2020/09/06 のログ
妃淵 >  
痕がほしい──
そんなことを言う斬鬼丸に、思わず笑ってしまう
…まぁでも、自分のモノだっていう証は必要だろう
なにせ、この少年の周りには妙に人が多いようだった

もう一度、抱きしめられたまま背伸びをして…
柔らかな唇が、首元を這い、鎖骨のあたりへと──吸い付く

程なくして、立派なキスマークがつけられる

「これでヨシ、と」

それだけ言うと、するりとまるで野良猫のように抱きしめられた腕の隙間から抜け出して

「絶対すぐに見つけろヨ。部屋。
 ゼータク言わねーけど、エアコンはやっぱあったほうがイイな」

バッグを担ぎ直し、部屋の入口へ
ブーツへと素足を突っ込みながら、振り返って

「…じゃ、マタな。斬」

帰り際に見せた顔は、どこか名残惜しそうにも見えた
帰りたくない、というさっきの言葉が本心だったのを語るように
ドアが閉まり、少女が去った後は…やや寂しさが余韻として残るような
夏が終わるもの寂しさにも似た、そんな空気を湛えていた

水無月 斬鬼丸 > 「……また、ね…フェイ」

ようやく声が出たのは、彼女がドアを閉じてからだった。
体に残った少女の温もりが
エアコンで冷やされた部屋の空気に溶けていく。

それがやけに物悲しくて
ベッドに腰を落としてうつむいた。

彼女が残したキスマーク。
ここだけ、これだけが、妙に熱く感じる。
最後に残ったフェイの温もり。

少しだけ、目を閉じる。

「よし」

目を開けば、深く頷いた。
PCの前に座れば、すぐに検索『常世島 学生用物件 ルームシェア エアコン』
すぐに、またこの腕に少女のぬくもりが欲しいから。
少年は走る。まだ、立ち止まれはしない。

ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」から妃淵さんが去りました。
ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」から水無月 斬鬼丸さんが去りました。