2020/10/22 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 自由記入」に水無月 沙羅さんが現れました。
ご案内:「常世寮/女子寮 自由記入」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「女子寮 椎苗の部屋」に水無月 沙羅さんが現れました。
ご案内:「女子寮 椎苗の部屋」に神樹椎苗さんが現れました。
水無月 沙羅 > ようやくあの窮屈な病院から解放され、家族の待っている家に帰ってきた。
未だ心の傷が癒えたわけではないが、幾人かの励ましの声によって普通の日常を送れる程度には回復している。
もちろんあの日の事を忘れることは出来ないし、これからも頭に過ることは多いことだろう。
しかしいつまでも病院で横になっているわけにはいかなかった。
風紀委員内での新しい配置部署も決まったことだし、何より家族をいつまでも一人で待たせているわけにも行かない。

かくいう本人はこれと言って変わりなく迎えるだろうし、不安そうな顔などおくびにも出さないのだろうなと少しだけ苦笑する。
さて、開口一番どんな言葉が飛び出すのか、少しだけ愉しみではあった。


「ただいまかえりましたー。」


言葉に出すことも久しぶりなその一言を口にしながら、女子寮の扉を開ける。

神樹椎苗 >  
 今日は娘が退院して帰ってくる日。
 とは言え、椎苗は見舞いにもいかなければ、迎えにもいかない。
 薄情に見えるかもしれないが、電話の一つもする事はなかった。

 ただ、何も変わらずそこに居て、いつも通りに迎える。
 それが椎苗の考える、家族としての自分の立ち位置、振る舞いだった。

「そろそろですか」

 時間を見て手を止める。
 すると丁度、示し合わせたように玄関の扉が開いた。

「――おかえりなさい。
 ご飯は出来てますよ。
 それともお風呂にしますか?」

 そう、いつもの部屋着で微笑んで迎えた。
 部屋の中からは、美味しそうな匂いが漂ってくるだろう。
 

水無月 沙羅 >  
「なんだか旦那さんを迎える奥さんみたいな返しですねぇ……。
 お風呂は後で入るとして、ゆっくり食事でもとりながら話しましょうよ。
 久しぶりに会ったんですし。
 ……というか、お見舞の一つでも来てくれてもいいんじゃないですか?」


椎苗ならそうするかもしれないな、という予想はあったしそれが自然な事だろうとは思っている。
しかし其れとこれとは話は別というもので、顔が見たいという欲もあった。
見捨てられるのではないかという心配の要らない不安が襲ってくることもある。
その不安も、しっかり用意されている食事や彼女の笑顔によって吹き飛んでしまうのだ。

それにしてもこうして彼女が微笑む姿を見るようになったのは、昔では決して考えられない。
何があったのか、そういえばそういう事も聞いていなかった気がする。
家族の様でお互い知らないことが多いなと、少しだけ肩を落とす。
知らなかったことと言えばもう一つあるが、今はとりあえずおとなしく席に着くことにしよう。


「ご心配をおかけしました。 何か変わったことはありませんでした?」


留守中、何か大変な事は無かっただろうかと、少しだけ心配になっていたのを遠回しに聴く。
彼女は何と答えるのだろう、何もなかった、というのが沙羅の頭の中では再生されている。
いつものパターン、彼女の私との接し方。

神樹椎苗 >  
「ん、見舞いに行くような容態でもねーでしょう。
 まさか、しいが居ないと不安で夜も眠れない、とは言わねーでしょう?」

 部屋に入れて、いつもの席に、テーブルの前に座らせると皿を運ぶ。
 いつからか、娘が気に入ってるらしい、オムライスだ。

「別に心配はしてねーですよ。
 こっちはいつも通りです。
 そんな年中、変わったことなんて起こられても困りますからね」

 食事を配膳すれば、それこそ思い浮かべたように。
 なんでもないように答えるだろう。
 

水無月 沙羅 >  
「確かにそこまでとは言いませんけど、便りがないというのは不安にもなるんです。
 ただでさえ一人急に、前触れもなくいなくなったばかりなんですから。
 そういう事をする人じゃないと信じていますけれど、感情というのは思った通りに行かないものです。」


まるで子ども扱いだ、と少し頬を膨らませる。
実際、この二人の関係と言えば『母と娘』という異様な様相を呈している。
自分があまりにも人間として未成熟で、彼女は逆に成熟してしまっているように見えるからこそそのような関係性が構築されている。
その点で言えば、正に自分はまだまだ子供なのだろう。
それでも不満なものは不満なのだ。


「心配くらいしてはほしいんですけど……、ま、まぁいいです。
 いつも通り……ですか。」


少しだけ目を細めて、椎苗の顔をじぃっと覗き込む。
いつも通り、ではないことが確実に一つあった。
少なくとも自分にとっては大事件が一つある。
後輩のレオに送られて来たあの写真の数々を忘れたわけではない。


「本当に、いつも通り、です?」