
テストの勉強も…異能の訓練もやめた。

この学園には人間の常識を超えてる人たちが多くいる。
そんな人達の中なら多少はいいじゃないか…むしろ、こういう人たちがたくさんいるなら
自分がどうなろうと、大した問題ではないんじゃないか?
そう思う人もいるだろうし、俺もそう考えないでもなかった。

でも、怖い。
俺は、そんなものになりたくはない。
だから結局、そうはしなかった。

水無月 斬鬼丸 > だからこうやってゴロゴロしてる。
テスト期間だと言うのに。
言い訳?
そのとおり。
そもそも真面目に勉強するタイプではないし。
でも、優秀なやつって苦労してたりするやつもいるらしい。
スポーツでも、勉強でも、もちろん、異能でも戦いでも。

俺がずるしてそいつらに食い込んだら
なんだか…卑怯な気がした。
唯一と言ってもいい趣味はゲーセンだが
それも、できるだけ間を開けて別のゲームをやっている。
あまり上達しすぎても、つまらないだけだ…

そう、俺はあの日からずっと、ズルをしてるし
それはもう元には戻れないし
ずっとズルしっぱなしなんだ。
それを咎められるのも怖いし。

水無月 斬鬼丸 > 寝返りを打って買ってきたギターをみた。
アレも、あまり練習しすぎてはいけない。
買ってきたその日、ちょっと興奮して練習してたら
普通にわりとやれるようになってしまっててすぐに自重した。

「ぁー……」

こういう、みんなが努力している時期っていうのは
どうも気分が沈んでしまう。

コンビニにでもいこうかな…

ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」にドローン『No.9』さんが現れました。
ドローン『No.9』 > 悩める少年。
ベットで寝がえりを打って、気晴らしにでも行くかと思ったその時だ。
バタン、部屋の窓が独りでに開いた。
強い風は吹いていない。そもそも、鍵を閉めていれば開くことも無い。
なのに、窓が開いた。
空いた窓から入ってきたのは、浮遊する小さな機械。
所謂『ドローン』と呼ばれる小型マシーンだ。
沈み気味の気分の少年を、まん丸いカメラが見下ろしている。

水無月 斬鬼丸 > 「え」

体を起こそうとしていた。
スマホを掴んでポケットに突っ込んで
サイフサイフと腕を伸ばそうとしていたところだった。

窓が空いて。なんかが入ってきた。

なんだこれ。まるい。
あれか?宇宙人?異世界人?
それともなんかよくわからん…怪異?

「……な、なな…なん……?」

ドローン『No.9』 > ジーッ。カメラのレンズが何度か動く。

『……落ち着けよ、水無月 斬鬼丸。』

ドローンから聞こえてきたのは、合成音だ。
所謂最近流行りの代用読み上げソフトとか、ボーカルソフト。
その類の、無機質な女性の声が聞こえる。

『お前の考えている事を当ててやろうか?妖怪でも宇宙人でも異邦人でもない。此れは「ロボット」だ。』

『ちょっと通りすがる予定だったが、余りにもメソメソした顔をした奴がいたんでね。笑いに来てやったんだよ。』

水無月 斬鬼丸 > 「え、ええ…あ、はい」

落ち着けと言われた上に名指し。
なんで知っているのかはわからないがそれよりも戸惑いが大きい。
なんかどっかの動画サイトでよく聞く感じの声だったし
思う以上に落ち着いてしまった。

「あ、ロボット…あっ、はい……つか、普通に覗いてたんっすね…」

ロボットなのに笑うのかとか考えつつ宙に浮く球体を見上げる。

ドローン『No.9』 > 『そう、ロボット。此のカメラの向こう側に人間がいる。
 生憎お前と顔を合わせる事は無いだろうがね。』

ふわふわと浮いているドローンが、徐々に降下し
相手と同じ目線まで降りてきた。

『私は情報屋をやっている。非合法な手段でね。
 お前も此の島にいるなら、そう言う違反組織がゴマンといるのは知っているはずだ。』

現に、此の島には学園の闇とも言えるスラムがある。
其処に立ち寄る事は無くとも、吹き溜まりのような場所だと教えられているかもしれない。
そう言った犯罪者の集まりの一つだと説いた。
現に、こんなドローンで覗いている以上
プライバシーの侵害以外何者でもない。

『青春真っ盛りにしては、随分と自己表現がヘタクソだなとは思っているよ。』

……とんでもなく口の悪いドローンだ。

『お前が悩んでいたことも当ててやろうか?自らの異能について、そうじゃないか?』

水無月 斬鬼丸 > なるほど。
出歯亀しているだれかがそこらじゅう飛び回っているというわけだ。
もともとプライバシーというものが希薄な気がするこの島だけど
こうも堂々と侵害してくるやつは初めてみた。
しかも情報屋とか。何だ情報屋って。時代劇とか探偵ものとかでしか聞いたことないぞ。
降りてくるドローンに視線を合わせたままに訝しげな表情

「はあ…で、その…情報やさんが俺になんのようで…」

違反組織に関しては…まぁ、風のうわさ程度だ。
やばいところにはできるだけ近寄らないようにしているし。
だが、自称情報屋とかいうドローンが、いきなり部屋に飛び込んできて
自分の名前をしっていて、それでいていい感じに罵倒してくるのだから
あるのだろう、そういうのが。

「暇なんすか…?」

あたってはいる。あたってはいるが、その情報屋のドローンがこんなところにわざわざ。
当然の疑問だった。

ドローン『No.9』 > 『自惚れるな、お前如きに用なんてあるものか。』

自分から侵入しておいて此の言い草である。
とんでもない不法侵入者もいたものだ。
カメラアイの下に、小さなモニターがブゥン、と点灯する。
……多分怒りの顔文字だ。それが浮かび上がる。
制作者の趣味だろうか。言葉の割には女子力が高い顔文字だ。ふわふわしてる。

『暇なものか。四六時中ドローンを飛ばし続けて、いい加減そろそろ脳が出血死しそうだよ。』

なんかカメラの向こうで当人が鼻で笑っている気がする。
態度も悪い!
モニターの顔文字が「?」へと変わった。

『それに、最初に言った通りだ。「君を笑いにきた」、と。』

『毒素と言うのは、溜めれば溜める程体を侵食し、何れ"死"に至るものだ。』

『腹に抱えるのが趣味ならそれでもいいが、どうせ今はお前一人だ。「独り言」位喋っても、誰も文句を言わないだろう。』

……言ってる事はともかく
要するに「愚痴くらいは聞いてやる」と言っているらしい。
非常に態度の悪いドローンだが、暇じゃないと言っときながらとんでもないお節介焼きだ。

水無月 斬鬼丸 > 「ぇぇぇ……」

なんだこれ。顔文字でてるし。
しかもお前ごときときた。むしろ怒っていいのはこっちなのだが
それでも混乱と困惑が勝ってる。

「そっすか…笑ってるうちに死なないように気をつけて…」

こういうもの飛ばす人って頭いいのか悪いのかわからんな。
顔文字ポコポコだしてくるあたり
コミュニケーションツールとしても使っているのだろう。
覗きだけではなく。

「……」

いきなり飛び込んできてなにを言い出すと思えば…なんなのか
独り言というが、今さっきカメラの向こう側に人がいるといったばかりじゃないか。
それに…

「なにをいやいいのかわかんなくて…」

そうだ。愚痴だ何だというものではない。なにを言っていいのかもわからない。
形のない毒…そして、おおきな恐れでしかないのだ。

ドローン『No.9』 > 『…………。』

<ヽ(`Д´)ノ>

モニターの顔文字がぷんぷん怒っている。
怒りを表しているのだろう、相手の煮え切らない返事に。
色々毒があるのかないのかわからないドローンだ。
合成音声が、溜息を吐いた。
どうやら、生の人の声を変換しているようだ。

『……お前の異能は、"モノを斬る"異能……だったか?』

『どれだけの破壊力があるかは知らんし、今生お前にそれを試す度胸はないだろう。……言っておくけど、コイツを斬るのはよしておけ。』

『学生には払えない額を要求する事になる。』

しっかり釘を刺した。
モニターに\チャリーン!/と値段が出る。
大よそ、人が人生に使う一生分の値段だ。

『……まぁ、それは一旦置いておこう。なら、此方から質問をする。』

『お前、学園生活は楽しいか?』

水無月 斬鬼丸 > 合成ため息。
流石に息を吐く機能はないらしい。音だけだ。
あとへんな顔文字。
というか、怒られても…やっぱこの人暇なんじゃないのか?

「そうっすけど…つか、名前もだけど…なんで……」

まぁ、学園から情報引っこ抜けば一発だろう。
セキュリティのガバガバさには呆れてしまうが
だが、学園側にもあまり積極的に開示はしていない自分の異能
ドローンとの『接続』だけを断ち切ったら
モニターのむこうで大激怒するのだろうか?回収しにきたりして。
それはそれで面白そうだが…

むこうから飛んできた質問。
少し、答えづらいものであった。

「え…なんすか…いきなり……
えっと…まぁ……あまり…」

ドローン『No.9』 > 『「火のない所に、煙は立たない」』

『このご時世、<大変容>以前にどれだけの技術が発展していると思っている?』

『その人間が"いた"という情報一つから、何処からでも情報は派生するものだ。』

確かにこの世界は大きく変わり果てた。
魔術、異世界、はたまた異能。
まるで漫画に出てくるようなファンタジー世界だ。
だが、それ以前に人間が発展させ続けた文明がある。
技術、工学。人々の生活基盤を支える情報社会。
その一つを極め、手段を選ばなければ何か一つをきっかけに"知る"というのは、容易い事なのだ。

<( *`ω´) ドヤァ>

……その顔文字は置いておくとして。

『……言っておくが、再接続位は簡単だ。余計な事はしてくれるな、面倒だ。』

<┗┐ヽ(・∀・ )ノ>

顔文字でなんか小突いてきている。
というか足蹴にしてきている。
ドローン君はふよふよ浮いている。
絶妙なちぐはぐ感。

『…………。』

『……そうか。次の質問に移ろう。』

『お前の周りいる人間を、好ましいと思うか、疎いと思うか、どちらだ?』

水無月 斬鬼丸 > 「こわいっすね……」

情報屋なんてものが普通に成り立つわけだ。
隠す方法も増えただろうに
それでも暴く方法が勝ってるというあたり
人間の人間らしさがにじみ出ているようだ。
とはいえ…このいやみったらしいドローンとその飼い主が
どこまで知っているのか不透明。
少なくとも、形ないものも斬れる事は知っているようだ。

しかも律儀に馬鹿にしてくる。
逆に蹴っ飛ばしてやろうか。
その程度で壊れはしないだろう。

凄くいぶかしげかつうざそうな目で見つめつつも問に答えれば
続いての問が飛んでくる。

「そりゃー……いい人もいりゃ苦手なのも…
つか、友達とかあんまいないんで…」

ドローン『No.9』 > 『ネットゲームを知っているかな?純粋なゲームを楽しむ人間の中に、"チーター"と呼ばれる人種がいる。』

『ハッキング行為により、自身の圧倒的強さを誇示する一般的に害悪となるプレイヤーだ。』

『当然、運営側もチーター対策を用意するわけだが、チーターは一向に減らない。』

『いつの世も、犯罪者側の技術が勝ると言う訳だ。警察が後手に回る……とは、少し違うが、そう言うものと思ってくれていい。』

<(∩´﹏`∩)>

相手の考えで間違いではない。
何時の世も、先に仕掛ける犯罪者側の技術が勝っている事が多い。
だから犯罪が無くならない、というのは極論ではあるが
こう言った犯罪商売が成り立つこと。
そして、"需要"があることが、ある意味此の島の
閉鎖されて世界の秩序をありありと表している。

『友好関係は狭い、と。』

滅茶苦茶ハッキリ言うぞ、コイツ。

『では、次の質問移そう。お前の友好的だと思う人物を……まぁ、誰でもいい。好きだと思う人間。』

『親愛でも愛情でも、誰でもいい。頭に浮かべろ。』

『────彼等、もしくは彼等が無残に、理不尽にその場で殺される。お前はどうする?』

水無月 斬鬼丸 > 「あーー……」

チーターの話となると思い当たるフシがいくつもあるのか
不機嫌そうな声を上げる。
だが、理解はバッチリ出来た。
つまるところは、このドローンの主もそっち側。
ちょっとだけ不信感が強まった。
おおよそ話と関係ない部分で。

歯に衣きせない言い方もマイナスポイントだ。

こういう威圧的な人間にいい思い出がある人間なんて
そういるわけがない。
オブラートを求めてももっとひどくしてくるタイプだろう。
なので、文句は飲み込んで質問の方に集中する。

「…………なさけないはなしっすけど…逃げます。
逃げてから、なくし、怒るし…」

友好関係は狭い。特別な感情をもつものもいるわけではない。
ましてや、まだ学生だ。そりゃ憎くも感じるし、怒りもあるだろうし、不甲斐なさだって。
でも、そこでなにか出来るような精神性はもっていない。

ドローン『No.9』 > 『私がどういう人間か、理解出来たようで何よりだ。』

大よそ彼の想像通りの人間で間違いはない。
当人もそう言った自覚があるようで
合成声は肯定気味だ。

『……まぁ、情けなくはある。だが、誰もが立ち向かえる話ではない。
 誰だって、怖いものを見れば怖いと思う、当たり前の反応だ。』

ドローンの向こう側の人物は、ハッキリと物を言うタイプだ。
だからこそ、彼の情けなさを鼻で笑う事は無く、肯定的な言葉を述べた。
少しばかり不服かもしれないが、年相応の反応だ。
異能なんてものを持っていようが、学生身分、思春期の少年。
そんな少年に、仇を討てと言うのがよっぽどだという話だ。

『……では、質問をちょっとだけ変えよう。』

『その原因が……君自身の異能である場合はどうする?意識的は無意識的かは問わない。君自身がやった、という事実だけがそこにある。』

水無月 斬鬼丸 > 明らかに褒められた人物ではないという理解。
間違ってはいないようだ。
そしてこの開き直り気味な態度。
なるほど、犯罪者だ。

「そう…そうだ。
仇とか、殺すとか、そんな……そんなこと言える連中がどうかしてんだ
これ見よがしに武器を持ち歩いたり…悪びれもせず他人に異能使ったり…
そういうことできるやつがおかしいんだろうが…っ」

自己弁護めいた言い訳。
だが、実際そう思う。
そうでなければ、この世はもっと無法地帯で
暴力が支配しているはずだ。
このドローンから飛んでくる質問は…どうもザワつく…

「っ……そんな!!そんな…そんなの!!!どうって………裁きを……」

どうするんだ?裁き?
そういう問題か?自分で死ねるわけがない。そんな覚悟もない。
どうすれば、いいんだ?

ドローン『No.9』 > 機械とは、無機質なものだ。
モニターで顔文字を移したり
"愛嬌"は表現できても
向こう側の人間だ何を考えているか
どんな顔をしているかなんて、わかりはしない。

『魚の子ども、稚魚が無数に放たれた時、彼等は初めから泳ぐ方法を知っている。遺伝子に刻まれた情報だ。』

『"知っている"からこそ、出来る。』

『人間に言い換えれば、異能という武器を初めから持っている。
 するとどうだ?強さとは良くも悪くも自信を持つ。
 初めから強い人間は、勇気も蛮勇、どちらも行えるという事だ。』

自分達なら出来るという絶対的な自信。
その裏付けとなる能力。
だからこそ、悲劇も生まれるし、喜劇も生まれる。

『だが、予めそれが"危険"と思っていない連中が大勢いる。
 気づいた時にはもう遅い。その点、お前は……まぁ、性分かは置いといて
 "恐れ"を持っている。それは、一つの才能だ。』

間違いを犯さない。
それは褒められるべき事なのは間違いではない。
自己弁護だろうと、彼の言う事は間違いではないと肯定する。

『……落ち着け、もしもの話だ。だが、急に物騒な話をしたのは悪かった。』

『だが、事実。お前が抱いている"恐れ"とは、自らの異能を持て余している事に起因する。』

『────異議があるなら、唱えると良い。』

カメラの奥。
向こう側にいる"誰か"が奥底を覗くように、見据えてくる。

水無月 斬鬼丸 > 煽るような言葉から一転
ドローンから放たれるのはまるで
教師が生徒に教え伝えるような言葉。
その言葉は納得もできるし、自分の持つ異能への恐れを肯定もしてくれた。
悪を成すもの、犯罪者であれば人の心に付け入るのも得意なんだろう。
その話術も。

「確かに…そうかも知れないけど……」

気質。
それがなにかおかしい。
誰もが自分の異能で起こるなにか
例えば、死とか破壊とか。
それを危険と思わないどころか…
それがわかってて行う人間の多いこと。
表であれ、裏であれ、この島にはそういう人間は無数にいた。

ドローンの話は続く。
いや、ドローンの向こう側の…何者かの話、だが。

「……それは…、そう、かもだけど…それだけじゃなくて……」

異議はない。ないが…わからない。
持て余している、たしかに。だが、この恐れはおそらくは…理解しているからこそのそれもある。

ドローン『No.9』 > 『……成る程な。』

何かを納得したように独り言ちた。

『見当違いでなければ、君という人間を多少の理解を得たつもりだ。』

合成音声に、ノイズが混じる。

「だから私も、多少の敬意を君に示す。」

それはドローン越しだが、合成音声ではない誰かの声。
女性の声だ。やや低いが、確かに生きている人間の生の声だ。

「そして、君に接触した理由も今のうちに示しておこう。お節介半分、そしてもう一つは……」

「"面倒"を起こす人間を一人でも大人しくしておくことだ。私には、私なりの目的がある。」

「それは何時か、此の島を破壊と混乱へと招くものだろう。」

「大災害とでも、言い換えようか。そんな時、"右も左も分からないようなクソガキがいるのは、見るに堪えない"。」

「……要するに、懐柔しに来たわけだ。裏を返せば、それだけ君の異能は"危険度"が高いという事だ。」

隠すことなくさらりと言ってのけた。
開き直りの様な態度。剰え犯罪者からの懐柔だと。
自分本位な目的だと口に出すのも、彼女なりの敬意とやらなのだろう。

「まぁ、勘違いしてもらっては困るが、此の島にはそんな連中わんさかいる。」

「人間万国ビックリショーどころか、島一つ考えれば国家規模どころか、世界規模の核爆弾。」

「私は、不思議でたまらんよ。コイツ等、なんで『クーデターを起こさないのか』、とね。」

ハッキリ言って此の島は異常だ。
こんな危険な力を一か所に集めようとする意図。
余りにも危険だという事が財閥の連中にはわからないのだろうか。
そこまで間抜けな連中じゃないのはわかっている。
だが、相手にもそういう危険な場所だと、今一度再認識させるべきだと思った。
含み笑いを零す女性は、言葉を続ける。

「話が逸れたな。……では、本題に入ろう。」

「ハッキリ言って、自らの異能に頭を悩ませる人間も星の数ほどいるよ。君と同じように、ね。」

「だからなんだ、という話だが……ある程度の人間は、それなりに向き合って生きている。」

「自らと向き合う方法とは、"見識の広さ"他ならない。」

「少年。」

「私と一つ、デートしてみないかな?君の悩みをどこまで解決できるかはわからないが……現状の鬱屈を多少なりとも改善出来ると思えば、安いものだろう?」

水無月 斬鬼丸 > 今の煮え切らない返事で一体何を理解したのか
自分にはよくわからなかった。
もちろん曖昧に濁したとかそういうつもりはないのだが…
それでもはっきりと
人間性が理解できるにたる答えだとは思わなかった。

「っ…え…あ?女の…ひと?」

ドローンの声に変化があった。
人の声。女性の声。
合成音声が女性らしいものであったためか
違和感はあまりなかったが…それでも驚いた。
こちらがおろどいている間に話は続く。

「えと、つまり……
俺の異能がやばいから、今のうちに何とかする…的な?」

買いかぶりでは?
何でも切れる。たしかにそうだ。
だが、それだけ。
触れなければ斬れないし、たまに変なものが斬れたりはするが
それはあくまで自分だけに影響が及ぶ範囲でしかない。そう危険なようには思えないのだが…
しかし…潜在的な恐れが、その言葉にうなずいてるみたいだった。

この人がやばいことを言っているのはよく分かる。
だが…だけど……見識の広さ。それをもてば…変わるのか?

「は???で…デート…!?」

だが、そこででてきたのは浮ついた言葉だ。思わず声が裏返る。

ドローン『No.9』 > 「代理人『Nullsector(ヌルセクター)』」

「私は誰でもない。私はそこにいない。」

「顔の無い代理人。情報屋だ。以後、お見知りおきを。」

"Nullsector"。
コンピュータにおいて文字通り、何もない記憶領域。
参照すればバグが起きるだけで、本当にそこには何もない。何処にもいない。
ある種、犯罪者らしい気取った通称だろう。

「まぁ、端的に言えばそうだな。自らの異能を、何処まで把握しているか分からない。」

「私の『No.9』……此のドローンとの"接続切断"を可能。物理的なもの以外も斬れる。」

「拡大解釈すれば、きっと君はその内何物にも触れず、"そこ"にあるだけのものを切断できる。」

「……飽く迄"可能性"の話だ。だが、意図せずしても、大いなる力には大きなる責任が伴う。」

「君はそれを持ってしまった、図らずともね。」

「因果な話だが、その時がきた時、今のままで制御できる自信があるかな?」

「まぁ、勿論買いかぶりであればそれでいい。私はね、自分の計画に支障をきたすのが嫌なだけだ。」

「今の君なら、障害にすらなり得ないだけさ。」

人が成長するように、異能もまた成長する。
成長方法は多岐にわたるが、勝手に肥大化し、制御できずに自滅する人間を多く見てきた。
行き過ぎた力は身を亡ぼす。
彼が何処まで己の異能を把握しているかは知らないが
"危険性"の話をすれば、それこそ遠い未来の話ではない事は、憶測ではあるが女性は理解しているような物言いだった。
ある種、忠告じみてると言ってもいい。

「……ハッ。」

鼻で笑い飛ばした。

「男女が共に遊ぶことをそう形容するのが近いからいっただけだ。残念だが、私は安い女じゃないぞ?童貞坊や。」

「それに、私のデートは同級生の10倍はスリリングだ。」

「────舞台は落第街、スラム。お前が知ろうとしなかった者達のいる世界だ。」

「だが同時に、お前以上に苦しむ人間が多くいるだろう。」

「比較するつもりは毛頭ない。しかし、だ。」

「"己がどのような島にいるのか。如何なる立場なのか。"」

「それだけは、知っておくべきじゃないかな?」

「水無月 斬鬼丸。」

「勿論、今のままの平穏を乱すのを嫌うなら、この話は忘れるといい。」

「……少し私見を交えて話すなら、平穏を望む君の様な人間には、似合わない空気だからね。」

「どうする?」

水無月 斬鬼丸 > 「代理人…?」

ぬる…少し呼びづらい。名前としては。
なんと言えばいいのか。
やはり、通り名…のようなものなのだろうか。
ならば代理人さんとでも呼ぶべきか。

いや、今重要なのはそんなことじゃない。

「成長…ってのは……なんとなく、でもだったら使わなきゃいいだけで…
鍛えなきゃそれで…」

彼女の言っていることのほうがより現実的なのだろう。
それはわかる。
制御できる自信だってない。
だが、もっている力を使わない。
その選択もあるはずだ。
だけど…だとしても…みなければなるまい。聞かなければなるまい、きっと。

「っ…!!わっ、わかってる!!冗談だってくらい!!
えと…その………いつ、だよ…
いっておいたほうがその…波風は立たないだろ…」

ドローン『No.9』 > 「代理人。」

「世の中、野次馬が多くてね。自分から直接聞きだせないような連中の代わりに私が動いてやっているのさ。」

「だから、代理人。呼び方は好きにするといい。」

何処となく小馬鹿にした物言いだ。
事実、そう言った連中を見下しているのがありありと透けて見える。

「────成る程。男に二言は無い事を願うよ。」

カメラの奥。
少年の見えない向こう側で、女は口角を吊り上げた。
その一歩、踏み出すには勇気がいるだろう。
その勇気に、賛辞を贈ろう。

「ありがとう、少年。……おや、期待していたかな?冗談だ。」

「まぁ、君がもっといい男なら、抱かせてやっても構わないがね。」

「時期はいずれ、此方から伝えよう。それまでに、此の島を己の目で見るのも、誰かと行くのも良いだろう。」

「その時は、是非とも感想を聞かせて頂こう。」

「さて、少しは鬱憤は晴れたかな?私はそろそろ、お暇しよう。この光景を誰かに見られても、困るのは君自身だからね。」

「それでは、また……。」

ドローンがふわりと浮いた。
相手の方にカメラを向けたまま、開けっ放しの窓からそのまま去っていくだろう……。

ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」からドローン『No.9』さんが去りました。
ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」から水無月 斬鬼丸さんが去りました。