2020/07/27 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」に神樹椎苗さんが現れました。
■神樹椎苗 >
――目が覚めたのは、いつもの自分の部屋。
一つの終わりを見届けて、椎苗はベッドの上で体を起こした。
記憶は、まだ鮮明に残っていた。
ただ一人の『友人』が、恋した相手に抱かれて逝った。
死ねないはずだった『友人』が、自分で選んだ終わり。
「――良い終わり、でしたよ」
それは『友人』が描いていた終わりとは、少し違っていたかもしれないが。
その終わりはけして無様ではなく、美しく、そして幸福だっただろう。
「ああほんとに――羨ましいじゃねーですか」
きっと一つの理想的な終わり方なのだと、椎苗は思う。
死に焦がれるモノとして、羨望を抱くほどに。
■神樹椎苗 >
椎苗はベッドから立ち上がる。
ゆっくりと歩き、左手でカーテンを開けた。
思っていた通り、悲しみは訪れなかった。
感じたのは、『友人』が願う通りに終われた事への安堵と、最後に『彼』が間に合った驚きと。
『友人』に先立たれた、ほんの少しの寂しさだ。
けれどやはり、悲しくはない。
死は生命への祝福だ。
永劫得られなかったはずのソレを、『友人』は自身の手で手にしたのだ。
――親愛なる友の旅立ちに、幸あれ。
静かに祈る。
『友人』が楽園へと至れることを。
「まあ、余計なお世話でしょうけどね」
それでも、『死の神』が祈るのだから、至ってもらわなければ困る。
そして今度こそ――誰にも邪魔されない、幸福な夢を。
■神樹椎苗 >
窓を開け、少し高い窓枠に寄りかかる。
空を見上げ、目を細めた。
この記憶も、刻まれた『記録』も、時間と共に消えていく。
『友人』は三日と言ったのだから、三日経つ頃には『友人』の顔も声も、思い出せなくなるだろう。
最後に交わした、他愛のない、幸福なひと時もまた――失われるのだろう。
「それでも、無にはならない」
消えても、失われても。
それでもなお、残るモノはある。
椎苗は誓ったのだ――『友人』を忘れないと。
『友人』が確かに、この場所にいたこと。
どれだけ忘れても、それだけは覚えていると。
二人で願った奇跡は――消える事はない。
空に手をかざす。
いつか、『二人』でそうしたように。
「ああ――綺麗ですね」
空に浮かぶ白い月は。
涙が出るほどに、美しかった――。
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」から神樹椎苗さんが去りました。