2020/12/06 のログ
ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」にジェレミア・メアリーさんが現れました。
ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」に修世 光奈さんが現れました。
ジェレミア・メアリー >  
吐き出した煙が、換気扇に吸い込まれて消えていく。
電気もつけずに、薄暗い部屋で一人吸う煙草。
外もすっかり寒くなってきた。この時期は、"両親の事"を思い出す。

「…………」

換気扇と暖房の音だけが、静かに聞こえていた。
煙草の火が、やけに明るく感じれる。
黙ってただ、味のしない煙草を吸い上げる。
そう言えば買い物帰りだった。机の上に色々置きっぱなしだ。
玄関の鍵も、かけ忘れてた気がする。
……後でいいか。今は少し、気分じゃない。
日も落ちた暗がりで、静かにしていたい気分だった。

修世 光奈 > 「ジェーくーん。来たよー?、あれ、開いてる?」

そんな静かな部屋に、響く光奈の声。
すっかりここに来るのも日課に近くなっている。
料理をしたり、何でもないことを話し合ったり。
光奈にとっては既に日常の一端になっている。

しかし、鍵をかけていないのは不思議に思えた。
ただ、開いているなら、そのままお邪魔しよう。

「ええと…、ジェーくーん?」

入ってみれば…散らかっている気がする。
いつもはしっかりと片付いている部屋がどこか乱雑な雰囲気だ。
少し不安になりながらも声をかけつつ、部屋の中に進んでいこう。

ジェレミア・メアリー >  
「……、……光奈?」

玄関が開く音と一緒に、彼女の声が聞こえた。
そう言えばもうそんな時間だった。
日常的に、一緒に過ごす時間。
互いに将来を誓い合った仲だ。これ位は、何も思わない位にはなっている。

「光奈、こっち。」

部屋に入れば、薄暗い室内ではタバコの火は目立つだろう。
声で此方の事を示した。落ち込み気味の、抑揚のない声音。
リビングの机には、買い出しにいった食材が冷蔵庫にしまわれる事無く置かれており
当のジェレミア本人は窓際で煙草を吸っていた。
その傍らには何か、置いてあるようだ。

修世 光奈 > 「あ、よかった…泥棒とかかと思ったよ」

彼の声が聞こえれば、ほ、と安心。
声音は明るくないものの…確実に彼の声だ。
もしかすると、泥棒などが入っている可能性があったのだけれど、それはなかったようだ。

こっち、と言われれば、適当な場所にお泊りセットを置いて。
窓際の彼に寄っていこう。

「どうしたの、こんなに暗くしてさ」

彼が電気を点けないのは何か理由があるのかと、一応部屋の明かりは点けずに。
コートを脱いで、セーターとロングパンツ姿になれば。
首を傾げつつ、こんな部屋にしている理由を聞いてみよう。

ジェレミア・メアリー >  
「まさか。学生寮の、それも風紀委員の部屋を漁る泥棒はいないよ。」

学生街の治安の良さは他の比ではない。
勿論、軽犯罪を行うような連中も多いが、歓楽街や渋谷に比べれば
その治安の良さと警備の高さはばっちりだ。
特に、この寮にケチな泥棒を働く様な連中はいないだろう。
ふふ、と少しだけはにかみ笑い。
彼女が来てくれたから、元気が出てきた。
我ながら、少し現金だと思う。
傍に置いてあった灰皿に、トントンと灰を落とす。

「理由は特にない、かな。ちょっと物思いに更けてたら、ね。」

気づいたら日も落ちてた、ということだ。
彼女が思う程に深刻な事は無い。
"ジェレミア"は煙草を手放す事無く、再び口に咥えて吸い上げる。

「いいよ、電気位は付けても。……両親の事について、考えてただけだからさ。」

修世 光奈 > 「いやー、わからないよ?怪盗とか居るかもしれないし」

彼が暗い声音であることはわかるから。
努めて少し明るい声で。
ただ…笑いの気配が聞こえて来れば安心しつつ、電気を点けよう。
見えないことは無いが、どことなく暗い気分になるから。

「両親……。…その、両親としては、良い人…だったんだよね」

悪い事をしていて、それを息子に教えようとしていたとしても。
良い家庭を作っていたことは聞いた覚えがある。
電気を点けた後は、彼の近くに座り込もう。

「何を考えてたのか、聞かせてくれる?」

いくら恋人から…将来的には家族になることを約束していたとしても。
聞かれたくないこともあるかもしれない、と少し遠慮がちに彼を見上げよう。

ジェレミア・メアリー >  
部屋が明るくなると、少しだけ帽子を目深に被った。
ジェレミアの隣には灰皿と、花が添えられている。
青紫の花が房のように縦長に連なり咲き誇る花だ。
彼女が傍に来れば、碧眼が横目で見やり、何処となく安心した様子が見れる。

「ドラマの見過ぎだよ。いるわけないでしょ。」

ちょっと噴き出すように首を振った。
こんなご時世に怪盗なんているはずもない。
……いるはずもないよな。なんだかちょっと不安になってきた。
今のご時世、そう言う事するような生徒は案外いるのかもしれない。
傍に来た彼女に、おいで、と寄り添うように声も添えておく。

「そうだね、両親としては、かな。それでも、悪人は悪人。それは変わらない。」

誰かの血の上で成り立つ職業。
それがマフィアだ。両親はその頭。
それでも、唯一の両親に、思わないことが無い訳じゃない。

「何、って程でも無いんだ。ちょっとした思い出を、思い出してだけ。
 ……ほら、もうすぐクリスマスだからさ。楽しかったんだ、両親と過ごすクリスマス。」

だからこうやって、この時期はつい思ってしまう。
あの思い出に浸ってしまう。
困ったようなはにかみ笑顔で、タバコを灰皿へと押しつぶした。

修世 光奈 > いつも通り、帽子を被る彼を見上げる。
そのしぐさをするのは…照れている時か、何か言いにくい事がある時…だ。

「…うん。」

怪盗の話は置いておいて。
短く頷いて…彼の近くに寄っていき、その肩に頭を預けてみよう。
事情…というか家庭については以前にも聞いていたから、そこについては掘り返さないが。

「…あはは。考えてたんじゃない。
クリスマス、かあ……。どんなことしてたの?」

くすくすと笑ってから…ステーキが好きだと言っていたから、やっぱりお肉がでん、と並んでいたりしたのだろうか。
そんなことを思いながら、聞いてみる。
ここでただのんびりと身体を預けることもできたけれど…聞いてみたくて。
いつも通り、彼が煙草を消してくれれば、嬉しそうに身体を摺り寄せて。
猫の様に頬を肩に押し付けよう。

ジェレミア・メアリー >  
肩に寄り添う、彼女の体温。
嗚呼、とても安心できる。
自然と腕を肩に回して、その体を抱き寄せよう。

「そこまで大したことじゃないよ。本当に、何処の家庭でもあるようなことだよ。
 シャンパンとかを揃えてさ。その日ばかりは夕食を豪勢にして、家族と皆で笑い合う。…うん、それだけ。」

本当に何処にでもよくあるような、他愛ない思い出だ。
貧富の差はあれど、家庭の中では本当に普通だ。
何がどうとか、そんな大層な話じゃない。
だからこそ、大切な思い出なんだ。
二度ともう、あの時間には戻れない。
他ならぬそれを壊したのは、自分なのだから。

「……思い出したから、弔いって訳じゃないけどさ。花を買ったんだ。何の花かわかる?」

傍らに置いたそれを横目で見やり、何気なくその頭を撫でた。

修世 光奈 > ん、と声を上げて…彼に任せるまま抱き寄せられる。
彼の体温は…単純に暖かいというだけでなく、体の芯からぽかぽかと温まるような、そんな心地だ。
満足そうにふふ、と笑って。

「そっか。…普通でも…なんていうか、ジェー君にとっては特別な日だったんだろーなー……」

行っていることは確かに…普通の家庭ならあり得ることだ。
家族を大事にしている家庭ならば、どこでも行われていそうな、お祝い事。
けれど、その当人たちにとっては…大切で特別な思い出であることはわかる。
…そして、それを壊した彼の苦悩も。実感としてはわからないけれど…考えるだけでお腹がキリキリと痛むようだった。

「ん。……ん、これ?…えっとー…藤の花だっけ?」

知識が深いわけではないけれど…房のようになった花、というとそれくらいしか思い当たらず。
撫でられて気持ちよさそうにしながらその花に視線を向け、答えてみる

ジェレミア・メアリー >  
「僕だけじゃないよ。多分、皆にとっての大事なものだよ。」

年に一度、大切な人と一緒に過ごす日。
きっと、どんな人にも思い出成りえるものだ。
自分だけじゃない。そう、本当に聞けば他愛もないけど
本人とッてはそうじゃない。そんなものだ。

「父さんの酒癖が悪くてね。クリスマス位はいっぱい飲める!って、はしゃぐんだけど
 母さんにさ、窘められて結局ノンアルコールになるとか、よく見たやり取りだったよ。」

それこそ今でも昨日のことのように思い出せる。
いや、思い出せてしまう。
同時に重なる、"赤い記憶"が自らの記憶を苛めてくる。
自業自得の咎だ。寄せた手は、僅かに震えていた。
そんな幻影を振り払うように少し首を振った。

「ハズレ。ブルーサルビア……だったかな。ごめん。
 僕の家系……ああ、うん。マフィア的な方は、この花が組織の象徴だったんだ。」

余り馴染みのない花なのは間違いない。
自分だって詳しい訳じゃない。
聞く前に、殺してしまった。ある意味、忌々しいはずなのに。

「……一応、弔いかな。」

そう言えるくらいには、彼女がいればマシになった。

修世 光奈 > どこにでもある、けれど特別な光景だから。
なんでもない一日だったとしても…彼がずっと考え込むほどしっかりと根付いているのだろう。

「あはは。…結構お母さんが強かったんだ。でも、いいなあ、そういうの」

会った事はもちろんない。
けれど…家族だからこそ遠慮なく…遠慮なく窘めたりできる。
そんな団欒が想像できる。

「ブルーサルビア……。この花が…」

考えてみれば、藤の花というのはおかしかったかな、と少し恥ずかしくなりつつ。
かつて彼の家を象っていたその花を優しく撫でよう。

「……弔いってことは…ちょっとは、さ。前を向いてくれたのかな、なんて思ってもいい?」

弔う、というのは。
死に向き合うことなのだろう。
だから…自惚れてもいいのだろうか、なんて。
少しは彼が前を向く…日常を与えられたのか、と。

ジェレミア・メアリー >  
「んー……怒った時は特に?部屋の温度、下がってたかもしれない。
 けど、うん。しっかり者で、優しい母さんだったよ。父さんはがさつだけど、全ての意味で大きい人だった。」

氷の女王と言うべきなのか。
とても冷静で静かな人だけど、確かな母性を受けて育った。
一方で父親は結構がさつではあったが、その器の大きさ、器量。
まさに"上に立つ者の"カリスマがそこにはあった。"ゴッドファーザー"。
偉大な両親なのは間違いなかった。そう、そう言える。
それほどまでに、尊敬していたのは間違いないんだ。
とても嬉しそうに語る一方で、ジェレミアが目を伏せているのは、それだけ後悔も大きいからだ。

「……"ミア"ってさ、家族は皆そう呼んでくれたんだ。」

本当に親しい、家族だけが呼んでくれた。
もう、そう呼ぶ人は誰もいない。
彼女の言葉には、静かに首を振った。

「わからない。けど、光奈と一緒だと、大丈夫だから。
 二人なら前を向ける……って言うの、少し頼りすぎかな?」

彼女と一緒だから、今こうして家族の話が出来ている。
煙草を咥えていては、こんな話さえ出来なかった。
風が吹いていない、閉じ切った部屋の中で、何故か不思議に揺れるブルーサルビア。
揺れ動く、ジェレミア自身の心を表しているようにも見えた。

「ごめんね、光奈が来てくれたのに暗い話して。
 話、変えようか。クリスマスはもちろん、予定空けてくれるよね?」

修世 光奈 > 「………ん。」

言葉の端々から伝わる、両親への想い。
しっかり者で優しい母親と…がさつだが、器の大きい父親。
尊敬と、愛情と。
そんな思いと…だからこその大きな後悔が見えている。
だから、細かくは言わずに…ただ、頷いて。
過去を変えるなんてできない。だから…ただ、彼の体温と自分の体温を合わせていく。

「そっか。…頼りすぎ、なんてことないよ。
むしろさ、私で出来ることなら…色々やりたいって、そう思ってるからさ」

まだまだ足りないくらいだ、と光奈は思う。
彼にはもっと楽しい事を知ってもらいたいし、笑って欲しいとも思う。
だから…小さくても弔いができるというのは…嬉しい事だった。

「ばーか。今更そんなこと気にしないで。
プロポーズまでしておいてさー。…これかれも、話したいことは話してよ。
もっちろん、クリスマスは空けて置くし、文化祭だって回りたいし…やりたいこといっぱいあるんだからね。
えーと、そのー…ミア?」

花を撫でていた手でぺし、と彼の胸辺りを叩き。
恥ずかしがりながらも、呟く。
これから、家族になっていくのだと…決意を示すように。

ジェレミア・メアリー >  
本当に彼女の言葉は暖かくて、自分には勿体ないと思う位だ。
これから先が、どうなっているのかは分からない。
もし、何十年たっても同じことを言ってくれるなら、と思うと、それほど嬉しい事は無い。

「ありがとう、光奈。」

口に出すだけでは足りない位、感謝の念はいっぱいだ。
胸の奥が、彼女のおかげでとても暖かい。
そう、"救われている"。救われるべき人間ではないのかもしれない。
なら、自分のやれることをやるしかないのだから。
彼女だけは……──────。

「……改めてそう言われると恥ずかしいな。
 ……ハハ、うん。大丈夫、文化祭は僕も時間をとって……えっ。」

久しぶりに名前を呼ばれた気がした。
そう、家族以外誰にも口にしてくれなかった、呼び方。
驚きに目を丸くするも、すぐに噴き出すようにはにかんだ。

「光奈が言うと、似合わないや。」

からかうように、言ってのけた。
彼女がいるから、そう言える。
家族だから言える、軽口だ。

「光奈がいると、元気になるなぁ。疲れがとんだかも。なんてね……。」

修世 光奈 > 「お礼言われるのは…私もなんだか照れ臭いけど…、うん。どういたしまして。
…でも、まだまだだからね」

これで終わりではない。
光奈の目標は達成されていないからだ。
まだまだ…彼と家族になりたい、と。そう思っている

「えー、似合わないって何さー。」

からかわれていることはわかる。
だから本気では怒らない。
わざとらしく頬を膨らませてぽかぽか、と彼に打擲を加える。
けれど、膨らませた頬から笑いが漏れてしまって。

「…でも、良かった。ちょっとは元気になったみたいでさ
なんたって私は元気の塊だからねー!いくらでも分けてあげちゃうよ」

ふふん、と自慢げにして笑い…ぎゅ、と彼の腕を抱く。
ほんの少し長くなった髪を彼に押し当ててから

「さって。元気になったなら、おなかすいてない?
せっかくだし何か作るよ。…ミアも、そのつもりだったんでしょ?」

冷蔵庫にも入ってない食材をちらりと見て。
光奈からも…今度は軽く、その名前を呼ぶ。
二人きりならその名前を呼んでみようかな、なんて思いつつ立ち上がり。
荷物の中からエプロンを取り出し、装着。すっかり通い妻だ。

ジェレミア・メアリー >  
「そうだね。……長い時間だけど、宜しくね?」

人生と言う長い旅路を、これから二人で二人三脚。
きっと大丈夫。彼女と一緒なら、きっと。

「なんかちょっと大人っぽい感じがするから。」

こういう他愛ない事が、かけがえのない事が出来るのだから。
とても楽しそうに笑いながら、甘んじてぽかぽか叩かれつつ
どうどう、と彼女を鎮める事にした。勿論、頭を撫でる猫かわいがり。

「うん、光奈のおかげ。何時も光奈が元気なのがチャーミングだからさ。
 光奈の事を見てると、僕も元気になってくるよ。これからも、いっぱい分けてね?」

本当に、本当にもったいない位だ。
そんな彼女だからこそ、いい。
元気いっぱいの光が、自分を救って、導いてくれるから。
ほんのりと鼻先を掠める彼女の髪の毛。
腕に抱き着く彼女の暖かさと、いい匂いが安らぐし少し気恥ずかしい。

「髪、伸びた?伸ばしてたりするのかな。……ん。
 そうだね。自炊用とかだけど、せっかくだし光奈に作ってもらおうかな。」

とはいえ、これはタイミングもいい。
一緒に立ち上がるついでに、灰皿は片付けておこう。
窓際においてあるサルビアを一瞥して、光奈のエプロン姿をご拝見。
見慣れた姿だが、なんだか随分と"様"になってきた気もする。
へぇ、と声を上げて笑みを浮かべたまま顎に指を添えた。

「似合ってるよ、奥さん。なんてね。」

修世 光奈 > 猫かわいがりされるのも段々と慣れてきた。
とはいっても飽きるのではなく…素直に受け入れられるというものだが。
彼に可愛がられるのは、とても安心するから。

「大人っぽい…そうかな?、あーでも…トクベツな感じはする…かな
私の元気は1日で無限に回復するからねー。いつでも貰っていっていーよ」

あだ名も特別感はあるけれど。
彼にとって特別な名前なら…その名前を呼ぶことを許してくれるのは嬉しい。
今更少し照れつつ、立ち上がろう。

「ん?うん。髪はー…ミアが長い方が好きって言ってたから伸ばしてみてるんだー。
何か、早く髪を伸ばせる育毛剤みたいなのがあるのをしいちゃんから教えてもらったから、もしかすると結構早く伸びるかも?
はいはい、大人しく待っててね、旦那さん?」

前に彼がそう言ってくれたから…頑張って伸ばしているのだ。
同時に、ヘアケアも忘れていない。
伸びたとしても枝毛などが目立っては沽券にかかわるから。
奥さん、という呼び方に背中にむず痒い刺激が走るけれど…それもまた嬉しい。
少し照れながら、反撃をしつつ。

「あ、あー…そういえば、しいちゃんで思い出したんだけど…。
えーっと、えっと…ミア的には、さ。私とー、そのー、そういうことするとき、どう?やりにくかったり、する?」

食材を広げつつ、何とか作れる範囲でメニューを選び、食材をゆっくりと切り始める
食事準備中にする話でもなさそうだが…聞いてみたかった。
もしかしたら彼にも負担があるのかな、とか気になった様子で。

ジェレミア・メアリー >  
「ちょっと母さんっぽかったからね。特別なのは、間違いないよ。
 もうそう呼んでくれるのは、光奈しかいないわけだし、ね?」

もしかしたら、これから増えるのかもしれない。
でも、この"特別感"だけはきっと、彼女だけだ。
事実、きっとジェレミアは意識していないだろう。
意識してはいないけど、"ミア"と光奈に呼ばれるだけで、とても嬉しそうだ。

「そっか、僕の為に、か。……ああ、うん。楽しみにしてる。
 けど、待ってるだけっていうのは申し訳ないし、手伝うよ。何作るの?」

そう言われるとちょっと気恥ずかしい。
自分の好みに合わせて努力してくれる彼女がとても、愛おしい。
実際、長髪の女性は好みだ。元気な彼女の動きに揺れる髪。
想像してみるだけで、きっと似合う。
さて、それはそれとして幾ら旦那でも待っているだけは忍びない。
一緒に並び立ち、彼女と一緒に食材を選ぶことにしたが……。

「ん。……ん、え、あ、あー……ああ、そ、そう言う?」

一瞬、質問の意図が理解できなかった。
不思議そうに光奈を見たが、意図を察すれば驚いて目を丸くしてしまった。
気恥ずかしさに、ちょっと頬が熱い。赤くなっている。
まさか、彼女の方から振ってくるとは思わなかった。
こういう話題は、してくるとは思わなかったから。
気を取り直して、咳払い。

「ま、まぁ、そう言う事って、そう言う事、だね……?
 そう感じた事は無いけど、どうして?」

なんともまぁ、藪から棒に、だ。
思わず訪ね返してしまった。

修世 光奈 > 「大人っぽい、って受け取っておくよー。
間違えて母さん、なんて呼ばないでよー?」

小さいころにありがちな間違いを例に出しつつ。

「メニューはー…お肉たっぷりな野菜炒めとー、炊飯器置いてもらってるからせっかくだしご飯も早炊きで炊いちゃおうー
あ、色んな髪型しよーと思ってるから楽しみにしててねー」

光奈が来た時は和風に寄ることが多い。
炊飯器も置いてもらってるから、それを使いつつ。
彼には切った野菜を洗ってもらおう。
髪が伸びれば色々とアレンジできる。ポニーテールにしたり括ったり。そんな楽し気な未来が待っている。

彼との距離感が近いのもあり…つい話題を振ってしまったが。
流石に男の子にする質問でもなかったと慌てる。

「あ、あ、えと。うん。そーいう感じの話。
そっかあ………となるとやっぱり、受け入れる側の問題かー……」

ぶつぶつ。
顔を赤くしながら呟いてから

「いやー…、しいちゃんから相談されてて…。その参考に。ほら、結構私とミアも背とか違うじゃない?
男の人も何か辛かったりするのかなーって。そう思っただけ!」

誤魔化すようにそう言ってから…
換気扇を回してフライパンを温め、油を引き。
しっかり温まってから野菜を投入。
じゅー、という食材が焼ける音が聞こえ始める。

ジェレミア・メアリー >  
「ハハ、結婚したら考えるかな。」

子どもたちにとっての"お母さん"。
いつか、自分の子どもと彼女に囲まれる日は夢見ている。

「ん、美味しそうだね。野菜は……コレ?」

自炊、とは言っても男の料理かつアメリカンな感じのおおざっぱ料理が多い。
大体肉だけ焼いてパンと一緒に食べたりとか、それ位だ。
恐らく、光奈が手を掛けない限りおおよそ肉ばかり食べている気もする。
食べたとしても大体肉の添え物だ。
彼女に言われるままに野菜を洗った後に、まな板に並べて包丁を立てる。
流石に、これ位は手慣れている。サクサクと切りながら、長髪の光奈が脳裏を過る。

「…………」

確かにそれは、楽しみだ。
もし伸び切ったら顔をうずめても許されるかな。
埋めたくなる。人間、性癖の事考えるときは自分が変態だとは思ってない。

「あ、あー、うん。そう、そうだね。……ん……?」

相談を受けた相手が例の彼女と来た。
確か彼女、見た目だけなら……。
犯罪の匂いがする気もする。野菜を切る手が止まった。
いや、まて。これは個人的な問題だ。
そう、合意の上なら問題ない。そうじゃなければ、そんな話題振らない。

「……そ、そっか……。」

いや、それにしてもよりにもよって向こうから振ってくるのか。
一体何をしたんだ……そもそも、出来るのか……?
何とも言えない表情のまま、野菜を切るのを再開。
均等にトントン、と包丁を動かしていく。
終わったので、後は彼女に任せて一度キッチンを出よう。
今のうちに、皿の準備やテーブルの準備をしておくのだ。

「それはぁー、そうだけど。むしろ、何時も付き合ってくれる光奈が大丈夫かな、って思う位だよ。」

体格差もそうだし、複数回行為に至る。
此方は遠慮なくしている…と、思うので、体格差で言えば彼女の方が心配だった。
しかし、しかし、だ。恥ずかしい。なんで、彼女とそんな話しなきゃならないんだ。
おのれ……。

修世 光奈 > 「ばーか…。そうなっても、しばらくは名前で呼んでほしーなー」

照れて、ぶつぶつと言って。
野菜については…そうそうそれそれ、とか言いつつ。
添え物になる予定の野菜をしっかりとメインに入れていく。
覚えのいい彼だから、軽く言うだけで意図を察してくれるのはとてもやりやすい。

二人でお店屋さんなんてやれば案外上手くいくのではないか…なんて思ったりもするが。

「……今、変な事考えてたでしょ、ミア。ま、別にミアになら何されてもいーけどねー」

急に黙った彼にじと、とした目を向けつつ、楽しそうに料理をしていく。
自分もあまり伸ばしたことは無いから、楽しみではあるのだ。

彼がお皿を用意してくれるなら…簡単なメニューではあるから、それほど時間はかからない。
胡椒などで少し濃いめに味付けをしていけば完成間近。
早炊きにしてしまえば最近の高性能な釜も…すぐに光奈好みのお米を炊いてくれる。

「そっかそっかー……。…今更だけど、何かズルく思えてきた…。いやまあ最近は慣れてきたけどさー…
ミアは、罰として…ご飯をテーブルに綺麗に並べる刑ね」

むぐぐ、と微妙に納得いかない表情をしつつ。
彼にはこちらを心配する余裕があるということだ。
つまり、それだけ負担は少ない。性差と言えばそれまでだが、理不尽を感じる。

軽く言いつつ、器に盛りつけて…彼に食事を並べてもらおう。
和食に近いものの、肉の比率多めの彼の好みに寄せたメニューだ。

「…こう、私ってそういう経験、ミアとしかないからさ。アドバイスするにしても…その、オトコノコのことも聞いておいた方がいいかなって
…はい!この話終わり!あ、熱くなってきた…。ほら、食べよ食べよ」

いくら情報収集とはいえ、食事時にまで持ち込むのはまずい。
強引に話を打ち切りつつ…少しスパイシーに仕上げた野菜炒めで夕食としよう。

ジェレミア・メアリー >  
「ふふ、わかってるよ。光奈。」

照れる彼女の姿が、とても可愛らしい。
大丈夫だとも。それでも、ちょっと男の夢っぽいのかな。
好きな女性を、奥さんだのなんだの、と呼ぶの。
前の自分からは考えられない幸せさだ。
家庭を持つことなんて、考えないやさぐれた少年。
今もそれを捨てたわけじゃない。だけど、そう。
何時か将来、"彼"もわかって何処かへ行ってしまうのかもしれない。
それこそ、オリジナルの末路とは違って、何処か遠くへ。

「え、あ、ああ、うん……それ、ちょっと理不尽な罰な気も……。」

思わずぎょっとした。
そう、光奈は勘がいい。
まさか、変な事考えてるなんてバレてないだろうな。
きっと大丈夫だ。とりあえず、上手く誤魔化すためにその罰には従った。
言われた通り、盛り付けられた皿を二人分、テーブルへと綺麗に並べる。
うん、我ながら几帳面だと思える位配分とバランスは完璧だ。
彼女の向かい側に座りながら、帽子をとった。

「……そ、そう……い、良いと思うよ……多分……。
 う、うん。食べよっか……。」

とったはいいけど、また被りたくなる恥ずかしさだ。
実際彼女は、初めてだったんだろう。
今一度再確認、と考えると結構こう、あの時の恥ずかしさが今になってこみ上げてくる。
まさか、彼女との会話に返答に困ることが出てくるとは……。
面と向かった性事情は、まだ早い気もした。
"両親"に見守られながら、食事に舌鼓し、彼女といつものようにゆったり時間を過ごしていこう。

修世 光奈 > いつかの未来のために、色々と頑張っている。
…光奈としては、その時にたくさんの友人に祝福されれば尚いい、なんて夢も描いていて。
その光景を目にしたらきっと、彼の心の中の楔も…少しは抜けてくれるだろうかと。

「手料理のお代とも思ってよねー。…ま、冗談だけど。
ミアのためなら、これくらいよゆーよゆー。」

お代なんて今更言うつもりもない。
それに…彼の方がそういった細かい気配りは得意なのだ。
見てみれば…やはり狂いなくぴし、と盛り付けられた食器が並んでいる
彼と一緒に席について、簡単ではあるものの、我ながらうまくできた、と自信をつけよう。こういう…未だ慣れないことは自分を褒めていくのが大事だ。

「………あの、うん。ごめん………」

結構恥ずかしがりやな彼だ。
ストレートに聞くのはやりすぎだったかもしれない。
しかし、これも光奈にとっては…彼に聞くしかないこと。貴重な情報が得られたと思っておこう。

「いただきます」

そうしてようやく。
しっかり手を合わせて、今日も彼と食卓を囲む。
時々、花に視線をやって。

(……きっと、わかってくれてるよ)

死者と話すなんてできないけれど。

彼が尊敬する両親のことだ。
彼の気持ちもちゃんと見ていて…
もしかすると…楽しそうに苦笑いをしながら、見守ってくれているかもしれない。
そうであってほしいと、願いながら夜は更けていく。

ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」から修世 光奈さんが去りました。
ご案内:「常世寮/男子寮 部屋」からジェレミア・メアリーさんが去りました。