2020/07/21 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」に神樹椎苗さんが現れました。
■神樹椎苗 >
殺風景な部屋。
寮生に割り当てられた、特別変わり映えのしない量産型の一室。
椎苗はベッドの上に現れると、そのまま倒れこんだ。
(別に、何もしてねーはずですけど。
妙に疲労感ってのはあるもんですね)
神の記憶、その一端を覗き見たのだから、少なからず疲労はしたのだろう。
まあそもそも、危ない連中に見つからないようにスラムの奥まで行くのは、それだけでも十分疲れる行為なのだが。
■神樹椎苗 >
他の学生たちは、今頃試験が終わって解放感に包まれているのだろうか。
きっと、多くの学生たちにとって、スラムで起きた異変など、取るに足らない――目に留まる事すらない問題なのだ。
椎苗にとっても、落第街での出来事はずっと関係のないものだった。これまでは。
(まさか、足を踏み入れる事になるとは思わなかったですね。
――それも、『友人』が理由になるとか、少し前のしいなら笑い話にもしねーのです)
それだけ、この数週間が椎苗にとって転機となってしまったのだろう。
望む望まないに関わらず、これまでにないほどに他人と関わってしまったのだ。
それは、どのような形にせよ、椎苗の無味乾燥な日々を強引に染め上げる。
(誰も、そんなもん頼んじゃいねーのです。
しいは、ただ、静かに、いつか死にたいと願っているだけで。
いつか偶然にでも、本当に死ねることを期待して――)
どんな形であれ、終われればそれでよかった。
ただ、死に救いを求めていたのだ。
かつて、黒き神を信じた少女と同じように。
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」に希さんが現れました。
■希 > (コンコンと、控えめなノック)
寮故に手加減した声で
「しーなちゃんー、いるー?」
■神樹椎苗 >
(黒き神の依り代として、使われるだけでよかったのです。
それと引き換えに、いつか、しいを眠らせてくれると)
すぐに叶う事ではない。
かつて死を司っていた神だとしても。
今、この世界で神と祀られていた存在に死を与える術はなかったのだ。
(まあそもそも、しいが居なければ権能の一つもつかえねーわけですしね。
しい自身は、アレに抗えないように作られていますし)
そもそも、そういう思考に至らないよう、誘導すらされているはずだ。
黒き神にも、その点はすでに指摘されている。
おそらくほかにも、『端末』として都合のいいように操られているのだろう。
(気に入らないとは思いますが――確かに、嫌悪感すら抱けないのは不自然でしょうね)
つくづく、自分がただの『道具』であると思い知る。
夕刻に薄暗くなる天井を仰ぎながら、大きく息を吐いた。
そんなところに、ノックの音と、意外にも控えめな聞きなじんだ声。
(ああ――試験も終わりましたしね)
ぼんやりとそんなことを考えながら、起き上がろうとして――面倒になる。
枕元にある電子端末を操作して、とりあえず部屋のロックだけは解除した。
■希 > 「あ、おじゃましまーす」
ゆっくりと、入って、靴を揃えて
「しーなちゃん!しけんおわったからあそぼ?」
とててと歩いてベッドの側迄、近づいて
「しーなちゃん、おつかれ?」
ベッドに腰掛け
■神樹椎苗 >
行儀よくして近づいてくる少女の足音に、億劫そうに視線を向けた。
「――あそばねーです。
まあ、疲れてると言えなくもないですね。
お前こそ、試験終わってどうだったんですか」
そう、いつも通りのやり取りに、学生らしい言葉を添える。
試験の結果など、知ろうとすればすべての生徒のデータを確認できるのだ。
当然、少女の成績も事前に把握しているが。
■希 > 「ぶい!しーなちゃんとソフィアせんせーのおかげでさんすうはまんてん!」
向日葵のような笑顔を向けて
「んー」
ちょっと疲れてるような友人に、いつもしてもらうばかりなので、頭を撫でようと手を伸ばし
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」に希さんが現れました。
■神樹椎苗 >
「そうですか。
まあ、しいが教えたんですからとーぜんですね。
あてになる先生も見つかったんなら、よかったじゃねーですか」
その教師の名前には聞き覚えがある。
授業もとっているが、試験を体よく放棄した教師だったはずだ。
教えるのは――比較的上手い教師だ。
「――で、なにしてんですか」
伸びてきた少女の手が、椎苗の頭を撫でる。
これと言って抵抗もせず、気だるそうな視線だけ向けた。
■希 > 「んー、うん、でも、しーなちゃんのおかげ、ありがと、しーなちゃん」
穏やかな声で優しく伝えて
「しーなちゃん、おつかれみたいだから、がんばってきたのかなって、くろいのさんと」
あの時、くろいのさんになっていたのは練習だったのかなと
■神樹椎苗 >
「礼を言われるような事じゃねーのです。
勉強したのも、頑張ったのもお前ですからね」
そう、椎苗はただ請われたから教えただけだ。
それを素直に吸収し、身に着けたのは少女の努力があったからこそ。
しかし、それにしても。
「お前、時々ですがすげー勘がいい時ありますね。
べつにしいは何もしてねーのですよ。
頑張ったのは、その『くろいのさん』です」
そう、椎苗はただ見ているだけだった。
抗えない事が分かっていたから、全てを押し付けて、見ているだけだったのだ。
■希 > 「えへへ、きっかけはしーなちゃんだもん」
褒められて喜びながら
「いつもだったら、あげてもくれないかもしれないから、きょうはおつかれかなあって」
幼女にも自覚はあったらしい
「んー、でも、からだをかしたのはしーなちゃんでしょ?だからしーなちゃんも、お疲れ様」
優しく頭を撫で
■神樹椎苗 >
少女の笑顔に、目を細めた。
純粋で、無邪気で――苦しんで、悲しんできても、そう子供らしく在れている。
その姿が眩しく、やけに目に沁みた。
「――お前は、すごいですね」
ぽつりと。
うっかりと呟いてしまったというように、意図しない言葉が零れ落ちた。
「そうですね――しいは、もう疲れました」
それは弱音と云うモノだったのだろうか。
頭に触れるあたたかさと、心地よさに気が緩んだのかもしれない。
(そういえば――こいつに会うまで、誰かに撫でられた事なんて――)
ずっと昔。
まだ椎苗が人形にすらなる前。
ふと、誰かに抱かれていたような淡い感覚が浮かび上がる。
あれは誰だったのだろう。
世話役の気まぐれだったのか、それとも別の――。
■希 > 「わたし、のぞみは、すごくないよ、しーなちゃんがすごいから、がんばってるの」
頭を撫でながら、歌うのはいつか、聴いたような、子守唄
「しーなちゃん、ありがと」
ゆっくり、やさしく、頭を撫でながら、幼いながらも、優しい声で
■神樹椎苗 >
「――ありがとう、なんて、もったいないのです」
きっと、この少女に比べたら、自分はとても醜いモノに違いないだろう。
それだけのことをしてきたし、されてきた。
『生きている間』に、人間扱いをされたことすら、一度もなかった。
(本当に、ばかやろーです。
お前は、しいに優しすぎるのですよ)
少女の優しさは、なにも知らない無知ゆえだからなのだろう。
『本当』を知れば、少女は離れていくのかもしれない。
いや、できる事ならば。
(しいと関係ないところで、普通に生きてほしいのです)
それはもうこの島に来てしまった以上、望めないことなのかもしれないが。
それでも、少女にはこのまま生きて、そして穏やかに眠れるような時間を過ごしてほしい。
きっと少女は、椎苗と違い本当の意味で、誰かを助けられるようになるだろう。
痛みも苦しみも知っているからこそ、それでも優しくなれる少女ならば。
そしてその時、少女の周りには多くの『幸い』があるに違いない。
(ああそれは――見て見たいですね)
幼くも優しい、心から紡がれる歌声。
それは無垢で、無知で――だからこそ満たされている。
静かな微睡へ誘われるように、ゆっくりと意識がぼやけていく。
「――でも、まだ眠れねーのです」
重たそうに瞼を開き、少女を見た。
その瞳の色は、珍しく感情に揺れている。
「まだ、休めねーのですよ」
そう言って、少女の手に触れて、そっと遠ざける。
ゆっくりと体を起こし、ベッドに腰掛けた。
(しいには、やるべき事が出来ちまいましたからね)
それまでの人形でもなく、依り代としてでもなく。
一個の個体として、『神樹椎苗』として、すべきこと。
助けるなど、大それた事ではない。
ただ手を伸ばすだけで精一杯だ。
それでもただ一人の『友人』を見届けて――眠らせてやりたいと。
少女のように本当の意味で助けることなどできないだろう。
――だとしても。
それは間違いなく、椎苗が自ら望み選んだ道。
「お前、腹は減ってないですか。
試験をやり切った褒美に、また甘いものでも食わせてやります」
そう言って、軋む体を動かして立ち上がる。
全身の包帯には、ところどころ赤い色が滲んでいるが。
椎苗の手は、少女へと伸ばされる。
■希 > 「ん、そっか、しーなちゃん、キズは大丈夫?」
ニコッと笑う、決めているのだ、わたしはわたしの決めたものは、全部拾うと
「ん、そういうとおもった」
いつものように撫でようとした手を繋いで
「ん、たべよ、のまえに」
魔力が、失った体力が、希を通して、流れ込んでくる
「ん、げんきでた?」
少し疲れた笑みでしーなちゃんを見つめて
「えへへ、おぼえたんだ、まほー」
ニコッと笑う
■神樹椎苗 >
――素直に驚いて、目を丸くした。
いつの間に、少女は魔法を使えるまでになったのだろうか。
特別な才能はなかったが、素養はあった。
素直な性格で、学びも早かった。
使った魔術も初歩的な、力の受け渡しでしかない。
けれど、何も知らなかった少女が身に着けるには、容易な努力で出来るものではないはずなのに。
「――お前が疲れてどーすんですか」
そうして、やんわりと頭を小突く。
魔力も傷も、癒される事はないが。
それでも少し、眠気は覚めただろうか。
「あんまり、魔術は使うもんじゃねーのですよ。
魔術は秘すもの。
本来は大っぴらに使っていいもんじゃないのですから」
と、尤もらしい事を言って、小突いた手のまま頭を撫でた。
「でも、感謝くらいはしてやります。
お前には、いい素質がありますよ」
異能使いとしての、魔術師としての。
そして、誰かを助ける事のできる、優しく逞しい人間になるための。
無垢な少女には、まさに無数の可能性があり――どれだけ計算を重ねても、答えは一つにならない。
「ほら、行きますよ。
ちょうど夕飯にも悪くねー時間ですからね」
そうして、いつの頃からの『いつものように』手を引いて。
椎苗は再び、歩き出す。
■希 > 「しーなちゃん、治らないから、ひろー、だけでも、取ろうかなぁ、て」
まだ障壁すらまともに貼れないが、これは簡単なので覚えたのだ、わかりやすく、ひとを癒せる、のだ
「あうん、ともだちになら、いいんだよ、ソフィアせんせも、そういうもん、たぶん」
小突かれながら、えへへー、と覇気なく笑い
「うん、いこ、しーなちゃん」
いつもみたいに、手を引かれて
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」から希さんが去りました。