2020/08/13 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」にレイチェルさんが現れました。
レイチェル >  
深夜、既に2時になろうかという時間。
レイチェルの部屋には電気が未だ灯っていた。

机の上には厚みをもった本が幾つも積み重なっており、
その頁には多くの付箋が挟まれている。

カビの生えたような――魔導書と見紛う古びた書物もあれば、
比較的新しいものに見える書物もある。
机の端にはメモ帳とボールペンが置かれており、
何やら細かな文字が沢山記されていた。

レイチェル >  
本は机の上だけでなく、彼女の机の横にも積み重ねられて、
幾つもの塔を完成させていた。

何度も何度も頁を捲りながら。
腕組みをしてみたり、頭を抱えてみたり。
それでも長いこと手を止めるようなことはしないまま、
彼女は一人で、作業を続けていく。

本に記されているのは、数多くの吸血鬼の資料。
古今東西、異世界のものまで含めたあらゆる吸血鬼に関する
書物だ。

そうして3つ目の山を崩した時に。


「……簡単に頼る訳にゃ、いかねぇもんな」

思えば。
今まで、どれだけ『友達』に頼ってきたことだろうか。
荒事専門で、同僚でも近寄らない者が多かった中で、
それでも話しかけてくれた親友、佐伯 貴子。

彼女は体質的に、レイチェルが行う吸血に耐えることができた。
血が不足して体調が悪くなった時はいつも、
向こうから声をかけてくれて。
レイチェルはそれに甘えることができた。

そう、甘えていたのだ。

勿論、お返しをしたり、相談に乗ったり、できることは何でも
したつもりだ。
それでも。

甘えていたことに、変わりはない。

レイチェル >  
時刻は、3時を過ぎる。

4つ目の山の頁を捲って、先人の知識を叩き込んでいく。
不要な情報は切り捨て、有用な情報はメモ帳へ。
流し目に文章を読み取り、取捨選択を行っていく。

彼女が元居た世界では、こういったものは殆どデジタル化
されていた。

故に、このように紙の本を捲るという行為は、常世学園に
来てから覚えたのであった。
かつてはテストで良い点数を取る為に本を苦労して読んだものだが、
それでも。

ここまで多くの書物に一度に手をつけて読み進めるのは、
初めての経験だった。


更に、30分が過ぎる。
レイチェルが本を捲る手は、未だ止まらない。
既にメモ帳も3冊目に突入した。

――何処だ。

『吸血鬼の特徴は――』

違う、これじゃ、ない。

――何処だ。

『古の儀式において――』

この本も、違う。

――何処だ。

『吸血鬼と人間の関係性は――』

全く、違う。

――何処だ。

『血吸いの化け物――』

何もかも、違う。

――何処にある。

『人を襲い、その血を――』

違う。

――見つけてやる。

『――化け物に過ぎない』

そうじゃない。

――見つからない。

『――人とは、相容れない』

そんなこと、わかって――。


言葉の洪水が、静まり返った筈の部屋の中で、
レイチェルの耳に響き渡っていた。

ため息をついて、本を置く。

そうして、レイチェルは本を置く。
時刻は既に、4時を過ぎていた。

レイチェル >  
そうして朝の、5時。

レイチェルは、机に突っ伏していた。
学びはあった。
しかし、本当に欲しい情報は、何処にも載っていやしない。

ふと頭を上げて、眼帯を叩く。
視界の端に立体的に浮かび上がるのは、連絡先の一覧だ。

そこで、『華霧』と記された項目を選択しかけて――止める。

――甘えてんじゃ、ねぇ。

まだ、調べていない書物は残されている。
試していない方法も沢山ある。
ならば。
立ち向かうしかない。
まだ、頼る段階ではない。
甘える段階ではない。
自分でできること全てを試したら、
その時は。

拳を机に突き立てて、レイチェルは立ち上がる。


シャワーを、浴びよう。
今日も、風紀の務めをこなさねばならない。

新たな朝は彼女を待たず、今日も始まっていくのだから。

ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」に修世 光奈さんが現れました。
修世 光奈 > 「…えへへ…」

女子寮、光奈の部屋。
先日の宣言からの思い出し羞恥によって枕はその役目を終えるところだったが。
すんでのところで、別のことに光奈は気を取られた

ベッドに寝転がりながら見ているのは、端末に登録された連絡先だ。

『ジェレミア』

そう書かれた連絡先を編集し

『ジェー君』

に変えて、にまにまする。
いや、これは仮だ。
この先呼び名は変わるかもしれないけれど。
それでも、その文字を見るたびにそわそわする。

修世 光奈 > なにも、解決はしていない。
だって、想いを伝えて…なし崩しのまま、彼を連れ出しただけだ。それは、きちんとわかっている。

それでも。
特別な関係になれたことを、嬉しく思わないなんて、それこそ嘘だ。

「〜〜〜!、〜〜!」

登録完了、を押した後、枕を抱きしめてごろごろとベッドを転がる。
つい、特に用事もないのに電話をかけてしまいそうなほどだ。
メッセージを送ろうとする手も抑えるのに苦労する。
こんな茹だった頭では、何も話題が浮かばないのはわかっていても…そうしたいと思ってしまう。