2020/10/23 のログ
神樹椎苗 >  
「そう長い期間でもなかったでしょう。
 着替えは持っていってやったじゃねーですか。
 不満なら、入院しないで済むように、しっかり独り立ちするんですね」

 と、不満そうな娘に絆される事もなく。
 口にする言葉は少しばかり素っ気ないかもしれない。

「別に手足がもげたわけでもねーんですから。
 それに、大好きな『お姉ちゃん』が来てくれたんじゃねーですか?」

 そう、自分が行かなくとも、誰かは娘を気に掛ける。
 なら自分にしかできない事をするのが、役割だろうと。
 それこそ、帰ってこない事まで含めて、待つのが役目だと考えていたのだ。

「ん、念を押しますね?
 特に変わった事はねーですが――」

 ふむ、と周りを眺めて部屋の様子を見るが。

「――ああ、デカマニャンは後で迎えに行きましょう」

 ベッドの上にいつもいるネコマニャンぬいぐるみが不在。
 娘の隣に置いてきたのだが――病院から一時預かりするから取りに来い、と連絡が来ていた。
 

水無月 沙羅 >  
「むぅん……予想通りの返答とはいえ若干傷つくかも。」


ぐすんぐすんと子供の泣き真似をしつつ、冗談だという事は態度で主張していく。
どこまでも、家族という名前の関係性でくくったとしても、この人にはやはり大きな壁があるのだ。
それを取り払うことは出来ないのかもしれない。


「確かに『お姉ちゃん』は来てくれましたけど、それとこれとは別、別なんです!
 『お母さん』にも来てほしいものなんです! 私は我儘なんです!!」


我ながら子供っぽいというか、10歳の子供に言う事ではないとは思うが、なんだかその言い方はチクリと胸に刺さるものがあった。
姉が居れば母はいらないというような理不尽さを感じて。
もちろん彼女にそんなつもりはないのだろう。
むしろ、考えている事はもっと別のところにあるのでは?
前に自分に言ったように、彼女はあくまで見守るだけなのだ。
必要以上の干渉はしないという事なのだろうか?
少しだけそれを寂しくも感じる。


「ちっがーう!! ちがいます!!!
 レオ君ですよレオ君!!!
 いったいどういう関係なんですか、あんな、あんな、は、破廉恥な写真ばっかり送り付けて!!!」


とうとう我慢できずに本題へ。
椎苗が送ったというあのレオの携帯に送られてきた写真の数々。
知らない人が見ればポルノ画像の山と言えなくもない。
あっという間にロリコン、下手すれば犯罪者として捕まりかねないそれを目撃してしまったからには放置するわけにも行かず。


「いったいいつの間に……どういう関係なんですか。」


若干のため息をつきながら、肩をすくめで椎苗を見つめている。

神樹椎苗 >  
「はいはい、甘えてくるのは構わねーですが、無制限に甘やかすつもりもねーですよ。
 我儘なのはよく知ってます。
 後で膝枕してやりますし、添い寝もしてやりますから。
 それとも、抱っこしてやった方がいいですか?」

 仕方ないなあ、というように苦笑を浮かべる。
 そっけないとはいえ、それでも『娘』を特別扱いしている事に違いはない。
 ただ、自分の事まで娘に背負わせるつもりはない――それだけの事だ。

「ん、ああ、あいつの事ですか。
 どういう関係かというなら、所謂、『付き合ってる』ってやつなんですかね。
 恋人関係になるんじゃねーですか?」

 と、少し首を傾げつつ。
 なんてことなさそうに答えるだろう。
 

水無月 沙羅 >  
「………、だ、抱っこは流石に遠慮します。
 いや、というかそういう事じゃないですから。」


何か大きな誤解が起きている。
そういうものを求めているわけではない。
構ってほしいというのを否定するわけではないが、それでは赤ちゃん扱いである。
適切な距離感というかなんというか、この人にはそういうのが足りていないのだなと言うのはひしひしと感じた。


「………?
 いやちょっと待ってください。
 私の聴き間違いじゃないですよね。」


一瞬首をかしげて、十秒ほど受け入れがたい言葉を脳内で繰り返し。
やはり聞き違いであったかもしれないと繰り返す。


「付き合ってるって言いました?
 レオ君と?
 異性が付き合うとかそういう性的な意味のお付き合いですか?」
 

如何聞いても犯罪である。

神樹椎苗 >  
「ふむ、まあ安心しやがるといいですよ。
 以前にも言った通り、お前を見捨てるなんて事はありませんから。
 大事な『娘』ですからね」

 と、拗ねる可愛い娘に、意地悪く微笑んでみせた。

「ん、何をそんな――」

 妙に動揺してるな、なんて他人事のように感じ。
 ふと。

『出来れば口裏合わせてくださいね』

 ああ、なるほどそういう意味か。
 なんて手遅れながら合点がいった。

「――冗談です。
 まあ、親しくはしてますが。
 性的な関係は持ってねーですから、心配しなくていいですよ」

 そうしれっと、嘘ではないギリギリのところで誤魔化そうとする。

「以前、あいつと一緒に子猫を助けたんですよ。
 その縁で、子猫と、ついでにあいつの世話をしに通ってますね。
 お前と似て、放っておくとまともな食事もとらねーんですから」

 はあ、とため息を吐いて。
 なお、ここまで一切嘘はない。
 誤魔化しつつも、娘との約束はちゃんと守っていきたい母心。
 

水無月 沙羅 >  
「……それは、わかってます。
 しぃ先輩が私を見捨てる筈ないってわかってますよ。
 ちょっと、わがままを言いたかっただけです。
 寂しかったんですから。」


本音を少しだけ漏らして、意地悪な微笑みに苦笑する。


「……言葉を返すのに随分時間がかかりましたね。
 性的な関係は持っていないけれど、そういう事に至りかねない関係性だという事はなんとなく伝わりました。
 と言うかあの写真を送りつけている時点で大体察しはついてましたけれど。」


ごまかされたところで手遅れ感が大きい。
いわばこれは最終確認であり、彼女の反応を確かめる為であり。
嫌悪感を感じているでも、誤解を受けて慌てるという様子でもなく、すんなり肯定している。
今までの彼女を省みる限り、あの反応に冗談とかウソの雰囲気は感じなかった。
何より、冗談を言っている時の悪辣さを全く感じなかったからだ。
普段ならもう少しこう、口が悪いというべきか。


「そのエピソードは聞きました。
 だから私たちはよく似てるから、弟のようだという話もしましたし、お世話になってると本人から聞いてましたけど。
 あの、しぃ先輩。
 本気ですか???」


もうがっくりと肩を落として、はっきりと見てしまった写真の数々を思い返す。
もし私が他人だったら今頃彼は牢の中だろう。

神樹椎苗 >  
「――まあ、ただの知り合いというよりは、親しい関係でしょうね。
 後はそうですね、あいつが骨折した時に介助に通ったりですか。
 食事を作ってるのもありますが、毎日のように会ってますね」

 手遅れなのはわかっていたので、素直に話した。
 改めて考えると、随分と親しい関係に思える。
 まあしかし、後ろめたい関係でもない。

「何を指して本気と問われてるかわからねーですが。
 あいつの気持ちを大切にしてやりたい気持ちはありますよ。
 まあ、しいにはその、相手を『好き』になるって気持ちがよくわかんねーですが」

 とはいえ。

「あいつと一緒に居るのは、居心地がいいですからね。
 今は色々とそれらしい事をして、恋だの愛だのって気持ちを理解できるよう勉強中、って所ですか。
 ただそうですね、前向きに考えてやりたい、とは思っていますよ」

 そう答える椎苗の表情は、どこか穏やかだ。
 恥ずかしがる様子も、後ろめたい様子もない。
 包み隠さない正直な言葉という事はわかるだろう。
 

水無月 沙羅 >  
「………。」


少女の言葉に嘘は無く、その心根にも悪意もなく、同時に罪悪感などあるはずもなく。
ただそこに在るのはレオという人間への思いやりや慈しみ。
そして、そういう感情を学びたいという好奇心か、それともそれすらも彼の為か。
なんにしても目の前の少女にそれがおかしい、間違っているという意識はない様子だった。

頭を抱える。

いや、この少女にとってそれは間違いではない。
何も間違いなどありはしない、問題なのは所謂周りがどう見るかという事と、レオ自身がどう見ているか。
あと個人的にも10歳と16歳のラブロマンスはちょっとどうかと思う。
いや、年齢差というよりは、椎苗の年齢が問題なのだ。
10歳の少女が好き、という響きがよくないのだ。
椎苗は実際大人びて見えるが、背丈は子供のそれだ。
どんなに精神的に成熟して居ようとも、社会的には子供でしかない。
裏でどんな風に扱われて居ようとも、だ。


「つまり、レオ君に好きと言われてお付き合いしていて、その気持ちを理解したいと。
 可能ならその気持ちに答えてやりたい、と。
 あー……まぁ、なるほど、そうですか。」


「正直、レオ君のことはさておいて、いろいろやりすぎです。
 少なくともポルノ画像の所持でつかまりそうなものを送るのは止めてあげてください。
 見たのが私じゃなかったら今頃牢屋入りですよ彼。」


聴いたわけでもない、レオからの告白だったのであろうという事は彼女の言葉で認識できた。
 
 
レオ君よ……それでいいのかレオ君よ……。


まぁそれは其れとして、彼は悪い人ではないし、変なことをしていないのは事実のようだし。
手を出したらそれはそれで対処するとしても、今のところ、めだった問題はない筈だ。
筈だが、外に漏れるのだけは止めなくてはならないという強い意志が沙羅の中身芽生えたのであった。

神樹椎苗 >  
「凡そその通りですね。
 ですが、そうですか、加減が難しいもんです」

 ふむ、と眉を顰めて。
 如何わしい写真を送ったつもりはないのだが、今後送る写真は気を付けようと考える。

「まあ、第三者から見たら不安になるのもわかります。
 しいの外見が幼いのはわかっていますからね。
 お前から見ても、誠実な人間に見えるんじゃねえですか?」
 

水無月 沙羅 >   
「少なくともお風呂上りとか露出が多い写真は控えるべきです。
 お風呂上りとかもってのほかです。
 本当に児童ポルノでつかまります。」


やれやれと若干の疲れたまなざしで見つめ、少女の迂闊さは経験の無さからくるものだろうかと思案する。
それにしてもこの少女にしては、何というか、随分浮かれているようにも見えるのは気のせいだろうか。


「誠実、すぎるんですよね。
 だから心配というか。
 本気なのがわかるから余計に心配なんですよ。
 それに。」


「彼はあのままだと自爆しそうな気がしたので。」


不死という言葉に過敏すぎる彼が、その事実にいつまで耐えきれるのか。
未だほとんど身の上話をお互いにしていない身としては、椎名が心配でもあった。
衝動というものは、いとも簡単に理性を覆すものというのは、自身がよく証明していた。
 

神樹椎苗 >  
「なるほど、肌面積が多いのは避けた方がよさそうですね。
 あいつの反応を見るのはおもしれーのですが」

 少しばかり、残念そうにして見せるが。
 その表情は、次の悪戯はどうしようかと考える、無邪気な子供のようにも見えるだろう。
 静かに穏やかに、けれど少女らしい表情が垣間見えるかもしれない。

「たしかに会ったころは危ういところはありましたね。
 それでも、ここ最近は随分とマシになりましたよ。
 あいつも少しずつですが、ちゃんと成長してます」

 そう答える表情も、自分の事のように嬉しそうな色がにじんでいる。
 もちろん、表情が一変するわけではないが。
 そして、『娘』にも同じ表情を向ける。

「お前が、走ったり躓いたり、痛い思いをしたり。
 そうして成長してるのと同じです。
 しいはお前の成長を見守るのも、とても楽しみなのですよ」

 間違いなく、その表情には『愛情』が含まれている。
 しかし、そこに明確な違いがあるのかというと――まだほんの少しの違和感くらいだろう。
 

水無月 沙羅 >  
「私が居ない間に、随分親しくなったようで何よりです。」


ちょっとだけ拗ねたように頬を膨らませる。
彼女にそう言われる少年が少しだけ羨ましい。
慰められてばかりで、なかなか褒められるようなことができない身としては情けなくも感じるが。


「成長している……ですか。
 何か重い過去に引きづられているように見えました。
 私を見る目も、そういう何かと重ねているようで。
 ううん、たぶん私じゃなくて、たぶん『不死』っていうキーワードになのかな。」


今はともかく、椎苗に興味を抱いたのもきっとそこからなのではないだろうかと邪推してしまうレベルで、彼は其れに引き寄せられていた、
戦場と、不死。
この島ではそう珍しくもないように思えるそれが、彼を苦しめている。
だからと言って自分に何かできるわけでもない。
椎苗が言う通り、彼がそれを克服するしかないのだろうが。


「わかりました。
 えぇ、そういう感じなんですねまだ。
 じゃぁしぃ先輩、家族としてお願いしてもいいですか?」


しょうがない人だなと、椎苗を見ながらうっすらと微笑んで。


「本当の意味で、愛しているとか、好きだとか、そういう風に感じたら。
 感じる様になったら、何よりも先に私に教えてくれませんか?
 その時は、ちゃんと考えないといけないから。
 本人たちの問題っていうかもしれないけど、ちゃんと知っておきたいし、まぁ。
 しぃ先輩が望むなら協力しなくもないですから。」


出来る限りのことはすると、言葉にした。 

神樹椎苗 >  
「ふふ、娘が拗ねましたね。
 やっぱり今日は抱っこして寝てやりましょうか?」

 くすくす、と娘の様子に微笑んで。
 娘の言葉には静かに頷く。

「大丈夫、わかってますよ。
 全部、必要な事は聞いていますから。
 まあそれも――少し変わってきたように思いますが」

 其処を含めて、寄り添ってやりたいと思っていた。
 互いに少しずつ、重荷を背負いあいたい――そう思って、青年に向き合っている。
 一緒に分け合いたい、そう思えた相手は二人目だろうか。

「お願いですか。
 別に隠すつもりもないですからね。
 その時はちゃんと話しますよ。

 協力は、どうでしょうね。
 あいつをいじめるのはほどほどにしてやって欲しいくらいですか。
 出来る限り、二人で解決していくべきでしょうからね」

 そう考えるのは、やはり年の割に理性的すぎるだろうか。
 それでも未だ羞恥心などが見えないあたりは、自分自身を大切に出来ていないのだろうが。
 

水無月 沙羅 >  
「その日はまだまだ遠い、という事がわかっただけでも収穫ですかね。」


くすくすと、愛だの恋だというにはほど遠いそれに、わずかに笑う。
二人で乗り越えて行くべきだ、というのは確かに正論ではある。
しかし、そうできなかった、それが自分だからこそ。
手助けしなくてはいけないと思う。
彼らが不幸にならないために。
せめて、『家族』として出来る事を。


「いじめはしませんよ。
 弄りはするかもしれませんけど。
 何せ、私の『お母さん』を奪っていくやつですからね。」


にやりと少しだけ悪戯っぽく微笑んで。


「……じゃぁ、今日は添い寝でもしてもらおうかな。
 しぃ先輩のお言葉に甘えて。」


疲れる話題もそこそこに切り上げようと、部屋の奥へ足を運んだ。
いつか、レオや椎苗がそういう関係になる日が来るのだろうか。
来るとしても、あと6年、せめて4年、レオには耐えてほしいものだが。 
 

神樹椎苗 >  
「ふむ――娘に笑われるのは、少しばかり不本意ですね」

 と、少しだけ眉を顰めつつも。
 次の言葉には、またつい笑って。

「それなら、子守歌もセットでしてやりましょうか。
 甘えられたら、しっかり甘やかしてやりましょうね」

 そうして、娘を見守りながら。
 手料理を食べる様子を、嬉しそうに眺めるのだった。
 

ご案内:「女子寮 椎苗の部屋」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「女子寮 椎苗の部屋」から神樹椎苗さんが去りました。