2019/05/06 のログ
ご案内:「部屋」にアリスさんが現れました。
ご案内:「部屋」にアイノさんが現れました。
■アリス >
私、アリス・アンダーソン。
ある事件で後遺症から少しずつ歩き出そうとしている二年生。
今日は歩いていると雨に降られた。
なんてツイてない。
けど、どうしても傘を錬成する気になれなかった。
大きなものを錬成すると、また不運が襲ってくる気がして。
小雨の勢いが強くなる頃、アイノに会って部屋に案内してもらった。
雨宿りとはいえ、同じくらいの年の子の部屋に入るのは初めてで、ちょっと嬉しい。
「ありがとう、アイノ。あのままじゃずぶ濡れだったわ」
■アイノ > 「水を滴らせて軒先で雨宿りしてたら、素敵な出会いがあったかもなー?
外で待ってみる? 白馬。」
にひひ、と意地悪そうに笑いながら、こっちも結構濡れた状態で扉を開けて中へと招き入れる。
すっかり濡れた艶やかな金髪と、長袖のTシャツとハーフジーンズ。
堂々とした態度は変わらず崩していないけれど、実は同じ年ごろの子を自分の部屋に招き入れるのなんて、記憶にもうほとんど無い。
ちょっとだけ、緊張している自分がいる。
「でもまあ、雨は通り雨だと思うし、少しくらいゆっくりしてきなよ。
お茶は………何がいいかな。」
と。扉を開けばリビング的な空間。
白いやわらかなソファには、大きな猫のぬいぐるみが二つ。
テレビにDVD。テレビの隣にもぬいぐるみ。
そして脱ぎ散らかされたシャツとショーツ。
「ちょっと待った。待ってて。」
慌ててそれらを抱きかかえて走り去る金髪。おそらく洗濯機に突っ込んだのだろう、ばたん! という音が響いて。
■アリス >
「いやー、出会いの発生より風邪を引く確率のほうが高いと思うわ……」
部屋の中は実に女の子っぽい。
うわーうわー。私も急に部屋に人を呼んでもいいように乙女ゲー片付けておこ。
あ、脱いだ後の下着とかある。視線を逸らす。
「あー……いえ、ごめんなさい、急に来たから」
「お茶とかコーヒーとか選べるの? 一人暮らしを楽しんでいる感じね」
「じゃあ、紅茶があれば。あとタオルを借りてもいいかしら?」
知り合いの家というのは、どこに座ったらいいものやら。
困った表情で所在なさげにしている。
ああ、ぼっち暦13年は長すぎた。アリス・アンダーソン、お前に人生は重荷。
■アイノ > 「いい、いいから。 うん。 ちょっと片付けが面倒になっただけだし。
紅茶ね、……あ、タオルも。 ごめんごめん……!」
ぱたぱた、ぱたぱたと少し慌てた様子で少し大きめのタオルを持ってきて、広げながら手渡しを。
「あ、……そこのソファ使っていいよ。
一人だとちょっと広いからぬいぐるみ置いてあるだけで、横にどかしていいから。」
頬がいつもより赤くて饒舌。少しだけ焦りムーブ。
ほらほら、と猫のぬいぐるみをひっつかんで横に寄せる。
むぎゅう、と潰れるねこ。
「紅茶ね、………す、少し待っていてね。」
よし、っとすぐにキッチンに向かって。
ちょっとだけ肩に力が入ったままのもてなし。
髪を拭き終わったころには、クッキーでもお皿に入れて持ってくることだろう。
クッキーと一緒にポテトチップスとか混ざってるけど。 これくらいしかなかった。
■アリス >
「ま、まぁ……私の部屋には人に見られたらだめなやついっぱいあるから…」
謎フォロー。そしてそれらは最近ハマっている乙女ゲーとその関連グッズなので。
でも面白いのよ、フォルトゥナ・ファミリア……
「ありがとう、アイノ。それじゃ遠慮なく」
「あ、さ、催促したみたいでごめんね! 私ったら本当に無遠慮で…」
髪を拭き終えてそのまま座ると、ソファから血が染み込んできた。
生肉の感触が腰辺りまで伝わってくる。
目を瞑ると、胸に手を当てた。
狗上先生のおまじない。おまじない……
目を開くと、ただの柔らかなソファーで。
血なんか染み込んじゃいない。
「至れり尽くせりね! 次は私の部屋に招かないと……」
■アイノ > 「い、いや、いいの。 大丈夫!」
次は紅茶、と運んできたところで謝られて、いやいやいや、と首を横に振る。
そしてそこでTシャツすら着替えていないことに気が付いて、自分の焦りっぷりが嫌になる。
「………あー、えっと、あれだ。
施設に入ってたから、友達とか家に入れたの、数年ぶりとか、そんな感じで………
ちょ、ちょーっと、舞い上がってたっていうか。」
頬をぽりぽりとかきながら、素直に自分の状況を告白する。
ぼそぼそーっと言葉にしつつ、ソファの隣、ラグマットの上にぺたんと座り込む。
相手が未だに戦っていることにはまだ気が付いていないけれど。
こほん、と一つ咳払い。 自分が恥ずかしいターンはおしまいおしまい!!
「人に見られたらダメな奴を見せてくれるってわけ?
どんだけやらしーんだろうな……。」
ごくりと喉を鳴らすしぐさで、相手をからかいにかかる。
■アリス >
アイノの告白に、ぷっと吹き出して。
ついに笑い出してしまう。
「あはははは………ごめんね、なんか私に似てて……」
「私なんか、友達の部屋に入るの初めてだわ」
「あなたより舞い上がってるから安心して」
そして追撃のからかいが来ると顔を赤くして手を振る。
「いやいやいや!? そこはちゃんと隠しますとも!」
「女の子には108の秘密があってそのうち13を暴かれると死ぬんだからね!?」
あわあわしながら紅茶を一口飲む。
温かい。そして、なんだか楽しい気分になる。
■アイノ > 「……そ、そっか。
じゃあそこは私が先輩って奴かなー。……自分で言っててむなしくなるけどさ。
ついこの間来たばかりでしょう、美少女の部屋ってこんなもんかなって思考錯誤して……。
今こうやって口にしてもバカらしいけどさ。」
肩を竦めて、笑う。
そういえばそう、この島には似たような境遇の人も多いんだった。
少しだけ落ち着いて、舞い上がっていた心を落ち着ける。
「か、隠さないとヤバイくらいの奴………?
え、なに、マジでやらしい奴? ちょっと雨やんだら行ってもいい? 先回りするから。」
目を輝かせて前のめり。 いやもう、当然弄ってるだけです。 乙女の秘密なんてあばくわけないじゃない。 ………多分。
こっちも紅茶を一口飲んで、にしし、と笑う。 自分に悪魔の尻尾が見えるような気がするけれど、やっぱり楽しい。
■アリス >
彼女の言葉にごくりと息を飲んだ。
まさか、美少女としてのイメージ戦略を部屋にまで!?
自分はそこまで徹底はできてない。
アイノ……恐ろしい子!
「アイノ……美少女の部屋には確かに大きなぬいぐるみが置いてあるわ…」
「あ、でも私もカピバラグッズ集めるのが好きでね?」
「カピバラのぬいぐるみがあるわ、それはもうあるわ」
笑いながらクッキーも一枚食べてしまう。
甘味が口いっぱいに広がる。それにしても、外の雨が強くなってきたのが気になる。
「ただの乙女ゲーだからね!?」
反射的にからかいに乗ってしまった。自爆。
「ああ、いや、その、乙女ゲーって言ってもいやらしくないやつで……」
「フォルトゥナ・ファミリアっていうマフィアの一人娘になってラブとラブとラブが…」
「ってなんで説明してるんだ私ーッ」
どたーっとソファに倒れる動き。
■アイノ > 「で、でしょ、でしょ。
ほらー、ほらー、アリス先輩だってそういうの持ってるじゃーん。
ぬいぐるみのお仲間がいたことにうれしくなったのか、こっちもクッキーを一枚ぱくっと咥えて、ついでにアリス先輩の膝をつんつんする。
「………。 いやまあ、クラスの女子がもう薦めてきたから知ってはいるな。
大丈夫大丈夫、知ってるし、そういうのあることわかってるから。」
肩ポンして大丈夫大丈夫、と、倒れるアリスを揺すってみる。割とダメージを与える系の慰め方だった。
「………雨、強くなってきたかな。 そろそろ私も着替えるかな。」
美少女を自称してるくせに、濡れた服の着替えは遅かった。箪笥からキャラものの子供らしいシャツを引っ張り出して。
■アリス >
「持ってる持ってる、ゲーセンで相当お小遣い使わされたのもあるし…」
「クレーンゲームでカピバラちゃんシリーズ追うのかなりしんどいわー」
紅茶を一口飲んでから、こちらもアイノの膝を指で押す。
「でも美少女らしい部屋を追及するのは相当だよ?」
にへへと笑ってからかっていたけど。
乙女ゲーのフォローが入ると頭を抱えて悶絶した。
「うー! その一見理解があるような優しさが私の心を蝕むッ」
アイノが着替え始めると、
自分もタオルで改めて長い髪を拭き直して。
その直後。
雷が、鳴った。
相当近い。寮付近が全域で停電する。
私は頭を抱えて、その場に蹲ってしまった。
暗い。怖い。殺される。嫌。
必死に喉元まで出かかった悲鳴を飲み込んだ。
■アイノ > 「だって美少女だもーん。 だ、誰が部屋に来るかわかんないじゃん。
そん時にイメージ違ったらダメだし……。」
不安だからの裏返し。言葉が次第にぼそぼそと小さくなりかけて、ぷいと横を向いて。
「………っ!」
一瞬で真っ暗になる。
着替えようとして部屋の隅でハーフジーンズを脱ぎ、部屋着のスウェットに出も着替えようとして。
まるで地鳴りのような音と共に明かりが消える。
「っとぉっ………!」
今のは近かったな、なんて、口にしようとして、相手の異変に気が付く。
ああ、そういえば。 思い当たる節を、しっかり聞いていた。
「アリス先輩、……大、丈夫…?」
頭を抱えている姿が暗がりの中、見える。
いつだって強がっている自分、何でもできると吹聴している自分。 でも、怖がる友達に何もできていない。
うずくまるその隣にぽふ、と座って、私だよ、私、と。改めてそう告げながら、頭を抱えている手の上から、掌を重ねて、ぽふ、っと顔を埋めるように抱きにいく。
■アリス >
アガサに心中を吐露して安らぎを得た。
確かにPTSDは回復傾向にある。
でも、まだ終わってない。あの暗闇の向こうに、か、怪物が。
その時、頭を抱きしめられて。
掌に手を重ねてもらって。
少しずつ、心の中に平穏が戻っていった。
暗い中で、話を始める。
「あ…………アイノ………転移荒野に突然現れた館の噂、聞いたことある?」
その話を切り出す。
友達だから、守ってもらっているから。
聞いてもらわなきゃいけないんだ。
■アイノ > 「聞いた。調べた。………そこらの知ってる人が知ってる程度には、だけど。」
相手が話を切り出せば、頷きながら、相手の話を聞く。
背中を撫でながら、抱き寄せる。
落ち着かせるように、できるだけ一定のテンポで。
「無理、しなくてもいいよ。
でも、何だって聞くよ。 私でよけりゃ。」
悪戯な言動はこっそりと姿を潜めて、できる限りに優しく、柔らかい毛布のように言葉をかける。
どんだけの目に遭ったんだ。
唇を少しだけ、噛む。
■アリス >
後輩に抱きついて、暗闇から逃れながら。
震える右手を必死に左手で押さえつけた。
「私とアガサはあの館の調査隊の第二陣だったのよ……」
「あそこにいた怪物は、人間を拷問したり、縫い合わせたり、改造したりしていたの」
「巻き込まれて、異能も魔術も使えなくて………」
瞼の裏の闇に、血の色が滲んでくる。
「わ、私は………助かるために、館を第一陣が持ってた爆弾で爆破して…………」
呼吸が荒くなる。途切れ途切れの言葉、要領を得ない説明。
それでも必死に紡ぎだした言葉だった。
噂話が一人歩きして、私の根も葉もない噂が流れているけど。
全部、全部ウソ。私だってみんなを。
「救いたかったのに………っ」
■アイノ > 「………そう、か。」
必死にあふれてくる言葉を、一つ一つ拾い上げて。
並べて、言葉を継ぎ足して。
次第に見えてくる全容。 理解が追いついて、胸がきゅう、っと締め付けられる。
「………そりゃあ、そうだろ。」
言葉が重い。
自分の思いが大きすぎて、胸につっかえて、喉につっかえて、言葉にならない。
ぎゅう、っとその手を握る強さだけが、強くなる。
「私だって、その場にいたらそう思ったはず。 信じる。
………私は。」
唇が震える。
「それでも、アリス先輩がいなくなってたら、今日だって、一人のままだったんだ。
初めて部屋に来てくれて、ちょっと、嬉しかったんだ。 嬉しかったんだよ。
……だから……、先輩が、間違ってるわけないだろ。」
両腕でぎゅう、っと。
もっともっと私が大きかったら包み込めるのに。 ああもう、畜生。
自分はどうしてこんなに腕が短くて、どうしてこんなにも手は小さいのか。
■アリス >
際限なく酸素を体に送り込む無軌道な呼吸が収まる。
少しずつ、静かになっていく周囲。
違う。静かになったのは、落ち着いたのは私。
「……今でも夢に見るわ…電気を消して眠れない……」
それでも。
誰かが間違ってないと言ってくれるなら。
「街中の雑踏に縫い合わされた人間や、返り血を浴びた怪物を幻視する……」
アイノのこの温もりを、アガサを信じられたなら。
私はまた、歩いていける。そう信じなきゃいけない。
しばらくして、停電が復旧して。
明るくなる。私は、少しだけ名残惜しそうにアイノから離れた。
「ありがとう、アイノ。もう、大丈夫だから」
涙を拭って、笑う。
「二年のアリスが後輩に泣きついたって言いふらす?」
■アイノ > そうだな、そうだな。
辛いよな。
小さく小さく呟きながら、それでも何度でも口にする。
ひたすら温めることしか自分にはできない。 卵を無条件で温めるように、自分にできる精一杯。
…電気が灯れば、そのぬくもりが離れる。
相手の言葉に、ふん、と小さく鼻を鳴らして。
「………ばーかばーか。 そゆのは、もっと価値が出る時までとっとくもんだ。」
にひ、と少しだけ笑って茶化しつつも、少しだけ肩を竦めて。
「それに、まー、噂ってのは経験済みだから。
私は天才だから、落ちそうになったバスを受け止めてやったんだけど、私が落としたって噂がな。
悪魔扱いは慣れてるけど、ひどいだろ、こんな天使のような美少女捕まえてサァ。」
ケケケ、と悪魔のように笑う少女。
少し冷めてしまった紅茶を手にして、一口含んで。
「落ち着いたかい。」
クッキーとポテトチップスが置かれた皿。その敷いてある紙の端を持てば、よいしょ、と包むようにして。
■アリス >
「ふふ、優しいんだぁアイノ……」
自分も、少し冷めた紅茶を一口飲む。
温かくないのに、とても落ち着いた。
「……噂か…アイノも、そんな風に言われたんだね…」
「あはは、アイノは確かに天使だわ。悪戯っ子の天使」
落ち着いたか、と聞かれれば頷いて。
「ええ。もう大丈夫。ありがとう、アイノ。本当に…」
「っと、私そろそろ行くわね。雨も上がったし、それに…」
携帯デバイスを開いて。
「同じ女子寮に、アガサがいるから。停電の後だし、寄ってから帰ることにするわね」
「タオルも紅茶も、色々と。今度お返ししないと」
「それじゃ、またねアイノ」
小さく手を振って、部屋を出て行った。
■アイノ > 「だーーーーれが!!」
優しい、と口にされたら、思わず耳まで真っ赤にして大きな声を出した。
悪魔扱いに慣れて、おう悪魔だよそれがどうした、と暴れた少女だ。
優しい扱いなんて慣れてない。
「そうだな、アガサ先輩もあれだし、一人だろうし。
いってらっしゃい、先輩。」
手をひらり、と振って見送って。
自分の掌を見る。 ああ、まだちっちゃいなあ。
ご案内:「部屋」からアリスさんが去りました。
ご案内:「部屋」からアイノさんが去りました。